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伊ヶ谷地区海上より見る三宅島 撮影2003年4月10日三宅支庁提供
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見解
 

「2020年の東京」及び「実行プログラム2012」に対する見解


2012年2月23日
都庁職執行委員会


はじめに

 東京都は、昨年12月22日に新たな長期計画となる「2020年の東京」及びその実現に向けた3ヵ年のアクションプランである「実行プログラム2012」を発表した。この長期計画は、今後の都政運営の基本となるものであり、予算編成にも大きな影響を及ぼすものであることから、都庁職としての見解を明らかにするものである。

1.「2020年の東京」の概要

 「2020年の東京」は、昨年3月の東日本大震災の教訓を踏まえ、これまでの防災対策を抜本的に見直し、高度な機能を備えた災害に強い東京を創造するとし、昨年5月に発表した「都政運営の新たな戦略」に基づき、東京が大震災を乗り越え発展を続け、日本を牽引していく道筋を提示するものとして策定されたものである。
 東京都は、「2020年の東京」の策定の経緯について、これまでの長期計画である「10年後の東京」計画が計画期間の半ばを迎え、東日本大震災により、安定的な電力確保をはじめ首都圏直下型地震や東海・東南海・南海の三連動地震に対する懸念の高まりなど従前の枠組みでは対応しきれない新たな課題が浮き彫りになったとし、政策の充実・強化を図る必要性が生じたとしている。
 具体的には、「10年後の東京」計画の理念と基本的な考え方を継承し、掲げた政策を着実に推進していくとともに、新たな課題として、防災対策の強化やエネルギー政策の推進、国際競争力の強化を政策強化のポイントとして掲げている。計画の目標は「10年後の東京」計画で掲げられた8つの目標を再構築したものであり、基本的な枠組みに大きな変更はないが、「防災都市の実現」や「エネルギー政策」を目標の第1、第2に位置づけ、重点施策としての姿勢を示したことや目標の達成に向けて、今後10年間で戦略的に展開していく取り組みを「2020年の東京を支える12のプロジェクト」として明示したことが大きな特徴となっている。このプロジェクトの半数近くが「防災対策」や「エネルギー政策」に関する施策となっており、ここでも重視する姿勢が示されている。
 政策強化のポイントの第一である「防災対策」では、建築物の耐震強化や木造密集地域の解消などの震災対策に集中的・重点的に取りくんでいくとともに、ハード面の対策に加え、自助・共助の気運を高め、新しい共助の仕組みを構築するとともに、行政・企業・都民・国民が連帯して帰宅困難者対策に取り組む体制づくりや通信基盤の拡充など重層的・複合的な防災対策の推進を掲げている。具体的には、木造密集地域における主要な都市計画道路の整備や延焼遮断帯内側の市街地の不燃化の推進、「防災隣組」の構築などの政策を展開するとしている。
 第二の「エネルギー政策」では、遠隔地の大規模発電所からの送電に過度に頼り切ってきたエネルギー供給システムの脆弱性が露呈したとし、天然ガス発電所の設置や自立・分散型発電の拡充、戸建住宅30万戸への太陽光発電の整備などにより、300万キロワットの電力を創出するとしている。
 第三の「国際競争力の強化」では、外国企業の事業活動拠点としての地位を喪失しつつある日本の現状を打破し、グローバル企業のアジア統括拠点と研究開発拠点の誘致により、日本を「アジアの拠点」として復活させることが必要であるとし、大胆な規制緩和や税制支援等の措置を総合的に実施する「総合特区制度」と国際競争力強化に資する民間開発を誘導する「特定都市再生緊急整備地域」を一体的に活用し、外国企業を500社以上誘致し、国内中小企業とのコラボレーションにより、新技術、新サービスを創造し、東京をアジアのヘッドクォーターへと進化させることにより、日本全体の再生につなげていくとしている。

