都庁職(東京都庁職員労働組合公式サイト)

伊ヶ谷地区海上より見る三宅島
伊ヶ谷地区海上より見る三宅島 撮影2003年4月10日三宅支庁提供
HOME 都庁職へようこそ 見解 都庁職新聞 ギャラリー リンク
HOME > 見解 > 2007年度東京都予算案に対する見解と態度
見解
 

2007年度東京都予算案に対する見解と態度

2007年1月25日
東京都庁職員労働組合

1 はじめに

 東京都は2006年12月26日、「平成19年度(2007年度)東京都予算(原案)」(以下「予算原案」)および「平成19年度組織改正及び職員定数」「平成19年度東京都監理団体所要人員計画」を発表し、その後復活要求を経て1月15日「平成19年度(2007年度)東京都予算案」(以下「予算案」)を発表した。さらに1月18日「平成18年度最終補正予算案」が発表された。

 この「予算案」は大幅な都税収入増をオリンピックを始めとした基金に貯蓄し、三環状道路や臨海部開発など都市改造には巨額な投資をするものの、福祉・医療・教育・雇用など都民生活に直結する施策への配分は低く抑えている。これらは「行財政改革実行プログラム」による都政リストラを着実に実行し、自治体の市場化を進めるものとなっており、「新自由主義」に基づいて政府・財界がねらう「構造改革」路線を具体化するものである。

都庁職は、07予算人員闘争において都民本位の都政運営と都庁労働者の諸要求実現をめざし、職場から積み上げた「2007年度東京都予算・人員に関する基本要求書」を昨年7月都当局に提出するなど、要求実現に向け取り組みをすすめてきた。しかし示された「予算案」や「定数査定」は、都庁職の要求に全く応えず、都民要求に逆行するものである。都庁職は「予算原案」発表時に「抗議声明」を出し、基本的見解と抗議の意思表明を行なったが、確定した「予算案」の問題点と今後の闘いの方向を示すため、「見解と態度」を明らかにする。

2 「予算案」の特徴と問題点

(1) 編成方針および全体フレーム
 「予算案」は堅調な都税収入増を反映し、全会計の合計で13兆719億円(前年度比5.1%増)、そのうち一般会計は6兆6,020億円(前年度比7.0%増)となっており、対前年度比では過去10年で最大の伸びとなっている。石原都政はこの「予算案」を「東京の魅力のさらなる向上を目指し、新たなステージにおいて力強い第一歩を踏み出す予算」と位置づけている。そして「10年後の東京の姿を展望しながら、バランス良く財源を配分し、都民の付託に積極的に応える」「『隠れ借金』の解消や『負の遺産』の処理に積極的に取り組むとともに、基金の充実を図ることで揺るぎない財政基盤の構築を目指す」の2点を編成方針としている。
 これまで石原都政は、二次にわたる財政再建推進プランで財政危機を強調し、リストラと都民施策の切り捨て、職員定数の削減や給料4%カットなどを強行してきた。しかしこの8年間を見ても、都税収入は財政再建推進プランの見込額に比べて合計約3兆円の増収となっている。さらに堅調な都税収入増も反映して、今年度当初予算では特別な財源措置を執ることなく「隠れ借金」の圧縮を行った。また「今後の財政運営の指針」で「未だ財政基盤は未確立」とし、ゼロシーリングをかけながらも、「予算案」では「財政構造改革を進め、揺るぎない財政基盤の構築を目指す取り組み」として、今年度末補正予算と合わせ「隠れ借金」を解消、「負の遺産」を処理し、オリンピック招致に向けた1,000億円など2,531億円を基金に積み立てている。さらに12月22日に発表された「10年後の東京」を具体化する立場から、「10年後を展望しつつ、東京の魅力のさらなる向上を目指す取り組み」として、オリンピックを口実とした都市開発や臨海部開発、多国籍企業のための物流改革に大きく財政上のシフトを行うものとなっている。一方「格差社会」が拡大し、困窮する都民に対する生活改善や雇用拡大などの施策には積極的な展開が見られない。 以下、歳入・歳出の項目別で見ていく。

