都庁職(東京都庁職員労働組合公式サイト)

伊ヶ谷地区海上より見る三宅島
伊ヶ谷地区海上より見る三宅島 撮影2003年4月10日三宅支庁提供
HOME 都庁職へようこそ 見解 都庁職新聞 ギャラリー リンク
HOME > 見解 > 「平成23年度予算」に関わる副知事依命通達等に対する都庁職の見解と態度
見解
 

「平成23年度予算」に関わる副知事依命通達等に対する
都庁職の見解と態度


2010年8月10日
東京都庁職員労働組合

1 はじめに

 7月21日、東京都は「平成23年度 予算の見積りについて」(副知事依命通達)、「平成23年度 予算第一次経費の見積書の作成について」(財務局長依頼)、平成23年度 組織及び職員定数方針並びに監理団体職員等調整方針について」(総務局長通知)、「平成23年度 組織改正計画及び所要人員計画の作成について」(総務局人事部長依頼)、「『10年後の東京』への実行プログラム2011(仮称)策定方針」(知事決定)など、来年度予算編成に係わる一連の文書を公表した。
 これらは予算編成・定数査定にかかわる方針であり、都庁職の2011年度予算人員要求闘争にも重要な影響を与えることから、ここに見解と態度を明らかにする。

2 公表された文書の概要

(1)「平成23年度」予算の見積りについて(副知事依命通達)
 冒頭、「都財政は極めて厳しい環境に直面している」とした上で、これまでの「堅実な」財政運営を評価した記載を行っている。
 現下の情勢のもと、都民の貴重な税金を効率的、効果的に活用していることを検証するため、事業評価の対象範囲を監理団体や特別会計・歳入に拡大させるとともに、新たな公会計の視点も一層活用することが強調されている。
 「平成23年度予算」は、「都財政を取り巻く環境が依然として厳しいと見込まれる中、財政対応力を堅持しつつ、現在及び将来に対し、都政に課せられた使命を確実に果たす予算」として、次の基本方針を示し、各局が予算見積書を作成するよう求めた。
 第一に、都民の生活に係わる喫緊の課題に的確に対処するとともに、都独自の先進的な施策や、東京ひいては日本の可能性を引き出す戦略的な取組など中長期的な対応も、継続的かつ積極的に進める。
 第二に、その前提として、「自らを律する」取組を徹底することで、都が行う全ての施策を厳しく検証し、創意工夫を凝らし、あらゆる無駄を排し、より効率的で実効性の高い施策に磨きあげる。
〈1〉 すべての施策とその実施体制の事後検証を強化し、必要な見直し・再構築を確実に行うこと。経費の見積りは、コスト縮減、過去の決算や執行状況の分析・検証を行い、事業評価はその取組を強化した見積りを行うよう指示している。
〈2〉 「10年後の東京」への実行プログラム2011(仮称)は、その策定方針に基づき、目標の着実な推進を図るため、これまでの取組の分析・検証や、今後の施策の実効性等を踏まえ必要な経費を要求することとしている。
〈3〉 経費について
  ア 義務的経費(政策的判断の余地が少なく、基礎的計数の精査により経費が積算されるもの)は、過去の決算等の分析・検証を踏まえ、積算根拠を充分精査した見積額とする。
  イ 自立的経費(政策的判断の余地が少なく、各局がその責任において自立的に取り組むべき事務事業経費)は、「平成22年度」予算額の範囲内(ゼロシーリング)とする。
  ウ 政策的経費(政策判断を要する経費)は後年度の負担を十分精査した上で、原則として「平成22年度」予算額の範囲内(ゼロシーリング)とするが、「財務局と協議」という例外規定を盛り込んでいる。
  エ 指定事業(シーリングになじまず、別途財務局が指定するもの)は、財務局と事前調整の上算定するとして、特例扱いとされている。
〈4〉 新規事業及びレベルアップ事業は、スクラップ・アンド・ビルドを前提とし、新規事業は原則として期限の設定、既存事業も終期の明記を求めている。これらは昨年と同様である。
〈5〉 職員定数は、事務事業の見直しやアウトソーシングの推進など業務執行方法の改善で削減を図るとされた。多様な雇用形態を積極的に活用しながら、スリムで機能性の高い強堅な執行体制を構築することとされた。
 今回も削減目標は示されなかった。
〈6〉 東京都監理団体に対しては、昨年度と同様に、取り巻く環境が変化する中で、存在意義の検証・不断の見直しと、経営改革推進に向けた適切な指導監督を求めている。
 さらに今回は、監理団体に対する財政支出について、検証した上での必要な見直しを求めることが追加された。監理団体以外の団体も、改めて検証して所要額を見積もるよう指示された。
〈7〉 各種補助金は、時代状況の変化を踏まえた必要な検証などを行い、積極的に見直すとし、都から区市町村への財政支援も見直しを積極的に行うとしている。これらも昨年と同様である。
〈8〉 施設の新築・改築、耐震化は、昨年2月に策定された「主要施設10ヵ年維持更新計画」に基づき、事業のあり方などの精査をした上で見積るとしている。事業用地の先行取得は十分な検証を求めるとともに、施設の管理運営等では民間活力の積極的活用など「効率的」執行体制の実現を求めている。
〈9〉 情報システムは、費用対効果の検証、効率的な運用を求めた。その経費の見積りでは、既存の維持管理経費は一層削減し、システム構築は、業務改善・対象業務精査の上、後年度負担を含めた費用対効果を明らかにするよう指示した。
〈10〉 歳入見積りでは、事業評価の取組強化を新たに加えて、更なる収入確保を図ることを求めた。都税収入では徴収率の一層の向上による収入確保や国庫支出金の積極的確保を掲げている。使用料・手数料は、受益者負担の適正化と原価計算に基づく見直し、未利用財産の活用等や債権管理の一層の適正化による収入確保、さらに積極的な施策展開への基金活用を掲げている。

