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伊ヶ谷地区海上より見る三宅島 撮影2003年4月10日三宅支庁提供
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見解
 

2012年度「東京都予算案」「職員定数」等に対する見解と態度


2012年2月9日
東京都庁職員労働組合


1.はじめに

 東京都は、2012年1月20日、「平成24年度東京都予算原案」(以下「予算原案」)および「平成24年度職員定数等の概要」「平成24年度東京都監理団体所要人員計画の概要」を発表し、さらに同日「平成23年度最終補正予算案」(以下「補正予算案」)も発表した。その後、200億円を財源とする復活予算を経て、1月27日「平成24年度東京都予算案」(以下「予算案」)を発表した。
 石原都知事は、「予算原案」について、「将来を見据えて強固な財政基盤の堅持に心を砕いた『総額抑制・重点的配分予算』」と称して、「全体の支出を抑制する一方、経済への波及効果の高い投資的経費など、真に必要な施策を厳選して、限られた財源を重点的に配分した」と説明している。
 予算原案発表に先立ち、昨年12月22日に発表された「2020年の東京」計画は、東日本大震災の発生を受けて「10年後の東京」計画を充実・強化し、「大震災を乗り越え、日本の再生を牽引する」を副題として、2020年オリンピック招致も照準にしながら新たに「高度な防災都市」「エネルギー政策」を前面に打ち立てた計画を策定している。しかし、本質的には「10年後の東京」を踏襲した、経済の低迷に対する公共事業投資の膨張による経済活性化を眼目とした「都市基盤整備」「都市再生」「インフラ整備」を中心に据えた大企業の利益を優先する政策であることに変わりはない。
 東日本大震災、ヨーロッパの債務危機、歴史的な円高の影響等で平成19年度を頂点にして都税収入は5年連続で減少を続けている。「予算案」は、厳しい財政環境を強調しながら、「施策の効率性や実効性を向上させる取組を徹底し、歳出総額の抑制を図る」として、一般歳出全体は前年度比1.3%減とし、貧困と格差が拡大する都民の生活に直結する福祉・医療・教育・住宅など経常経費については一部義務的経費を除いて軒並み抑制し、その一方で投資的経費については、前年度比0.2%増で8年連続の増とし、「『2020年の東京』への実行プログラム2012」で選定された事業を含めた「大型公共事業」に重点的に予算配分を行うものとなっている。大震災をも利用して「投資的経費」に偏重した「予算案」は、国家や資本の危機を都民の血税で補い、都民の生活・生命を守るという自治体本来の役割を投げ捨てたものと言わざるをえない。
 職員定数では、国の35人学級実施に伴う学校職員の増員や警察・消防職員の増員により全体では34年ぶりの232人増員となっている。しかし、知事部局ではスポーツ振興局のみ17人増員で、他の局は減員あるいは差引ゼロの査定で、増減計160人削減となっている。また、公営企業も158人減となっている。
 石原都知事は記者会見で復興支援に職員が派遣されていることに関連して「東京はまだまだ人が余っている」と発言したが、職場では被災地支援のために、派遣されている職員も送り出す職員も必死で執行体制を維持し奮闘している。職員を無視した都知事の発言は断じて認められない。国の「総定数抑制方針」を先取りして、行政の市場開放と人件費削減を目的とした民間委託・民間委譲を拡大し、指定管理者制度の導入、地方独立行政法人化およびアウトソーシングなどの推進により、行政の役割を変質させ都政の「構造改革」を推し進め、石原都政13年間で19,000人を超える職員の定数削減が強行された。
 都当局は「少数精鋭」「効率的執行体制の確立」の査定方針を掲げているが、職場では恒常的超過勤務をはじめ職員への労働負荷はきわめて高く、知識と経験の継承が困難になり、円滑な業務執行を阻害し、労働環境が悪化している。自治体行政の最前線を担う職員は絶対的に不足しており、執行体制は崩壊的危機に瀕しているといっても過言ではない。
 都庁職は、都民の生活に根ざした都政運営と都庁労働者の諸要求実現を目指して、職場から積み上げた「2012年度東京都予算・人員に関する基本要求書」を都当局に提出し、その実現に向けた取り組みをすすめてきた。しかし、都当局は我々の要求に応えず、「予算案」や「定数査定」は、都政の「構造改革」による都政リストラをさらに推進し、大企業の利益を優先し都民・職員不在の予算編成、定数査定となっている。
 都庁職は、「予算原案」発表時に、「抗議声明」を出し、基本的見解と抗議の意思表明を行なった。「予算案」が確定した今日、その問題点と今後の闘いの方向を示すため、あらためて「見解と態度」を明らかにするものである。

