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2006年度東京都予算案に対する見解と態度

2006年2月9日
東京都庁職員労働組合


1 はじめに

 東京都は2006年1月18日、「平成18年度(2006年度)東京都予算(原案)」(以下「予算原案」)および「平成18年度職員定数」「平成18年度組織改正について」「平成18年度東京都監理団体所要人員計画」を発表し、その後復活要求を経て1月25日「平成18年度(2006年度)東京都予算案」(以下「予算案」)を発表した。
 石原知事はこの「予算案」を「都民の安全・安心を確保するとともに強固で弾力的な財政基盤の確立」を基本とし、「第二次財政再建推進プラン」の最終年度の予算として、「財政構造改革の足取りを確かなものとし、東京のさらなる発展を目指す予算」としている。

 石原知事が就任して7年、「都財政自主再建への道」として「平成12年度」から4年間の「財政再建推進プラン」が策定され、さらに「財政再建は未だ途半ば」であるとして「平成16年度」から3年間の「第二次財政再建推進プラン」が策定された。そして都政リストラ、職員定数や予算の削減が強行され、都民の暮らしにかかわる施策が切り捨てられてきた。だが3年間の都税収入はその見込みより1兆9,521億円の増収で、「財政危機」という「第二次財政再建推進プラン」の根拠はすでに破綻しており、東京都は予算編成に対して抜本的見直しを行い、切実な都民要求や都庁職要求に応えることが求められていた。
 
 しかし「予算案」は「投資的経費」が2年連続増加し、再開発や区部環状道路など「都市の整備」予算だけが突出している。知事が力を入れる「都市再生」など大企業のための「大型公共事業」には重点的に予算配分を行い、「東京のさらなる発展を目指す予算」としてオリンピック招致に向けた基金への積立や羽田空港再拡張、首都高速道路の品川線など、都政の枠組みを超えた公共事業に大幅な財政を支出するものとなっている。片や国民健康保険等の都負担増による予算増を除けば実質削減となる福祉をはじめ、医療・教育・住宅・中小企業・環境など都民の暮らしに関連する予算は減らし、自治体本来の役割を投げ捨てている。さらに税収増を背景として補正を含め基金に3,604億円の巨額な積み立てをおこなっている。

 また職員定数では、荏原病院の公社化や動物園の指定管理者制度導入、福祉施設の民間移譲、産業技術研究所の地方独立行政法人化など1,984人の削減となっている。来年度は「第二次財政再建推進プラン」の最終年度であるが、3年間で4,000人の職員削減目標に対して1,651人の超過達成となっている。国の政策による警察官の増員分(3年間で780人)を差し引くとその数は6,431人にも及ぶ。
 さらに「第一次財政再建推進プラン」と合わせて8,000人の職員削減目標が掲げられたが、清掃の事業の特別区移管を除いて実に11,526人(実質13,886人)もの職員が削減され、都民サービスの切り捨てと職員の労働強化が押しつけられている。

  こうした予算編成や職員定数査定は、小泉「構造改革」がすすめる「骨太方針2005」や、日本経団連が従来から主張している「小さな政府」「官から民へ」などの攻撃の東京都における具体化である。そして東京都は「行財政改革の新たな指針」を策定し、今後民間への委託・移譲、PFIの適用、指定管理者制度の導入、地方独立行政法人化およびアウトソーシングなどの手法により、大企業の活躍の場としての自治体づくりと極限までの都政リストラを推進しようとしている。

都庁職は、都民本位の都政運営と都庁労働者の諸要求実現をめざし、職場から積み上げた「2006年度東京都予算・人員に関する基本要求書」を昨年10月都当局に提出し、その実現に向けた取り組みをすすめてきた。しかし示された「予算案」や「定数査定」は、「第二次財政再建推進プラン」や「第二次都庁改革アクションプラン」に基づく都政リストラを着実に推進するもので、私たちの要求に応えるものとなっていない。
 都庁職は「予算原案」発表時に「抗議声明」を出し、基本的見解と抗議の意思表明を行なったが、確定した「予算案」の問題点と今後の闘いの方向を示すため、ここに「見解と態度」を明らかにするものである。