(2) 歳入について
 一般会計の歳入規模は6兆6,020億円で、今年度に続いて6兆円を超え、今年度当初予算と比較して4,300億円増(7.0%増)となっている。歳入のほとんどを占める都税等は5兆3,561億円と5兆円を大きく超え、今年度に比べても4,611億円(9.4%)と大幅に増えている。そのうち都税は8,002億円増(17.8%増)の5兆3,030億円である。都債の発行は抑制に努めたとして、前年度比21.4%減の2,799億円で、起債依存度は一般会計で4.2%に下がり、さらに圧縮したとしている。

@ 来年度の都税収入見込みは好調な景気を反映し、企業収益の大幅な改善による法人二税2兆4,165億円(4,037億円、20.1%増)の大幅増に加え、住民税フラット化による個人都民税増を見込んでいる。三位一体改革による影響は、税源移譲に伴う個人都民税増収2,974億円に対し、来年度は地方譲与税が2,288億円減(98.5%減)、地方特例交付金も今年度に比べ1,103億円減(69.0%減)の合計3,392億円と大きく減少し、差し引き418億円の減収となる。しかし、歳入そのものとしては前年度に比べて8,002億円(17.8%増)の都税収入の増により、税源移譲の影響分を差し引いても、実質5兆56億円(11.2%増)と5兆円を超え、潤沢なものとなっている。

A 都債は将来の財政負担を考慮した2,799億円(△764億円、21.4%減)で3,000億円を切るものとなり、過去16年間で最低の水準となっている。国や地方財政計画と比べて健全であるとしているが、それでもなお、2007年度末残高の見込みは6兆8,000億円で一般会計税収の1.3倍となっている。

B 使用料・手数料については、住民間の負担の公平を図る観点から必要な見直しを行うとして、都立看護専門学校の授業料(2008年度入学生から年額170,100円→212,600円)運転免許試験手数料(大型・中型第一種4,400円→8,650円)などの増額、探偵業法に関する手数料(証明書交付3,600円等)構造計算適合性判定手数料(111,000円)の新設など、料額の改定・新設を14項目行い受益者負担をさらに強めるものとなっている。

(3) 歳出について
 実質5,000億円を超える都税収入増にもかかわらず、一般歳出については引き続き内部努力や施策の見直し・再構築の徹底と、将来を見据えた先駆的な取り組みに重点的に財源を配分したとして対前年度比3.7%増の4兆3,366億円となっている。
 投資的経費については、鉄道の立体交差化や骨格幹線道路などの投資効果の高い事業を予算化したとして、対前年度比5.1%増の6,801億円(都単独事業3,586億円=9.3%増)となっている。さらに石原都政が都民要望に背を向け、どこに重点を置いた予算編成なのかの証左として、将来を見据えた基金積み立てと称し、オリンピック基金の積み立て1,000億円を含む2,531億円(前年比137.7%増)の貯金を行なっている。
 給与関係費は、「団塊の世代」の大量退職に伴う退職手当については24.9%の増となっているが、その他は、大幅な職員定数の削減や給与のマイナス改定などにより84億円(0.6%減)の減となっている。
 また「隠れ借金」の解消に1,100億円、「負の遺産」の処理として「心身障害者扶養年金制度」廃止と加入者対応に800億円、「ひよどり山有料道路事業」を無料化して救済するために69億円を計上しているが、「心身障害者扶養年金」については、制度の存続を望む利用者の声を無視した形で進められている。