2.「予算案」の特徴と問題点

(1)編成方針および全体フレーム
 「予算案」は、(1)厳しい財政環境が続く中にあっても、将来に向けて施策を支え得る財政基盤を堅持するため、施策の効率性や実効性を向上させる取組を徹底し、歳出総額の抑制を図る。(2)直面する難局を乗り越え、都民の安全・安心を確実に取り戻すとともに、東京の成長と発展に向けた戦略的な取組を進めるため、必要な施策を厳選し、限られた財源を重点配分するとして、都税収入の5年連続減収、経済情勢の先行き不透明感を背景にした財政環境の厳しさを前面に打ち出して「歳出抑制」を強調する一方で、「成長戦略」的施策には予算を重点配分することを編成方針としている。
 「予算案」は、全会計合計で11兆7,742億円(前年度比0.1%増)、そのうち一般会計は前年度比870億円(1.4%)減の6兆1,490億円で、昨年に引き続きマイナスとなったが、依然として6兆円を超える財政規模となっている。施策の無駄を省くとして事業評価を実施し、施策全般についてコストパフォーマンスの評価手法を導入して歳出抑制を図り、東京都児童会館の廃止や受益者負担の増等で都民サービスを低下させている。
 都政の「構造改革」や事業評価、公会計手法の活用等「効率的で無駄がなく、実効性の高い施策の構築」と、あたかも都民を尊重したかのようなポーズをとりながら、その実態は、都民福祉を低下させ、都民の財産を流用し、「2020年の東京」計画に象徴される大企業優先の予算編成であることは明白である。

(2)歳入について
(1) 来年度の都税収入見込みは、4兆1,195億円で前年度比1,010億円(2.4%)減収と見込んでいる。平成23年度当初予算では、1.7%の小幅な増と見込んだが、平成23年度最終補正予算では、当初見込みから876億円(2.1%)の減収となり、平成22年度決算と比較しても0.47%減となり5年連続で減収となっている。
 税目では法人二税について前年度比4.8%減収、固定資産税・都市計画税についても2.5%減収と見込んだ。法人二税は、法人事業税の暫定措置の影響で、平成24年度法人事業税について3,715億円減収となるが、地方法人特別譲与税及び特例加算額の合計で2,676億円が国から配分されるため、都への実質的な影響は、1,039億円減収となる。2007年を頂点として5兆円規模に達した都税収入は、07年と比較して約1兆4,000億円の減収となった。
(2) 都債は、4,935億円で前年度比354億円(7.7%)増、起債依存度は8.0%で前年度比0.7%増加している。都債については、「これまで培ってきた発行余力を踏まえ、将来の財政負担を見据えた上で計画的に活用する」としているが、微増ながら増加傾向であり、国に比較して起債残高は極めて低いと言いながらも、2012年度末残高は6.9兆円となり、対一般会計税収比1.7倍となる。都税の減収が続く中で、投資的経費の増加を止めず、借金である都債の発行を増やす方向ではなく抑制を行うべきである。
(3) 基金については、「更なる税収減に直面する中、必要な施策をこの先も着実に進めていくため、基金を適切に活用」するとして、社会資本等整備基金などの特定目的基金761億円、財政調整基金1,559億円を取り崩すとしている。平成24年度末で活用可能な基金残高は8,369億円となり、1兆円を割り込んでいる。この中には、五輪開催準備基金約4千億円も含まれているが、2008年度1兆5,743億円を頂点にして残高が減少している基金の活用については、莫大な予算配分をしている投資的経費の抜本的な見直しを検討し基金の有効な活用を行うことが求められている。
(4) 使用料・手数料については、事業評価の手法によって、受益者負担の適正化を図るとして、都立看護専門学校授業料(25年度入学から対象)を年額53,100円引き上げ、葬儀施設使用料(火葬料)を18,200円引き上げるとしている。使用料・手数料の改定・新設は合計13項目あり、全体では、初年度2.4億円減収、来年度は1.4億円減収となる。しかし、都立看護専門学校の授業料は、平成15年の大幅改定から10年間で約15万円引き上げとなり、看護師養成・確保の観点からも問題があると言わざをえない。

