都庁職(東京都庁職員労働組合公式サイト)

伊ヶ谷地区海上より見る三宅島
伊ヶ谷地区海上より見る三宅島 撮影2003年4月10日三宅支庁提供
HOME 都庁職へようこそ 見解 都庁職新聞 ギャラリー リンク
HOME > 見解 > 2010年度「東京都予算案」「職員定数」等に対する見解と態度
見解
 

2010年度「東京都予算案」「職員定数」等に対する見解と態度

2010年2月18日
東京都庁職員労働組合


1  はじめに

 東京都は2010年1月22日、「平成22年度(2010年度)東京都予算(原案)」(以下「予算原案」)および「平成22年度組織改正及び職員定数」「平成22年度東京都監理団体所要人員計画」を発表し、さらに同日「平成21年度最終補正予算案」(以下「補正予算案」も発表した。
 その後、200億円を財源とする復活予算をふくめた「平成22年度(2010年度)東京都予算案」(以下「予算案」)を1月28日に発表した。
 この「予算案」は、デフレ経済のもとで景気が後退するなか都税収入の大幅な減少を誇大宣伝しながら、引き続き巨額な予算を「『10年後の東京』実行プログラム2010」(以下「実行プログラム2010」)に基づく都市基盤整備等に優先的に投入している。『10年後の東京』の性格は、オリンピック・パラリンピック招致をめざす10年後の東京の姿(8つの目標)と、それに向けた政策展開の方向性を明示した都市戦略とされていた。オリンピック・パラリンピックに落選したにも関わらず「実行プログラム2010」は、基本理念を変えることなく、3か年で約1兆9,000億円、2010年度は約6,000億円の事業を計画し、2010年度都予算編成に反映させ、「新自由主義」に基づく都政版の「構造改革」を加速している。
 都庁職は、10予算・人員要求実現闘争において都民本位の都政運営と都庁労働者の諸要求実現を求め、要求書の提出や要請行動、検討委員会での議論など、要求実現に向けた取り組みをすすめてきた。しかし、示された「予算案」や「職員定数」は、都庁職の要求に応えず、深刻な事態におちいっている都民生活改善の施策は極めて不十分である。都庁職は「予算原案」発表時に「実行プログラム2010」もふくめた「抗議声明」を出し、基本的見解と抗議の意思表明を行ったが、確定した「予算案」「職員定数」の問題点と今後の闘いの方向を示すため、「見解と態度」を明らかにする。

2 「予算案」「職員定数」の特徴と問題点

(1)編成方針および全体フレーム
 「予算案」は全会計の合計で12兆4,223億円(前年度比3.2%減)、そのうち一般会計は6兆2,640億円(前年度比5.1%減)となっている。その編成方針は「大幅な税収減に直面し、今後も厳しい財政環境が想定される中にあって、都財政の健全性を堅持するとともに、東京の『現在』と『将来』に対して、今日都が為すべき役割を積極的に果たす予算」としている。そして「大幅な税収減の中で、都民の雇用や生活への不安に対応する取組、重要な諸課題に対して国を先導する都独自の戦略的な取組、東京の将来を切り拓く活力創造に向けた取組を着実に進めることで、今日都が為すべき役割をしっかりと果たす」「今後しばらく厳しい財政環境が続くことが想定される中にあって、将来にわたり、継続的・安定的に都政の役割を果たし得る強固な財政力を確保する」の2点を基本としている。
 石原知事は今期限りで引退を公言しており、自らが執行する最後の「石原知事の予算編成」になる。しかし、オリンピック招致に失敗したこの時、これまで続いた石原知事の「強い個性」は陰を潜めて、従来の予算編成方針を継承する予算となっている。そのことは2016年の招致に失敗しながら2020年オリンピックに再立候補を表明し、引き続き巨大開発を進め、オリンピック基金4,000億円を積み残すことにも示されている。
 以下、歳入・歳出の項目別で見ていく。

