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伊ヶ谷地区海上より見る三宅島 撮影2003年4月10日三宅支庁提供
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見解
 

「2012年度予算」に関わる副知事依命
通達等に対する都庁職の見解と態度


2011年8月18日
東京都庁職員労働組合


1.はじめに

 7月28日、東京都は「2012年度予算の見積りについて」(副知事依命通達)、「2012年度予算第一次経費の見積り書の作成について」(財務局長依頼)、「2012年度組織及び職員定数計画並びに管理団体職員配置計画の策定方針について」(総務局通知)、「2012年度組織改正計画及び所要人員計画の作成について」(総務局人事部長依頼)、「『2020年の東京(仮称)』及び『実行プログラム2012(仮称)』策定方針」(知事決定)など、来年度予算編成に関わる一連の文書を公表した。
 これらは予算編成・定数査定に関わる方針であり、都庁職の2012年度予算人員要求闘争にも重要な影響をもたらすことから、ここに見解と態度を明らかにする。

2.公表された文書の概要

(1)「2012年度予算の見積りについて」(副知事依命通達)
 都は都政の基本的方向について、5月に「都政運営の新たな戦略」を発表した。大震災後の都政運営の基本的考えとして、「大震災を乗り越え発展を続け、日本を牽引する東京」「東京から日本を再生する」を基本方向としている。そして、この間に速やかに着手すべきこととして「東京緊急対策2011」を発表し、6月補正予算に組み込んだ。このような都政運営の方向性を2012年度予算に反映させるべく「2012年度予算の見積り」が打ち出されている。
 今回の依命通達では都政の方向については、「東京を高度な防災力を備えた都市へと生まれ変わらせる」とともに、「少子高齢化対策や都市インフラの整備など成熟した都市の実現」に向けて着実に推進するとしている。
 また、都財政については基金残高が約9,000億円確保されていることを述べ、都税収入については、2009年度が前年度比約1兆円の減収、2010年度でも更に減少して厳しい環境に「直面している」と述べているが、2011年度については依命通達上は、「減少する」とは述べていない。新年度の予算編成にあたって、景気の判断については「現時点では確かな見通しをもつことは困難」とし、法人事業税の暫定措置の撤廃や地方消費税の充実を国に働きかけるとしている。財政について、将来にわたって時機にかなった施策を戦略的に展開していくために「財政の対応力の堅持」が主張されている。
 その上で、「予算の見積もり」を行う上で、「都庁の自己改革力を高めるべくさらなる努力」と事業評価に関わる分析・検証機能の強化が強調され、都債や基金の活用が述べられている。
 以上を基本に各局が予算見積書を作成するよう以下の項目を求めている。
 @ すべての施策とその実施体制の事後検証を強化し、必要な見直し・再構築を確実に行うこと。経費の見積りは、コスト縮減、過去の決算や執行状況の分析・検証を行い、事業評価はその取り組みを強化した見積りを行うよう指示している。
 A 「2020年の東京(仮称)」及び「実行プログラム2012(仮称)」は、その策定方針に基づき、「10年後の東京」計画に掲げる目標に向けたこれまでの取り組みや新たな施策展開に対する事業の効率性・実効性等について事業評価の取り組みを強化すること等により分析・検証を行うこととしている。
 B 防災力の強化への対応については、この度の教訓を徹底的に分析・検証するとともに、「東京緊急対策2011」における取り組みや「東京防災対策指針(仮称)」の策定状況等を踏まえた上で必要な経費を要求することとしている。
 C 経費について
ア 義務的経費(政策的判断の余地が少なく、基礎的計数の精査により経費が積算されるもの)は、過去の決算等の分析・検証を踏まえ、積算根拠を充分精査した見積額とする。
イ 自律的経費(政策的判断の余地が少なく、各局がその責任において自立的に取り組むべき事務事業経費)は2011年度予算額の範囲内(ゼロシーリング)とする。
ウ 政策的経費(政策判断を要する経費)は後年度の負担を十分精査した上で、原則として2011年度予算額の範囲内(ゼロシーリング)とするが、「財務局と協議」という例外規定を盛り込んでいる。
エ 指定事業(シーリングになじまず、別途財務局が指定するもの)は、財務局と事前調整の上算定するとして、特例扱いとされている。
 D 新規事業及びレベルアップ事業は、既存事業の見直し・再構築を前提とし、新規事業は原則として期限を設定し、既存事業についても終期の明記を求めている。これらは昨年と同様である。
 E 職員定数は、「行財政改革実行プログラム」で示された3年間で4,000人を削減するような定数削減の目標はないが、事務事業の見直しやアウトソーシングの推進など業務執行方法の改善で定数削減を図ることとされている。多様な雇用形態を積極的に活用しながら、スリムで機能性の高い強堅な執行体制を構築することを求めている。
 F 東京都監理団体に対しては、取り巻く環境が変化する中で、存在意義の検証・不断の見直しと、「経営改革推進」に向けた適切な指導監督を求めている。さらに、監理団体に対する財政支出について、検証した上での必要な見直しを求めるとされている。監理団体以外の団体も、改めて検証して所要額を見積もるよう指示された。
 G 各種補助金は、時代状況の変化を踏まえた必要な検証などを行い、積極的に見直すこととし、都からの区市町村への財政支援も見直しを積極的に行うとしている。
 H 施設の新築・改築、耐震化は、「主要施設10ヵ年維持更新計画」に基づき、事業のあり方などの精査をした上で見積るとしている。事業用地の先行取得は十分な検証を求めるとともに施設の管理運営等では民間活力の積極的活用など「効率的」執行体制の実現を求めている。
 I 情報システムは、費用対効果の検証、効率的な運用を求めている。その経費の見積りでは、既存の維持管理経費は一層削減し、システム構築は、業務改善・対象業務精査の上、後年度負担を含めた費用対効果を明らかにするよう指示している。
 J 歳入見積もりでは、事業評価の取組強化を新たに加えて、以下のように更なる収入確保を図ることを求めている。
ア 都税収入については、徴収率の一層の向上による収入確保。
イ 国庫支出金については、都にとって不合理な制度設計や運用等のないよう関係省庁に対し、強く求めるとともに、真に必要と認められるものの積極的確保。
ウ 使用料・手数料は、受益者負担の適正化と原価計算に基づく見直し。
エ 財産収入については、未利用財産の活用などを積極的に進め、収入の確保。
オ 貸付金に係る元利収入などの債権については、債権管理の一層の適正化、収入の確保。
カ 集中的・重点的な財源投入により、積極的に施策展開を行う取り組みについては、
充当可能な基金の活用。