(3)歳出について
 一般歳出は4兆5,231億円で、対前年度比608億円減(1.3%減)となっており、「事業評価を通じた施策の検証や事業の実績等の分析による歳出の精査に徹底して取り組んだ」ことで前年度より抑制したとしている。投資的経費全体は、8,422億円で前年度比18億円増(0.2%)となり、これまでと比較すると微増だが、補助事業の事業進捗に伴う減が380億円(13.2%)に対して、単独事業は337億円(6.5%)増となっており、都市基盤整備や骨格幹線道路の整備などに財源を重点的に配備して8年連続増となっている。
 経常経費は、3兆6,809億円で前年度比626億円(1.7%)減となっており、経常経費のうち、給与関係費は退職手当の減や減額給与改定などで、前年度比105億円(0.7%)減で、連続する給与削減や定数削減により、この10年間で2,193億円、12.5%減少している。その他の経常経費は、各局に引き続きゼロシーリングを徹底して前年度比521億円(2.4%)の減となった。福祉・保健予算は増加していると説明しているが、内容は義務的経費の当然増であり、教育、雇用、環境等は軒並み減となっている。
(1) 都民生活の安心確保については、「災害対応能力の強化」「放射能対策」で新事業を114億円増額で予算化している。しかし、石原都知事の自助・共助の方針の下で、地域活動の支援と称して「隣組」の組織化や防災教育と称する精神主義・「道徳教育」を推進しようとしている。消防救助機動部隊(ハイパーレスキュー隊)強化で13億円を計上している。「放射能対策」は20億円の増で、放射線に係る情報提供の充実を新規事業としている。都知事は一貫して「原子力はエネルギーの有力な要因」として、原発推進を明言しており、「放射能に対する都民の不安払拭」を掲げているが、不安の払拭以前に、未だ収束していない原発事故による汚染拡大・健康問題など本質的問題の解決を図るための方策にはなっていない。
 「雇用就業対策」は新卒就職支援や緊急就職支援など新規事業もあるが、昨年10月時点での就職内定率が高卒41.5%・大卒59.9%(厚労省)という状況で、48億円減というのは十分な対応とはいえない。
 「子育て支援」「医療課題」「高齢者」「障害者施策」等日々の生活に大きく影響する施策については、微増乃至は横ばい、減額となっており、自己責任、福祉の自助・共助の都知事の方針がここにも貫かれている。
(2) 産業の活性化については、総額中小企業制度融資は、厳しい経営環境の中で209億円増としているが、地域の金融機関と連携した金融支援策は、前年度比171億円の減となっている。新規事業としては、「2020年の東京」計画にある「外国企業の誘致促進」「観光産業の振興」等に増額している。
(3) 都市基盤の拡充については、東日本大震災を受けて、「災害に強い都市づくり」「公共建築物などの耐震化」「木造住宅密集地域の不燃化・耐震化」「津波・高潮対策」「液状化対策」等防災を前面に押し出しながらも、都市開発・インフラ整備を中心に据えた「東京港整備」「道路整備」や臨海部開発の象徴でもある「豊洲新市場の整備」等都市基盤整備に多額の予算を計上している。
(4) 環境・エネルギー対策の推進は、福島原発事故による電力供給不足の問題等に対応する施策として地産地消のエネルギー創出や地域分散型の新たなモデルづくりに取り組むとして新規事業を附加し59億円増額とした。また、地球温暖化対策は微減だが引き続き301億円計上、「2020年の東京」に基づく「緑の創出と自然保護」については、95億円増額し482億円としている。
(5) 教育・文化・スポーツの推進については、「新たな都立高校改革の推進」に3億円計上しているが、「道徳教育推進」「都立高校防災活動支援隊の結成」は、社会規律の訓練と称して自衛隊に協力を要請する等、石原都知事の言う「破壊的教育改革」をさきどりするような計画が盛り込まれるなど、内容を注視する必要がある。
 「スポーツの振興」は、スポーツ祭東京2013(国体)の開催に伴い41億円計上、また、新規に「2020年オリンピック・パラリンピック招致推進」で20億円計上している。前回招致で149億円(都の一般財源から100億円)使われたことの検証も不十分であり、無理矢理「復興支援」とする施策は都民不在の独断専行に他ならない。
(6) 復活予算については、都民の意見を反映したかのような体裁を取りながら、例年同様にあらかじめ措置していた200億円が復活財源となっている。その結果は、「都市基盤の整備」がトップで約61億円、「区市町村の振興」は市町村総合交付金、特別区都市計画交付金等で約48億円、「福祉・保健・医療の充実」は、福祉保健区市町村補助事業57億円、特別養護老人ホーム支援事業2億円等で合計約60億円、「教育の充実」は、私学助成17億円他で合計約18億円、「商店街の活性化」は、約12億円となっている。