(2)歳入について
 一般会計の歳入規模は6兆2,640億円で、5年連続の6兆円超である。歳入の多くを占める都税収入は、4兆1,514億円と09年度当初に比べて6,063億円減(12.7%減)である。しかし、必要な財源確保のためとして、3,074億円の基金を取り崩し、都債を4,786億円発行しているため09年度当初予算と比較して3,340億円減(5.1%減)に止まっている。起債依存度は一般会計で「7.6%の健全な状態を維持している」と述べているが、後年度に負担をかける都債発行を増やしてまで歳入確保したかったのは何か、よく見ておく必要がある。
@ 来年度都税収入は4兆1,514億円を見込んでいる。急激な景気の悪化により過去最大の減収としているが高水準である。減収の大部分が法人二税である。これは景気に大きく左右され、設備投資が停滞している状況や国内消費の低迷、雇用情勢の悪化、デフレの長期化により今後しばらく続くと想定される。また、法人事業税の暫定措置の影響は、10年度では3,859億円であるが、地方法人特別譲与税で国から再配分される1,957億円を差し引くと、都への実質的な影響額は1,902億円の減収となる。来年度の都税収入は石原都政の中でも決して少ない額ではなく、最近の4年間の平均が約5兆800億円と高くなっており、知事就任後の1999年度以降2004年度までの平均とほぼ同額となっている。
A 都債は4,786億円と昨年度より1,043億円も増加(27.9%増)している。
B 「大幅な税収減の中で、都が為すべき役割をしっかりと果たしていくため、これまで積み立ててきた基金を活用」するとして、「スポーツ・文化」「環境」「福祉・医療」の3分野の事業の推進のため、3基金414億円を取り崩した。また、「都市インフラの整備」などには、社会資本等整備基金を充当(1,468億円)することで、必要な財源を確保し、財政調整基金の活用は必要最小限にとどめ(1,192億円)、残高3,140億円を極力維持しているとしているが、都民生活を改善させるためには一層の活用を図るべきである。また、オリンピック招致基金はその目的がなくなったのにも関わらずまったく手をつけずに温存させた。

(3)歳出について
 一般歳出は「都政が為すべき役割をしっかりと果たした」として、対前年度比1.9%増の4兆6,289億円となった。なかでも投資的経費は、対前年度比3.7%増の8,055億円で、6年連続の増であり8,000億円を初めて突破した。
  「実行プログラム2010」に掲げる「都市基盤整備」のため、空港・港湾機能の拡充、三環状道路等の連携により交通・物流ネットワークが強化されている。失敗に終わった2016年オリンピック招致を梃子にした環状道路をはじめ、総体として8兆円から10兆円にのぼる大規模開発を継続することが最重点とされている。
 目的別予算では、「福祉と保健」9,188億円(19.8%)「教育と文化」9,948億円(21.5%)「労働と経済」4,576億円(9.9%)「生活環境」2,307億円(5.0%)「都市の整備」8,148億円(17.6%)「警察と消防」8,967億円(19.4%)「企画・総務」2,955億円(6.4%)となっている。
 「福祉と保健」は712億円、8.4%増で国の子ども手当創設に伴う増が大きい。また、小児救急医療体制の強化、周産期医療体制の強化、救急医療体制の充実、がん・感染症対策は増額されたが、医療人材の確保、新型インフルエンザ対策が減額された。都民の反対が大きい都立三小児病院は廃止させる姿勢で、都民要望に十分応えない予算編成は明らかである。
 給与関係費は、退職手当の減や給与関係費の減などにより337億円減(2.1%減)となっている。

