1. |
前文では、経済が明るい展望も広がりつつある一方で原油の高騰など懸念材料もある、都財政は着実に財政再建の歩みを進めているが、赤字決算、隠れ借金で楽観できない、という「良いが、先行きが心配」という経済情勢分析をベースに、都政には先駆的な施策を推進しながら東京の活力を維持、向上させる役割があることと、強固な財政基盤の確立、第二次財政再建推進プランの確実な達成を強調して、以下の2点を基本方針として示しています。
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内部努力、スクラップ・アンド・ビルドの徹底、臨時的な財源対策抜きの予算編成、財政構造改革の着実な推進 |
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現下の都政の緊急課題に限りある財源を重点的効率的に配分し都民の負託に応える |
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2. |
経費については、A経費(政策的判断の対象とならないもの)とB経費(A経費C経費以外)について、特例的な扱いはあるものの、平成17年度予算額の範囲で所要額を見積もることというシーリングをかけ、重点事業(C経費)のうち新規事業に係る経費についてはシーリングの対象外とするとしています。また、経費の算定に当たっては、従来の方針通り原則として事務用の備品購入は停止、印刷製本費、通信運搬費については節減としています。 |
3. |
職員定数については、第二次財政再建推進プランの定数削減目標(3年間で4000名=既に2年間で3667名削減!)を確実に達成するだけでなく、組織の効率化や事務事業の見直し、内部管理事務の統廃合やアウトソーシングの活用でより踏み込んだ取り組みを行い削減を図ることとしています。 |
4. |
東京都監理団体については引き続き徹底した内部努力求めるほか、団体に対する財政支出を確実に削減するよう求めています。また、地方分権を推進する観点から区市町村に対する補助金の見直しを徹底するように求めています。 |
5. |
庁舎の新築や改築など、新規の施設建設は原則として停止することとしています。 |
6. |
情報システムについては、費用対効果を検証し、廃止を含め抜本的に見直すこととしています。 |
(1) |
予算見積もりに関する副知事依命通達では、17年度予算の枠内というシーリング(ゼロシーリング)がかかっているものの、24年ぶりにマイナスシーリングが回避されています。好調な税収や本年度予算が特別な財源対策無しに組まれていることから当然といえますが、予算の枠以外は第二次財政再建推進プランの目標を達成するという、都民施策の充実よりも財政確保優先の従来方針を踏襲しており、長期にわたる緊縮予算で疲弊した職場、業務を立て直し、都民要求に応えた施策を行うには不十分かつ逆行する予算編成方針と言わなければなりません。 |
(2) |
庁舎の新築・改築原則停止方針は、今回で9年連続となります。今回の財務局の「都財政が直面する課題」のなかで、いみじくもバブル期に建設した大規模施設の施設設備更新費が膨大な額に登ることを強調していますが、築後40年となるような多くの事業所の建物が改築されないまま放置されている現実に知らぬ顔では済まされません。また、今回の副知事依命通達では、老朽化した庁有車など備品類もそのまま放置されます。当局が、来年度から公会計制度改革と称して複式簿記を導入するのであれば、減価償却の考え方に基づく都有財産の適切な更新計画を軌道に乗せるのでなければ辻褄があいません。 |
(3) |
予算見積もりに関する副知事依命通達、「都財政が直面する課題」共に、相変わらず、「隠れ借金」が9000億円あること、昨年度一般会計の実質収支が赤字(255億円)の見込みであることを強調していますが、「隠れ借金」の中身は貯金(減債基金の積立)が出来ないこと、他会計(同じ東京都の財布)からの借入、事業欠損(市街地、多摩ニュータウン)であり、借金であることを強調するような内容ではありません。特に取り上げている、多摩ニュータウン事業の欠損1000億円が来年度資金ショートとなるのは、事業収束を都が決め、そのための財政上の処理を行なうに過ぎません。また、昨年度の都税収入は最終補正時点より500億円程度の増収となっており、そのまま収入増としておけば実質収支が赤字にならないものを、基金などの積立(貯金)を増やして名目上の赤字をつくったのが実態です。いずれにしても、借金、赤字の強調は、都庁職が再三指摘してきたように、当局がリストラを進める上で都財政危機を強調したいための「逆粉飾」でしかありません。 |
(4) |
「重要施策2006(仮称)」の策定に関する副知事依命通達では、これまで実施されてきた重点事業を検証することと、設定する重点事業については3年先までの展開・方向性を明らかにすることとされています。確かに、これまで実施されてきた重点事業については、重要であるかどうか疑問な事業もあったことから、検証が必要なことは言うまでもありません。しかし、結果として重点事業を絞り込むことになれば、すべての事業がシーリングの枠内に閉じこめられることになり、重点事業自体が意味を失います。 |
(5) |
「都財政が直面する課題」の前半「都財政の現状と課題」では、7項目の今後の都財政圧迫要因を列挙し、いかに今後も引き続き厳しいかを強調しています。確かに、小泉内閣の三位一体改革の議論の過程で、都道府県で唯一の地方交付税不交付団体である東京都の一人勝ち論がささやかれ、財務省と総務省が東京都から財源を召し上げる考え方に立って、法人事業税の分割基準の見直しが行われたのは事実のようですし、国民健康保険制度にいつのまにか高額の都道府県負担が盛り込まれていて、この部分では極めて大きな問題であることは我々も否定しません。しかし、「大規模施設更新費の増大」や「職員の退職手当の増大」は、当局自らが実施してきた施策の結果や、従前から国全体が抱える問題として認識されてきた事柄です。都が以前から対応策を準備してこなかったとすれば自らの失策でしかありません。また「隠れ借金」論は(3)で指摘したように、財政危機を強調するために当局が編み出した議論です。「都債利払い費の増加リスク」は新たに登場した議論で、あり得る話だとは思いますが、そこまでいうなら1000億円出した「新銀行東京」の今後のリスクにふれるべきです。更に、「区市町村に対する支出金」が多いことや増加しているということだけで問題にしていますが、それは国が行っている都に対する仕打ちを、都が区市町村に対して持ち込むに等しいやり方であり、到底認められません。 |
(6) |
「都財政が直面する課題」の後半「都区財政調整制度の課題」は、これまで都と区の間で持たれてきた「都区財政調整協議会」の議論を整理し公表したものと考えられます。来年4月から、清掃関係職員の身分が完全に区移管となることを踏まえて、清掃関連経費は当然まな板に乗せざるを得ませんし、大都市事務についての都区の見解の違いも調整が必要と考えられます。今回こうした課題が公表されたことは評価できますが、内容を見る限り区の主張に都は一歩も引く考えを見せていないことから、議論は長引くと考えられます。組織同士の考え方をぶつけることは否定しませんが、「一銭でも金を離したくない」という立場で議論が長引くことは不毛ですし、「都民の利益を優先に」という、共通の認識で自治体本来の立場に立った議論と解決が求められています。 |