2 「予算案」の特徴と問題点

 (1) 編成方針および全体フレーム

 「予算案」は全会計の合計で12兆4,322億円、そのうち一般会計は6兆1,720億円となっている。これを「第二次財政再建推進プラン」の最終年度の予算として、「財政構造改革の足取りを確かなものとし、東京のさらなる発展を目指す予算」と位置づけ、「内部努力や施策の見直しなど財政再建を徹底するとともに、『隠れ借金』の圧縮や基金残高の確保などに取り組み、強固で弾力的な財政基盤を構築する。都民生活の安全確保をはじめ都政が直面する課題に着実に対応しながら、オリンピックなど東京の将来を展望する取組にも重点的に財源を配分し、都民の負託に積極的に応える。」の2点を編成方針としている。
 これは内部努力や施策の見直しなど財政再建の徹底をすすめる「第二次財政再建推進プラン」を着実に実行するものである。しかし「第一次財政再建推進プラン」「第二次財政再建推進プラン」の見通しとは大きく異なり、3年間の都税収入は1兆9,521億円(16年度4,629億円、17年度7,764億円、18年度7,128億円)もの増収となっている。「財政危機」を理由にして都民施策の切り捨てや負担増などを押しつける根拠はすでに破綻している。
これまで都当局は都財政の状況について、7年連続の赤字決算であり、予算見積もりに関する副知事依命通達や「都財政が直面する課題」では「隠れ借金」が9,000億円あるなど財政危機を強調してきた。しかしこの「隠れ借金」の多くは、減債基金の積み立て不足や他会計からの借入金という、同じ都の財布の中での貸し借りであり、意図的に「赤字」を強調して都民に痛みを押しつけ内部努力を強行するための手法として使われてきた。
 景気や業績の回復傾向により大幅な都税収入の増に転換した都財政は、「格差社会」が拡大する今日、都民の生活や雇用など、都民のために使うべきである。「都市再生」と称する大企業本位の大規模開発や物流改革など多国籍企業の活動のための予算、あるいは唐突な提案で都民の理解を得ていない「オリンピック招致」を口実とした基金の新設(1,000億円)や基金残高を確保する予算編成の方向は改めるべきである。
 以下、歳入・歳出の項目別で見ていく。

(2) 歳入について

 一般会計の歳入規模は6兆1,720億円で、5年ぶりに6兆円を超え、前年度当初予算と比較して3,180億円増(5.4%増)となっている。歳入が増えた主な要因は都税収入の増で、前年に比べて2,520億円増(5.9%増)となっている。また三位一体の改革による国からの税源移譲が、来年度は地方譲与税として1,653億円増(246.7%増)の2,323億円と大きく伸びている。一方、都債の発行は抑制に努めたと前年度比2.6%減の3,563億円で、起債依存度は5.8%に圧縮したとしている。

 @  来年度の都税収入見込みは「最近好調な企業業績を反映し、IT関係・製造業など企業収益に大幅な改善が見られる」ことから、前年度に比べて2,520億円増(5.9%増)となっている。しかし法人事業税の分割基準の見直しや固定資産税の評価替えに伴う影響により、「平成17年度」最終補正予算対比では636億円減となっているが、法人二税は2兆128億円(1,925億円、10.6%増)と大きくのびている。「税制改正」に伴って、「個人都民税」は「15年度」以降で300億円を超える大きな負担増となっているが、大企業を中心とした法人二税に対する恒久的な減税は、「16年度」以降2,000億円を超えて実施されているにもかかわらず、法人二税は大幅に増加している。その他の税も1兆2,987億円(792億円、6.5%増)と大きく伸びているが、評価替えに伴う影響を受けた固定資産税・都市計画税は1兆1,914億円(△197億円、1.6%減)となっている。
A  都債は将来の財政負担を考慮した3,563億円(△94億円、2.6%減)で過去10年間で最低の水準としている。国や地方財政計画と比べて健全であるとしているが、2006年度末残高の見込みは6兆9,000億円で対一般会計税収比1.5倍となっている。
B 使用料・手数料については、住民間の負担の公平を図り受益者負担の適正化を行うとして、霊園施設使用料(小平霊園1u358,000円→537,000円等)・運転免許証のICカード化(交付手数料1,650円→2,100円=道交法施行令)・都立高等専門学校の授業料(18年度入学生から年額228,000円→234,600円)などの増額、看護専門学校の寄宿舎使用料(19年度から南多摩看護専門学校寄宿舎月額8,500円)の新規徴収など、料額の改定・新設を25項目行い受益者負担を強めるものとなっている。

