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伊ヶ谷地区海上より見る三宅島 撮影2003年4月10日三宅支庁提供
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見解
 

2009年度「東京都予算案」「職員定数」等に対する見解と態度

2009年2月12日
東京都庁職員労働組合

1 はじめに

 東京都は2009年1月16日、「平成21年度(2009年度)東京都予算(原案)」(以下「予算原案」)および「平成21年度組織改正及び職員定数」「平成21年度東京都監理団体所要人員計画」を発表し、さらに同日「平成20年度最終補正予算案」(以下「補正予算案」も発表した。
 その後、200億円を財源とする復活予算をふくめた「平成21年度(2009年度)東京都予算案」(以下「予算案」)を1月23日に発表した。
 この「予算案」は、世界同時不況の中で、都税収入の大幅な減少を強調しながら、引き続き巨額な予算を「『10年後の東京』実行プログラム2009」(以下「実行プログラム2009」)に基づく都市基盤整備や、オリンピックの基金や招致関連に投入している。さらに「行財政改革実行プログラム」を着実に実行し、「新自由主義」に基づく「構造改革」路線を加速して、事業の市場化を進め、3年間で4,000人の職員定数削減目標も超過達成させた。

 都庁職は、09予算人員闘争において都民本位の都政運営と都庁労働者の諸要求実現をめざし、要求書の提出や要請行動、検討委員会での議論など、要求実現に向けた取り組みをすすめてきた。しかし示された「予算案」や「職員定数」は、都庁職の要求に応えず、深刻な事態におちいっている都民生活改善の施策は極めて不十分である。都庁職は「実行プログラム2009」発表時に「コメント」、「予算原案」発表時に「抗議声明」を出し、基本的見解と抗議の意思表明を行なったが、確定した「予算案」「職員定数」の問題点と今後の闘いの方向を示すため、「見解と態度」を明らかにする。

2 「予算案」「職員定数」の特徴と問題点

(1) 編成方針および全体フレーム

 「予算案」は全会計の合計で12兆8,338億円(前年度比4.1%減)、そのうち一般会計は6兆5,980億円(前年度比3.8%減)となっている。その編成方針は「日本経済が危機に直面する中にあって、短期・中長期両面から、都政が今日なすべき役割を確実に果たすことによって、都民へ『安心』をもたらし、『希望』を指し示す予算」としている。そして「都民の不安を取り除く迅速な対応、危機克服への先駆的取り組み、東京の将来を創る中長期的な取り組みなど、都政が取り組むべき課題に財源を重点的に振り向ける」「歳入、歳出両面から厳しく点検を行い、中長期的に施策を支えうる財政基盤の確保」の2点を基本としている。
 予算編成にあたり石原知事は、06年7月「今後の財政運営の指針」で示した07年度予算から3年間「ゼロシーリングを基本」とする姿勢を貫きながら、06年12月に発表した長期構想「10年後の東京」を具体化する「実行プログラム2009」(08年12月発表)の施策にはシーリング外として、大きく予算配分している。「実行プログラム2009」は、「実行プログラム2008」をローリングさせ、2009年度から3カ年分の重点事業を掲げ、その規模は前年度を約2,000億円増額させる総額1.9兆円に及び、「予算案」ではそのうちの09年度分5,907億円(前年度比1,201億円増)が計上された。
 オリンピック招致関連では、今年10月の開催都市決定に向け招致活動を本格展開し、オリンピック招致を口実とする都市基盤の整備を加速し、オリンピック開催準備基金にも積み増した。
 その一方で「都民の不安を取り除く迅速な対応」は一部に限られ、困窮する都民の生活改善に直結する施策の予算規模は低く抑えられている。
 以下、歳入・歳出の項目別で見ていく。

(2) 歳入について

 一般会計の歳入規模は6兆5,890億円で、4年連続の6兆円超である。08年度当初予算と比較して2,580億円減(3.8%減)だが、07年度当初予算とほぼ同程度である。歳入の多くを占める都税収入は、法人事業税の暫定措置(国税化)の影響もあり、4兆7,577億円と08年度当初に比べて7,520億円減(13.6%減)である。しかし08年度最終補正と比べれば5,625億円減であり、さらに法人事業税の暫定措置に伴って国から地方法人特別譲与税が1,005億円譲与されるため、実質は約4,600億円の減に止まる。
 また、必要な財源確保のため、2,819億円の基金を取り崩すとしている。都債の発行は3,743億円で、起債依存度は一般会計で5.7%の健全な状態を維持している。

