「平成21年度予算」等に関わる副知事依命通達等に対する 都庁職の見解と態度
2008年8月21日
東京都庁職員労働組合
1 はじめに
7月31日、東京都は「平成21年度予算の見積りについて」(副知事依命通達)、「『10年後の東京』実現に向けた実行プログラム2009(仮称)策定方針」(知事決定)、「平成21年度組織及び職員定数方針並びに監理団体職員等調整方針について」(総務局長通知)、「平成21年度組織改正計画及び所要人員計画の作成について」(総務局人事部長依頼)など、来年度予算編成に係わる一連の文書を公表した。
これらは予算編成・定数査定にかかわる方針であり、都庁職の2009年度予算人員要求闘争にも重要な影響を与えることから、都庁職の見解と態度を明らかにする。
2 公表された文書の概要
(1)「平成21年度」予算の見積りについて(副知事依命通達)
依命通達は、「都財政は、長らく続いた財政の危機的状況を脱し」とし、「東京としてのダイナミズムを維持するために不可欠」な将来に向けた21世紀の都市モデルにするための本格的な取組と同時に、都民が経済面や安全面において抱く不安にどう応えていくかも問われているとしている。一方「平成21年度」の都財政は、法人二税が前年度を下回る可能性が高いなど大幅な収入減少を覚悟する状況だが、財政再建の中で培ってきた財政の対応力を最大限活用した、財政の安定性、継続性の持続を掲げた。施策は効率的で無駄のない有効な施策の構築と実施、実効性の高い施策へ磨き上げて着実に実施することが重要としている。
「平成21年度予算」は、税収減が確実に見込まれる中でも、将来の東京の継続発展に不可欠な取組を進め、現在の都民生活を脅かす課題に適時適切に対応すると位置づけ、次の基本方針を示し、各局が予算見積書を作成するよう求めている。
第一に、「10年後の東京」実現に向けた取組を始めとする将来の東京を見据えた施策を着実に実施するとともに、都民が抱える様々な不安を払拭し、都政が直面する諸課題に的確に対応。
第二に、執行体制も含めて厳しく事業の有効性を検証した上で、事業の着実な実施にも配慮して、より実効性の高い施策の構築。
@ 経費の見積りは、施策の見直し・再構築、民間の発想に基づく手法を取り入れたコスト縮減、決算や執行状況の分析・検証を行い、事業評価を踏まえた見積りを行うよう指示している。
ア 義務的経費(政策的判断の余地が少なく、基礎的計数の精査により経費が積算されるもの)は積算根拠を充分精査して見積額とする。
イ 自立的経費(政策的判断の余地が少なく、各局がその責任において自立的に取り組むべき事務事業経費)は原則として「平成20年度」予算額の範囲内というシーリングをかける。
ウ 政策的経費(政策判断を要する経費)は同様のシーリングをかけるが、「財務局と協議」という例外規定を盛り込んでいる。
エ 指定事業(シーリング外で別途財務局が指定するもの)は、財務局と事前調整の上算定するとして、特例扱いとされている。
これらに対し、「重点事業」に代わる「10年後の東京実行プログラム2009」(仮称)においては、必要な経費を要求することと、ゼロシーリングの枠外としている。
新規事業及びレベルアップ事業は、スクラップ・アンド・ビルドを前提とし、新規事業は原則として期限の設定、既存事業も終期の明記を求めている。これらはおおむね昨年と同様である。
A 職員定数は、「行財政改革実行プログラム」の定数削減目標(3年間で4,000名削減)の着実な達成に向け、組織と定数の一体的管理を推進し、業務執行方法の改善で削減を図ることとあわせ、多様な雇用形態の積極的活用が打ち出された。
B 東京都監理団体は存在意義の検証・不断の見直しと、経営改革推進に向けた適切な指導監督を求めている。特に、団体に対する財政支出は、経営の効率化・自立化の促進から必要な見直しを求めている。これらは昨年と全く変わっていない。
C 各種補助金は、時代状況の変化を踏まえた必要な検証などを行い、積極的に見直すとし、都から区市町村への財政支援も見直しを積極的に行うとしている。これらも昨年と同様である。
