「『10年後の東京』への実行プログラム2009」に対するコメント
2009年1月8日
東京都庁職員労働組合
東京都は2008年12月19日、2006年に発表した「10年後の東京」の実現に向け、来年度の重点事業に変わる政策を「『10年後の東京』への実行プログラム2009」と題して発表した。
これについて石原都知事は「10年後の東京」を「近未来図」とし、「この実現にさらに弾みをつけるため」、「実行プログラム2008」を加速化させたとしている。この3か年のアクションプランには、44施策・394事業に総額約1兆9,000億円という、昨年を2,000億円も上回る、膨大な予算を投入すると明らかにした。
「10年後の東京」による都市戦略では、更なる成熟都市に向け「3つの取り組み」を掲げているが、昨年6月、2016年オリンピックの正式立候補都市になったことで、昨年アクセルを踏んだ施策を、さらに加速させている。その筆頭である「三環状道路や臨海部道路網の整備等」の3ヵ年事業費は6,528億円で、昨年度より762億円も増加させた。これに空港の拡充や交通ネットワークの整備等を含めた「三環状道路により東京が生まれ変わる」という「経済性」を最優先した施策が、なんと全体の約42%を占めている。
反面、喫緊の課題とする「救急・周産期医療体制の構築」には、3ヵ年で1,412億円、129億円の増であるが、その予算のほとんどは、都立病院の再編整備(府中キャンパス・駒込病院・松沢病院)に投入するものであり、都民が求める新たな施策には乏しい内容である。
「新自由主義」に基づく施策は、アメリカの金融危機を引き起こして日本にも押し寄せ、社会状況は激変を続けており、「格差社会」の拡大、雇用不安などに多くの都民が直面している。さらに麻生内閣のもと、政治も混迷を深め、自治体の果たす役割が問われている。
このような中、2009年度予算に関わる都税収入の減少がことさら強調され、知事査定直前に突然「歳入・歳出の洗い直し」で新たな財源の確保が指示される中で、「実行プログラム2009」については、依命通達の示す通りシーリングの枠外として、昨年度に比べ2,000億円も増加させたことは、容認できない。
多くの人口を抱える東京が「魅力ある都市」として必要なのは、夢で終わるかもしれないオリンピック招致を前提とする大企業の利益を最優先したインフラ整備による成長ではない。肥大化した都市を制御し、広い意味の環境という総合的な視点で再編し、格差社会の是正や安全・安心につながる生活課題など、品格や秩序を備えた都市としての成熟が求められている。
今こそ、オリンピック・パラリンピック招致を中心に据えた都市再生重点の施策を切り替え、福祉・教育・住宅・雇用など生活基盤を安定させるための直接的な施策の充実を重点的にすべきである。また、地球環境や景観に配慮し、情緒や思いやりのある施策を充実させ、中小企業を活性化させ、コミュニティを大切にできる成熟したまちづくりが求められている。
都庁職は、石原都知事による都民不在の独裁的な都政運営を厳しく監視して意見表明を行うとともに、地方自治体としての責務を全うするために奮闘するものである。
以上
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