@ 来年度の都税収入は4兆7,577億円を見込んでいる。急激な景気の悪化や法人事業税暫定措置の影響により、過去最大の減収としているが、その大部分が法人二税である。固定資産税・都市計画税は着実に増加している。

A 都債は3,743億円(1,077億円40.4%増)、国や地方財政計画と比べ極めて低い水準としている。それでも2009年度末の残高見込みは6兆3,000億円で、昨年度より1,000億円減少(都税税収の1.3倍)している。

B 繰入金は必要財源の確保のためと大きく増額し、3,743億円を計上した。そのほとんどは基金の取り崩しで、08年度に積み立てた「法人事業税国税化対策特別基金」は2,215億円全額を取り崩すとしている。

(3) 歳出について

 一般歳出は「都政が取り組むべき課題の対応に財源を重点的に振り向けた」として、対前年度比2.9%増の4兆5,422億円となった。
 投資的経費は、対前年度比6.2%増の7,771億円(都単独事業4,558億円=12.1%増)となり、歳出の11.8%を占める。「プログラム2009」に掲げる「都市基盤の整備」のため、三環状道路等や物流ネットワークの整備を最重点的に配分する。さらに東京オリンピック開催準備基金にも1,000億円を積み増し(合計4,089億円)を行う。
 「負の遺産」となっていた「稲城大橋有料道路」は、無料化のため41億円を計上した。
 目的別予算では、「警察と消防」が全体の約20%を占め、「都市の整備」も20%に迫る。「福祉と保健」は276億円の増で、新インフルエンザ対策・周産期医療が充実されたが、都民の反対が大きい多摩総合・小児総合医療センター(仮称)の整備や健康長寿医療センターの支援も推進する姿勢で、都民要望に十分応えない予算編成は明らかである。
 給与関係費は、大幅な職員定数削減や退職者減に伴う退職手当の減等により623億円減(3.7%減)となった。

@ 「実行プログラム2009」が掲げる施策は、全額をシーリング外で計上し、総額5,907億円に及んでいる。三環状道路(首都高中央環状線・外環・圏央道)等の整備促進に1,903億円、東京港外資コンテナターミナルの整備や羽田空港再拡張事業に対する国への無利子貸し付け(総額1,000億円)を含む空港・港湾機能の拡充に418億円など、オリンピック招致を口実とした大企業に大きな利潤をもたらすの大型公共事業が多数含まれる。「実行プログラム2009」策定の考え方では「都民の新たなニーズや時代の変化に的確に対応する施策展開」と掲げるが、福祉や雇用など不十分なままである。

 「実行プログラム2009」の最後に掲げるオリンピック関連の施策として、招致活動の本格展開とオリンピックムーブメントに23億円が計上された。東京オリンピック・パラリンピック招致本部には「東京オリンピック・パラリンピック組織委員会(仮称)の設立準備等」14億1,400万円を含む総額57億円(「実行プログラム2009」との重複あり)の予算をつけた。今年10月の開催都決定に向けた大きな予算である。「東京オリンピック開催準備基金」にも1,000億円を積み増し、総額4,089億円となる。各局の予算にも、オリンピック招致にむけた取り組みが多く含まれる。

A 福祉関連の予算では、都民要望の高い特別養護老人ホームの経営支援事業は復活予算で前年度規模をほぼ確保したものの、老人保健施設の施設整備費補助は2億3,100万円減額している。07年度に高齢者・障害者・医療保険・福祉保健補助制度を統合した区市町村包括補助事業は新たな事業も組み入れられ、補助の根拠や基準の後退を招かぬよう注視が必要である。
 都庁職が反対している神経科学・精神医学・臨床医学の3総合研究所を「東京都医学系総合研究所(仮称)」に統合整備する施策も、一期開設に向け進められる。
 さらに、老人医療センターと老人総合研究所との再編整備は、地域住民や区議会から都が責任持って運営すべきとの強い要望があるが、その声を無視し、4月から地方独立行政法人となる。そのため設立される「健康長寿医療センター」の運営の支援や新施設の整備費として63億2,300万円が計上された。また都民の保健・衛生・安全などの試験研究機関である健康安全研究センターを「健康危機管理センター(仮称)」とするため21億7,500万円が付けられた。知事が強調する「新インフルエンザ対策」には171億9,300万円と大きく増額された。
 介護保健給付費負担金や広域連合に対する都負担金(後期高齢者医療制度給付費等負担金)は対象となる高齢人口増に伴う増額であり、当然の増といえる。