@ 「都市再生」と「オリンピック招致」を大義名分に、大企業本位の大規模開発に前年度を上回る多額の予算を投じている。首都圏三環状道路等の整備に941億円(155億円増)、東京港中央防波堤ふ頭へのコンテナふ頭の整備や臨海部における物流インフラ向上等として154億円(53億円増)の他、羽田空港再拡張事業に対する国への無利子貸し付け331億円(最終目標1,000億円)、首都高速道路への出資金等250億円など大企業本位の大型公共事業に関連する予算が多数盛り込まれている。オリンピック関連では、IOC委員への働きかけを目的とした東京マラソン1億円、東京大マラソン祭り1億6,900万円の確保や、オリンピック招致に必至の環境対策としてカーボンマイナス事業76億円や環境ガイドライン策定1億3,600万円などが計上され、招致に関わる手続き費用以外にも多くの予算が確保されている。

A 福祉関連の予算は、都民要望の高い特別養護老人ホームの施設運営費等の補助を昨年より47億5,900万円減額し、老人保健施設の施設整備費の補助についても8億4,700万円が減額される一方、有料の介護専用型老人ホーム設置促進には新たに6億円の予算措置がされている。さらに、老人医療費助成制度の今年6月事業終了(昨年より52億7,700万円の減)を始め、シルバーパスの交付(3億6,100万円減)、老人クラブ助成事業(2億2,200万円減)障害者施設整備費補助(9億7,800万円減)など、これまで都が実施してきた各種補助を縮小している。新規事業の区市町村包括補助事業は、都独自の高齢者・障害者・医療保険・福祉保健補助制度を統合したもので、今年度発足した子育て分野の包括補助制度と同様に、包括化や増額と引き替えに補助の根拠や基準をなくすなど後退を招かぬよう注視する必要がある。地域住民や区議会からも都の責任で運営するべきという要望が再三出されている老人医療センターについては、住民の声を無視して「健康長寿医療センター」として地方独立行政法人設立準備予算1億1,000万円が計上されている。

B 都営住宅の建設等では443億2,600万円と今年度より85億2,500万円減となり、建て替えとスーパーリフォームが中心で8年連続で新規建設が見送られている。また昨年社会問題となったマンション耐震偽装問題対策事業については、今年度より18億8,600万円減額の予算となっている。

C 所得格差が拡大し、雇用に対する都民要望が大きくなっているにも関わらず、労働相談・指導の予算(100万円減)、中小企業勤労者福祉サービスセンターの運営助成(1,100万円減)、中小企業従業員融資制度(2,200万円減)、シルバー人材センターに対する支援(7,100万円減)など中小企業や労働者に対する予算化については、減額および消極的姿勢に終始している。一方航空機産業への参入支援(900万円)や新産業創出や産業規模の大幅拡大につながるとする重点戦略プロジェクト支援事業(1億1,400万円)など大企業との関連性も懸念される事業には予算を計上している。さらに、産業労働局予算が11年ぶりに増加した要因は、今年度地方独立行政法人化された産業技術研究センターの再編成整備で147億円増となっており、そのほとんどが臨海部移転に伴う土地購入費に充てられており、ここも臨海部救済のための予算となっている。

D 復活予算は例年と同じ200億円が財源で、「都市基盤の整備」に61億2,300万円でトップであり、その結果「予算案」における性質別内訳の「投資的経費」のうち、都単独が36億9,220万円(前年度比12.5%増)で高い伸び率となっている。さらに区市町村振興の交付金等に60億6千万円、福祉・保健・医療の充実として区市町村包括補助事業などに33億2,100万円が措置された。復活予算は都民等の意見を反映したような体裁をとっているが、マスコミ報道によれば5年連続で都議会与党の自民・公明両党の意向を反映したものとなっている。

