都庁職(東京都庁職員労働組合公式サイト)

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伊ヶ谷地区海上より見る三宅島 撮影2003年4月10日三宅支庁提供
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見解
 

09東京都人事委員会勧告に対する都庁職の見解と態度

2009年10月9日
東京都庁職員労働組合


1.
 10月9日、東京都人事委員会は知事及び都議会議長に対して、職員の給与に関する勧告を行った。人事委員会は公民比較による例月給の較差を△1,468円(△0.35%)とし、5年連続のマイナス勧告となった。地域手当については、現行16%を17%に引き上げ、これに伴う本給引き下げ分とマイナス較差を合せて平均改定率△1.2%の給与改定を行うとした。そして、改定にあたっては若年層及び管理職層の引下げを緩和し高齢層の引下げを強めるとし、また医療職給料表(一)については、医師の人材確保を図る観点から引き下げ改定は行わないとした。具体的な改定は、職責による水準差を拡大し昇給カーブのフラット化を行うとして、0.0%から△1.5%の幅で給料表を改定、平均の削減額は年間17.6万円にものぼり、断じて認められない勧告である。
 8月に行われた人事院勧告では月例給△863円(△0.22%)の官民較差としたが、その中で明らかにした「地域別官民給与の比較」で東京都が1.39%プラスであるとしたことからも、この全国平均の較差を上回るマイナス勧告は到底納得できるものではない。
 この間政令市の人事委員会勧告はすべてマイナス勧告で、10市では国を上回るマイナス勧告となっており、8日に行われた特別区人事委員会の勧告は△1,605円(△0.38%)であったことなど、引き続き大都市の公務員賃金を狙い撃ちにした政治的な勧告といわざるを得ない。

2.
 都庁職は3月の段階から9月まで3回にわたって実施した人事委員会要請行動において、同種・同等の比較という原則に基づく公民比較を行うべきことや、一昨年の比較対象企業規模の改悪を撤回し、従前の100人以上に戻すべきことを訴えてきた。また、首都圏に生活する都職員の生活を確保するための給与改善勧告を行うよう求めてきた。さらに中高齢層に対するさらなる昇給カーブのフラット化は認められないこと、地域手当の段階的な引き上げに伴う本給削減は、退職手当の削減等賃金改悪に自動的に繋がるもので反対であること、特に地域手当が支給されていない島しょ等勤務職員については大幅な年収減に直結するため、何らかの措置を講ずることを含めてこの矛盾を解決することを強く求めてきた。
 しかし今回の人事委員会勧告は、こうした都庁職の切実な組合員の要求を一切反映しない一方で、政府・財界の進める公務員総人件費削減に加担し人事院勧告に追随するものである。われわれの労働基本権制約の代償として中立・公正な第三者機関であるべき人事委員会の役割を自ら投げ棄てたことに都庁職は断固糾弾する。

3.
 また一時金について人事委員会は、民間における支給月数を4.15月とし、現行4.5月分から0.35月分を期末手当から引き下げると勧告した。なお、5月に行った夏季一時金の支給凍結0.20月分は0.35月引き下げに充当することとし、差引き0.15月分について3月期の期末手当から引き下げることを勧告した。また、2010年度(平成22年度)以降、3月期の期末手当を廃止し、その支給割合は6月期と12月期の期末手当に配分することもあわせて勧告した。一時金に関する勧告は、人事院及び各政令市人事委員会のほとんどが0.35月引き下げとしており、都人事委員会を含め横並びの極めて不合理かつ不当な勧告といわざるを得ない。
 5月の人事委員会の不当な臨時勧告による夏季一時金0.20月支給凍結に際して、都労連は短期間にも関わらず、2回の総決起集会と早朝宣伝行動を背景に、連日のように対都交渉を展開した。結果、支給凍結ははね返せなかったものの、都労連委員長と副知事のトップ会談により、09確定交渉において一時金の年間支給月数について労使協議で解決することを確認している。都庁職は、不当な一時金引き下げ勧告の実施を阻止するため、都労連に固く団結して闘いを推し進めるものである。
 また、「報告(意見)」の中で、従来から人事委員会が勤勉手当の成績率の適用範囲と査定幅の拡大に言及してきたことに加えて、勤勉手当の割合を国と同程度に引き上げる等、一時金への業績反映の度合いを高める取り組みを進める必要があると述べている。この問題については、「能力・業績主義」賃金体系を推し進めようとする都側と、これに反対する都労連・都庁職との間で鋭く対立している課題であり、人事委員会がこうした労使で対立する課題に関して、都側の主張に偏した意見を述べることを許すことはできない。

4.
 給与構造・制度改革に関しては、「報告(意見)」において、本給と地域手当の配分変更が終了する2010年度(平成22年度)に、これまでの取り組みの効果を分析・検証して、課題を整理するとしている。これは8月の人事院勧告が、地域別官民給与比較の調査結果を明らかにしつつ、「地域手当」導入による地域間配分是正が2010年度に完了した時点で「給与構造改革」の検証を行うとしたことに歩調を合わせたものである。これにより地域手当の支給割合の見直しなど、さらなる賃金改悪を狙うことは断じて認められない。
 国において廃止が勧告された自宅に係る住居手当に関しては、都と国では住居手当の趣旨や支給要件が異なり、また職員の住宅事情も全く異なることから、今年については見直しは行わないとしたが、1970年(昭和45年)の勧告による制度創設以来ほとんど見直していないことから、国の見直しを契機として制度の意義を検証し今後の制度のあり方を検討するとした。都庁職は、国にあわせて住居手当を廃止する不合理を指摘し、廃止は断じて認められず改善こそ図るべきであると求めてきた。住居手当見直しを強行しなかったことは当然であり、引き続き別枠原資による増額を図ることを基本に、住居手当の充実を求めるものである。