B 都営住宅の建設等では590億470万円と前年度97億円増えたが、建て替えとスーパーリフォーム、耐震改修が中心で10年連続で新規建設がなく、大きな問題である。

C 産業労働局予算は30.2%増の3,637億1,700万円と大きく増加した。主に、中小企業制度融資で、事業は中小企業振興公社に委ねているが471億円増の2,418億8,300万円を計上した。また新規事業として、中小企業設備リース事業87億2,400万円を措置した。しかし、中小企業の現状から見れば全く不十分であり、雇用就業支援も十分と言えず、これらに対する大きな都民要望を、充分受け止めていない。
 一方、航空機産業への参入支援(6億5,000万円)や重点戦略プロジェクト支援事業(1億3,300万円)など、大企業との関連性も懸念される事業も着実に予算を増額している。さらに、オリンピック招致時のメディアセンター構想のある東京国際展示場の運営には20億7,700万円増の70億5,400万円が、東京国際フォーラムも倍増の36億9,000万円が措置された。

D 復活予算は例年と同じ200億円が財源で、「都市基盤の整備」には昨年度を上回る84億6,600万円がつき、その結果「予算案」における性質別内訳の「投資的経費」のうち、都単独が40億円を超え、前年度比10.1%増の高い伸び率を続けている。区市町村振興の交付金等は35億6,000万円で昨年度の半分になり、福祉・保健・医療の充実として45億7,100万円が措置された。例年、復活予算で上乗せされる私学助成は、20億4,700万円が増となった。他にも、商店街の活性化や消防団の活動等に細かく配分しており、例年と異なる。
 今回、都議会議員選挙前ということもあり、都民要望を受け止めたかのような体裁を取っている。

(4) 大幅定数削減について

@ 2009年度職員定数は、知事部局・公営企業・学校職員・消防・警察等全任命権者総計16万5,293人で、前年度から1,739人の定数削減を行った。これは「行財政改革実行プログラム」による2007年から3年間で4,000人の削減目標に対し、4,006人の削減で超過達成している。警視庁は増員された。
 石原都政のもとで職員定数は23,526人削減された。うち知事部局は17,846人減(清掃区移管分を含む)、学校職員1,208人減となっている。しかし警察庁は今回も62人増でトータル1,264人増となり、他任命の定数削減がすすむ中で、唯一増えている。その結果、実質は24,790人もの職員定数の削減が強行された。
 職場実態を無視し「数あわせ、削減ありき」の定数削減は、円滑な業務執行を阻害し、労働環境を一層悪化させている。

A 知事部局は増員1,267人減員2,414人で、前年度比1,147人の削減である。その主な内訳は、移管・委託で豊島病院の公社化で435人削減、駒込病院の調理業務の18人・医療作業8人を含む技能系29人皆減と臨床検査10人の削減、廃棄物埋立作業等の包括的委託で46人減、築地市場の電話交換・巡視で計7人減、日比谷図書館の区移管で18人減とされた。さらに、松沢病院の病棟再編で16人の減となっている。老人医療センターの地方独立行政法人の移行は676人減で最も大きい。また個人事業税のブロック化で9人減、法人調査事務でも19人減員している。いずれも執行体制の抜本的な見直しや徹底した業務改革等を行うことで、「行財政改革実行プログラム」に掲げる定数削減計画を達成したと述べている。事業所の移管・移譲や現業職場の委託拡大等は、都民サービスの低下に直結するもので容認できない。