@ 都民生活の安心確保では、都民が直面する不安の解消と将来の安心に向けて、少子高齢社会への積極的な対応とともに、引き続き雇用対策や医療体制の充実を図るとして緊急雇用対策、「少子化打破」緊急対策、少子高齢化時代にふさわしい新たな「すまい」の実現、緊急医療体制や周産期医療の充実などをあげている。しかし緊急雇用対策事業は全額が国の基金事業を実施するものであり極めて不十分である。少子化対策では佐藤副知事をトップとする「少子化打破緊急対策会議」で検討され、今回のポイントの一つとされた。しかし、保育・学童保育所の規制を緩和させ民間に運営を委ね待機児解消を図るもので、中身は極めて不十分である。さらに救急医療体制や周産期医療の充実ではNICU(新生児集中治療室)の整備で45床増やし運営費補助増額としているが、これらは都立三小児病院廃止を前提に組んでいる。不足のいちじるしい多摩地域で、清瀬、八王子両小児病院の廃止によって生まれるNICUの広大な空白をつくることは断じて許せない。

A 産業の振興では、ものづくり技術承継事業の新設がされた。厳しい経営環境が続く中で、中小企業のニーズに応えた支援策を充実・強化するとしているが、中小企業対策では要望の強い仕事確保対策に見るべきものはなく自営業者への直接支援がかえりみられないなど問題がある。また、食の安全・安心の確保に向けた取り組みを強化するとして、生産段階における食の安全・安心の確保をあげているが、築地市場の豊洲移転のための予算1,281億円(うち用地取得費1260億円)が計上された。土壌汚染が大きな問題となっているが土壌汚染対策の実験を行うことで何としても平成26年度中の開場を目指して土壌汚染工事の設計、本体工事の基本設計、用地取得を強行する姿勢を明確にした。食の安全・安心の確保を目指すのであれば、食の台所である市場を土壌汚染対策を行わなければならない場所に移転させることが問題である。

B 環境問題への先駆的取組では、国を牽引するCO2削減に向けた先駆的な環境施策を一段と加速させるとともに、新たな工夫により緑の創出と保全を目指すとして中小規模事業所省エネ促進・クレジット創出プロジェクト、緑を守る新たな取り組みをあげている。カーボンマイナス東京10年プロジェクトでは、都内約1,300か所の大規模事業所を対象として二酸化炭素排出量削減を義務化する。一方、中小企業都内の温室効果ガス排出削減対策として、中小企業が省エネ設備を購入した場合に一定額を補助することを決めた。

C 都市基盤の拡充では、公共建築物などの耐震化を着実に進めていくとともに、幹線道路の整備など東京の将来に必要不可欠なインフラ整備を推進するとして公共建築 物などの耐震化、豪雨対策、道路の整備、東京港の整備をあげているが、これはまさしく「実行プログラム2010」が掲げる施策の中心であり、三環状道路(首都高中央環状線・東京外かく環状道路・首都圏中央連絡道路)等の整備促進、羽田空港の再拡張・国際化、空港アクセスの向上、東京港外貿コンテナターミナルの整備、京浜三港の広域連携の強化など空港・港湾機能の強化をはじめ、大企業に大きな利潤をもたらす大型公共事業が多数含まれる。1メートル1億円もかける外かく環状道路建設についてはじめて事業化の予算も計上するなど投資的経費を6年連続で増額し、投資に関わる経費は全体として1兆円を大きく上回る巨額なものとなっている。

D 教育・文化・スポーツの推進では、文化やスポーツへの取り組みを充実させることで、東京の魅力を高めていくとともに、次代を担う児童・生徒の学力と体力の向上に向けた取り組みを強化するとして学力・体力の向上、芸術文化の発信・都立文化施設の改修、スポーツの振興をあげている。また「小1問題」「中1ギャップ」の対策として、学級規模の縮小、チームティーチングが選択できるよう職員を加配することや小学校で新人教員の育成を図るため、学級を担任する新規採用教員を指導する再任用のベテラン教員を配置するなどとなっている。全国で30人学級を唯一実施していない東京都が、ようやく緒についたといえる。ほとんどは国の予算絡みとなっている。