5.
 今回、医療職の給与の見直しとして、医師について適切な処遇を確保するため、給料表の引き下げ改定を行わないこととあわせて、今後各種医療機関における処遇を的確に反映する手法を検討するとした。
 看護職等の給料表に関しても、人材確保の観点から職務の専門性をより重視したフラットなカーブへ転換する中、効果的な初任給水準を確保すると述べている。また、来年度からの実施に向け、看護師・助産師採用制度について抜本的に見直すとして、採用区分の統合や免許取得見込者と免許取得者の採用区分を設けることや、受験資格について上限年齢の緩和あるいは撤廃、試験・選考内容の簡素化など、人材確保に向けた具体的な方策を掲げている。国や独立行政法人、民間等の医療機関との間で、とりわけ看護師等の人材確保については競争状態にあるが、都立病院等においては若年看護師を中心に離職率が高い一方、充員も予定に達することができず、人材確保が極めて困難になっているのが実情である。したがって人材確保のために採用制度の改善を図ると同時に、それを担保するために医療職給料表(三)の改善を図ることは重要な課題であり、初任給だけでなく給与水準全体の改善が求められている。今回の給料表改定では、1級初任給あたりの号給の引き下げを抑えたに留まる不十分な改善である一方で、中高齢層の昇給カーブのフラット化を進めており不満な内容といわざるを得ない。

6.
 今後の人事制度のあり方に関しては、人材の確保に関して労働市場の変化や社会情勢に即応した採用制度の見直しを実施するとしているが、具体的に触れているのは、看護人材の確保のため、2010年度(平成22年度)からの実施に向けて看護師・助産師採用制度を抜本的に見直すことに留まっている。
 一方、喫緊の課題である人材育成に関しては、「個」に着目した人材の育成・活用として、若手職員の育成の充実等、管理監督者が、若手職員の自ら学ぶ意識を喚起し主体的な取り組みを促すなどにより、育成目標の達成に向けて職員を計画的に指導していく必要があると述べている。また、技術系職員に関して、専門性を有する職員の育成にあたっては、OJT等により専門知識・能力の向上を図り、強みとして育むとしているが、いずれも従来の人事委員会の意見を踏襲しただけで、具体性と実効性に乏しいものといわざるを得ない。
 行政各分野においてこれまで培ってきた知識・経験、技術・技能の継承は喫緊の課題である。幅広い都政各分野における専門家育成のためには、職員の希望や適性に即した職員配置を如何に行うのか、また知識・経験や技術・技能の継承を担う中高齢層の処遇の充実など、具体的な早急に実施する必要があるが、それらに関する言及はなく、主任級職選考や管理職制度の見直し・検討に触れたに留まっており、必要な人事制度改善に関して抽象的な内容に終始している。またそうした方策を処遇面で担保するためにも、複線型の人事制度を確立し一般職への専門職導入を決断すべきであると都庁職は求めてきたが、これに全く応えていない内容で極めて不満である。

7.
 高齢職員に関しては、再任用職員の豊富な実務経験に基づく知識・技術等を職務において生かすため、本人の適性や職歴を考慮し、能力発揮に適した職場への配置や、若手・中堅職員の指導・助言に携わる役割を求めるなど、都労連が求める再任用制度の充実や処遇の改善に全く触れず、専らその「活用」を強調していることは許しがたい内容である。
 また、人事院が定年年齢の段階的な延長と立法措置にむけた意見具申を行う検討を進めるとしたことに対して、人事委員会は国や他団体、民間の動向を注視して研究を進めると言及したに留まっている。拙速に人事院に同調していない点は認めるものの、高齢者雇用の確保・充実のために職員の要望を反映することが重要であり、そのために労働組合との協議を前提に検討を進めるべきである。
 その他、来年4月の改正労基法の施行にあわせて、月60時間を超える超過勤務に係る超過勤務手当の支給割合引き上げと超過勤務縮減について意見具申し、また子育ての両立支援、メンタルヘルス対策等の重要性についても意見を明らかにしている。しかしいずれも具体性に乏しく、例えば両立支援策については、人事院が国家公務員の育児休業に関する法の改正や子どもの看護休暇の日数の拡充等を措置するとしたことに対して、国の改正内容を踏まえると消極的な対応に終始している。またパワー・ハラスメント問題に関しては、初めて報告(意見)で触れたものの、今後の研究・検討に留まって具体的な対策を示すに至っておらず、総体として不満な内容といわざるを得ない。

8.
 今次確定闘争は、不当な夏季一時金凍結を受け一時金確保に向けた重要な闘いである。さらに、08確定闘争で引き続き協議とされた現業任用制度改善の取り組みは、再構築を図った都労連統一要求をもとに都庁職として最重要の課題として闘いを進めていく。さらに、福祉関連要求・島しょ要求・障害者要求等、要求と課題は山積している。
 都庁職は、もはや労働基本権制約の代償としての立場や機能を放棄した人事委員会勧告を徹底糾弾し、都労連に団結してすべての組合員の統一行動を背景に厳しい情勢を打破し、労使協議による諸要求実現をめざして闘いぬくものである。

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