B 監理団体の定数は前年度の8,689人から333人増の9,022人となった。これは豊島病院の公社化(454人)が大きく影響し、中央研修の福利厚生事業団への委託(32人増)、道路整備保全公社への委託拡大、公園協会の新規指定管理者事業などで増員された。東京水道サービス(株)も委託拡大で178人増となっている。さらに事務事業の見直しとして、老人総合研究所を健康長寿医療センターに事業譲渡(110人減)、小平福祉園の民間移譲(52人減)で減員された。都職員の派遣数も今年度は3,238人で前年度比で208人増員である。これらは「行財政改革実行プログラム」でかかげた構造改革・監理団体改革を着実に進めるもので、「実行プログラム2009」ともリンクしている。

(5)組織改正について

 オリンピック招致に向けた新施設建設準備室を設置(部長級)し、体制強化をはかる。また、土木技術センターを廃止して、土木技術支援・人材育成センターを設置する。老人医療センターの地方独立行政法人化や豊島病院の公社化も「効率的・効果的な執行体制の構築」として掲げられたが、医者や看護師の人材確保が困難を極める中で、その経営は不透明であり、行政責任が問われる。

(6) 2008年度最終補正予算案について

 都税収入は08年度当初予算から1,895億円減の5兆3,202億円となった。その結果、補正予算は全会計で1,375億円減(一般会計1,208億円減、特別会計116億円減)となり、08年度の予算規模は13兆4,867億円となった。減収に対応するため、減収補てん債の発行(575億円)しつつ、執行状況の精査で不要額を減額している。
 さらに、2月5日に国の第2次補正予算成立に伴う「最終補正予算案の追加分」が示された。423億円を7つの基金積立等に歳入し、うち7億円を08年度中に歳出され、総額430億円となっている。

3 都庁職の見解と態度

(1) 石原都政は10年目となった。「市場原理主義」「新自由主義」を都政に持ち込み、これまで「財政再建」を理由に福祉・医療・教育・雇用など都民に身近な施策や事業の切り捨て、職員定数の大幅削減や給与削減を強行してきた。その後、財政が改善すると、突然「オリンピック招致」を全面に掲げた都政運営に邁進している。「新自由主義」がもたらしたアメリカ発の金融危機に伴う世界同時不況は、予算編成に対する副知事依命通達発表後に顕著になった。日本でも大きな社会問題である「貧困・格差拡大」に対し、タイムリーに都民が求める施策を実施することこそが、自治体の役割である。
 都は05年「行財政改革の新たな指針」を発表し、その具体策「行財政改革実行プログラム」を06年7月に策定した。これは財界の意向や国の施策を先取りして「官から民へ」「小さな政府」路線を実践し、自治体を変質させる構造改革を進めるものである。同時期に「今後の財政運営の指針」を発表し、「財政基盤は未確立」として「3年間はゼロ・シーリングを基本」とし、「負の遺産への対応」「基金の積立・取崩による財源の年度間調整」など、財政構造改革を進めるとともにオリンピック基金1,000億円の毎年度積立等を内容とした3年間の「中期財政フレーム」でコンクリートした。06年12月に発表された「10年後の東京」は、8つの目標からなる長期計画であり、都市基盤整備に重点が置かれたオリンピック招致を口実とした「都市戦略」=「国際金融(多国籍企業)都市づくり」であり、大企業の利益も追求するものである。
 08年7月の09予算編成に対する副知事依命通達では、税収減が確実に見込まれる中で、「10年後の東京」実現を始めとする施策の着実な実施を一番に掲げ、直面する課題への対応をその次に述べている。2番目に実効性の高い施策の構築という基本方針が示された。これらは、税金をどういう施策で都民に還元するかが問われる中で、オリンピック招致や都政の構造改革を一層推進する方向を示している。
 知事の発案である「2016年東京オリンピック招致」は、2月12日の立候補ファイル提出に続き、4月のIOC評価委員会の訪問、10月の開催地決定に向け、世論喚起を含めた施策展開が青天井で進められている。09年度の「重点事業」は、今回も「『10年後の東京』への実行プログラム2009」(3年間のアクションプラン)として昨年12月に発表された。総額1.9兆円、09年度事業費は5,907億円と前年を上回る規模で、「予算原案」に全額しっかりと反映されている。「実行プログラム2009」はオリンピック招致を実現するための施策展開を表明してはばからない。しかし招致関連の施策は最後にこっそり掲載されている。ほかの具体的な施策も「環境」「安全・安心」に結びつけることで、知事の意向に沿うような体裁が取られている。税収減を大きくキャンペーンし、歳入・歳出の洗い直しを急遽指示したのに対し、道路・空港・港湾施設等の整備など投資的経費には大盤振る舞いである。
 「今後の財政運営の指針」では「財政再建の成果を都民に還元していくことが求められる」としたが、還元された実感が都民にあるだろうか、たいへん疑問であり、検証が必要である。
 さらに石原都知事の強い意向で「新銀行東京」が設立され1,000億円を出資したが、経営に行き詰まり、400億円を追加出資した。しかし改善の見通しはほとんどない。莫大な税金が投入される中で、知事の責任はあいまいであり、追求する必要がある。
 これらは「住民の福祉の増進を図る」という地方自治法の精神から、大きく逸脱している。