E 復活予算は例年と同じ200億円が財源で、「都市基盤の整備」には67億9,800万円がつき、その結果「予算案」における「投資的経費」のうち、都単独が4,739億円を超え、前年度比181億7,600万円4.0%増の高い伸び率を続けている。市区町村振興の交付金等は40億6,000万円、福祉・保健・医療の充実として58億7,400万円が措置された。教育の充実は私立学校教育助成を中心に23億5,300万円が増となった。他にも商店街の活性化で8億5,000万円、雇用対策の充実で3,500万円、地域力の向上で3,000万円を配分している。

(4)定数削減について
@ 2010年度職員定数は、知事部局・公営企業・学校職員・消防・警察等全任命権者総計16万5,287人で、前年度から6人の定数削減を行い、総定数抑制方針が貫かれている。
 内訳は、知事部局等270人減、公営企業180人減、学校職員221人増、警視庁110人増、東京消防庁113人増となっている。「行財政改革実行プログラム」では3年間で4,000人の削減が強行されたが、その基本が変わらない「副知事依命通達」に基づく削減は、乾いた雑巾をさらに絞るものである。
 石原都政のもとで職員定数は23,532人削減された。うち知事部局は18,116人減(清掃区移管分を含む)、学校職員987人減(10年度は221人増)となっている。しかし警視庁は今回も110人増でトータル1,374人増となり、他任命の定数削減がすすむ中で、増加の一途である。また、教員の少人数学級対応や東久留米市からの消防事務の受託での必要増員数を知事部局や公営企業の減員で相殺している。
 職場実態を無視し「数合わせ、削減ありき」の定数削減は、円滑な業務執行を阻害するに止まらず、職員が働き続けることすら脅かすものである。

A 知事部局は増員852人、減員1,122人で、前年度比270人の削減でありその主要な内訳は、東京オリンピック・パラリンピック招致本部の廃止で77人皆減、主税局で都税事務所徴収部門二課体制の見直し等52人減、福祉保健局で東京2009アジアユースパラゲームズの終了等43人減、建設局で神代植物公園への指定管理者制度導入等で34人減、都市整備局で都営住宅建設事業の工事監理業務等の委託拡大等20人減している。
現業職場(巡視・電話交換)は今回も退職不補充方針が貫かれた。委託職場の拡大等は都民サービスの低下に直結するものであり容認できない。

B 監理団体の定数は前年度の9,022人から9,314人増となったが、うち団体に派遣する都職員は3,106人と減少し、固有職員の割合が大きくなった。前年度との比較では、既存事業の見直しにより団体職員を48人削減するとともに、新規事業や都からの移管事業等に係る所要人員として340人を措置している。
 主な増減事項は、既存事業の見直し等による減では東京都社会福祉事業団[福祉施設の民間移譲等]、東京都道路公社[事業完了(公社解散)]、新規事業や都からの移管事業等による増では財団法人東京都保健医療公社[7対1看護体制導入]等である。これらは構造改革・監理団体改革を着実に進めるもので行政責任の放棄である。

(5)組織改正について
 主な組織改正としては、東京オリンピック・パラリンピック招致本部を廃止し、知事本局に引き続き事務作業などを行うために12人を配置するとしている。2013年度に東京都で行われる「国体・全国障害者スポーツ大会」のため総務局内に担当部と運営課を設置(9人)している。2016年のオリンピック・パラリンピック招致に失敗しても石原知事は、2020年に再度立候補を表明するなど組織改正でもその意思を明確にしている。

(6)2009年度最終補正予算案について
 都税収入は09年度当初予算から5,046億円減の4兆2,532億円となった。その結果、補正予算は全会計で3,680億円減(一般会計2,841億円減、特別会計839億円減)となり09年度予算規模は12兆7,985億円となった。減収に対応するため、減収補てん債を発行(1,390億円)しつつ、執行状況の精査で不要額を減額し、国の補正予算への対応(353億円)を行っている。