D 施設の新築・改築、耐震化は、事業のあり方などの精査を含めて見積ることとしている。事業用地の先行取得は必要性などの十分な検証を求めるとともに、施設管理運営等では民間活力の積極的活用など「効率的」執行体制の実現を求めている。
E 情報システムは、費用対効果を検証し、有効性に乏しいシステムは廃止を含め抜本的に見直し効率的な運用を求めるとともに、その経費の見積りについて、既存システムの維持管理経費の一層の削減、システム構築では業務改善の視点から後年度負担を含めた費用対効果を明らかにするよう指示している。
F 歳入見積りでは、更なる収入確保を図るため、都税収入の徴収率の一層の向上による収入確保や国庫支出金の積極的確保を掲げている。使用料・手数料は、受益者負担の適正化と原価計算に基づく見直し、債権管理の一層の適正化や未利用財産の活用などによる収入確保、さらに積極的な施策展開への基金活用を掲げている。
(2)「10年後の東京」への実行プログラム2009(仮称)策定方針(知事決定)
昨年度「重点事業」が「実行プログラム2008」に装いを変え、副知事依命通達として示されていたものである。今回は知事決定とされた。東京がオリンピック・パラリンピックの立候補都市のひとつとして選定されたことから、招致を実現するためにも先進的な取り組みの成果を新しい都市モデルに高め、広く発信していくことが不可欠として、機動的・戦略的な施策の展開を求めている。
@ 「実行プログラム2008」のすべての取組を検証し、着実に進め、進化させる「平成21年度」から3年間のアクションプランで、行財政運営を先導するもの。
A 東京全体で多様な主体との広範なムーブメントを展開する。
B 重要課題は局をまたいだ取組を積極的に推進する。
C 「地球温暖化対策推進基金」「スポーツ・文化振興交流基金」「福祉・健康安心基金」の活用を図る。
D 国と都の協議事項を踏まえる。アジア諸都市・近隣自治体との連携をはかる。
E 効率的・効果的な事業執行や経営改革を進めるとともに、オリンピック招致の気運を醸成するために総力を挙げる。
F これらを内容とする事業案を作成するよう求めている。ここで選定する事業は予算・人員を優先的に措置し、毎年度、アクションプランを検証、改定するとしている。
(3)そのほかの文書の特徴
依命通達と同時に公表された「平成21年度組織及び職員定数方針並びに監理団体職員等調整方針について」(総務局長通知)では、非常勤職員と並べて「人材派遣、任期付き職員の積極的活用」が記載されている。昨年、交渉中であった再雇用廃止問題について「再雇用は再任用に一本化する」と記載したことと同様に、労使交渉に関わる内容が一方的に記載されている。民間委託の拡大、管理部門・企画部門の抜本的見直し、類似事業の集約化や事業動向に応じた組織の大胆な見直しによる職員定数削減が掲げられる一方、実行プログラム2009(仮称)事業案には、事業効果などを考慮し、事業内容などを精査し、組織と人員要求を行うこととしている。地方独立行政法人などは、合理化や効率化により職員派遣を必要最小限にすると計画的な解消を求め、監理団体には変革に向けた指導の徹底と都からの補助・委託などの見直した上での人員見積もりを求めた。
また、同日総務局人事部調査課からの「平成21年度 組織改正計画及び所要人員計画等について」では、まず病休者や育児短時間制度取得者等への対応として、人材派遣を活用する仕組みの構築として、人材派遣活用の拡大を掲げた。これには「資料」として「『東京都における人材派遣活用の指針』の見直しについて」が添付され、これまで「秘書業務、調査、統計業務」に限定されていた人材派遣を、「1年以内であれば、労働者派遣法が認めるすべての業務」とし、「一時的に執行体制を確保する必要がある場合」と対象も拡大された。その上、東京都福利厚生事業団に「人材派遣事業を来年度から開始できるよう現在検討中」と記載がされた。さらに、再雇用職場の設定に関わる指示と、課長補佐について、19年度見直しを踏まえた5%程度の削減が示された。