(2) 福田首相の政権投げだしを受けて昨年9月に麻生内閣が発足した。小泉「構造改革」路線は、大企業に大きな内部留保をもたらし、国民には「格差の拡大」、雇用など生活の危機を招いた。その上、麻生内閣は、定額給付金と消費税の税率アップを抱き合わせにした施策でこの局面を乗り切ろうともがいている。国民の審判を得ず迷走を続ける政府自民党を批判する声は日増しに高まり、早期解散を求める世論は大きい。
 3期目の折り返しに入った石原都政の「予算案」は、2016年オリンピック招致やこれを口実とした「都市戦略」を一気に突き進めるものである。「投資的経費」は6年連続で大幅増加し、三環状道路や、物流改革にむけた交通網の整備など、「都市基盤整備」と称する大企業のための「大型公共事業」に大きく事業展開され、莫大な予算を配分している。さらに首都高速道路や羽田空港再拡張など、本来国が負担すべき公共事業にも引き続き財政を投入している。
 また、都税収入の減少に伴う不安をあおり強調しつつ、オリンピック基金1,000億円積み増し、オリンピック招致に向けた予算の貯め込みは着実に行われている。「社会資本等整備基金」にも94億円を積む。「法人事業税国税化対策特別基金」は全額を取り崩す。その結果、09年度末の基金残高見込みは2兆8,998億円となるが、08年度最終補正(追加)分423億円が積み増しされても、08年度末見込みと比較して694億円しか減少しない。
 一方で、都民の暮らしに密着する都立施設はこれまでに150カ所以上も廃止し、さらにPFIや指定管理者制度の導入、地方独立行政法人化、民間委託や民間移譲の拡大、市場化テストなどで自治体の市場化をすすめ、「公」の事業から撤退している。来年度も、老人医療センターと老人総合研究所の地方独立行政法人化、豊島病院の公社化等が進められ、都立公園の指定管理者制度導入の拡大などが強行される。
 これらは「行財政改革実行プログラム」に基づく都政の構造改革・都政リストラであるが、国より先を行く「構造改革」も、職員や都民の声に耳を貸さず、検証も不十分なまま推進した。これは編成方針に掲げる「都民へ安心をもたらし、希望を指し示す予算」ではない。ここまで都民施策を切り捨て、リストラしてきた当局の責任は重大である。格差社会が拡大する中で生活に苦しむ都民や、次世代を担う子どもたちに、直接具体的な支援を行うのが行政の責任である。福祉をはじめ医療・教育・住宅・雇用など都民生活への施策は低く抑え、都民要望に応えない都政のあり方は断じて容認できない。オリンピックへの積立を中止してでも、歳出の重点を都民施策に切り替えるべきではないか。都庁職はオリンピック招致と都市開発に莫大な税金をつぎ込む石原都政の地方自治体行政の破壊や、その具体化である「予算案」に怒りをもって反対するとともに、都民要求と都庁職要求実現のために引き続きねばり強く闘い抜くものである。