(7)使用料・手数料の改定等について
 前回は行わなかった使用料・手数料の改定を行うとしている。とりわけ霊園施設の使用料のうち一般埋蔵施設使用料(多摩霊園)882,000円→903,000円(1u)、立体埋蔵施設使用料(青山・第四区)792,000円(1か所)【新設】に引き上げるとともに、瑞江葬儀所施設の火葬料を 24,300円→36,400円に限度一杯の1.5倍に引き上げを行うとしている。
 さらに都立病院の個室使用料[病院会計]は(上限額)日額 18,000円→28,000円に改定するとしている。
 都民の生活が厳しくなっている中で、使用料・手数料の改定は一層都民に受益者負担を押しつけている。

3 都庁職の見解と態度

(1) 石原都政は12年目となった。「市場原理主義」「新自由主義」を都政に持ち込みこれまで「財政再建」を口実に福祉・医療・教育・雇用など都民に身近な施策や事業の切り捨て、職員定数の大幅削減や給与削減を強行してきた。その後、大幅な都税収入を背景に、突然「オリンピック招致」を前面に掲げた都政運営に邁進した。しかし、そのオリンピック招致も失敗に終わった。「新自由主義」がもたらしたアメリカ発の金融危機に伴う世界同時不況の影響からの脱却はできずにいる。大きな社会問題となっている「貧困と格差の拡大」に対してタイムリーに都民が求める施策を実施することこそが自治体の役割であるが、石原都政にその自覚はない。
都は05年「行政改革の新たな指針」を発表し、その具体策「行政改革実行プログラム」を06年に発表した。08年の「10年後の東京」は、8つの目標からなる長期計画で、都市基盤整備に重点が置かれオリンピック招致を口実とした「都市戦略」=「国際金融(多国籍企業)都市であり、大企業の利益も追求するものである。
 さらに石原知事の強い意向で「新銀行東京」が設立され1,000億円を出資したが、経営に行き詰まり400億円を追加出資した。しかし、改善の見通しはほとんどない。莫大な税金が投入される中で、知事の責任はあいまいであり追及する必要がある。これらは「住民の福祉の増進を図る」という地方自治の精神から大きく逸脱している。

(2) 昨年の総選挙で自民・公明政権が国民からの退場宣告をうけ、鳩山民主・社民・国民新党の連立政権が発足した。民主党が選挙戦で公約したマニュフェストに基づき一定の国民要求の実現に向けた変化が生まれているが、地方公共団体の行財政に対する影響は一部不透明な状況にある。
 石原知事は今期限りの引退を公言しているため、今回は事実上、自ら執行する最後の「石原予算」といえる。その「予算案」は2016年オリンピック招致に失敗したが、引き続き2020年オリンピックに立候補宣言をするなど引き続き「都市戦略」を突き進めるものである。
 「投資的経費」は7年連続で大幅増加し、三環状道路や物流改革にむけた交通網の整備など「都市基盤整備」と称する大企業のための「大型公共事業に大きく事業展開させ莫大な予算を配分している。さらに首都高速道路や羽田空港再拡張など、本来国が負担すべき公共事業にも引き続き財政を投入している。
 また、都税収入の減少に伴う不安をあおり強調しつつ、これまで積み立ててきた基金を活用するとして「社会資本等整備基金」で1,468億円、「財政調整基金」で1,192億円、「地球温暖化対策推進基金など3基金」で414億円を取り崩す一方、「東京オリンピック・パラリンピック開催準備基金」4,116億円は、そのまま温存している。その結果、10年度末の基金残高見込みは1兆228億円を確保している。
 一方で、都民の暮らしに密着する都立施設はPFIや指定管理者制度の導入、地方独立行政法人化、民間委託や民間移譲の拡大、市場化テストなどで自治体の市場化をすすめ、「公」の事業から撤退している。来年度も都立公園の指定管理者制度導入の拡大等が強行される。
 「行財政改革実行プログラム」が終了しても都政の構造改革・都政リストラは強行され、国より先を行く「構造改革」も、職員や都民の声に耳を貸さず、検証も不十分なまま推進した。これは編成方針に掲げる「東京の『現在』と『将来』に対して、今日都が為すべき役割を積極的に果たす予算」ではない。ここまで都民施策を切り捨てて、リストラしてきた当局の責任は重大である。格差社会が一層拡大する中で生活に苦しむ都民や次世代を担う子どもたちに、直接具体的な支援を行うのが行政の責任である。福祉をはじめ医療・教育・住宅・雇用など都民生活への施策は低く抑え、都民要望に応えない都政のあり方は断じて容認できない。歳出の重点を都市基盤整備中心から都民施策中心に切り替える時である。都庁職は都市開発に莫大な税金を注ぎ込む石原都政の地方自治体行政の破壊や、その具体化である「予算案」に怒りをもって反対するとともに、都民要求と都庁職要求実現のために引き続きねばり強く闘い抜くものである。