(2)平成23年度組織及び職員定数方針並びに監理団体職員等調整方針について(総務局長通知)
 多様化する都民ニーズの対応や、「10年後の東京」の施策を推進するため、内部努力と少数精鋭による効率的な執行体制の構築、事務事業を再検証し、必要性の高い分野にマンパワーをシフトし、合わせて公民の役割分担の見直しで、民営化やアウトソーシングを推進することを大前提としている。さらに既存事業の組織や仕事の見直しと、非常勤職員・人材派遣等、多様な雇用形態のマンパワーの活用により、機能的な執行体制の構築を求め、効率的な執行体制、機能的で柔軟な都政運営を実現するとしている。今回は、管理職の制度改正を踏まえ、組織設置の積極的な見直しをうたっている。組織の大胆な見直しとともに、新規事業のスクラップアンドビルドの徹底も指示され、着実な職員定数の削減を求めている。
 さらに地方独立行政法人等への都派遣職員を必要最小限にすると共に計画的に解消し、監理団体も団体が実施すべき事業を精査・見直した上で、所要人員を見積もることとされた。

(3)「10年後の東京」への実行プログラム2011(仮称)策定方針(知事決定)
 「10年後の東京」は2006年に策定された10年間の長期計画である。そのうち3年間を見通した具体的な施策を「実行プログラム」とし、毎年ローリングさせている。「10年後の東京」策定以降、「重点事業」が「『10年後の東京』への実行プログラム」となっている。
 「オリンピック・パラリンピック招致」実現を掲げたこれまでの策定方針と異なり、大きく様変わりした、淡々としたものとなっている。
〈1〉 「10年後の東京」計画の確実な実現に向け、実効性ある取り組みを重点的に推進する3年間のアクションプランで、行財政運営を先導するもの。
〈2〉 方針は、「10年後の東京」で掲げた8つの目標の確実な実現に向け、「実行プログラム」の進捗や効果を分析・評価して効率的効果的な事業に再構築し、都民への施策効果が高い取組を優先的に実施し、情勢の変化に対応し、将来を見据えた重層的・複合的な施策を戦略的に展開するとしている。
 これらの事業案は、「実行プログラム」の進捗状況を鑑みて、新規の施策・事業につながる取組の検討と実効性の高い事業案を求めている。ここで選定する事業は予算・人員を優先的に措置すると特別の扱いである。

(4)そのほかの文書の特徴
 依命通達と同時に公表された総務局人事部調査課からの「平成23年度 組織改正計画及び所要人員計画等について」では、病休者の増大や育児短時間制度取得者等への対応として、昨年同様に人材派遣活用を行うとしている。また、再雇用職場の設定に関わる指示は昨年同様15%削減、課長補佐も昨年同様の5%程度の削減が示された。
 総務局人事部長依頼の「平成23年度法人職員配置計画の作成について」は、都職員を派遣している地方独立行政法人と特定非営利活動法人を対象に、配置計画の作成が求められている。内容は昨年と同様であるが、職員定数に係わる総務局長通知では、地方独立行政法人などの都派遣職員を必要最小限にすることと、その計画的な解消を指示していることから、注視することが必要である。