(3) 職員定数では、1,739人(知事部局1,162人)の削減を強行し、「行財政改革実行プログラム」が掲げた3年間で4,000人の職員削減目標を超過達成した。石原都政下で厳しい定数査定が続いたが、警視庁だけは削減されず、聖域である。1999年度に知事部局44,709人、警視庁44,544人でほぼ同数であったが、09度は知事部局25,701人、警視庁45,808人と大きく差がついた。知事部局の「東京オリンピック・パラリンピック招致本部」は今回も増である。一方都税収入が落ち込む中、主税局の削減は、求められる税収確保を否定するものである。また現業の職場は、埋立管理業務の包括的委託、駒込病院の給食調理・医療作業など現業職を皆減してSPC(特定目的会社)委託、都立公園の指定管理者制度によって公園協会委託拡大を行うとした。さらに、築地市場の巡視・電話交換、都庁舎の巡視、児童相談センターや板橋ナーシングホーム・東村山老人ホームの電話交換など各局の現業職も1つ1つを細かく削減し、その総数は知事部局でも100人を越える。今回PFIの運用開始に伴い、駒込病院の現業職を一括してSPCなるものへの委託は、前例もなく職場実態を無視した暴挙である。都民サービスの最前線で働く現業は切り捨て、「夢」で終わるかもしれないオリンピックには、招致を前提とし職員配置する。さらに「職員定数」の「今後の方向」では、大量退職期を迎え「質・量とも働き手の確保が困難」と認識しつつも、多様な経営改革の手法(NPM)で施設管理を監理団体などに移管・委託することで、民間へ丸投げの姿勢を明確にするなど、中長期的な視野に立ち、後継者養成の対応を含めた定数配置と言えない。
 職員定数の削減は、都立施設の統廃合、様々なNPM手法による委託・移譲・公社化等に加え、組織「改正」や業務の「見直し」等で押しつけられた。その結果、業務の維持すら困難な現状に拍車をかけ、都民サービスの低下と職員に労働強化を強いてきた。
 今日、ベテラン職員が培ってきた知識や技術、技能等知的財産の伝承や人材の育成が大きな課題となっている。パソコンだけでは情報収集できないものも数多く、人が人を育てる。「効率的・効果的な執行体制の構築」として監理団体等に委託も進めてきたが、職員定数からはじかれても、都の職員(派遣)は存在しており、その職員なしには執行体制が維持できない。今後当局は、無意味な定数削減目標は掲げるべきではない。今回、外部人材の活用も打ち出され、定数削減と連動させない取り組みも必要である。
 現在、職場では業務量に対する人員が不足しており、超過勤務の高止まりやメンタルヘルスを病む職員が増加する異常な事態が続いている。今こそ少子高齢化社会に対して、妊娠・出産や育児・介護等家族的責任と仕事の両立ができる支援策の充実や、職場環境の改善・整備が必要である。自らの業務が都民を苦しい立場に押しやっているのではないかジレンマも生じている。都民ニーズに応え、業務量に見合うゆとりある職員配置、働きがいがあり、誰もが健康で安心して働き続けられる職場の構築が早急に必要である。

(4) 組織改正ではオリンピック招致に向けた体制が再び強化された。招致に向けた盛り上がりに欠ける中で、都民世論の向上にむけ、「工夫」をしているようだが、「夢」より現実を見据えた組織のあり方を行うべきではないか。知事の「発案」を実践するだけの体制整備は上滑り、都民はついてこない。

(5) 都庁職は、臨海副都心開発など、「都市再生」の名による大企業本位の大型開発事業投資の都財政運営を抜本的に見直すことで、自治体本来の責任を果たし得る等、都財政再建の具体的な提言も行ってきた。臨海副都心開発の失敗を繰り返すことはできない。都財政が「健全な状態」である今こそ、歳出の配分を大きく切り替え、都民の暮らし改善、たとえば地震や豪雨など災害に強いまちづくりなどに使うべきである。都政の第一線で働く職員の声を集大成した都庁職の要求に真摯に耳を傾け、都民の生活や雇用等を守るために、以下に示す方向で抜本的な政策の見直しをおこなうべきである。
@ 「オリンピック招致」「都市開発」「物流改革」の名による大型幹線道路等の建設、臨海副都心開発等大企業の利潤のための大型公共事業は直ちに中止し、「実質的投資総額」(投資的経費+公債費)を抑制すること。
A 首都高速道路整備や羽田空港再拡張などは、国が本来負担すべきものであり、東京都の財政支出を取りやめること。
B 国直轄事業負担金等、国に強制された出費を一時停止すること。
C 都税を有効に活用するため、福祉への投資や公共事業で雇用を創出すること。
D 地方税の原則を歪める法人事業税の一部国税化や地方消費税によらず、地方交付税の財源保障調整機能を回復させ、地方財政を確立すること。
E 新規都債の抑制と低利借り換えの実現による公債費負担の一層の軽減を図ること。

