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伊ヶ谷地区海上より見る三宅島 撮影2003年4月10日三宅支庁提供
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見解
 

「平成22年度予算」に関わる副知事依命通達等に対する
都庁職の見解と態度


2009年8月13日
東京都庁職員労働組合

1 はじめに

 7月30日、東京都は「平成22年度 予算の見積りについて」(副知事依命通達)、「平成22年度 予算第一次経費の見積書の作成について」(財務局長依頼)、平成22年度 組織及び職員定数方針並びに監理団体職員等調整方針について」(総務局長通知)、「平成22年度 組織改正計画及び所要人員計画の作成について」(総務局人事部長依頼)、「『10年後の東京』への実行プログラム2010(仮称)策定方針」(知事決定)など、来年度予算編成に係わる一連の文書を公表した。
 これらは予算編成・定数査定にかかわる方針であり、都庁職の2010年度予算人員要求闘争にも重要な影響を与えることから、ここに見解と態度を明らかにする。

2 公表された文書の概要

(1)「平成22年度」予算の見積りについて(副知事依命通達)
 冒頭、「都財政を取り巻く環境は、当面大きく好転することは期待できない」という認識を示した。その上で「少子化など東京の将来に向けた諸課題」「厳しい経済状況の下にあって雇用問題など都民生活の足元の課題」への対応が必要であり、基金積立や都債発行の抑制などで培った財政の対応力を計画的に活用するとしている。その前提として、施策の点検による効率化や施策の実効性を最大限に高める取り組み、事務事業評価の取り組み強化が必要としている。
 そのためには、新たな公会計の視点や、必要性や将来の影響に留意した施策の選択、事務事業評価の取組の強化が不可欠とし、新たな施策も既存の施策も真剣に構築するよう求めている。
 「平成22年度予算」は、「厳しい財政環境が想定される中にあっても、事業の効果や将来の影響を見据え、都が為すべき役割をしっかりと果たす予算」として、次の基本方針を示し、各局が予算見積書を作成するよう求めた。
 第一に、東京の将来を創るために必要な中長期的な取組を着実に実施するとともに、都政が直面する諸課題に的確に対応。
 第二に、これらを確実に達成するため、税金を最大限効果的に無駄なく活用する認識の下、事業の執行体制や将来の影響も含めて厳しく有効性を検証した上で、一層効率的で実効性の高い施策の構築。
[1]  すべての施策とその実施体制の事後検証を強化し、必要な見直し・再構築を確実に行うこと。経費の見積りは、民間の発想に基づく手法を取り入れるなどコスト縮減、過去の決算や執行状況の分析・検証を行い、事業評価を踏まえた見積りを行うよう指示している。
[2] 「10年後の東京」への実行プログラム2010(仮称)は、その策定方針に基づき、目標の着実な推進を図るため、これまでの取組の分析・検証や、今後の施策の実効性等を踏まえ必要な経費を要求することとしている。
[3] 経費について
 義務的経費(政策的判断の余地が少なく、基礎的計数の精査により経費が積算されるもの)は、過去の決算等の分析・検証を踏まえ、積算根拠を充分精査した見積額とする。
 自立的経費(政策的判断の余地が少なく、各局がその責任において自立的に取り組むべき事務事業経費)は、「平成21年度」予算額の範囲内(ゼロシーリング)とする。
 政策的経費(政策判断を要する経費)は後年度の負担を十分精査した上で、原則として「平成21年度」予算額の範囲内(ゼロシーリング)とするが、「財務局と協議」という例外規定を盛り込んでいる。
 指定事業(シーリングになじまず、別途財務局が指定するもの)は、財務局と事前調整の上算定するとして、特例扱いとされている。
[4]  新規事業及びレベルアップ事業は、スクラップ・アンド・ビルドを前提とし、新規事業は原則として期限の設定、既存事業も終期の明記を求めている。これらは昨年と同様である。
[5]  職員定数は、事務事業の見直しやアウトソーシングの推進など業務執行方法の改善で削減を図るとされた。多様な雇用形態を積極的活用しながら、スリムで機能性の高い強堅な執行体制を構築することととされた。
 石原都政下で削減目標が示されなかったのは、はじめてである。
[6]  東京都監理団体は、存在意義の検証・不断の見直しと、経営改革推進に向けた適切な指導監督を求めている。特に団体に対する財政支出は、経営の効率化・自立化の促進から必要な見直しを求めている。これらは昨年と全く変わっていない。
[7]  各種補助金は、時代状況の変化を踏まえた必要な検証などを行い、積極的に見直すとし、都から区市町村への財政支援も見直しを積極的に行うとしている。これらも昨年と同様である。
[8]  施設の新築・改築、耐震化は、「主要施設10ヵ年維持更新計画」に基づき、事業のあり方などの精査をした上で見積るとしている。事業用地の先行取得は十分な検証を求めるとともに、施設の管理運営等では民間活力の積極的活用など「効率的」執行体制の実現を求めている。
[9]  情報システムは、費用対効果の検証、効率的な運用を求めた。その経費の見積りでは、既存の維持管理経費の一層の削減、新たな構築は、後年度負担を含めた費用対効果を明らかにするよう指示した。
[10]  歳入見積りでは、更なる収入確保を図るため、都税収入の徴収率の一層の向上による収入確保や国庫支出金の積極的確保を掲げている。使用料・手数料は、受益者負担の適正化と原価計算に基づく見直し、未利用財産の活用等や債権管理の一層の適正化による収入確保、さらに積極的な施策展開への基金活用を掲げている。
 昨年と、大きな変更点はない。