(4) 大幅定数削減について
@ 2007年度職員定数は、知事部局・公営企業・学校職員・消防・警察等全任命権者総計16万8,134人で、前年度より1,165人の定数削減を行った。これは「行財政改革実行プログラム」で2007年から3年間で4,000人とされた削減目標を初年度で29%達成するものである。このうち国の政策による警察官定数は、来年度270人増と特例措置の終了に伴う168人の減で差し引き102人増員となった。これまでの4年間で882人増員されたこととなる。石原知事就任後これまで12,691人が削減されてきたが、警察官の増員分を含めると実質13,573人の定数削減が強行されることとなる。現在、都庁の職場では超過勤務が増え続け、月100時間を超える異常な超過勤務も強いられている。職員の健康破壊はすすみ、メンタルヘルスを病む職員が増加し続ける異常な事態である。これら現場の実状を無視し、根拠ない「削減ありき」の職員定数削減の強行は、労働環境の悪化に拍車がかかるとともに、貴重な知識や技術の継承が損なわれるなど許せるものではない。

A 知事部局では増員2,498人減員3,113人で、前年度比615人の削減となっている。その主な内訳は、環境科学研究所の環境整備公社移管による43人削減、生活実習所・福祉作業所の民間移譲による73人削減、八王子保健所の市移管45人削減、食肉衛生検査業務の市移管13人削減、松沢病院の調理業務委託による24人削減、板橋老人ホームの廃止・特別養護老人ホームの利用者定数減に伴う30人削減等となっている。いずれも「行財政改革実行プログラム」に基づく執行体制の徹底した見直しを行った結果としているが、とりわけ事業所の移管・移譲や現業職場の委託拡大は都民サービスの低下に直結するものであり、容認できない。

B 監理団体の定数は前年度の8,461人から282人増の8,743人となった。これは(株)PUC(水道下水道関連)の監理団体への新規指定や受託拡大による514人の増を反映している。一方、児童養護施設や障害者入所施設等が監理団体から民間移譲されたことなど事務事業の徹底した見直しにより232人が削減されている。都職員の派遣数も今年度は3,148人で前年度比344人減と大きく削減された。これらは「行財政改革実行プログラム」でかかげた監理団体改革を着実に進め、さらなる都政リストラを推進するものとなっている。

(5)組織改正について
 2013年度開催予定の東京国体準備に向け、教育庁の「国体準備室」を総務局に移管して「国体推進部」を設置するとした。さらにオリンピックや国体に向けたスポーツ振興の執行体制強化のため、教育庁のスポーツ事業や東京オリンピック招致本部の東京マラソン事業を生活文化局に移管するとともに、生活文化局を「生活文化スポーツ局(仮称)」に名称変更するとしている。
 このようなスポーツ事業関連の組織改正は突然示され、法律で教育委員会に置くこととされている社会教育主事(体育)の異動や処遇、短期間での準備等の問題が生じるものとなっている。
 また、地方自治法改正に伴い出納長制度が廃止されることから、出納長室を「会計管理局(仮称)」と名称変更するとしている。

(6) 2006年度最終補正予算案について
 都税収入は過去最高の4兆8,771億円となった。また補正予算は全会計で8,549億円の規模(一般会計4,649億円、特別会計3,842億円、公営企業会計58億円)となり、06年度当初予算とあわせると13兆2,999億円となる。一般会計補正4,649億円の内訳は、都税収入が3,743億円で、そのほとんどを法人二税が占める。編成にあたって、障害者自立支援法や都市基盤の整備などの課題は着実に取り組み、税連動経費など義務的な事項に必要な措置を行うとする一方で、収入増を活用して「隠れ借金」の解消と基金積立を行うとしている。
 その概要は、課題への着実な対応として、障害者自立支援法の円滑な運用(114億円)を計上しているが、国の特別対策である交付金を基金を創設して積み立て、その一部を繰り出すもので、都の独自加算はなく義務的な対応に止まっている。一方で幹線道路などの整備促進(104億円)、環2地区市街地再開発事業(27億円)など、「都市再生」関連に新たな財源を投入している。当初予算でシーリングを押しつける予算編成を行う一方で、例年のように補正予算で大がかりな事業を積み増すやり方は見過ごす訳にはいかない。また、減債基金積立不足の解消(3,251億円)、財政調整基金への積立(326億円)といった「隠れ借金」の圧縮と基金積立に3,577億円を計上している。
 今回の補正予算案も、医療・教育・住宅建設などの切実な都民生活関連要求よりも、基金積立を中心とし、道路建設や臨海副都心開発といった「都市再生」などに投入しており、都民要求とかけ離れた補正予算である。