(6) 都庁職は、各局要求の提出時期や査定作業の進捗にかみ合わせた闘争を構築した。昨年4月に09年度予算人員要求闘争方針を確認し、各支部の協力を得ながら職場・分会からの要求集約や、各局要求が提出されるまでに行われる支部・局交渉を重視しつつ、「検討委員会」で協議をすすめた。
 08年7月3日に予算・人員に関わる基本要求書の提出、9月9・11日に各支部と現評による重点要求の対都要請行動を実施した。査定作業が進んだ11月以降には都議会会派要請を行い、合わせて各支部最重点要求の提出を含めた検討小委員会での具体的な主張を行った。さらにステッカー闘争、全組合員署名や所属長要請など職場からの取り組みも重ね、各支部・職場から積み上げた要求の実現に向け闘った。各支部交流決起集会は6月9月12月と3回開催し、12月17日には総務局に対して署名の提出と要請を行って都庁職要求の実現を求めた。
 とりわけ予算編成に係わる基本要求や各支部・各職場から積み上げられた要求の実現を求め、福祉・医療・雇用など、都民生活を支える都民施策の充実に都政の重点を置くよう主張し、自治体が責任を持って対応する体制をつくるよう要求してきた。具体的には豊島病院の公社化、老人医療センター・老人総合研究所の地方独立行政法人化、埋立管理事務所の包括的業務委託に反対して直営での運営を求め、現業職の新規採用を含めた補充、超過勤務縮減やメンタルヘルスケア対応など職場実態を踏まえた仕事量に見合う人員配置などを強く求めてきた。予算人員の課題は、当局がかたくなに「管理運営事項」とする中で、都政リストラを許さず事業に責任がもてる執行体制を確保するため、査定作業がすすんだ11月以降は、労使交渉に変わる「検討小委員会」で支部重点要求の実現を強く求めつつ、実質協議となるよう具体的な対応も行いながら、目標達成のための定数削減に反対し、都民サービスの向上と労働条件の改善を求めてきた。
 さらに「賃金確定闘争」「予算・人員闘争」の一環として、都庁職「島しょ要求」「障害者要求」「研修要求」「新宿庁舎改善要求」「職員健康診断改善要求」を提出し、「島しょ要求」「障害者要求」は対都要請行動も行った。
 しかし当局は、こうした道理ある要求に答えず「行財政改革実行プログラム」に基づく「構造改革」、なんとしても「4,000名の定数削減」の姿勢で、「オリンピック招致」と都市開発を加速させた「予算原案」と定数の通告を都庁職に行った。
 都庁職はこのように一方的で、都民・職員を無視する当局の「予算案」や大幅職員定数削減に対して、満身の怒りをこめた「抗議声明」を発表し、復活要求に向けた取りくみを行った。
 今後も以下の点を基本として都民要望に応える予算編成を求め、全面的な都政リストラ攻撃に組織一丸となって反対し、都民とともに取り組みをすすめるものである。

@ 都民に「格差拡大」を押しつける「オリンピック」「都市基盤整備」中心の予算編成に反対し、福祉・医療・雇用・住宅など都民生活改善に向け、暮らし関連予算等を最重点とする予算編成を求める。

A 予算・人員に関わる重要な課題は、職員の労働条件に直接影響を与える。都当局の労使協議の対象としない「管理運営事項」との態度を改めさせ、具体的実質的な協議ができるよう取り組みを強める。

B 石原知事がこれまでに行った23,526人の定数削減を糾弾し、都民サービスに応え、業務量や職場実態に見合う職員定数配置・職場環境改善を求め取り組みを強化する。

C 憲法の理念と精神にもとづく地方自治の本旨の実現である都民本位の都政を実現するため、この間の石原都政が都民に与えた痛みを明らかにし、広範な都民と連携しながら取り組みを強める。

以上

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