(2)平成22年度組織及び職員定数方針並びに監理団体職員等調整方針について(総務局長通知)
 都政には、多様化する都民ニーズの対応や、「10年後の東京」の施策を着実に推進するという課題認識を示した。そのため、限られた人材を有効活用しながら都民サービスを展開するため、事務事業の再検証し、徹底した内部努力を求め、少数精鋭による効率的な執行体制の構築が大前提としている。合わせて公民の役割分担の見直しで、民営化やアウトソーシングを推進し、非常勤職員・人材派遣等、多様な雇用形態のマンパワーの活用により、効率的な執行体制、機能的で柔軟な都政運営を実現するとしている。 民間委託の拡大と多様な経営改革手法の活用、管理部門・企画部門の抜本的見直し、類似事業の集約化や、事業動向に応じた組織の大胆な見直しによる職員定数削減が掲げられる一方、実行プログラム2010(仮称)事業案には、効果などを考慮し、事業内容などを精査し、組織と人員要求を行うこととしている。地方独立行政法人などは、職員派遣を合理化や効率化により必要最小限にするとともに計画的な解消を求め、監理団体には変革に向けた指導の徹底と、都からの補助・委託などの見直した上での人員見積もりを求めた。

(3)「10年後の東京」への実行プログラム2010(仮称)策定方針(知事決定)
 「10年後の東京」は2016年まで10年間の長期計画として策定された。そのうち3年間を見通した具体的な施策を「実行プログラム」とし、毎年ローリングさせている。「10年後の東京」策定以降、「重点事業」が「『10年後の東京』への実行プログラム」とされ、昨年度分から知事決定となった。オリンピック・パラリンピック招致を実現するためにも先進的な取組の成果を新しい都市モデルに高め、広く発信することが不可欠とし、機動的・戦略的な施策の展開を求めている。
[1]  「10年後の東京」計画の確実な実現に向け、実効性ある取り組みを重点的に推進する3年間のアクションプランで、行財政運営を先導するもの。
[2]  方針は、「10年後の東京」で掲げた8つの目標の確実な実現に向け、「実行プログラム2008」「実行プログラム2009」を再構築し、都民への施策効果が高い取組を優先的に実施し、情勢の変化に対応し、時代を切り開く施策を重層的・複合的に展開する。
[3]  主な内容は、「平成22年度」からの3ヵ年のアクションプランで、重要課題は全庁一丸となった取組を集中的・着実に実施して、眼前の危機的局面を打開するとしている。多様な主体との広範なムーブメントの展開や「地球温暖化対策推進基金」「スポーツ・文化振興交流基金」「福祉・健康安心基金」など都独自の基金活用、国と都の協議状況を踏まえた対応、アジア諸都市・近隣自治体との連携などは、昨年と変わりない。
[4]  効率的・効果的な事業執行や経営改革を進めるとともに、オリンピック・パラリンピック開催の気運を醸成するために総力を挙げ、推進するとしている。

   これらを内容とする事業案は、「実行プログラム2009」策定後の状況を鑑みて、新規の施策・事業につながる取組の検討と、実効性の高い事業案を求めている。ここで選定する事業は予算・人員を優先的に措置すると、特別の扱いである。