(3) 歳出について

 一般会計の財政規模は6兆1,720億円で、前年度当初予算5兆8,540億円に比べて3,180億円増(5.4%増)の予算である。一般歳出は4兆1,823億円で対前年度比806億円増(2.0%増)となっており、今回予算編成作業にあたってマイナスシーリングを行わなかったものの、引き続き「第二次財政再建推進プラン」に基づき全ての施策について見直し・再構築を徹底して行う一方、直面する課題や将来を展望する取り組みには重点的に配分したとしている。
 投資的経費については6,343億円で前年度比113億円増(1.8%)で、2年連続の増加の高い伸びとなっていたが、さらに復活予算が当てられ最終的には6,473億円となり、構成比の10.5%を占めている。
 経常経費は3兆5,280億円で前年度比493億円増(1.4%増)である。給与関係費は75億円増(0.5%増)であるが、この中に給与関係費で退職者増による退職手当の229億円(16.0%増)増が含まれている。国・地方一体の給与削減攻撃と大幅な職員定数削減や給与のマイナス改定により、退職手当の増分を差し引くと実質154億円の削減である。
 その他の経常経費も昨年と比べれば418億円増に転じているものの、都民の暮らしに直接関連する施策についてはスクラップアンドビルドで、徹底的に切り捨てや見直しを行なっている。

 @ 石原知事の重要事業である「都市機能の充実」は、「都市再生」の名による大企業本位の大規模開発を特別扱いとして、「都市の整備」に7,928億円、昨年比324億円増(4.2%増)など重点的に予算配分されている。具体的には幹線道路の整備786億円、東京港の物流整備101億円、鉄道の連続立体交差化542億円、首都高速道路の整備への出資・貸付386億円、渋滞解消104億円、東京の再生を促進するための魅力ある拠点の形成として渋谷駅周辺の整備等に92億円、都市交通整備352億円など巨額な事業予算を計上している。また総額1,000億円の無利子貸し付けをおこなう羽田空港整備には第3年次分として231億円を計上している。
 こうした一方、「福祉まちづくり」は13億円の計上に止まっており、都民生活に必要な都営住宅について7年連続新築ゼロの事実は覆い隠している。
A 石原知事のもう一つの重要事業である「治安対策」は、子どもを犯罪から守る取組として「全公立小中学校等の防犯カメラ設置」などに17億円、組織犯罪を抑止する取組の強化として六本木地区の街頭防犯カメラ設置、町田警察署地区交番の新設などで36億円が計上されており、「治安維持こそ最大の福祉」という知事の意向を反映した予算配分されている。
 しかし真に都民の安全を考えれば、治安悪化の要因である社会不安や生活不安を取り除くため、雇用対策や福祉・医療など暮らしに密着した予算を増やすことが必要である。
B 2月6日に発表された「福祉・健康都市東京ビジョン」を裏付けるように福祉や医療、教育・住宅など都民要望の上位を占める暮らし関連予算は、見直しや削減が引き続き強められている。
 福祉保健局の予算は、前年度比289億円(4.2%)の増額となっているが、介護保険制度や国民健康保険制度など三位一体の改革による国庫負担の切り下げに伴う都の負担増(介護関連約154億円増、国保関連約203億円増)、国の制度改正に伴う児童手当の都の負担増(約102億円)を差し引くと実質マイナスである。老人医療費の助成廃止の年齢進行で70億円削減、認知症グループホーム整備事業も1億5,500万円減など、多くの都民向け予算が削減されている。また子育て関連では認可保育所・学童保育への都費加算補助制度を廃止し、一括して145億円の子育て推進交付金として交付金化している。
 また中小企業対策予算は11年連続削減となっている。その内訳は臨海副都心関係予算(国際展示場)や東京国際フォーラムの運営費が増加し、中小企業の経営を援助する融資関係予算が大きく減少している。
 教育の分野では、全国ほとんどの道府県が導入している「30人学級」には踏み出さない一方で、都立学校の統廃合や学校運営の管理強化を狙い、さらに大幅な職員定数削減を行う「学校経営支援センター」を設置するとしている。
 このように都民要望に応えないばかりか、福祉保健の予算を増やしたようにみせかけ、実際には施策の切り捨てや水準の見直しを進め、生命や暮らしに直接関わる予算を軒並み削減するやり方は、弱者いじめの「冷たい都政」と言わざるを得ない。
C 「第二次財政再建推進プラン」や「第二次都庁改革アクションプラン」に基づいて「官民の役割分担を原点から見直す」ことを具体化し、事務事業の見直しや、指定管理者制度や地方独立行政法人制度などを導入して、「官から民へ」と「小さな政府論」に基づく民間委託・民間移譲の推進など、公務職場の解体を一層推進している。都立荏原病院の保健医療公社への移管や産業技術研究所の地方独立行政法人化、さらに社会福祉事業団委託していた福祉施設の民間移譲も強行されている。指定管理者制度はすでに導入されている新規2施設に加え、現在監理団体等が管理を受託している209施設についても、平成18年4月から導入するとしている。また、新たな行政手法といわれるPFI関係事業では、豊洲新市場建設や都立病院の再編整備で集中的に導入されようとしている。こうした一連の動きは、公務の職場を民間資本の市場に開放するものとして、許されるものではない。
D 復活予算案は200億円の復活財源を用意し、いかにも都民等の意見を反映するような体裁をとっているが、その結果は「都市基盤の整備」がトップで、復活予算の半分の約100億円を占めている。
 その結果「予算案」における性質別内訳では「投資的経費」が前年度比13%増の3,281億円となり、16年ぶり二桁の高い伸び率となっている。