3 都庁職の見解と態度

(1) これまで石原都政は、「都財政自主再建への道」として「財政再建推進プラン」を、さらに「財政再建は未だ途半ば」であると「第二次財政再建推進プラン」を策定し、財源不足を理由に福祉・医療・教育・雇用など都民に身近な施策や事業の切り捨て、職員定数の大幅削減や給与削減を強行してきた。
 都は2005年12月「行財政改革の新たな指針」を発表し、その具体化である「行財政改革実行プログラム」を2006年7月に策定した。これは財界の意向を受けた国の施策を常に先取りし、都において「官から民へ」への「小さな政府」路線を実践し、自治体を変質させる構造改革をもたらすものとなっている。同月には新たな財政運営の方向を示すものとして「今後の財政運営の指針」を発表した。その基本方針は「財政基盤は未確立」として「3年間はゼロ・シーリングを基本」とし、「負の遺産への対応」「基金の積立・取崩による財源の年度間調整」など、財政構造改革を進めるとともにオリンピック基金1,000億円の毎年度積立等を内容とした「中期財政フレーム」を示している。
 同日に出された07予算編成に対する副知事依命通達では「今後の財政運営の指針」の初年度として、「都政が直面する課題に着実に応え、10年先をもにらんだ東京のまちづくりにも積極的に取り組む」「聖域なき政策の見直しによるスクラップ・アンド・ビルドの徹底、『負の遺産』の抜本的処理など課題の根本的な解決、財政の質的展開を図る」基本方針が示された。これらは、堅調に伸びる都税収入をどのように都民に還元していくかが問われる中で、都民生活改善ではなく、都政の行財政における構造改革推進に振り向ける方向を示すものである。
 一方、都知事選を前に知事の発案から始まった「2016年東京オリンピック招致」は国内選考を通過し、招致に向けた政策とその具体化は急展開されている。査定作業が進んだ11月末「平成19年度重点事業」を発表したが、オリンピック招致に向けた都市開発・道路整備に偏り、1,000億円を超える莫大な税金がシーリング外として事業化された。
 さらに12月22日に発表された「10年後の東京〜東京が変わる〜」は、長期計画としてまちづくり・環境・福祉など8つの重点目標を掲げている。「水辺空間の再生」「三環状道路の整備」などが中心であり、「環境負荷の少ない都市」「超高齢社会の都市モデル」も含め、いずれもオリンピック招致に向けた「都市戦略」であり、大企業の利益を追求するものである。さらに都市開発の推進や金メダルを取るための人材育成、オリンピック基金の活用、環境・スポーツ文化・福祉の3つの基金創設を打ち出している。
 このことは「財政再建の成果を都民に還元していくことが求められる」とした「今後の財政運営の指針」とは全く逆の方向性を示すものと言わざるをえない。