(3) 職員定数では、6人(知事部局270人)の削減を強行した。任命権者総計では、6人の削減となったが、知事部局では相変わらず大幅な削減が強行された。一方で今年度も警視庁は増員され聖域となっている。 1999年度に知事部局44,709人、警視庁44,544人でほぼ同数であったが、10年度は知事部局25,431人、警視庁45,918人と大きく差がついた。知事部局の「東京オリンピック・パラリンピック招致本部は77人皆減となったが、招致活動の収束に伴う業務対応と称して知事本局に12人の増員となった。一方、都税収入が落ち込む中、主税局の定数削減は、求められる税収確保を否定するものである。また、業務の移管・委託の拡大では、(建設)神代植物公園への指定管理者制度導入、(福祉保健、病院)局研修業務の委託化、(都市整備)都営住宅建設事業の工事監理業務等の委託拡大、(市場)市場警備業務の委託拡大、(教育)図書館業務の委託拡大など、都民サービスの最前線で働く職員を容赦なく切り捨てるものである。
 職員定数の削減は、都立施設の統廃合、様々なNPM手法による委託・移譲等に加え、業務の「見直し」等で押しつけられた。その結果、業務の 推進すら困難な現状に拍車をかけ、都民サービスの低下と職員には労働強化が強いられた。
 今日、ベテラン職員が培ってきた知識や技術、技能等知的財産の伝承や人材の活用が大きな課題となっている。パソコンだけでは情報収集できないものも数多く、人が人を育てる。「効率的・効果的な執行体制の構築」として監理団体等に委託を進めてきたが、職員定数から除かれても、都の職員(派遣)は今年度も3,106人も存在しており、その職員なしには執行体制が維持できない。外部人材の活用も打ち出され、定数削減と連動させない取り組みも必要である。
 現在、職場では業務量に対する人員が不足しており、超過勤務の高止まりやメンタルヘルスを病む職員が増加する異常な事態が続いている。今こそ少子高齢化社会に対して、妊娠・出産や育児・介護等家族的責任と仕事が両立できる支援策の充実や、職場環境の改善・整備が必要である。自らの業務が都民を苦しい立場に押しやっているのではないかジレンマも生じている。都民ニーズに応え、業務量に見合うゆとりある職員配置、働き甲斐があり、誰もが健康で安心して働き続けられる職場の構築が早急に必要である。

(4) 都庁職は、臨海副都心開発など「都市再生」の名による大企業本位の大型開発事業投資の都財政運営を抜本的に見直すことで、自治体本来の責任を果たし得る等、都財政再建の具体的提言も行ってきた。臨海副都心開発の失敗を繰り返すことはできない。都財政が「健全な状態」である今こそ、歳出の配分を大きく切り替え、都民の暮らし改善などに使うべきである。都政の第一線で働く職員の声を集大成した都庁職の要求に真摯に耳を傾け、都民の生活や雇用等を守るために、以下に示す方向で抜本的な政策の見直しを行うべきである。
@ 「都市開発」「物流改革」の名による大型幹線道路等の建設、臨海副都心開発等大企業の利潤のための大型公共事業は直ちに中止し、「実質的投資総額」(投資的経費+公債費)を抑制すること。
A 首都高速道路整備や羽田空港再拡張などは、国が本来負担すべきものであり、東京都の財政支出を取りやめること。
B 国直轄事業負担金等、国に強制された支出を停止すること。
C 都税を有効活用するため、福祉への投資や公共事業で雇用を創出すること。
D 地方税の原則を歪める法人事業税の一部国税化や地方消費税によらず、地方交付税の財源保障調整機能を回復させ、地方財政を確立すること。
E 新規都債の抑制と低利借り換えの実現による公債費負担の一層の軽減を図ること。

