「行財政改革実行プログラム実施状況報告(平成19年度)」に 対するコメント
2008年6月26日
東京都庁職員労働組合
東京都は6月5日「行財政改革実行プログラム実施状況報告(平成19年度)」を発表した。これには2006年7月13日に発表した「行財政改革実行プログラム」(以下、「実行プログラム」)及び昨年追加した項目のうち、計画が終了した10項目を除く214項目について昨年度の実施状況が報告されている。これらは今後の都政運営や都庁職の予算・人員要求闘争など諸課題に大きく影響することから、都庁職コメントを公表する。
3年計画の2年目を終えた今回の「実施状況報告(平成19年度)」は、計画通りの実施が187項目(うち計画終了25項目)、一部実施は27項目、未実施はゼロとしている。一部実施には、東京都版市場化テストの本格導入、豊洲新市場へのPFI手法の導入、そして職員住宅のあり方等が含まれている。昨年追加された12項目の中では、公文書館のあり方検討のみが一部実施となっている。
石原都政の9年間を振り返ると、前半は財政再建等を理由に福祉・教育・医療・住宅など都民生活に直結する部分や職員には厳しい締め付けを行った。これまでに事業所は100カ所以上廃止・民間移譲等を行う一方で、新銀行を設立し、大規模開発には莫大な税金を投入してきた。後半になって景気がよくなり都税収入がのび財政状況が好転すると、オリンピック招致と「10年後の東京」に基づく施策に大きくシフトし、さらに基金に貯めこみを行っている。それでも職員定数は繰り返し削減計画が掲げられ、その計画を上回る「達成」で21,700人以上(含清掃区移管分)が削減されている。
今回の実施状況報告において、計画どおりに進んでいない一部実施は27項目ある。豊洲新市場へのPFIの導入では、高濃度の土壌汚染が明らかとなり専門家の提言などを踏まえた上での対応を余儀なくされ、公社化された「多摩南部地域病院」で一般医療分野の自己収支率が改善されていないことなどを指摘せざるを得ない報告となっている。
さらに指定管理者制度の導入は201施設にのぼり、「東京都版市場化テスト」が導入され、民間への業務委託が進められており、「経営」の観点から徹底した都政リストラを推進している。これらは公的責任の放棄である。この間推進してきた「改革」について当局の検証は不十分であり、「改革」ありきの都の姿勢は直ちに改めるべきである。
極限までリストラと一層の構造改革をねらった「行財政改革の新たな指針」の具体化として、3年間で4,000人の職員定数削減を含んで策定された「実行プログラム」は、格差社会に苦しむ都民、医療制度の変更で大きな負担を強いられている都民生活を顧みないもので、都庁職は容認できない。この間進められてきた民間委託や民間移譲、公社化などにより、当該の職場が大きく混乱したり、都民サービスの切り下げが明らかとなっている。策定された2年前と比べると都民生活も都財政も変動しており、ニーズに合わせた施策が求められる。今、都政に必要なのは「改革ありき」で進めてきた施策を検証し、都民の生活感覚に合わせて見直すことであり、都民生活に対して行政責任を果たすことである。職員がこれまで培ってきた知的財産や技術・技能を安易に民間に投げ出さず、知的財産や技術・技能の継承、技術力向上と、計画的な職員採用推進の立場に立ち、とりわけ深刻な医師不足の解消・看護師支援体制を強化し、都民サービスの最前線にたつ現業職場を維持することである。
都庁職は、都民に「自立・自助」を押しつけて公的責任を放棄する「行政の民間開放」を推進する姿勢や、数値目標を達成するための職員定数削減など「構造改革」を推進することに強く反対する。潤沢な都税収入は多くの都民が安心して生活できるよう福祉・医療・教育や雇用など都民要望の実現に重点的に使うべきである。合わせて都政の最前線で働く都庁職組合員の声に耳を傾け、長時間過密労働の解消や労働条件の改善にむけ、必要な予算措置や人員配置を行うことを強く求めるものである。
以上
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