(2) 安倍内閣の「構造改革」路線は、「骨太方針2006」に基づき「小さな政府」作りを押し進め、国民に消費税率アップなど新たな税負担などの「痛み」をおしつけてようといる。石原都政はそれを先導し、「住民の福祉の増進」という地方自治体本来の責任を投げ捨てている。
 この「予算案」は、2期8年の石原都政のくくりから見れば、都民施策の後退や職員犠牲、税収増によって成し遂げた「財政再建」をベースとして、10年後のオリンピック招致を口実とした「都市戦略」を一瀉千里に進めようとするものである。これを裏付ける「投資的経費」は4年連続の大幅増加となり、「重点事業」の首都高速・外環・圏央道の三環状道路や、物流改革にむけた交通網の整備など、「都市開発」と称した大企業のための「大型公共事業」に莫大な予算配分を行ったものに他ならない。住民反対の多い三環状道路建設等を推進するだけでなく、首都高速道路中央環状品川線や羽田空港再拡張など本来国が負担すべき公共事業にまで財政投入している。
 さらに環境・スポーツ文化・福祉の基金を創設し、オリンピック基金と合わせ総額2,531億円を積み立てるものとなっている。その結果、基金残高は9,261億円となり、バブル絶頂期の1兆円に迫るものとなった。
 一方で都民の暮らしに密着する都立施設はこれまでに150カ所も廃止し、さらにPFIや指定管理者制度の導入、地方独立行政法人化、民間委託や民間移譲の拡大、市場化テストなどで自治体の市場化をすすめ、「公」の事業からの撤退を推進している。来年度は、土壌汚染や液状化が懸念される豊洲への築地市場移転とPFI導入、医学系総合研究所(神経科学・精神科学・臨床科学)の統合、松沢病院の改修とPFI導入、都立の障害児者通園施設や作業所の民間委託などが強行される。
 これらは「行財政改革実行プログラム」に基づく都政の構造改革をすすめ、都政リストラを確実に行う内容であり、ここまで都民施策の切り捨てや都政リストラを続けてきた当局の責任は重大である。格差社会が進行する中で生活にあえぐ都民や、次世代を担う子どもたちに、直接具体的な支援を行うのが行政の責任である。福祉をはじめ医療・教育・住宅・雇用など都民生活をじかに支える施策への配分は低く抑え、都民要望に応えない都政のあり方は断じて容認できない。都庁職はオリンピック招致と都市開発に莫大な税金をつぎ込む石原都政の地方自治体行政の破壊や、その具体化である「予算案」に怒りをもって反対するとともに、都民要求と都庁職要求実現のために引き続きねばり強く闘い抜くものである。

(3) 職員定数では、環境科学研究所の公社化や福祉施設の民間移譲、八王子保健所の市移管・松沢病院の調理業務委託など1,165人(知事部局615人)の削減を強行し、3年間で4,000人の職員削減目標を掲げる「行財政改革実行プログラム」の初年度として、29%を達成するものとなっている。国の政策による警察官の増員分(102人)を差し引くと削減は1,267人で、石原都政の8年間における職員定数の削減は実に1万3,573人にも及び、都民サービスの切り捨てにつながることは明白である。
 これらは多くの都民が反対する都立施設の民間委託・移譲や統廃合をなりふり構わず推し進め、都民サービスに日夜努力する職員には執行体制の維持が困難な現状に拍車をかけ、新たな犠牲と労働強化を強いるものである。今、大量退職期を控え、ベテラン職員がこれまで培ってきた知識や技術等知的財産を次の世代に伝承できるようにすることが重要である。また少子化社会の到来に対しては、妊娠・出産や育児・介護等家族的責任と仕事の両立ができる支援策の充実や職場環境の整備こそが必要である。都民ニーズに応えることができる業務量に見合うゆとりある職員配置、働きがいのある職場、誰もが健康で安心して働き続けることができる職場が早急に求められている。

(4) 都庁職は、これまで数次にわたって都財政再建の提言をおこない、臨海副都心開発や丸の内再開発での超高層ビル建設など、「都市再生」の名による大企業本位の大型開発事業投資の都財政運営を抜本的に見直すことで、自治体本来の責任を果たし得ることを具体的に提言してきた。
 景気回復による大幅な都税収入の増加については、本来都民の暮らしのために使うべきであり、都政の第一線で働いている職員の声を集大成した都庁職の提案に真摯に耳を傾け、都民の生活や雇用を守るために、以下に示す方向で抜本的な政策の見直しをおこなうべきである。
@ 「オリンピック招致」「都市開発」「物流改革」の名による大型幹線道路等の建設、臨海副都心開発等大企業の利潤のための大型公共事業は直ちに中止し、「実質的投資総額」(投資的経費+公債費)を抑制すること。
A 首都高速道路中央環状品川線や羽田空港再拡張などは、国が本来負担すべきものであり、東京都の財政支出を取りやめること。
B 国直轄事業負担金等、国に強制された出費を一時停止すること。
C 都税収入増加の財源を活用して、福祉への投資や修復型公共事業で雇用を創出すること。
D 国からの税源移譲等地方税財政制度改善と都財政自立のための対策をおこなうこと。
E 新規都債の抑制と低利借り換えの実現による公債費負担の一層の軽減を図ること。