(4)定数査定について
(1) 2012年度職員定数は、東京都全体では34年ぶりの232人増となった。しかし、その内訳は、国の35人学級実施に伴う学校職員444人増、国の政令に基づく警察官32人増、消防救助機動部隊の整備等による東京消防庁職員74人増で合計550人が増員となったが、知事部局等職員は160人減、公営企業職員は158人減で合計318人減員、差引232人増となったものである。
 知事部局職員は、1999年4月の石原都政発足以来、財政再建推進プラン、第二次財政再建推進プラン、行財政改革実行プログラムにより、定数削減目標を定めた削減が2009年度まで強行され、この3年間、目標数値は示されないが、総定数抑制方針の下で毎年人員が削減され続けている。石原都政13年間で清掃区移管約8,000人を含めて19,000人を超える削減が行われた。都側は「少数精鋭」「効率的な執行体制」の確立を掲げ、各局所要人員要求にも徹底した精査を行い、削減を強行している。その結果、職場は恒常的超過勤務となり、人材育成も困難な中で職員への労働負荷が高まり、メンタルヘルス不全を含む健康破壊が増加している。教職員や警察官の増員と引き替えに理由なき削減を強行することは断じて認められない。
(2) 2012年度知事部局職員定数は、増員650人・減員810人で差引160人の削減となっている。主な増項目は、スポーツ振興局はスポーツ祭2013開催準備等で14人増、福祉保健局児童相談体制の強化で11人増、放射能検査体制の強化で7人増、主税局は固定資産税評価基準年度対応で7人増、病院経営本部は松沢病院の医療体制の強化で6人増となっている。主な減項目は、主税局は都税支所体制の見直しで11人減、病院経営本部は都立病院再編整備の進行に伴う執行体制の見直しで12人減、松沢病院の運営等業務の委託化で7人減、福祉保健局は児童会館の廃止で10人減、肢体不自由者更正施設の機能移転に伴う見直しで26人減、となっている。
 各局増減計では、増員はスポーツ振興局の17人増員のみで、他の局はすべて差引で減員及び現状維持となっている。現業職場の退職不補充、民間委託拡大は引き続き強行され、調理業務、道路巡回業務、市場警備業務の委託拡大が実施された。
 児童施設・老人施設・障害者施設(福祉保健局)の運営見直しが促進され、さらに「事業評価」「新たな公会計」等によるコストパフォーマンスの導入により、福祉・医療関係の都立施設をはじめとする行政の民間委託・委譲や統廃合はとどまることなく拡大され、都民サービスの低下が進行している。また、内部管理部門のアウトソーシング、事務事業の「無駄を省く」「少数精鋭」「効率的執行体制」を強制し、これ以上削減できないギリギリの職場実態を無視して削減が強行された。各局別所要人員要求は増員または現状維持で差引23人の増要求だったが、査定方針はこれを無視して「総定数抑制方針」を貫いたものになっている。
(3) 監理団体の定数については、昨年度の9,875人から10,219人へ344人の増員となり、うち団体に派遣する都職員数は2,648人で前年度比177人の減となり、引き続き固有職員の割合が拡大している。知事部局関係の主な増減事項は、既存事業の見直しで東京都社会福祉事業団の障害者(児)施設の利用定員減に伴う見直しで108人減、東京都医療保健公社の都派遣看護職員の固有振替等で50人減、都からの移管事業等による増として、財団法人東京都保健医療公社の豊島病院の病棟新規開設で29人増となっている。平成24年度予算編成方針で、監理団体については「経営の効率化、自立化の促進、補助及び委託の内容・方法等必要な見直しを行い、財政支出や都派遣職員の削減を図る」とし、「事業評価」等で委託拡大を行っている。行政直営の事業を監理団体に移行させると同時に、民間経営手法を推し進めることは行政責任を放棄し、公共サービスの低下につながるものである。