(2)2012年度組織及び職員定数計画並びに監理団体職員配置計画の策定方針について(総務局長通知)
 都は、今後も職員の大量退職が続くと共に、労働力人口の減少に伴う労働市場の減少により、質・量ともに働き手の確保が困難になることを予見し、引き続き徹底した内部努力を行い限られた人材を有効に活用することにしている。その上で既存事業の組織や仕事の見直し、民営化やアウトソーシングの推進、非常勤職員、人材派遣等の多様な雇用形態のマンパワーの活用により、機能的な執行体制の構築を求め、効率的な執行体制、機能的で柔軟な都政運営を実現するとしている。
 昨年度の管理職の制度改正を踏まえ、組織設置の積極的な見直しをうたっている。組織の大胆な見直しとともに、新規事業のスクラップ・アンド・ビルドの徹底も指示され、着実な職員定数の削減を求めている。
 「2020年の東京(仮称)への『実行プログラム2012(仮称)』」事業案については、事業効果や効率性を十分に考慮し、事業内容や執行体制を精査するとしている。 さらに地方独立行政法人等への都派遣職員を必要最小限にすると共に計画的に解消し、監理団体も団体が実施すべき事業を精査・見直した上で、所要人員を見積もることとされた。

(3)「2020年の東京(仮称)」への実行プログラム2012(仮称)策定方針(知事決定)
 2006年に策定された「10年後の東京」計画は、10年間の長期計画である。そのうち3年間を見通した具体的な施策を「実行プロラム」とし、毎年ローリングさせている。
 しかし、「10年後の東京」計画も計画期間の半ばを迎え、また本年3月に発生した東日本大震災により、従前の枠組みでは対応しきれない新たな課題が浮き彫りになった。また、東京を取り巻く環境が激変する中、中長期的に都政が進むべき方向性を示していかなければならなくなり2020年までを計画期間とする新たな長期ビジョン「2020年の東京(仮称)」を策定することで、東京が大震災を乗り越え発展を続け、日本を牽引していく道筋を提示することとした。
 2011年から2012年を「緊急対策期」、2012年から2014年を「復興・再生期」、2014年から2020年を「拡大・発展期」として時機にかなった手だてを戦略的に講じていくとしている。
 @ 「10年後の東京」計画に掲げた各施策については引き続き着実に推進していくことを基本としながらこれまでの取り組みを緻密に検証した上で、防災対策はもとより、すべての施策について、2020年に向けた新たな目標及び政策展開を検討する。
 A 真に実効性の高い取り組みを重点的に推進する3か年のアクションプランとし、施策の進捗状況や成果を定期的に分析・評価した上で毎年度改定し、目標の確実な達成を目指していく。
 B 「2020年の東京(仮称)」の計画期間は、2011年度から2020年度までの10か年とし、「実行プログラム2012(仮称)」の計画期間は、2012年から2014年までの3か年としている。
 C 「実行プログラム2012(仮称)」で選定する事業については、予算、人員等を優先的に措置すると特別扱いとしている。

