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「2013年度予算」に関わる副知事依命 通達等に対する都庁職の見解と態度
2012年8月9日
東京都庁職員労働組合
1.はじめに
7月26日、東京都は「平成25年度(2013年度)予算の見積りについて」(副知事依命通達)、「平成25年度(2013年度)予算第一次経費の見積書の作成について」(財務局長依頼)、「平成25年度(2013年度)組織及び職員定数計画並びに東京都監理団体職員配置計画の策定方針について」(総務局通知)、「平成25年度(2013年度)組織改正計画及び所要人員計画の作成について」(総務局人事部長依頼)、「『2020年の東京』への実行プログラム2013(仮称)策定方針」(知事決定)など、来年度予算編成に関わる一連の文書を公表しました。
これらは予算編成・定数査定に関わる方針であり、都庁職の2013年度予算人員要求闘争にも重要な影響を与えることから、ここに見解と態度を明らかにするものです。
2.公表された文書の概要
(1)「平成25年度(2013年度)予算の見積りについて」(副知事依命通達)
「依命通達」前文では、経済の動向について欧州債務問題や長引くデフレ等依然として厳しい状況であるとして、リーマンショックを短緒として平成20年以降4年連続して減少を続けている都税収入について、先行き不透明で、確たる見通しを持つことは困難だとしています。そのうえで、都政の方向性については、「高度な防災機能を備えた都市とするための取組を強化」」「少子高齢化対策をはじめとする都独自の先進的な施策」「都市インフラ整備、産業の活性化」等着実に推進し、「首都東京から日本の再生を牽引していかなければならない」と強調しています。
都政に課せられた使命を確実に果たしていくための財源確保としては、@従来にも増して創意工夫を凝らし、徹底的に無駄を排除し、施策の効率性や実効性を向上させる取組を徹底する。A事業評価や新たな公会計の視点を一層活用しつつ、事業の成果や決算状況の分析・検証を更に徹底する。B都債や基金を計画的かつ戦略的に活用することにより、財源確保・財政の健全性を堅持し、都政の諸課題に対処する。C法人事業税の暫定措置の確実な撤廃に向けて、働きかけを続ける、としています。
予算については、「財政環境の先行きを見通すことが困難な中にあっても、財政の健全性を堅持しつつ、都政に課された使命を確実に果たしていく予算」と位置づけて、「全ての施策について必要性・有効性を厳しく検証し、効率的で無駄のない実効性の高い施策の構築」を求めています。
具体的な経費の見積りについては以下の方針を示しています。
@ 全ての施策・実施体制について事後検証を一層強化し、必要性や有益性等を厳しく吟味し、必要な見直し・再構築を確実に行うこと。経費の見積りはコスト縮減、過去の決算や執行状況の分析・検証を行い、事業評価はこれまで進めてきた取組を不断に徹底し、監査結果を活用した見直しなど、その取組を強化すること。
A 「『2020年の東京』への実行プログラム2013(仮称)」については、策定方針案に基づき、案を作成し、必要な経費を要求すること。要求にあたっては事業の効率性・実効性等について、事業評価の取組を強化すること等で、十分に分析・検証を行うこと。
B 防災力の強化など新たな課題については、「東京都防災対応指針」などを踏まえ、必要な経費を要求すること。
C 義務的経費については、過去の決算等の分析・検証を踏まえて精査し、必要な所要額を算定し、これを見積額とすること。自律的経費については、経常的・定型的な事業に対し各局が自主的・自立的な見直し・再構築を行い、十分に精査して平成24年度予算額の範囲で見積もること。政策的経費については、事業の必要性などの検証をあらゆる角度から徹底して行い、原則として平成24年度予算額の範囲内とするが、これにより難いときは、事前に財務局と調整し、必要な経費を要求すること。指定事業費については、別途財務局が指定することとし、事前に財務局と調整の上、必要な所要額を算定し、これを見積額とすること。
D 新規事業等については、施策のスクラップ・アンド・ビルドの観点から既存事業の見直し・再構築を前提として経費を見積もること。新規事業は原則として期限を設定、既存事業も可能な限り終期を明記すること。
職員定数については、事務事業の見直しや、アウトソーシングの推進などで削減をさらに求め、多様な雇用形態を活用し、スリムで機能性の高い強堅な執行体制を構築することとしています。
監理団体については、存在意義の検証と不断の見直し、多様な視点から経営改革を推進するよう適切な指導監督を行うこと、事業評価の取組を強化、補助金や委託内容・方法の検証を行い所要額を見積もることとしています。さらに、引き続き監理団体以外の団体への財政支出についても事業評価の対象としたうえで、所要額を見積もることとしています。
各種補助金については、必要性の検証、区市町村との役割分担、費用対効果等適正化の観点から精査・検証し、積極的に見直すこと、区市町村への財政支援は地方分権推進の観点から補助金の整理合理化、補助率の適正化等積極的に見直しを図ることとしています。