(5)組織改正について
 今後の主な組織改正は、「2020年の東京」計画に基づく「外国企業の積極的な誘致、国際戦略総合特区に係る取組の推進」で、年度途中の平成24年2月1日から知事本局に総合特区推進担当部長及び推進担当課長を設置、平成24年4月1日付組織改正は、エネルギー関連の官民インフラファンドの創設で、知事本局に「投資政策部」を設置、2020年オリンピック招致でスポーツ振興局に招致計画担当課長を設置、防災対策として都市整備局に防災都市づくり担当部長及び担当課長を設置、津波・高潮等水防対策で港湾局に水防対策担当課長を設置、健康危機管理情報の収集・解析・発信の拠点として福祉保健局で健康安全部と健康安全研究センターを再編し健康安全研究センターに健康危機管理情報課を設置するとしている。
 大きな組織改正は行われなかったが、健康安全研究センターについては、平成19年12月に平成24年度を目途にして、老朽化した庁舎の解体、新棟建築に伴い「健康危機管理センター(仮称)」として組織体制を整備する計画が進められてきた。今回の再編は、今後組織の統廃合等を含めた見直しが想定され、放射能汚染や新型感染症対策など、都民の健康管理に重要な役割を果たす施策の維持・発展を追求していく必要がある。

(6)2012年度最終補正予算案について
 都税収入は、当初予算より876億円減少し、4兆1,329億円となった。これについては減収補填債850億円の発行で対応する。また、予算執行状況の精査で事業費は1,180億円の減、その他は給与改定等で172億円減等、計1,443億円減としている。
 補正予算の規模は、全会計でマイナス664億円、今年度当初予算11兆9,016億円に対して11兆8,352億円となる。基金残高は1兆円を割り込み、平成21年度から4年連続で減少している。一方、投資的経費は右肩上がりで上昇している。堅調な都税収入に支えられ、事務事業の徹底した切り捨て、都政リストラで基金を貯め込み、大型公共投資を続けてきた都政運営の見直しが求められている。

3.都庁職の見解と態度

(1) 石原都知事が4期目の立候補を宣言した昨年3月11日に東日本大震災が発生した。
 都知事は率先して災害対策に従事する姿勢を選挙戦で展開し、これまでの都政運営に対する総括も今後の方針も明らかにしないまま再選となった。
 さらに、大地震・津波に対して「天罰」発言を行い、原発事故に対しては、持論である「原発の必要性」を一貫して展開するだけでなく、核兵器についても保有すべきだと主張している。
 石原都知事は誕生以来、「何が贅沢といえばまず福祉」と言って、全国に誇る東京都福祉水準の切下げを推し進め、「財政再建」を口実に福祉・医療・教育・雇用など都民の生活に密着した施策や事業を切り捨て、職員定数の大幅な削減と給与削減を強行してきた。さらに、都政に新自由主義に基づく「市場原理」「競争原理」「コストパフォーマンス」を持ち込み、組織や執行体制を変質させてきた。
 都政の「構造改革」、都政リストラで政策的経費を抑制し、都税収入の堅調な増加も背景にして基金を貯めこみ、「10年後の東京」計画を策定して大企業の利益を優先する大型公共事業を中心とした投資的経費を膨張させてきた。
 大震災の発生を理由に「10年後の東京」計画を見直し、新たに「2020年の東京」計画を策定し、「大震災を乗り越え、日本の再生を牽引する」として、これまでの路線を継承し、都市基盤整備やインフラ整備を中心とした公共投資に都民の血税を注ぎ込むことを計画の中心に据えている。まさに、災害対策をも口実にして都民の生活を顧みず、危機に瀕する資本主義経済の再生のために、財界・大企業の利益を優先させる路線の継続に他ならない。原発事故と真正面から向き合わず、核兵器保有を主張する姿勢のどこに都民の安全や安心を守る姿勢があるといえるのだろうか。
 都庁職は、住民の生命と生活を守ることを基礎にした自治体行政の果たすべき役割を担う立場から、防災対策をも利用して大企業・財界の利益を優先する「予算案」については断じて容認できないものであり、都民と結びついた「ひとが支える都政」の実現をめざして、引き続き奮闘していくものである。