(4)そのほかの文書の特徴
 依命通達と同時に公表された総務局人事部調査課からの「2012年度組織改正計画及び所要人員計画等について」では、病休者の増大や育児時間制度取得者等への対応として、昨年同様に人材派遣活用を行うとしている。また、再雇用職場の設定に関わる指示は昨年同様15%削減、課長補佐も昨年同様の5%程度の削減が示された。
 総務局人事部長依頼の「2012年度法人職員配置計画の作成について」は、都職員を派遣している地方独立行政法人と特定非営利活動法人を対象に、配置計画の作成が求められている。内容は昨年と同様であるが、職員定数に係わる総務局長通知では、地方独立行政法人などの都派遣職員を必要最小限にすることと、その計画的な解消を指示していることから、注視することが必要である。

3.都庁職の見解と態度

 @ 「2012年度予算の見積りについて」及び「2020年の東京(仮称)」策定の一つの柱は防災対策である。5月に発表した「都政運営の新たな戦略」などで、防災対策をはじめとした「新たな長期ビジョン」など3段階にわけた今後の都政運営方針を明らかにした。この中で、「日頃からの危機意識の低さや防災対策の基本である『自助』『共助』の精神が十分に浸透していなかったこともまた顕著」であったと分析している。石原知事が就任後最初に手がけたのが震災予防条例の改悪であり、現在の「震災対策条例」は、震災対策の原則を「自らの生命は自らが守る」という自己責任原則による自助の考え方である。一見新たな「戦略」を提起したかのように見えるが、これまでの災害対策に対する総括の視点が一面的であり、情報伝達や帰宅困難者、災害弱者と言われる高齢者・病弱者等に対する対策の不十分性など行政のなすべき役割が真摯に検討された方針とはいえない。首都直下型大地震が予想されている現在、「地震による災害を未然に防止し、被害を最小限にくいとめることができる」という予防対策を重視した立場で都の震災対策を構築すべきである。
 もう一方の柱である少子高齢者対策や都市のインフラ整備など成熟した都市実現の課題については、「10年後の東京」計画に掲げる目標に向けたこれまでの取り組みや新たな施策展開に対する事業の効率性・実効性等について事業評価の取り組みを強化することで十分に分析・検証を行うとしているが、東京が「日本を牽引する」という「新たな戦略」方針は、大震災で一層明らかになった大企業を中心とする企業収益最優先の新自由主義によるこれまでの大都市開発を踏襲するものだと言わざるをえない。また、少子高齢化対策は都民要求に十分応えるべきである。
 A 職員定数については、石原都政の12年間で、知事部局の職員は約1万人削減された(清掃区移管を除く)にも関わらず、今回も事務事業の見直しやアウトソーシングの推進など、業務執行方法の改善を進めることにより削減を図ることとし、相変わらず定数削減先にありきとなっている。
 大幅な定数削減は、業務の円滑な遂行に支障を来たし、仕事の継続性は分断され、組織の連携が壊されたことで、事務の非効率や矛盾を生み出し、慢性的超過勤務の増加により健康破壊も進んでいる。
 一方、3.11以降被災地に対する職員の派遣が求められており各職場は大変な状況の中で努力がされている。また、非常勤・人材派遣など「多様な雇用形態の活用」、民間委託やアウトソーシングの推進が組織の安定的な運営を阻害している。職員の大量退職も続き、知識や技術・技能の継承が大きな課題となっている。人材育成は東京都の喫緊の課題で有り、危機管理の要は人材の育成にかかっていると言っても過言ではない。業務量に見合った人員措置を行うとともに、行政の民営化推進の見直しが求められている。また、現業退職不補充方針を撤回し、新規採用を行うべきである。
 B 「依命通達」をはじめとする来年度予算に係わる一連の文書は、都民生活に密着した、きめ細やかな行政や、仕事に誇りを持ち、豊かな人材に支えられた生き生きとした行政の推進とは逆の方向を示している。
 都政が地方独立行政法人化・民営化・指定管理者制度導入など、公的責任を投げ捨て、全ての事業を民間に任せるような職員定数削減、大企業だけが儲かる都政リストラに強く反対する。
 都政が地方自治体本来の役割を果たすため、都民サービスの向上、都民生活改善に向けた積極的な施策展開を行うべきである。組織を動かすためには、そこに働く職員を大切にする視点が重要である。業務量に見合う職員配置、知識や技術・技能の継承にむけた新規採用や現業職の計画的採用を求める。
 都庁職は職場の第一線で働く各職場の意見や要求に基づく2012年度予算人員要求実現の闘争を、都民の理解を得ながら、各支部と共に断固として闘いぬく決意である。合わせて都民本位の都政を確立するために、奮闘する。
 
以上

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