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なぜいま「障害者差別禁止法」が必要なのか


清水 建夫弁護士(銀座通り法律事務所)

プロフィール
しみずたてお(東京弁護士会所属)1943年神戸生まれ/2000年働く障害者の弁護団設立(代表)/2002年障害と人権全国弁護士ネット事務局長

 近代市民社会が想定した「市民」のひな型は、健常で壮年期の納税可能な所得のある男性であり、彼らに都合がよいようにデザインされているのがこれまでの社会です。そして疾病、障害、老齢、貧困、児童、女性という社会集団は「市民」と同じ土俵のなかに対等な法律関係が形成されているのではなく、その外で博愛や慈愛という修正理念で救済するというのが近代市民法の考え方です。つまり近代市民法そのものにバリアがあり、このバリアを取り払おうというのが障害者差別禁止法の思想です。

障害のみかた・考え方は

 「障害」の概念について日本と世界の流れではたいへんな違いがあります。日本の場合、障害を人に固定させてみているのです。世界の流れは、たとえば歩行困難という状態、その障害を、環境因子との関係で考え、その環境を変えることによって「障害」が障害でなくなるという発想です。
 そのように考えると障害者に対する雇用対策は、どう環境を改善するかという事なんです。しかし、日本の現実は、障害者というレッテル張りと、何%雇用しなさいという発想でしかありません。
 日本では、法律も行政も障害者を「経済的負担」「お荷物」ととらえることしかできない現状です。 
 たとえば視覚障害になった教師の復職をめぐってのことですが、その教師は授業準備のため教科書をパソコンに入力し、音声で聴いて事前準備にたっぷり時間をかけるため、生徒には評判がよいのです。しかし、職場(雇用主)はたいへん冷たい。職場介助者を十年間は補助金で雇用でき、4分の3は補助金がでるという提案すら学校は受け入れません。現在は生徒がサポートすることで授業が成り立ち、生徒との人間関係ができて、教育にマイナスではありません。しかし、管理職は字が重なっているとか、効率が悪いとか、火事の時たいへんだとか言って排除の論理のみになりがちです。

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