2.「実行プログラム2012」について

 「実行プログラム2012」は、「2020年の東京」で描く都市像の実現に向け、各施策の高い実効性を確保するための3ヵ年のアクションプランとして策定されたもので、3年後の到達目標と3ヵ年の事業展開が明らかにされている。「実行プログラム」については、施策の進捗状況や成果を随時、点検しながら毎年度改定するとしており、「10年後の東京」計画における「実行プログラム」と同様の手法をとっている。
 事業規模は、22施策、370事業(うち新規84事業、改定87事業)で、2012年度から2014年度までの3カ年の事業費総額は、2兆1,700億円、そのうち2012年度は7,500億円となっている。事業費総額で最も多いのは、約3割を占める防災対策の3つの施策で7,540億円、次いで、三環状道路をはじめとする幹線道路の整備や東京港の整備、豊洲新市場の整備を中心とする臨海地域の強化など国際競争力を口実とした都市開発、インフラ整備に係る2つの施策で7,370億円となっており、この5つの施策で事業費総額の7割を占めている。一方で、都民生活に関わる分野では、「少子高齢化社会における都市モデルを構築し、世界に範を示す」とし、少子化打破に向けた保育サポートや高齢者対策、障害者支援、医療の基盤整備等の施策を打ち出しているが、事業費は2,220億円で、約1割しか措置されていない。
 また、目玉事業である「防災対策」や「エネルギー政策」では、震災時の活動拠点となる災害拠点病院や学校の施設、社会福祉施設など防災重要な建築物の耐震化については、3カ年でほぼ完了する計画が示されているが、緊急に対策が求められている木造密集地域の不燃化・耐震化の目標達成時期は曖昧であり、電力300万キロワット創出の達成時期も明示されていない。

3.都庁職の見解

 「2020年の東京」は、東日本大震災の教訓を踏まえ、防災対策とエネルギー政策を強化したとしているが、計画期間をオリンピック開催に合わせたことでも明らかなように、2020年オリンピック招致を機軸に据えた大型開発優先、大企業の企業活動の活性化による「都市再生」をめざすものである。
 東京の国際競争力強化を口実に、3環状道路の整備や東京港の巨大港湾化に向けた整備、2014年の開場をめざす「豊洲新市場」の整備を中心とする臨海地域の強化などに、3カ年の総事業費に3割を占める7.370億円を注ぎ込んでいる。さらに、東京をアジアの拠点化とすべき「ヘッドクォーター事業」では、2016年度までに、業務統括拠点・研究開発拠点となる外国企業を50社以上、その他の外国企業を500社以上誘致するとし、誘致企業には、総合特区制度を活用し、法人実効税率の引き下げや地方税を全額免除するなど膨大な税金を投入するものとなっている。
 一方で、都民生活に関わる分野では、保育や高齢者対策でも家庭や社会全体での支援が強調され、医療の基盤整備でも、NICU(新生児集中治療管理室)の増床や看護職員不足の解消に向けた取り組みは提起されているが、災害時の拠点として重要な役割を果たす都立病院の拡充等はなく、また、強化されたとされる「防災対策」や「エネルギー政策」でも、緊急に対策が求められている木造密集地域の不燃化プロジェクトでは、幹線道路等の整備に重点が置かれ、住民の要望を踏まえた街づくりへの視点に乏しく、耐震改修助成の拡充もなく、被災者の受け入れで重要な役割を果たしてきた都営住宅の拡充もされないなど行政が果たすべき役割を縮小する極めて不十分な対応と言わざるを得ないものである。
 いま、大都市に求められているのは、都民が生き生きと暮らせる都民生活に根ざした「街づくり」であり、自然と共存し、地球環境や景観にも配慮しながら、福祉・教育・住宅・雇用などの生活基盤を安定させる施策を充実させ、真に成熟した都市としての「21世紀の都市モデル」を確立する必要がある。
 「2020年の東京」で、欠落しているのは都民の生活である。石原都知事は、「東京から21世紀の都市モデルを発信し、世界に誇る都市へと進化させる」と表明している。しかし、「実行プログラム2012」では、都民が抱えている今後の生活の不安を解決する施策に対する事業費は、約1割にすぎない。生活文化局の都民生活に関する世論調査(2011.11)では、「健康・病気」「老後の生活」「今後の収入」「介護」が上位を占めている。大型公共投資と大企業利益を優先した「成長戦略」によって、「21世紀の都市モデル」が完成するまでは、都民の抱えている生活不安については、自己責任・自助・共助で解決せよというのだろうか。「2020年の東京」の描く都市基盤整備を中心とした計画が、格差拡大と雇用不安、少子高齢化対策をはじめとする生活不安を解決する都民を重視した施策として策定されたとはいえない。また、将来のエネルギー戦略についての都知事の発言は、「原子力はエネルギーの有力な要因」だと主張し、都民を含めて全国民が原発政策の見直しや安全対策を求めていることに背を向けている。本質的な問題に背を向けて、「東京が大震災を乗り越え日本を牽引する」ことも、「世界を代表する大都市」として発展していくことも困難と言わざるをえない。
 都庁職は、石原都知事の都民の生活を顧みず、自治体行政を独善的に運営しようとする姿勢に反対し、地方自治体の果たすべき役割と責任を全うしていくために、今後も各支部と協力し、予算・人員闘争をはじめとしたあらゆる取り組みで都政運営を正していくために奮闘するものである。
 
以上

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