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伊ヶ谷地区海上より見る三宅島 撮影2003年4月10日三宅支庁提供
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見解
 

「平成20年度予算等」に関わる副知事依命通達に対する都庁職の見解と態度

2007年8月2日
第35回都庁職執行委員会

1 はじめに
 7月25日、東京都は「平成20年度予算の見積もりについて」と「『10年後の東京』実現に向けた実行プログラム(仮称)の策定について」という副知事依命通達、平成20年度組織及び職員定数方針並びに監理団体職員等調整方針について」(総務局長通知)、及び「平成20年度組織改正計画及び所要人員計画の作成について」(総務局理事〈人事部長事務取扱〉依頼)など、来年度予算編成に係わる一連の文書を公表した。
 これらは今後の予算編成にかかわる方針であり、都庁職の2008年度予算人員要求闘争にも重要な影響を与えることから、都庁職の見解と態度を明らかにする。

2 公表された文書の概要
(1)「平成20年度」予算の見積りについて(副知事依命通達)
 この依命通達は、「平成19年度予算」において財政再建に区切りをつけ、将来の東京を見据えた施策展開を積極的に行う新たなステージに入ったとし、「10年後の東京」の実現に向けた施策の着実な推進や更新期を迎えた社会資本ストックへの対応など、今後の膨大な財政需要に取り組むとして、柔軟に対応できる財政運営の必要性を述べ、予算編成に向けた、効果的な施策の構築や事後検証など新たな改革を実施するとしている。
 「平成20年度予算」は新たなステージにおける財政運営の中で「10年後の東京」の実現に向け、本格的なスタートを切る重要な予算と位置づけ、次の基本方針を示している。
○「10年後の東京」実現を始めとして、将来の東京を展望する施策や都政が直面する諸課題に的確に対応。
○施策の目的を確実に実現するため、最少の経費で最大の効果を上げられるよう、厳しく検証の上、事業を構築。

@経費の見積もりは、施策の見直し・再構築、民間活力の積極的活用など民間の発想に基づく様々な手法を取り入れたコスト縮減、実績を踏まえた見積りを行うよう指示し、「10年後の東京」実現に向けた着実な推進を図るための対応を述べている。
 経費のうち、義務的経費(政策的判断の余地が少なく、基礎的計数の精査により経費が積算されるもの)、自立的経費(政策的判断の余地が少なく、各局がその責任において自立的に取り組むべき事務事業経費)及び政策的経費(政策判断を要する経費)について「平成19年度」予算額の範囲内というシーリングをかけるが、「財務局と協議」という例外規定を盛り込んでいる。これとは別に、指定事業(シーリング外で別途財務局が指定するもの)をもうけ、財務局と事前調整の上算定する特例扱いも盛り込まれている。その上で特例的取扱いを設けている。
 新規事業及びレベルアップ事業は、徹底したスクラップ・アンド・ビルドを前提とし、新規事業は原則として期限の設定、既存事業も終期の明記を求めている。

A職員定数は、「行財政改革実行プログラム」の定数削減目標(3年間で4,000名削減)を踏まえ、組織と定数の一体的管理の推進、執行体制の整備や事務事業の見直し、アウトソーシングの推進で一層の削減を図るとしている。

B東京都監理団体は存在意義の検証・不断の見直しと、経営改革推進に向けた適切な指導監督を求めている。団体に対する財政支出は経営の効率化・自立化の促進から必要な見直しを求めている。

C補助金は、時代状況の変化を踏まえた必要な検証などを行い、積極的に見直すとしている。また都から区市町村への財政支援も見直しを積極的に行うとしている。

D庁舎の新築や改築などの施設の建設は、「大規模施設などの改築・改修計画(仮称)」の主旨を踏まえた見積もりと耐震化も適切な要求を求め、あわせて事業用地の先行取得についても触れている。さらに施設管理運営等に民間活力の積極的活用など「効率的」執行体制を求めている。

E情報システムは、費用対効果を検証し、廃止を含め抜本的に見直し効率的な運用を求め、その経費の見積もりについての指示をしている。

F歳入見積りは、更なる収入確保を図るため、都税収入の徴税努力による収入確保や国庫支出金の積極的確保に努めることとしている。使用料・手数料は、受益者負担の適正化と原価計算に基づく見直しを行い、未利用財産の活用などによる財産収入の確保、さらに「福祉・医療」「環境」「スポーツ・文化」の基金の活用などを掲げている。

Gこの依命通達と同時に公表された「平成20年度組織及び職員定数方針並びに監理団体職員等調整方針について」(総務局長通知)では、再雇用は「再任用に一本化する」と現在労使交渉中のことを既成事実化した許しがたい内容が記載されている。