(4) 大幅定数削減について

 @ 2006年度職員定数は、知事部局・公営企業・学校職員・消防・警察等全任命権者総計16万9,299人で、前年度より1,984人の職員定数削減を行った。「第二次財政再建推進プラン」で目標とした、2003年から3年間で4,000人の削減目標を41%超過達成する5,651人を削減した。国の政策による警察官の増員分(16年度200人、17年度300人、18年度280人)を差し引くと実質6,431人という現場の実状を無視した、まさに根拠ない「削減ありき」の大幅職員定数削減を強行したこととなる。
 石原知事になって昨年までに9,542人が削減され、今回の削減数を加えると11,526人となり、警察官の増員分を含めると実に12,306人の定数削減が強行されている。いま都庁のどこの職場でも異常なほどの超過勤務が強いられており、結果として健康破壊がすすみ、メンタルヘルスを病む職員が数多くでるような異常な事態となっている。
A 知事部局では増員1,636人減員3,142人で、前年度比1,506人の削減となっている。産業技術研究所の独立行政法人への移管による250人削減をはじめとし、生活実習所・福祉作業所の民間移譲による61人削減、動物園の指定管理者制度導入による203人削減、荏原病院の保健医療公社への移管による511人削減、市場警備業務の一部委託化による4人削減、看護専門学校の再編による11人減、固定資産税管理事務の執行体制見直しによる34人減、都立学校経営支援センター開設に伴う執行体制見直しによる約400人減など、いずれも「第二次財政再建推進プラン」や「第二次都庁改革アクションプラン」にもとづく事務事業の執行体制の徹底した見直しをおこなったとしている。さらに今後も職員の大量退職や少子化を踏まえ更なる定数削減に取り組み、「行財政改革の新たな指針」に基づく簡素で効率的な執行体制の整備をめざすと言明している。
 多くの都民が反対する都立施設の民間委託・移譲や統廃合をなりふり構わず推し進め、都民サービスに日夜努力する職員には正常な執行体制が困難な現状に拍車をかけ、新たな犠牲を強いるものである。今、大量退職を前にやっておくべきことは、人員を配置したうえでの培われた知識や技術の伝承であり、少子化社会の到来に対しては妊娠・出産や育児・介護等家族的責任と仕事の両立支援策の充実が早急に求められている。
B 監理団体の定数については昨年度の8,056人から8,461人へ、405人の増となっており、うち団体に派遣する都職員数は3,492人で前年度比87人の増となっている。これは荏原病院の保健医療公社移管や動物園飼育業務等の移管などによる858人増を反映したものである。また、事務事業の徹底した見直しによる453人の削減は、児童養護施設や障害者入所施設など監理団体からの民間移譲による減が含まれている。「第二次都庁改革アクションプラン」でかかげた監理団体改革を着実に進めるものとなっている。