(5)  都庁職は各局要求の提出時期や査定作業の進捗にかみ合わせた闘争を構築した。昨年4月に10予算人員要求闘争方針を確認し、各支部の協力を得ながら職場・分会からの要求集約や、各局要求が提出されるまでに行われる支部・局交渉を重視しつつ、「予算・人員検討委員会」で協議をすすめた。
 09年7月2日に予算・人員に関わる基本要求の提出、9月には各支部と現評による重点要求の対都要請行動を実施した。査定作業が進んだ11月以降には都議会会派要請を行い、合わせて各支部最重点要求の提出を含めた検討小委員会での具体的な主張を行った。さらにステッカー闘争、全組合員署名や所属長要請など職場からの取り組みも重ね、各支部・職場から積み上げた要求の実現に向け闘った。各支部交流決起集会を3回開催し、12月16日には総務局に対して署名の提出と要請を行って都庁職要求の実現を求めた。
 とりわけ予算編成に係わる要求や各支部・各職場から積み上げられた要求の実現を求め、福祉・医療・雇用など、都民生活を支える都民施策の充実に都政の重点に置くよう主張し、自治体が責任を持って対応する体制をつくるよう要求してきた。予算人員の課題は、当局がかたくなに「管理運営事項」とする中で、都政リストラを許さず事業に責任がもてる執行体制を確保するため、11月以降は、労使交渉に変わる「予算・人員検討小委員会」で、実質協議となるよう具体的な対応も行いながら、定数削減に反対し、都民サービスの向上と労働条件の改善を求めてきた。
 さらに「賃金確定闘争」「予算・人員闘争」の一環として、都庁職「島しょ要求」「障害者要求」「研修要求」「新宿庁舎改善要求」を提出し、「島しょ要求」「障害者要求」は対都要請行動も行った。しかし、当局は、こうした道理ある要求に答えず「予算原案」と定数通告を都庁職に行った。
 都庁職はこのように一方的で、都民・職員を無視する当局の「予算原案」や大幅職員定数削減に対して、満身の怒りをこめた「抗議声明」を発表し、復活要求に向けた取り組みを行った。
 今後も以下の点を基本として都民要望に応える予算編成を求め、全面的な都政リストラ攻撃に組織一丸となって反対し、都民とともに取り組みをすすめるものである。
@ 都民に「格差拡大」を押しつける「都市基盤整備」中心の予算編成に反対し、福祉・医療・雇用・住宅などの都民生活改善に向け、暮らし関連予算等を最重点とする予算編成を求める。
A 予算・人員に関わる重要な課題は、職員の労働条件に直接影響を与える。都当局の労使協議の対象としない「管理運営事項」との態度を改めさせ、具体的実質的な協 議ができるよう取り組みを進める。
B 石原知事がこれまでに行った23,532人の定数削減を糾弾し、都民サービスに応え、業務量や職場実態に見合う職員定数配置・職場環境改善を求める取り組みを強化する。
C 憲法の理念と精神にもとづく地方自治の本旨の実現である都民本位の都政を実現するため、この間の石原都政が都民に与えた痛みを明らかにし、広範な都民と連携しながら取り組みを強める。
以上
ページのトップへ戻るページのトップへ戻る
 

Copyright (C) Tokyo metropolitangovernment laborunion.