H同日総務局人事部調査課からの「平成20年度 組織改正計画及び所要人員計画等について」では、まず非常勤職員の積極的活用を掲げ、窓口相談や調査業務を例にあげ、可能な限りの拡大を求めている。
 さらに「課長補佐制度の見直しについて」が添付され、課長補佐について「課長不在の際等には代理する」という職責の見直しが打ち出され、これを当局は「管理運営事項」として対応する姿勢にあり、この点も問題あるものとなっている。

(2)「10年後の東京」実現に向けた実行プログラム(仮称)の策定について(副知事依命通達)
 この依命通達は、「10年後の東京」実現に向けた政策の着実かつ迅速な実施にむけ、策定方針に基づく実行プログラム(仮称)事業案の策定を求めている。
@事業案の作成にあたっては、重点的・先進的でかつ実効性の高いものを求め、事前に「基本的な考え方」の提出を求めている。さらに「10年後の東京」で掲げる3つの視点を充分踏まえ、3年間のアクションプランとしてその展開や方向性を明らかにし、都民・民間事業者・区市町村等と連携して実施する長期的取り組みでは「10か年プロジェクト」の作成を求めている。そのためには東京に集積する多様な主体の動向やニーズの把握と「オリンピック招致計画」をバックアップするための広範なムーブメントを起こす方策の提起も掲げられた。さらに横断型戦略会議の成果の反映、3つの基金の活用、アジアや近隣自治体との広域的なネットワークの活用を述べている。
 最後に「行財政改革実行プログラム」を踏まえた効率的・効果的な事業執行と経営改革等の視点にも留意するとしている。

A検証及びローリングの考え方として、PDCAサイクルの確立と今年度重点事業の検証と報告を求めている。

B「10年後の東京」実現に向けた実行プログラムで選定する事業は予算・人員を優先的に措置するとしている。

3 都庁職の見解と態度
(1)「平成20年度」予算見積もりに関する副知事依命通達について
 昨年7月、今後3か年の財政運営の方向性を示す「今後の財政運営の指針」が発表され、今回の依命通達もこの方針にそった内容となっている。財政状況が大きく改善され、ゆとりが生まれた中で、オリンピック招致を目ざす「10年後の東京」の実現が色濃く打ち出され、その具体的な施策の大部分が企業に利益をもたらす都市開発の推進であり、これに膨大な税金を投入するものである。
 さらに国の「骨太方針2007」や「行財政改革実行プログラム」とその「追加実施計画」にそって、都政が都民サービスの最前線から撤退し、都政の役割を大きく変質させ、財政の質的転換を推進する内容となっている。言い換えれば「制度や事務事業の根本まで遡った、施策の見直し・再構築を図る」とし、それぞれの事務事業について、行政と民間の役割分担を原点から見直し、「民間でできることは民間へ」という原則のもと、アウトソーシングなど民間活力の積極的活用を図るものとなっている。先日発表された「平成18年度」都税収入決算見込額は総額4兆9,236億円で、3年連続の増収となっている。とりわけ企業収益が好調で、法人二税は「17年度」決算額比14.3%増となっている。このように都税収入が大増収であるにも関わらず、昨年に引き続きゼロ・シーリングをかけるとともに、スクラップ・アンド・ビルドを前提に、各局に都政リストラを迫っており、これに強く反対するものである。
 さらに昨年より導入された「公会計制度」の発想と手法で「10年後の東京」の実現を支える財務体質を確立するとしているが、歳出削減のツールではなく、不要不急な財政支出の削減や都民のための都政運営に活かすことが求められている。「今後の財政運営の指針」でも、財政再建の成果は都民に還元されるべきとしており、都民からの税金は、格差社会の進行と増税にあえぐ都民の生活を支える施策に積極的に使うべきである。

 「行財政改革実行プログラム」では「平成19年度」からの3年間で4,000人の職員定数削減を目標に掲げ、1年目に1,165人の削減をおこなった。依命通達では、執行体制の整備やアウトソーシングの推進など、着実な定数削減を求めている。
 石原都政下において、様々な行革の手法も駆使し、約14,000人の職員定数削減を行っている。「財政再建」の名のもと、長期にわたる緊縮予算で疲弊した職場では、大幅な人員削減に伴い、年700時間を超える超過勤務を行わざるをえない職員もいるなど慢性的な超過勤務を強いられている。実態に見合う人員増とともに、不払い残業を解消するための超過勤務手当の予算化は急務である。

 さらに業績評価制度など人事考課制度の締め付けが一層厳しくなり、疲労を抱える職員が増えている。メンタルヘルスを病む職員が増加の一途をたどり、30日以上の病気休暇者が半数を占めている実態も看過できない。これまでの経験で培ってきた技術や技能、知識の伝承も職員削減とゆとりのない職場環境の中で業務運営が滞り始め、都民サービスの低下、切り捨てにつながってきている。これらを放置せず、必要な予算措置や人員配置を直ちに行うべきである。