3 都庁職の見解と態度
一昨年7月、今後3か年の財政運営の方向性を示す「今後の財政運営の指針」が発表されたが、今回の依命通達もこの指針にそって淡々と作成されている。都庁職の主張に耳を傾けず、これまでの都税収入増と基金を背景にしつつ、オリンピック招致を目ざす「10年後の東京」の実現には、シーリングの枠外として重点的に予算を投入する姿勢は許し難い。
さらに、国の「骨太方針2008」や「行財政改革実行プログラム」等にそって、都政が都民サービスの最前線から撤退し、その役割を大きく変質させ、都政の構造改革を一層推進させる。言い換えれば「制度や事務事業の根本まで遡った、施策の見直し・再構築を図る」とし、それぞれの事務事業について、行政と民間の役割分担を見直し、アウトソーシングなど民間活力の積極的活用を図るものであり、都民サービスの低下に拍車をかけるものである。「10年後の東京」以外の施策では引き続き基本的にゼロ・シーリングをかけ、スクラップ・アンド・ビルドからの既存事業の見直し・再構築など各局に都政リストラを迫っている。都財政が危機的な状況を脱し、基金に大きく積み増しする余裕ある時に、3年前に策定した「財政運営の指針」を踏襲するだけで、積極的な展開となっていない。
「10年後の東京」はオリンピック・パラリンピック招致に向け、求められる都市像を示したものとされているが、その施策の中心は、東京の大規模都市再開発であり、日々の都民生活改善の視点からかけ離れたものである。依命通達で「大幅な都税収入の減少を覚悟せざるを得ない」とする中で、優先的に予算・人員等を措置することは許し難い。「重点事業」の策定にあたっては、これまで「依命通達」で示されてきたが、今回「知事決定」とされ、オリンピック・パラリンピック開催都市が決定される来年10月までに、大規模都市再開発に「アクセル」を踏み込む石原知事の強い姿勢が示されたといえる。
予算編成の重点施策については、都民が求める今日・明日の生活防衛につながる施策や都民サービスの向上にこそ、最優先に措置すべきである。石原都政は都民の暮らしを守る政策展開をしていないばかりか、「10年後の東京」の推進は、より一層矛盾を拡大するものである。「オリンピック・パラリンピック招致」に名を借り、大企業に利潤を生み出すための「都市再生」には強く反対する。
来年度は「行財政改革実行プログラム」の最終年度であり、当局はその総仕上げを行う、とりわけ4,000人の職員定数削減目標をなんとしてもやりきろうとする姿勢に充ちている。しかし、職場を見渡せば、業務の維持・継承が困難な事態や、職員の超過勤務の増大、病気休暇等の取得者の高止まりなどで多くの人が疲弊し、その状況は追い込まれる一方である。さらに民間活力や行政改革の様々な手法の活用は、決して効率的な運用となっていない実態があり、都民サービスの低下をもたらしている。また、正規職員での代替を求めている病休者や育児短時間勤務職員への対応に「人材派遣」を導入することは、極めて問題である。
都庁職は、都政が地方自治体本来の役割を果たすために、格差社会の進行にあえぐ都民生活改善への積極的な施策展開と庁舎の改修・改善と庁有車の更新などに予算を大きく配分するべきと考える。民営化・民間移譲・指定管理者制度の拡大・市場化テスト拡大・地方独立行政法人化の推進など、公的責任の投げ捨て、都政の変質につながる都政リストラ、とりわけ老人医療センターと老人総合研究所の地方独立行政法人化、豊島病院の公社化、埋立管理事務所包括的委託化、築地市場の豊洲移転に強く反対する。また、指定管理者制度が導入され4年が経ち、特命を中心に指定管理期間が今年度末に終了する施設があり、その対応も求められる。職員定数削減に反対し、業務量に見合う職員配置、職員の大量退職に対応する新規採用、現業職の計画的採用を求める。
2009年度都庁職予算人員要求実現の闘争を、都民の理解を得ながら、各支部と共に闘いぬく決意である。
以上
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