〈1〉 |
すべての施策とその実施体制の事後検証を強化し、必要な見直し・再構築を確実に行うこと。経費の見積りは、コスト縮減、過去の決算や執行状況の分析・検証を行い、事業評価はその取組を強化した見積りを行うよう指示している。 |
〈2〉 |
「10年後の東京」への実行プログラム2011(仮称)は、その策定方針に基づき、目標の着実な推進を図るため、これまでの取組の分析・検証や、今後の施策の実効性等を踏まえ必要な経費を要求することとしている。 |
〈3〉 |
経費について
ア 義務的経費(政策的判断の余地が少なく、基礎的計数の精査により経費が積算されるもの)は、過去の決算等の分析・検証を踏まえ、積算根拠を充分精査した見積額とする。
イ 自立的経費(政策的判断の余地が少なく、各局がその責任において自立的に取り組むべき事務事業経費)は、「平成22年度」予算額の範囲内(ゼロシーリング)とする。
ウ 政策的経費(政策判断を要する経費)は後年度の負担を十分精査した上で、原則として「平成22年度」予算額の範囲内(ゼロシーリング)とするが、「財務局と協議」という例外規定を盛り込んでいる。
エ 指定事業(シーリングになじまず、別途財務局が指定するもの)は、財務局と事前調整の上算定するとして、特例扱いとされている。 |
〈4〉 |
新規事業及びレベルアップ事業は、スクラップ・アンド・ビルドを前提とし、新規事業は原則として期限の設定、既存事業も終期の明記を求めている。これらは昨年と同様である。 |
〈5〉 |
職員定数は、事務事業の見直しやアウトソーシングの推進など業務執行方法の改善で削減を図るとされた。多様な雇用形態を積極的に活用しながら、スリムで機能性の高い強堅な執行体制を構築することとされた。
今回も削減目標は示されなかった。 |
〈6〉 |
東京都監理団体に対しては、昨年度と同様に、取り巻く環境が変化する中で、存在意義の検証・不断の見直しと、経営改革推進に向けた適切な指導監督を求めている。
さらに今回は、監理団体に対する財政支出について、検証した上での必要な見直しを求めることが追加された。監理団体以外の団体も、改めて検証して所要額を見積もるよう指示された。 |
〈7〉 |
各種補助金は、時代状況の変化を踏まえた必要な検証などを行い、積極的に見直すとし、都から区市町村への財政支援も見直しを積極的に行うとしている。これらも昨年と同様である。 |
〈8〉 |
施設の新築・改築、耐震化は、昨年2月に策定された「主要施設10ヵ年維持更新計画」に基づき、事業のあり方などの精査をした上で見積るとしている。事業用地の先行取得は十分な検証を求めるとともに、施設の管理運営等では民間活力の積極的活用など「効率的」執行体制の実現を求めている。 |
〈9〉 |
情報システムは、費用対効果の検証、効率的な運用を求めた。その経費の見積りでは、既存の維持管理経費は一層削減し、システム構築は、業務改善・対象業務精査の上、後年度負担を含めた費用対効果を明らかにするよう指示した。 |
〈10〉 |
歳入見積りでは、事業評価の取組強化を新たに加えて、更なる収入確保を図ることを求めた。都税収入では徴収率の一層の向上による収入確保や国庫支出金の積極的確保を掲げている。使用料・手数料は、受益者負担の適正化と原価計算に基づく見直し、未利用財産の活用等や債権管理の一層の適正化による収入確保、さらに積極的な施策展開への基金活用を掲げている。 |
〈1〉 |
これまでは、堅調な都税収入を背景とした「オリンピック招致」を口実に、インフラ整備や臨海部開発など大企業優先の都市開発を施策の中心に掲げてきた石原都知事の戦略構想があった。2016年オリンピックの東京招致に向けた取組が華々しく展開されたが、これは失敗した。 |
〈2〉 |