3 都庁職の見解と態度

〈1〉 これまでは、堅調な都税収入を背景とした「オリンピック招致」を口実に、インフラ整備や臨海部開発など大企業優先の都市開発を施策の中心に掲げてきた石原都知事の戦略構想があった。2016年オリンピックの東京招致に向けた取組が華々しく展開されたが、これは失敗した。
〈2〉 日本経済の低迷は先進諸国の中でも深刻な状況に陥っており、国債などの累積赤字は09年度末883兆円(財務省発表)となっている。これは法人二税を中軸とする都財政にも大きな影響を与えている。国民の生活も、今年2月末の厚生労働省の発表で、生活保護世帯は132万件を越えて過去最高となり、貧困と格差社会は拡大している。今日の都民生活に及ぼしている現状も極めて深刻である。
〈3〉 石原都政3期目の最後を迎え、今回の一連の文章は、「新自由主義」路線に基づく「行財政改革」「構造改革」を踏まえた「行財政改革の新たな指針」「人材育成基本方針」に基づく都政の構造改革・リストラ方針である。これらの推進と職員定数削減を一体化させている。石原カラーは色あせて来たが、基本スタンスは何ら変わっていない。
〈4〉 「依命通達」では、経費を基本的にゼロシーリングとし、都民要求には積極的に応えず、近未来図の「10年後の東京」を実現させるためには、基金の取り崩しを含め予算や人員を優先的に措置する基本姿勢は変わらず、許し難い。前文のボリュームが増え、「あらゆる無駄を徹底的に排除」「事業評価の更なる強化」を新たに加え強く打ち出しているのが特徴であり、事業評価は、対象の拡大・充実を求めている。これらによって、都行政に関連する団体等に対して「検証」の名による切り捨て推進が危惧されるため、動向を押さえることが必要である。
〈5〉 財政は「都財政を取り巻く環境が依然として厳しいと見込まれる」と認識を示して危機感をあおっているが、都財政の実態は依然として他団体を上回る高い水準を保っている。また、民間企業が事業効果を測るため等の複式簿記である「新たな公会計」の視点を一層活用することで、事業評価の手法を充実させるとしている。民と公では処理が大きく異なり、単純に横引きはできない。
〈6〉 これまで「民間でできることは民間に委ねる」という徹底した行革方針の下で、民間委託・民間移譲・地方独立行政法人・公社化・指定管理者制度導入などが拡大されてきた。また事務事業も管理部門のアウトソーシング推進、組織の見直しなどが推進された。これは高く掲げられた定数削減目標に対する削減ツールとなってきた。その結果、石原都政の11年間で、知事部局の職員は約1万人削減された(清掃区移管を除く)。当局は「検証」しているというが一面的であり、都議会で指摘された「都政の執行力の低下」を改めようとする態度が見られない。  行政執行のアウトラインを越える大幅な定数削減は、業務の円滑な遂行に支障を来し、仕事の継続性は分断され、組織の連携が壊されたことで、事務の非効率や矛盾を生みだしている。職員の大量退職も続き、知識や技術・技能の継承が大きな課題となっている。これは職員ひとり一人に心身ともに過重な負担を与え、超過勤務の恒常化、パワー・ハラスメント、セクシュアル・ハラスメントを含めた人間関係の不調、メンタルヘルス不全など病気休暇・休職者の増大も引き起こしている。
 非常勤・人材派遣など「多様な雇用形態の活用」、民間委託やアウトソーシングの推進は、組織の安定的な運営を阻害し、新たな「官製ワーキングプア」や不安定雇用の労働者を行政自らが創出している。
 この間、都が進めた構造改革路線による行財政改革は、これまでも都民本位の都政を後退させており、今後も都政に重大な問題をもたらすことは明らかである。
〈7〉 今回の「依命通達」をはじめとする来年度予算編成に係わる一連のものも、都民生活に密着した、きめ細かな行政や、仕事に誇りを持ち、豊かな人材に支えられた生き生きとした行政の推進とは逆の方向を示している。
 都政が地方独立行政法人化・民営化・指定管理者制度導入など、公的責任を投げ捨て、全ての事業を民間に任せるような、都政の変質と職員定数削減、大企業だけが儲かる都政リストラに強く反対する。都政が地方自治体本来の役割を果たすため、都民サービスの向上、都民生活改善に向けた積極的な施策展開を行うべきである。組織を動かすには、そこに働く職員を大切にする視点が重要である。業務量に見合う職員配置、知識や技術・技能の継承にむけた新規採用や現業職の計画的採用を求める。

 都庁職は職場の第一線で働く各職場の意見や要求に基づく2011年度予算人員要求実現の闘争を、都民の理解を得ながら、各支部と共に断固として闘いぬく決意である。あわせて、都民本位の都政を確立するために奮闘する。

以上

ページのトップへ戻るページのトップへ戻る
 

Copyright (C) Tokyo metropolitangovernment laborunion.