(4)そのほかの文書の特徴
 依命通達と同時に公表された総務局人事部調査課からの「平成22年度 組織改正計画及び所要人員計画等について」では、病休者の増大や育児短時間制度取得者等への対応として、昨年同様に人材派遣活用を行うとしている。また、再雇用職場の設定に関わる指示は昨年同様15%削減、課長補佐も昨年同様の5%程度の削減が示された。

3 都庁職の見解と態度

 新自由主義がもたらしたリーマンショックに端を発した不況が、今日の都民生活に大きな影響を及ぼしている。しかし依命通達では、経費は基本的にゼロシーリングとし、都民要求には積極的に応えず、オリンピック招致を口実にした「10年後の東京」を実現させる施策には、予算や人員を優先的に措置していくとする当局の姿勢は許し難いものである。
 これまでのような財政運営に関わる指針等が示されない中で、依命通達では「都財政を取り巻く環境は、当面、大きく好転することは期待できない」と認識を示しているが、都財政は税収減のもとでも、依然高い水準を保っている。また、施策の効率化、実効性を高めるためと「新たな公会計制度」の視点も強調されているが、民間企業が事業効果を測るための複式簿記を、全く質の異なる自治体に持ち込むものである。都庁職は、都政が地方自治体本来の役割を果たすため、貧困と格差社会の拡大にあえぐ都民生活改善に向けた積極的な施策展開に、予算を大きく配分するべきと考える。また、庁舎の改修・改善と庁有車の更新なども、着実に実行すべきである。民営化・民間移譲・指定管理者制度の拡大・市場化テスト拡大・地方独立行政法人化の推進など、公的責任を投げ捨て、都政の変質と大企業だけが儲かる都政リストラに強く反対する。10月にはオリンピック・パラリンピック招致の開催地が決定する予定であり、この結果が今後の予算編成に大きな影響を与える事になるであろう。
 石原都政のもとでこれまで、都政の構造改革・リストラ方針と職員定数削減計画を一体化した、2次にわたる「財政再建推進プラン」や「行財政改革実行プログラム」などが、公表された。それらを着実に実行するため、副知事依命通達をはじめとした予算編成に関わる通達等が出されてきた。しかし今回の文書は、新たな行財政改革の指針や職員定数の削減等の目標がないまま、昨年のものをほぼ踏襲して発表されている。依命通達で「職員定数については、事務事業の見直しや、アウトソーシングの推進など、業務執行方法の改善を進めることにより、削減を図ること」とされ、定数削減を推進する石原都政の基本スタンスは何ら変わっていない。
 さらに、事務事業の再検証や必要性の高い分野にマンパワーをシフトする等、内部努力による少数精鋭で効率的な執行体制の構築を求めている。これらはこの間、都庁職が指摘している都民サービスの後退や、厳しい職場実態を一層すすめる内容である。さらに定数削減後に当局が行う職場の「検証」は、部分的な視点に止まり、その後のサービスの質の低下など、効率的効果的な事業といえない点には耳を貸さない。当局は、昨年都議会で自民党から指摘された「都政の執行力の低下」も、反省し改めようとする態度が見られない。
 都が進めてきた構造改革路線による行財政改革は、その検証が全く不十分であり、見直しなくして先に進むことは、今後都政に重大な問題をもたらす可能性を秘めている。また、これまでの削減目標達成ありきの職員定数査定は、職員ひとり一人に過重な負担となり、超過勤務の恒常化、パワーハラスメント・セクシュアルハラスメントを含めた人間関係の不調、メンタルヘルス不全など病気休暇・休職者の上昇も引き起こしている。その上、正規職員での代替を求める病休者や育児短時間勤務職員に、「人材派遣」で対応することは、極めて問題である。新たな官製ワーキングプアや不安定雇用の労働者を産み出す要因となる、非常勤・人材派遣など「多様な雇用形態の活用」、民間委託やアウトソーシングの推進は認める事はできない。職員を一層疲弊させ、知識や技術・技能の伝承を妨げる定数削減に反対し、業務量に見合う職員配置、職員の大量退職に対応する新規採用、現業職の計画的採用を求める。組織を動かすには、そこに働く職員を大切にする視点が重要である。
 都庁職は2010年度予算人員要求実現の闘争を、都民の理解を得ながら、各支部と共に闘いぬく決意である。

以上

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