日本経済の低迷は先進諸国の中でも深刻な状況に陥っており、国債などの累積赤字は09年度末883兆円(財務省発表)となっている。これは法人二税を中軸とする都財政にも大きな影響を与えている。国民の生活も、今年2月末の厚生労働省の発表で、生活保護世帯は132万件を越えて過去最高となり、貧困と格差社会は拡大している。今日の都民生活に及ぼしている現状も極めて深刻である。 |
〈3〉 |
石原都政3期目の最後を迎え、今回の一連の文章は、「新自由主義」路線に基づく「行財政改革」「構造改革」を踏まえた「行財政改革の新たな指針」「人材育成基本方針」に基づく都政の構造改革・リストラ方針である。これらの推進と職員定数削減を一体化させている。石原カラーは色あせて来たが、基本スタンスは何ら変わっていない。 |
〈4〉 |
「依命通達」では、経費を基本的にゼロシーリングとし、都民要求には積極的に応えず、近未来図の「10年後の東京」を実現させるためには、基金の取り崩しを含め予算や人員を優先的に措置する基本姿勢は変わらず、許し難い。前文のボリュームが増え、「あらゆる無駄を徹底的に排除」「事業評価の更なる強化」を新たに加え強く打ち出しているのが特徴であり、事業評価は、対象の拡大・充実を求めている。これらによって、都行政に関連する団体等に対して「検証」の名による切り捨て推進が危惧されるため、動向を押さえることが必要である。 |
〈5〉 |
財政は「都財政を取り巻く環境が依然として厳しいと見込まれる」と認識を示して危機感をあおっているが、都財政の実態は依然として他団体を上回る高い水準を保っている。また、民間企業が事業効果を測るため等の複式簿記である「新たな公会計」の視点を一層活用することで、事業評価の手法を充実させるとしている。民と公では処理が大きく異なり、単純に横引きはできない。 |
〈6〉 |
これまで「民間でできることは民間に委ねる」という徹底した行革方針の下で、民間委託・民間移譲・地方独立行政法人・公社化・指定管理者制度導入などが拡大されてきた。また事務事業も管理部門のアウトソーシング推進、組織の見直しなどが推進された。これは高く掲げられた定数削減目標に対する削減ツールとなってきた。その結果、石原都政の11年間で、知事部局の職員は約1万人削減された(清掃区移管を除く)。当局は「検証」しているというが一面的であり、都議会で指摘された「都政の執行力の低下」を改めようとする態度が見られない。
行政執行のアウトラインを越える大幅な定数削減は、業務の円滑な遂行に支障を来し、仕事の継続性は分断され、組織の連携が壊されたことで、事務の非効率や矛盾を生みだしている。職員の大量退職も続き、知識や技術・技能の継承が大きな課題となっている。これは職員ひとり一人に心身ともに過重な負担を与え、超過勤務の恒常化、パワー・ハラスメント、セクシュアル・ハラスメントを含めた人間関係の不調、メンタルヘルス不全など病気休暇・休職者の増大も引き起こしている。
非常勤・人材派遣など「多様な雇用形態の活用」、民間委託やアウトソーシングの推進は、組織の安定的な運営を阻害し、新たな「官製ワーキングプア」や不安定雇用の労働者を行政自らが創出している。
この間、都が進めた構造改革路線による行財政改革は、これまでも都民本位の都政を後退させており、今後も都政に重大な問題をもたらすことは明らかである。 |
〈7〉 |
今回の「依命通達」をはじめとする来年度予算編成に係わる一連のものも、都民生活に密着した、きめ細かな行政や、仕事に誇りを持ち、豊かな人材に支えられた生き生きとした行政の推進とは逆の方向を示している。
都政が地方独立行政法人化・民営化・指定管理者制度導入など、公的責任を投げ捨て、全ての事業を民間に任せるような、都政の変質と職員定数削減、大企業だけが儲かる都政リストラに強く反対する。都政が地方自治体本来の役割を果たすため、都民サービスの向上、都民生活改善に向けた積極的な施策展開を行うべきである。組織を動かすには、そこに働く職員を大切にする視点が重要である。業務量に見合う職員配置、知識や技術・技能の継承にむけた新規採用や現業職の計画的採用を求める。 |