庁舎など施設の新築・改築、耐震化については、「主要施設10カ年維持更新計画」に基づく整備の必要性の検証、また、施設管理運営等については、民間活力の適正かつ積極的活用で効率的執行体制の実現を努めることとしています。
情報システムについては、有効性の乏しいシステムの廃止、既存システムの維持管理費の一層の削減、システム構築は対象業務の精査等費用対効果の検証が強調されています。
歳入の見積りについては、@都税収入の確保、A国庫支出金については合理性の追求と都の施策に必要なものについて積極的な確保、B使用料・手数料の適正化、C未利用財産の活用など財政収入の確保、D一層の債権管理の適正化による収入確保、E積極的に施策展開を行う取り組みについては、充当可能な基金の活用に努めることなどを掲げています。
(2)「平成25年度(2013年度)組織及び職員定数計画並びに東京都監理団体職員配置計画の策定方針について」(総務局長通知)
東京都は定年期職員の大量退職が続き、国全体では総人口の減少、少子高齢化の進行等による労働力の供給が制約されるなかでの職員確保の厳しい環境に触れながら、一方で「2020年の東京」計画を基本にした施策の着実な推進が求められていることを強調しています。そのために、引き続き徹底した内部努力を行い、限られた人材の有効活用をしながら、迅速的確に対応しなければならないと強調しています。
具体的には、@事業全般の徹底した検証で、事務事業の廃止、区市町村との役割分担見直し、A民間委託の一層の拡大、非常勤職員、人材派遣・任期付き職員等積極的な活用、指定管理者制度・地方独立行政法人制度など多様な経営改革手法の活用、B管理や企画部門の事務処理の集中化、組織再編など抜本的見直し、C平成22年度管理職制度改正(部課長級のスタッフ職原則廃止、執行職に統合、名称統一他)を踏まえたポスト設定、D事業のスクラップ・アンド・ビルドの徹底を図り、引き続き着実に職員定数を削減、E「『2020年の東京』への実行プログラム2013(仮称)」事業案についての精査した組織・人員要求、F地方行政独立法人等について、固有職員の人材育成の推進と都職員派遣の計画的解消、G監理団体は、事業の不断の検証と補助及び委託内容、方法の必要な見直しの上で商用人員を見積もること、としています。
(3)「2020年の東京(仮称)」への実行プログラム2013(仮称)策定方針(知事決定)
東京都は、昨年発生した東日本大震災を受けて、それまで都政運営の基本方針としてきた「10年後の東京」計画の充実・強化を図る必要が生じたとして、昨年12月に「2020年の東京」計画を策定しました。計画の柱は、@防災対策の強化、Aエネルギー政策の推進、B国際競争力強化の3点としています。さらに、2020年オリンピック招致を掲げ、「2020年の東京」で描く都市像の着実かつ迅速な具体化を図ることが重要としています。3か年のアクションプラン「実行プログラム2012」に着手しているが、事業展開の更なる具体化、取組の加速、東日本大震災を踏まえた被害想定の見直しやエネルギーの需給安定化に向けた国の動向等新たな社会状況の変化を踏まえた対応として「実行プログラム2012」を改定し、「実行プログラム2013」を策定するとしています。
具体的方針は、@計画期間を平成25年度(2013)から平成27年度(2015)の3か年とし、3年後の到達目標、事業費総額及び年次計画を明示し、A「2020年の東京」で掲げた目標の達成に向け、今後3か年で加速して進める取組を積極的に取り上げ、集中的・重点的に施策を展開する。B年内を目途に策定する。
事業案の作成については、@知事本局と十分に調整の上、新規性・先進性を持つ取組や重点的に実施すべき取組を事業案として作成、A特に「『2020年の東京』を支える12のプロジェクト」の取組を加速させる事業案を積極的に作成、B都政の重要課題は、関係局で連携し、局をまたいだ施策事業案の作成、C真に実効性の高い事業案の作成、D都庁内外の意見・要望等の十分な聴取の上、事業案を作成、としています。
さらに、事業費等については「実行プログラム2013」で選定する事業については、予算・人員等を優先的に措置するとしています。
(4)そのほかの文書の特徴
依命通達と同時に公表された総務局人事部調査課からの「2013年度組織改正計画及び所要人員計画等について」では、病休者の増大や育児時間制度取得者等への対応として、昨年同様に人材派遣活用を行うとしています。また、再雇用職場の設定に関わる指示は昨年同様15%削減、不在となった職場は原則見直しだが、やむを得ない場合は代替措置(臨時・非常勤・委託等)要求できるとしています。
総務局人事部長依頼の「2013年度法人職員配置計画の作成について」は、都職員を派遣している地方独立行政法人と特定非営利活動法人を対象に、配置計画の作成が求められています。内容は昨年と同様ですが、職員定数に係わる総務局長通知では、引き続き地方独立行政法人などの都派遣職員を必要最小限にすることと、その計画的な解消を指示しています。
3.都庁職の見解と態度