(5) 都庁職は都民本位の都政実現をめざして、昨年5月以降07年度予算人員要求の取組を開始し、各支部の協力を得ながら職場・分会からの要求集約や、各局要求が提出されるまでに行われる支部・局交渉を重視しつつ、「検討小委員会」で協議を求めるとともに、各支部要請や交流集会・決起集会、早朝宣伝、全組合員署名、ステッカー闘争、都議会会派要請などに取り組んだ。ここでは予算編成に係わる基本要求や各支部・各職場から積み上げられた要求の実現を求め、福祉・医療・教育など、都民生活を支える都民施策の充実に都政の重点を置くよう主張し、自治体が責任を持って対応する体制をつくるよう要求してきた。
 とりわけ今回は、都知事選挙の関係で12月に知事原案発表となることから、早いテンポで取り組みを開始し、当局の査定などの日程とかみ合う行動を重視してきた。あわせて「賃金確定闘争」「予算・人員闘争」の一環として、都庁職「島しょ要求」「障害者要求」「研修要求」「新宿庁舎改善要求を提出し、「島しょ要求」「障害者要求」では対都要請行動も行った。当局の「管理運営事項」を理由とした取り扱いが強まる中で、都政リストラを許さず事業に責任がもてる執行体制を確保するため、査定作業がすすんだ11月以降は、各支部による対都要請行動や検討小委員会で支部重点要求の実現を強く求めるとともに、歯止めなき定数削減に反対してきた。
 しかし当局は、こうした道理ある要求に答えず「行財政改革実行プログラム」に基づく「構造改革」を推進する姿勢をとり、さらに知事原案発表直前の12月22日に「10年後の東京」を発表し、「オリンピック招致」と都市開発を加速させた「予算原案」の発表と定数通告を行った。
 都庁職はこのように一方的で、都民・職員を無視する当局の「予算案」や、大幅職員定数削減に対して、満身の怒りをこめて抗議するものである。引き続き都議会第1回定例会をにらみながら、以下の点を基本として都民要望に応える予算編成を求め、全面的な都政リストラ攻撃に組織一丸となって反対し、都民とともに取り組みをすすめるものである。

@ 安倍内閣の「構造改革」路線と連動した都政運営や、都民にさらなる「痛み」を押しつける「オリンピック」「都市開発」を中心とした予算編成に反対し、福祉予算をはじめとした都民生活に潤いを与える暮らし関連予算等に重点的に力点を置く予算編成を求める。

A 予算・人員に関わる重要な課題は、職員の労働条件そのものに直接影響を与えるものであり、都当局の労使協議の対象としない「管理運営事項」とする態度を改めさせ、具体的実質的な協議ができるよう取り組みを強める。

B 石原知事がこれまでに行った1万2,691人(実質1万3,573人)の定数削減を許さず、都民サービスに応えるため、職場実態に見合うゆとりある職員定数配置を求めて取り組みを強化する。

C 今年4月はいよいよ都知事選挙である。憲法の理念と精神にもとづく地方自治の本旨の実現である都民本位の都政を実現すため、「憲法を命がけで破る」とまで公言してはばからない石原知事が推進する都政の実態を白日の下にさらし、広範な都民と連携しながら取り組みを強める。

以上

ページのトップへ戻るページのトップへ戻る
 

Copyright (C) Tokyo metropolitangovernment laborunion.