 いっぽう当局は少子高齢化に対して「人材育成方針」でコア業務を担う人材の確保・育成、少数精鋭を求めているが、実務に精通した人材を育成し、業務のノウハウを確実に継承することこそが必要なことである。また、依命通達と同時に公表された総務局長通知では、現在労使交渉中の再雇用制度について「再任用に一本化する」と既成事実化した対応を掲げているが、定数外であっても即戦力の再雇用廃止は、高齢者の働き方の問題に止まらず、実質的な定数削減や廃止・民間委託にもつながるものであり、断じて認めることはできない。また職員定数が削減されたにもかかわらず、業務の必要性から配置された経過もある非常勤職員について、積極的活用は一層の定数削減を意図したものであり容認できない。窓口相談など都民に直接関わる重要な仕事を担っている非常勤職員の労働条件改善こそが急務である。
 依命通達の基本的立場は、都民要求に応えず、職員に犠牲を強いるものであり、このような予算編成方針を許すことはできない。

 監理団体について依命通達では、指定管理者制度導入や公益法人制度改革など、取り巻く環境の変化を踏まえ、経営改革推進に向けた指導監督や、団体に対する財政支出の見直しを求めている。監理団体は、「行財政改革実行プログラム」で、さらなる改革の方向が示され、廃統合・民営化などとともに、経営に踏み込む都派遣職員の削減や固有職員の人事給与制度見直しなどが盛り込まれ、さらに「追加実施計画」では、指定管理者の拡大が掲げられている。監理団体の多くは都直営で行ってきた事業であり、これ以上の公的責任の放棄は許されない。さらに経営の効率化・自立化を口実に、財政的締め付けを行うことは、都民サービス低下や業務に直結するものである。都政リストラの受け皿であった監理団体について、都は行政責任を果たす対応を行うべきである。

 9年続いた庁舎の新築・改築原則停止方針は昨年度一部緩和された。さらに今年度の依命通達では、「更新期を迎える社会資本のストックへの対応」として、「大規模施設などの改築・改修計画(仮称)」の主旨を踏まえた見積もりや「都立建物耐震化実施方針」の対象施設に対する要求を認めている。これらは先送りしてきた課題に対して、都民・職員の安全を守るための耐震化の促進や、バブル期に建設した大規模施設の設備更新に着手するという当然の措置である。しかしそのねらいが「オリンピック招致」に向けた「10年後東京」の実現に収れんされており、大企業のための施策にならないよう注視する必要がある。
 庁舎や施設の状況や庁有車の老朽化は安全性・効率性から看過できない状況である。都庁職はこれまで老朽庁舎の改築やエレベーター設置などバリアフリー化等を求めてきたが、これに基づく庁舎等の新築・改善と庁有車の更新は直ちに予算化すべきである。

(2)「10年後の東京」実現に向けた実行プログラム(仮称)策定の副知事依命通達について
 これまで重点事業策定にあたって公表されていた依命通達が、今回は「10年後の東京」を基調とした実行プログラム(仮称)の策定に形が変わった。実行プログラム(仮称)はこれまでの重点事業と同様に、3年の目標や展開・方向性を明らかにするとしている。「10年後の東京」はオリンピック招致に向け、求められる都市像を示したものであり、都民生活の視点からは遊離した部分も多く含まれている。今都民が求めているのは、「オリンピック招致」という夢でなく、今日・明日の生活防衛につながる施策であり、これこそが来年度予算編成にあたっての重点施策となるべきものである。石原都政は都民の暮らしを守る政策展開をしていないばかりか、「10年後の東京」ではより一層矛盾を拡大すると指摘するものである。

(3)都庁職の態度
 今日、都民の生活を守るという都政本来の役割が大きく変質している。職場では大量退職時代を迎え、業務を継承・維持することすら困難な事態が生まれ、都政のために日夜働く職員の多くが疲弊し、不満・不安な気持ちでいる。
 都の「財政危機」による「都政リストラ」は、都民サービスを切り捨て、大幅な職員定数削減などを強行してきた。しかし今日、法人二税を中心とした大税収増を背景に「財政再建」に区切りをつけ、「新たなステージ」に入ったとする中で、当局は、「10年後の東京」の実現に向けた施策の推進を大黒柱に据えた来年度予算編成を求め、ゼロ・シーリングを維持する引き締め方針を変えず、削減ありきの職員定数削減を押しつけている。
 都庁職はこれ以上の定数削減に強く反対し、大量退職に見合う新規採用と、格差社会の進行にあえぐ都民生活の改善や庁舎改善・庁有車の更新など必要な予算を配分するよう求める。さらに不要不急の「オリンピック招致」を口実としたあらたな都市開発に強く反対するものである。
 都庁職は、公的責任を投げ捨て、都政の変質につながる民営化・民間移譲・指定管理者制度の拡大・市場化テスト拡大・地方独立行政法人化の推進などの都政リストラに強く反対するとともに、職員定数削減反対、現業職の計画的採用を含めた諸要求の実現に向け2008年度都庁職予算人員要求闘争を、都民の理解を得ながら、各支部と共に闘いぬく決意である。

以上

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