(2)「平成24年度予算編成方針」では、「東京の成長と発展に向けた戦略的な取り組みを進めるため、必要な施策を厳選し、限られた財源を重点配分する」としている。具体的には「『2020年の東京』への実行プログラム2012」(以下「実行プログラム2012」)に選定された事業については確実に計上するとしている。「実行プログラム2012」の今後3年間の総額は約2.2兆円、2012年度は7,440億円計上されている。内訳は、震災対策も含めて「都市基盤整備」「インフラ整備」が約5,000億円で、予算額の67%を占めている。少子高齢化、障害者、医療対策は921億円で12%にとどまっている。
 3か年計画でも、「三環状道路」整備をはじめとした大型公共事業投資が約1.4兆円で、予算の60%以上を占めている。
 石原都知事は、「東京都より国が大事」と公言し、経済活性化のために多額の税金を公共事業に投入することを施策の重点にしている。「10年後の東京」計画は、2016年オリンピック招致を掲げ、オリンピック開催にふさわしい都市づくりを口実に巨額の税金を投入してきた。「2020年の東京」計画は、「大震災の痛手から立ちあがらんとする日本の再生を牽引するだけでなく、都市のあるべき姿を世界に示し、人類が抱える共通の問題を解決する縁ともなりうる」として、再度「2020年オリンピック招致」を目標に掲げている。「予算案」では、招致予算として20億円を計上した。前回の招致失敗についての総括も反省もなく、「復興支援」をも利用して都民不在の「オリンピック招致」運動を口実にして、「都市再生」という名での大規模開発に邁進する都政運営に対しては、怒りをもって都知事の財界優先の政治姿勢を改めさせていかなければならない。

(3)大規模開発を中心とした投資的経費が8年連続で増加している一方で、経常経費は8年連続で減少している。平成14年度経常経費36,806億円から平成24年度経常経費は36,809億円でほぼ同水準である。当局は平成23年度予算案の説明で、平成14年度経常経費の割合で給与関係費が約12%減、その他は約13%増で、総額は横ばいでも都民施策は増えているというグラフを示している。
 しかし、投資的経費は平成14年度から約26%増となっている。また、経常経費については福祉予算における義務的経費の当然増が含まれている。給与関係費は、連続して給与が引き下げられ、福祉・医療施設をはじめとした都直営事業の民間委託・移譲を押しすすめ、大幅な定数削減を強行してきた結果である。
 給与関係費削減は、都民施策・都民サービスの低下と連動している。公務員人件費削減が都民施策の充実とはならず、重点事業優先とする投資的経費の増加や財政基盤確立の名の下での基金確保等に投入されたことは明らかであり、「財政再建」の名の下で、「行財政改革実行プログラム」や国に先駆けた「構造改革」による都政リストラを強行し、都民や都職員の犠牲の下に都民施策を切り捨ててきた当局の責任は重大である。