2012年度東京都予算は、「『2020年の東京』実行プログラム2012」で選定された事業を含めて「大型公共事業」に重点的に予算配分を行い、経常経費については、一部義務的経費を除いては軒並み抑制するという、これまでと同様の「投資的経費」に偏重した予算編成となっています。東日本大震災を受けて、新たな都政の方向として、防災対策の強化、エネルギー政策推進、国際競争力の強化を柱に掲げ、さらに「日本の再生を牽引する」ために、2020年オリンピック招致を方針とする都政運営は、石原都政12年間で連綿と行われてきた大企業の利益を優先する都市基盤整備・都市再生事業のさらなる継続であり、福祉・医療・教育・雇用・住宅など公共サービス事業の縮小と民営化の推進であることが明白となった予算編成でした。都庁職は、都民・職員不在の予算編成、定数査定を断じて許さず、来年度予算編成に向けた取組を直ちに開始する方針を明確にしました。
@ 副知事依命通達他一連の文書は、基本的にこれまでの方針を変更せず、財政環境の先行き不透明性や厳しさを強調しながら、経費については、平成24年度予算額の範囲内で見積もることとし、ゼロシーリングを8年連続で継続する一方で、「2020年の東京」計画に係る事業、2020年オリンピック招致等も理由にした都市基盤整備や都市再生に関する事業については予算・人員を優先的に措置するとしています。
7月26日に公表された2011年度(平成23年度)都税収入決算見込み額は、前年度比19億円減で4年連続減収となりました。活用可能な基金残高は2008年から減少し続け、1兆円を割り込んでいます。
都民の生活を取り巻く環境は厳しさを増しており、完全失業率は昨年より0.4ポイント下げたものの依然として4.4%と高く、生活保護世帯は昨年5月時点で都民の約2.0%(26万人)、国全体で約200万人が受給しています。さらに非正規雇用率は35%を超え、賃金水準は低下し続け、貧困と格差は拡大しています。都民に対する公共サービスの充実、セーフティネットの拡大がこれまで以上に求められています。
それにもかかわらず、都民の生活に密着した施策・事業についてはコストダウンと事業評価の徹底による見直しやスクラップ・アンド・ビルドを徹底し、地方独立行政法人化や民間委託の拡大を推進する方針は、職員が築き上げてきた都民施策の水準を低下させ、都民の財産ともいえる福祉や医療施策を切り売りし、都民の血税を大型公共投資に注ぎ込むものであり、断じて許すことはできません。
A 職員定数については、石原都政の13年間で、知事部局の職員は約1万人削減された(清掃区移管を除く)にも関わらず、今回も事務事業の見直しやアウトソーシングの推進など、業務執行方法の改善を進めることにより引き続き着実に定数削減を図れとしています。大幅な定数削減は、業務の円滑な遂行に支障を来たし、仕事の継続性は分断され、組織の連携が壊されたことで、事務の非効率や矛盾を生み出し、慢性的超過勤務の増加により健康破壊も進んでいます。また、非常勤・人材派遣など「多様な雇用形態の活用」、民間委託やアウトソーシングの推進が組織の安定的な運営を阻害し、職員の大量退職の影響もあり、知識や技術・技能の継承が大きな課題となっています。
行政の執行体制や現行水準の確保は危機的状況に陥っている、ギリギリの状態だといっても過言ではありません。
直ちに職場実態を直視して、民間委託推進を中止し、現業職員の退職不補充を改め、事務事業に必要な人員の適正な配置を行わせなければなりません。
B 石原都知事は、平成24年度都議会第二回定例会の所信表明では、第一に「日本のために東京が行動を起こす」として領土問題を含めて、これまでの主張以上に国家防衛の観点を打ち出し、本来自治体の役割ではなく、国の専管事項である防衛について、あたかも東京都の役割のごとく行おうとしています。その一方で、エネルギー問題の根本的課題である原発再稼働の是非を求める都民投票については「センチメント」として切り捨てました。
高度防災都市の構築・防災対策強化・都民の安全・安心について着実に施策を実行するためには、都民の置かれている状況を直視し、行政の執行体制の危機的状況を把握し、都民や職員の要求に耳を傾け、これまでの都政運営を根本的に転換することが必要です。
「依命通達」をはじめとする来年度予算に係わる一連の文書は、都民生活に密着した、きめ細やかな行政や、仕事に誇りを持ち、豊かな人材に支えられた生き生きとした行政の推進とは逆の方向を示しています。都政が地方独立行政法人化・民営化・指定管理者制度導入など、公的責任を投げ捨て、全ての事業を民間に任せるような職員定数削減、大企業だけが儲かる都政リストラに強く反対し、都政が地方自治体本来の役割を果たすため、都民サービスの向上、都民生活改善に向けた積極的な施策展開を行うことを求めます。都庁職は職場の第一線で働く各職場の意見や要求に基づく2013年度予算人員要求実現の闘争を、都民の理解を得ながら、各支部と共に断固として闘いぬく決意です。
合わせて都民本位の都政を確立するために、奮闘していきます。
以上
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