(5) 2005年度最終補正予算案について

 補正予算の規模は好調な都税収入により全会計5,434億円で、今年度当初予算とあわせると13兆899億円となる。都市再生やアスベスト対策などの緊急課題は、国庫支出金を確保しつつ積極的に取り組むとしている。また、税連動経費など義務的な交付金・繰出金に必要な措置を行うとする一方で、都税収入の増加などを活用して「隠れ借金」の圧縮と基金積立を行うとしている。
 一般会計3,852億円のうち、都市再生や災害対応などの緊急課題に279億円を計上している。そのうちアスベスト対策(10億円)やマンション耐震偽装問題対策(3億円)を計上しているが、補正予算の中心は都市交通基盤の整備(117億円)、環2地区市街地再開発事業(86億円)など石原知事が力を入れる「都市再生」関連に新たな財源を投入している。当初予算で厳しいシーリングを押しつける予算編成を行う一方で、例年のように補正予算で大がかりな事業を積み増すやり方は見過ごす訳にはいかない。さらに正常な執行体制の限界を超えている現状で、職員定数を変えずに事業を増やすことは、当該職員にとって一層困難な事態を招くこととなる。
 また都税収入増加分として3,156億円を計上し、減債積立金不足の解消(632億円)、財政調整基金への積立(1,007億円)、社会資本等整備基金(500億円)など「隠れ借金」の圧縮と基金積立に2,539億円を計上している。
 今回の補正予算は、福祉・医療・教育・住宅建設などの切実な都民生活関連要求は全く計上していない。緊急課題であるアスベスト対策やマンション耐震偽装問題対策も、都庁職が強く求めてきたにもかかわらず極めて不十分なものとなっている。しかも「都市再生」などの大企業優先の「大型公共事業」への予算投入と基金積立を中心とし、都民要求とかけ離れた補正予算である。

3 都庁職の見解と態度

(1)「予算案」は、石原知事誕生以来、一貫してすすめられてきた全国に誇る東京都福祉水準の切り下げや切実な都民要求に背を向けた内容である。あわせて職員定数の大幅削減を一層推進するなど、「第二次財政再建推進プラン」「第二次都庁改革アクションプラン」に基づき、都民と職員に犠牲を強いる都政リストラを確実におこなう内容であり、断じて容認することはできない。しかも、この間の職員に対する給与削減をはじめ、すべての施策について、事業の存続を含め徹底した「都政リストラ」を強行し、都税収入増の助けも借りて「財政再建推進プラン」で掲げた数値目標は超過達成している。とりわけ都税収入は、二つの「財政再建推進プラン」策定の見込みより、この7年間で差し引き2兆8,000億円の大幅増、「18年度」だけでも7,128億円増となっている。財源不足を理由に都民施策の切り捨てや都政リストラを続けてきた当局の責任は重大である。都財政を一体何に使っているのか、都民にも職員にも理解できない。都庁職は「予算案」に怒りをもって反対するとともに、都民要求と都庁職要求実現のために引き続きねばり強く闘い抜くものである。

(2)小泉内閣の「構造改革」路線は借金まみれの財政を立て直すとして、国民に新たな税負担など「痛み」をおしつけ、「骨太方針2005」に基づき、「小さな政府」作りを押し進めている。石原都政はそれを先導し、「住民の福祉の増進」という地方自治体本来の責任を投げ捨て、本来行政が直接行わなければならない事業までも営利目的の民間大企業に丸投げする暴挙を行っている。さらに「重点事業」に象徴される「都市再生」の名による丸の内再開発や大規模道路建設などゼネコン奉仕の施策を推進するだけでなく、首都高速道路中央環状品川線や羽田空港再拡張など国が本来負担すべき公共事業にまで財政負担をしている。一方で福祉・医療・教育・住宅建設などの都民要求には背を向けたまま、日本経団連が提唱する「官から民へ」などの公務員削減論に基づき、都民の暮らしに密着する都立施設はすでに百カ所以上も廃止した。さらに、PFIや指定管理者制度の導入、地方独立行政法人化、アウトソーシングなどで民間資本の市場に開放し、「公」の事業からの撤退を推進するなど、都民要望に応えない都政のあり方は決して許されるものではない。都庁職は、こうした石原都政の地方自治体行政の破壊に断固反対するものである。
 
(3)都庁職は、これまでも数次にわたって都財政再建の提言をおこない、臨海副都心開発や丸の内再開発での超高層ビル建設など「都市再生」による、大企業本位の大型開発事業投資の都財政運営を抜本的に見直すことで、自治体本来の責任を果たし得ることを具体的に提言してきた。
 都当局は、石原知事が「財政再建に一つの区切り」とする今日、景気や業績の回復による大幅な都税収入の増加についても、本来都民の暮らしのために使うべきであり、都政の第一線で働いている職員の声を集大成した都庁職の提案に真摯に耳を傾け、都民の生活や雇用を守るために、その実現を直ちに具体化すべきである。