(4)東京都はバブル経済の崩壊と経済の低迷が続いていることを理由に、平成18年度から「新たな公会計制度」を導入し、「自治体経営の視点」を確立するとして、行政に「コストパフォーマンス」を持ち込み「事業評価」等を徹底して「マネジメントサイクル」を活用していく方針を打ち出した。予算編成においても、「事業評価」によ
る多面的な検証を行うとして、徹底した「無駄の排除」事業の「必要性や有益性」を検討し、事業や組織の見直し、再構築を図るとしている。1999年に都知事に就任して、2006年(平成18年)までに8,130人(清掃区移管約8,000人除く)を削減し、なお都政リストラを強行することを方針にして、2007年(平成19年)から4,000人の削
減目標を打ち出し、併せて「10年後の東京実行プログラム」を開始した。
 新たな「公会計制度」の導入は、都民に対する「説明責任」を目的の一つに掲げてはいるが、都政に民間経営手法を持ち込み、これ以上削減できない職員定数をさらに削減し、「経営」困難な事業は廃止若しくは民間委託・移譲により安上がりな行政を推進していくための手法を導入したものといわざるをえない。
 平成24年度職員定数は、繰返すが「各局所要人員要求」で23人増というギリギリの要求を各局が要求したことすら無視して160人の削減が強行された。これ以上削減されれば職場は維持できないという状況であることは明白であり、職場は限界を超えている。「少数精鋭」「効率的な執行体制の確立」を職場に押し付け、加えて職員に業績主義、競争原理を持ち込み、職場で培ってきた知識や経験を無視して、「効率」「数値」を優先して、組織やチームワーク、協働での事務執行体制を阻害する要因を導入してきた。都当局は、人材育成は喫緊の課題だとしながらも、疲弊しきった職場環境で職員の負担は過重になり、長期病気休暇の罹患率では「精神障害」が増加し続けている。さらに道理のない定数削減により、事務運営に支障をきたすことへの対応として、非常勤職員や臨時職員の雇用が恒常化している。官製ワーキングプアとも言われる不安定・低賃金・有期雇用を行政が率先して行うことを許さず、業務量に見合った定数配置を求めると同時に、労働条件の向上と正規雇用への取り組みを行わなければならない。
 現業職員の退職不補充、委託拡大は止まらず、調理・巡視・公園管理・道路巡回業務が削減されている。国の現業職員に対する人件費削減、現業職場の全面的な民間委託・移譲、職員ゼロ化攻撃を率先して推進する定数削減攻撃を阻止しなければならない。
 監理団体職員は連続して都派遣職員が削減となり、固有職員が増えている。しかし、保健医療公社や社会福祉事業団をはじめとする都派遣職員は2,648人であり、行政が責任を持って果たす施策で重要な役割を担っている。本来行政が直営で行うべき業務を監理団体に担わせていることについて、都民サービスの水準を低下させない人員配置と職員定数の削減に連動させない取り組みが必要である。
 総定数抑制方針の下で、「先に削減ありき」の道理のない削減強行を断じて許すわけにはいかない。また、すでに職場は「少数精鋭」を通り越して、執行体制の崩壊的状況が進行している。職員の健康破壊と生活破壊を引き起こしながら職員犠牲の下に支えられている業務・執行体制を見直し、業務量に見合う職員配置、誇りを持ち、誰もが健康で安心して働き続けられる職場の構築が早急に必要である。

(5)都庁職は、「都市基盤整備」「臨海副都心開発」「三環状線を中心としたインフラ整備」など「都市再生」の名による大型開発事業に優先的に予算配分を行う「都財政運営」を抜本的に見直し、自治体本来の責任を果たす施策を優先させることを主張してきた。災害をも利用してこれまでの路線を継続する「予算案」に反対するとともに、以下に示す方向で抜本的な政策の見直しを行うことを求める。
(1) 『2020年の東京』への実行プログラム」で掲げる「高度な防災都市を実現し、東京の安全性を世界に示す」として、具体的には「10年後の東京」計画を継承した大型公共事業は直ちに中止し、「投資的経費」を抑制すること。「防災対策」については、要援護者を地域での「自助・共助」という「自己責任」に押し付けることなく、福祉施設や医療施設の受け入れ拡大、危機管理に対応できる執行体制の拡充や職員の適正な配置など、日常の施策の充実を具体的に実施すること。
(2) 都高速道路整備等は、国が本来負担すべきものであり、東京都の財政支出を取りやめること。
(3) 直轄事業負担金等、国に強制された支出を停止すること。
(4) 都税を有効活用するため、福祉への投資や福祉関連公共事業での雇用を創出すること。
(5) 地方自治体財政の安定と住民福祉を基本にして、法人事業税の地方法人特別税も含めて、税制の抜本的見直し・検討を行い、地方消費税によらず地方交付税の財源保障調整機能を回復させ、地方財政を確立すること。
(6) 新規都債の抑制と低利借り換えによる公債費負担の一層の軽減を図ること。

