07人事委員会勧告に対する都庁職の見解と態度
2007年10月12日
東京都庁職員労働組合執行委員会
T) 10月12日、東京都人事委員会は知事及び都議会に対し、職員の給与に関する較差勧告を行った。公民比較により月例給は△309円(△0.07%)とされたが、昨年に引き続きマイナス勧告となっている。地域手当については現行の13%を国同様14.5%とする。(ただし、マイナス勧告のため、改定時期については妥結後となる) 地域手当の1.5%引き上げに伴い、本給との配分調整として本給は1.4%弱の引き下げとなっている。
その結果、給料表についてはマイナス勧告とあわせて平均改定率は△1.4%強となり、その配分は初任給付近を据え置く一方、高齢層については△1.7%とし、昇給カーブのフラット化を更に進めるものとなっている。フラット化について、昨年度は地域手当1%引き上げに伴う本給の0.9%引き下げは一律に行い、マイナス勧告の0.31%についてのフラット化であったが、今回のフラット化は地域手当引き上げにともなう本給引き下げ分を含めたフラット化となっている。
その結果、中・高齢職員にとっては地域手当引上げに伴う本給水準引下げに加え、フラット化による引下げの結果、受け取る給料(本給+地域手当)はマイナス勧告以上に減額となる。「本給と地域手当の配分の問題」とした昨年度の説明を反故にするものであり許し難い暴挙である。
更に、年金受給水準は引き下がることになるばかりか、退職金についても全員の受給水準が較差水準以上に引き下がる一方で、退職調整額(国における「職責貢献度手当」)は退職前20年間の役職により較差が一層拡大することになる。
初任給については民間や国の動向を勘案し、U類、V類は据え置きT類については1.1%の引き上げとなっている。一時金については4.5月(+0.05月)というものであるが、その内訳は勤勉手当を0.05月引き上げ、年計1月分とするという不当なものである。
国は1,352円(+0.35%)の勧告であったのに対して東京都がマイナス勧告となった理由の一つに、東京都職員の昇給が4月1日に対して国は翌年の1月1日となっていることから、4月の給与月額で公民較差を算出する仕組みのもとでは、比較対象となる給与は東京都が昇給後の給与月額なのに対して国は昇給前の俸給月額であることとされている。
昇給月の問題が公民較差に影響を与えることについては理解するが、これまでの政令市の勧告をみるなら、軒並み国勧告を下回る改定率又はマイナス勧告となっており、昨年に引き続き大都市の賃金引き下げをねらい打ちした政治的勧告であると断言せざるを得ない。
U) 都庁職は東京都人事委員会に対して、中・長期的な給与制度のあり方について検討を始めるよう要請してきた。団塊の世代の大量退職の時期を向かえ、一方で少子化による新規学卒者の減少は都の行政各分野の専門領域における人材確保を深刻なものとしている。
都側のいう、高齢者雇用を再任用に限定し定数上の人材を確保したとしても、それは一時しのぎに過ぎない。都庁職は東京都人事委員会に対して、中・長期的な人材確保、人材育成施策について早急に検討を開始するとともに、行政各分野における専門家育成をにらんだ複線型人事制度について踏み込んだ報告を行うよう申し入れてきた。
しかし、07勧告に際し東京都人事委員会は、都庁職の要請に一切応えないばかりか、国に先駆けて実施してきた「人事評価システム」を賛美し、さらに「組織活力を最大化する視点から、これまで以上に『個』に着目した取り組みを進めることが重要である」として、「10年後の東京」路線をバックアップする姿勢を顕わにしている。
昨年から昇給制度が変わり、業績評価と昇任、昇給との関連がより明確となった。また、業績評価や勤務成績を踏まえた所属課長による昇給推薦や所属課長が作成する「人材情報シート」による人材活用、異動、昇任に係る関与幅が大きくなったことから、これまで以上に、人事考課制度の公正性、被評定者の納得性の確保、及び苦情相談制度の充実が求められている。
都庁職は東京都人事委員会に対して、評価の公平性、公正性、透明性、納得性を確保するとともに、労使対等参加による実効ある苦情解決システムの確立に向け、積極的な意見を申し出るよう求めてきた。
しかし、人事委員会は、人事考課制度や苦情相談制度の見直しには一切言及することなく、「管理職の役割が、これまで以上に重くなってきている中、評価能力向上に向けた取組は不可欠であり、引き続き評定者訓練等の充実を図っていくことが求められている」との意見に終始している。
V) 年明けからの休息時間廃止にともなう拘束時間の実質的延長は総労働時間短縮の流れに逆行するばかりか、子育て、介護を抱える職員にとっては働き続けることが一層困難となる等、深刻な問題である。
この間、都庁職は東京都人事委員会に対して、昨年の勧告において都内民間企業の所定内労働時間を1日単位で7時間38分、1週間単位で38時間24分という都庁職員の所定内勤務時間を1日単位で15分以上下回る調査結果を報告しながらも、所定内勤務時間短縮の勧告を見送ったことに対して抗議するとともに、07勧告においては、「民間準拠」を基本とした英断を求めてきた。
東京都人事委員会は07勧告にあたり、本年の平均の都内民間企業の所定内労働時間は1日単位で7時間40分、1週間単位で38時間29分との調査結果を報告した。昨年同様、1日単位で15分以上の勤務時間短縮に十分な結果である。
しかし、「均衡の原則」や「情勢適応の原則」を持ち出し、国においても民間企業の所定内労働時間は1日単位で15分程度短いとしながらも、交替制勤務や短時間勤務者の勤務時間問題などの整備を理由に短縮勧告を見送ったことに追随する姿勢に執着している。人事院の「来年を目途として、これらの具体的準備を行った上で、民間準拠を基本として勤務時間の見直しに関する勧告を行うこととしたい」との姿勢からも大きく後退したものとなっている。給与については民間準拠、勤務時間については国に配慮して短縮を見送るというのでは、1日当たり15分、月5時間以上の無給超勤を強要するにも等しい。
都庁職は東京都人事委員会に対して抗議するとともに、今後は確定闘争において、速やかに勤務時間短縮を実施するよう対当局交渉を強化していく。
W)07人事委員会勧告は全てにおいて納得できないものである。給与水準に関しては、「大都市自治体職員の賃金引き下げ」という総務省の意向に従い、人事施策等については都当局の施策を賛美しつつ、「10年後の東京」路線を後押しする、更には労使交渉事項である現業給与問題や高齢者雇用問題についても当局の考えを追認する等、完全に国及び都当局の代弁機関と化してしまったと言わざるを得ない。
人勧体制の見直しを含め、制約されている労働基本権回復の闘いを本格的に取り組む必要がある。
今次確定闘争は現業給与問題という最大の課題を抱えている。都労連交渉では現業給与問題、人事制度改善問題、一般職員へ勤勉手当への成績率導入問題、人事考課制度・苦情相談制度改善問題等、確定課題の交渉は始まっている。
今回の「勧告」を踏まえ、地域手当引き上げにともなう島しょ問題の解決を含め、現業・非現業一体となった総力の闘いが必要である。そのため都庁職は都労連闘争の一翼を担い、要求実現に向けた闘いを展開する決意である。
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