 @ 「都市再生」の名による都心部乱開発、大型幹線道路建設、臨海副都心開発等の都財政悪化や環境破壊を招くような不要不急の大型公共事業を停止または延期し、「実質的投資総額」(投資的経費+公債費)を抑制すること。
A 首都高速道路中央環状品川線や羽田空港再拡張などは、国が本来負担すべきものであり、負担を取りやめること。
B 国直轄事業負担金等、国に強制された出費を一時停止すること。
C 都税収入の増加などの財源を活用して、福祉への投資や修復型公共事業で雇用を創出し、景気回復を図ること。
D 国からの税源移譲等地方税財政制度改善と都財政自立のための対策をおこなうこと。
E 新規都債の抑制と低利借り換えの実現による公債費負担の軽減を図ること。

(4) 都庁職は都民本位の都政実現をめざして、昨年5月以降06年度予算人員要求の取組を開始し、予算編成に係わる基本要求や各支部・各職場から積み上げられてきた様々な要求の実現を求めてきた。また各支部の協力を得ながら職場・分会からの要求を集約し、各局要求が提出されるまでに行われる支部・局交渉を重視しながら、総務・財務局長査定までの間に、「検討小委員会」で協議を求めるとともに、各支部要請や交流集会・決起集会、早朝宣伝、全組合員署名、ステッカー闘争などの取り組みを行ってきた。
 とりわけ昨年11月に明らかになった耐震強度偽装問題は要求書を提出し、建築行政の規制緩和・民間開放が企業利益優先、人命軽視の事態をうみだしたことを指摘してきた。あわせてアスベスト対策の予算化や福祉・医療・教育など、都民生活を支える都民施策の充実に都政の重点を置くよう主張し、自治体が責任を持って対応する体制をつくるよう要求してきた。
 同時に当局の「管理運営事項」を理由とした取り扱いが強まる中でも、都政リストラを許さず事業に責任がもてる執行体制を確保するため、査定作業がすすんだ11月以降は、要請行動や検討小委員会で各支部の重点要求の実現を強く求めるとともに、歯止めなき定数削減に反対してきた。
 しかし当局は、こうした道理ある要求に答えず「第二次財政再建プラン」や「第二次都庁改革アクションプラン」を着実に実行するとの姿勢をとり、これにとどまらず11月29日に「行財政改革の新たな指針」を発表し、小泉「構造改革」路線と軌を一にした、極限までの都政リストラと少数精鋭の都政運営を進める方針を打ち出し、「予算原案」の発表と定数通告を行った。
 都庁職はこのように一方的で、都民・職員を無視する当局の「予算案」や、大幅職員定数削減に対して、満身の怒りをこめて抗議するものである。引き続き都議会第1回定例会をにらみながら、以下の点を基本として都民要望に応える予算編成を求め、全面的な都政リストラ攻撃に組織一丸となって反対し、都民とともに取り組みをすすめる。

 @ 小泉「構造改革」路線と連動して、都民にさらなる「痛み」を押しつけながら「重点事業」に見られるような大型公共事業を中心とした予算編成や都政運営に反対し、福祉予算をはじめとした都民生活に潤いを与える暮らし関連予算等に重点的に力点を置く予算編成を求める。
A 都当局の、予算・人員に関わる重要な課題は、職員の労働条件そのものに直接影響を与えるものであり、労使協議の対象としない「管理運営事項」とする態度を改めさせ、具体的協議ができるよう取り組みを強める。
B 石原知事誕生以来の6年間におよぶ1万1,526人(実質1万2,306人)の定数削減を許さず、都民サービスに応えるための、職場実態に見合った職員定数配置を求めて取り組みを強化する。
C 来年に都知事選挙を控えている。憲法の理念と精神にもとづく地方自治の本旨の実現である都民本位の都政を実現するため、「憲法を命がけで破る」とまで公言する石原知事が推進する都政の実態を白日の下にさらし、広範な都民と連携しながら取り組みを強める。また、新たな課題や財政問題に対しては学者・研究者の協力を得ながら闘いの理論的裏付けを強固なものにする。

以上
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