(6)都庁職は各局要求の提出時期や査定作業の進捗にかみ合わせて闘争を構築してきた。昨年4月に2011予算・人員要求闘争方針を確認し、各支部の協力を得ながら職場・分会からの要求集約や、各局要求が提出されるまでに行われる支部・局交渉を重視しつつ、「予算・人員検討小委員会」での協議を進めた。
 2011年7月に基本要求の提出、9月には各支部ごとに総務局調査課に対する要請行動を実施した。査定作業が進んだ11月には、各会派要請を行い、合わせて各支部最重点要求の提出を含めた検討小委員会での具体的な主張を行った。
 さらにステッカー闘争、全組合員署名や局長・所属長要請など職場からの取り組みを行い、各支部・職場から積み上げた要求の実現に向け闘った。
 12月15日に各支部交流決起集会も開催し、同日、総務局に対して署名の提出と要請を行って都庁職要求の実現を求めた。とりわけ予算編成に関わる要求や各支部・各職場から積み上げられた要求の実現を強く求め、福祉・医療・雇用など、都民生活を支える都民施策の充実に都政の重点を置くよう主張し、自治体が責任を持って対応する体制をつくるよう要求してきた。
 さらに「賃金確定闘争」「予算・人員闘争」の一環として、都庁職「島しょ要求」「障害者要求」「研修要求」「新宿庁舎改善要求」を提出し、「島しょ要求」「障害者要求」は対都要請行動を行った。
 しかし、都当局は、こうした道理ある要求に応えず1月20日「予算原案」の発表と定数通告を都庁職に対して行った。都庁職は、このように一方的で、都民・職員を無視する当局の「予算原案」や大幅職員定数削減に対して、満身の怒りをこめた「抗議声明」を発表し、復活要求に向けて取り組みを行った。しかし、都当局の都政運営の姿勢は変わっていない。
 予算・人員闘争は、私たちの労働条件改善の闘いであると同時に、都民の安全・安心に責任を持つ自治体労働者本来の取り組みと位置づけられる。東日本大震災とそれに続く福島第一原発の事故は、自治体のあり方や自治体労働者の役割を改めて突きつけたものである。労働条件・執行体制の充実、都民施策の維持・拡大なくして都民の安全・安心は確保できない。都庁職は今後も以下の点を基本として都民の要求にこたえる予算編成を求め、全面的な都政リストラ攻撃を許さず闘い抜くものである。
(1) 「防災対策」をも利用した「都市基盤整備」中心の予算編成に反対し、都民の真の安全・安心を重点に置いた実効ある防災対策と「格差と貧困」が拡大し続ける都民の暮らしを改善するために、福祉・教育・医療・雇用・住宅などを最重点とする予算編成を求める。
(2) 予算・人員に関わる重要な課題は、職員の労働条件に直接影響を与える。都当局の労使協議の対象としない「管理運営事項」との態度を改めさせ、具体的・実質的な協議ができるようさらに取り組みを進める。
(3) 石原都知事がこれまでに行った東京都全体23,336人の定数削減を糾弾し、被災地への継続的支援を行うことや、東京を含めた災害発生時の行政組織と業務体制が機能不全を来さないためにも、行政のセーフティネットを充実させ、執行体制の拡充・強化を求める。そのために、事務量や職場実態に見合う職員定数配置・職場環境改善を求める取り組みを強化する。また、業務を支える職員の専門性を維持・確保するために、知識・経験、技術・技能の継承、人材育成を着実に実行できる体制の確保を求め、現業職員の退職不補充方針を撤回させる取組を強化する。
(4) 以上の要求実現のために、これまでの予算・人員要求の取り組みについて各支部とともに検証し、都民の安全・安心、暮らしを守る取組と反合理化闘争を一体のものとして運動を進めいていく。

 
以上

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