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和魂洋才
日本がどうやって日本であり続けたかを問い直したい

イラクの人々にとって
「ヒロシマ・ナガサキ」は米軍の攻撃に怒る日本人の象徴
被害者でありながら、なぜ対米追随を続けるのだろうか


東京外国語大学大学院・教授 酒井啓子(さかい・けいこ) プロフィール
 1959年生まれ。82年東京大学教養学部卒業後、アジア経済研究所入所。86年から三年間在イラク日本大使館に勤務。アジア経済研究所の中東担当研究員として特にイラクを中心に研究を進める。2005年10月から現職。著書に、「イラクとアメリカ」「イラク戦争と占領」(いずれも岩波新書)などがある。

 2006年は、どのような年になるのだろうか。敗戦から60年「米英軍と戦闘状態に入り」から「米英軍とともに戦闘状態に入れり」という状況にシフトしていく日本。在イラク日本大使館の専門調査員として現地にも滞在したことがあり、中東諸国にくわしい酒井啓子さんからの便りをお届けしたい。

 日本、特に東京という街は、中東のどの国でも憧れの街だろう。「悪の枢軸」と名指しされたイランで、戦後の疲弊したイラクで、イスラエルの占領にあえぐパレスチナで、いたるところで「日本人、日本人」と無邪気に声をかける人々がいる。中東のテレビ界で一世を風靡した「おしん」を口にする人もいるし、「かつて日本企業に働いていた」とか、「JICAや国際交流基金に呼ばれて日本で研修を受けた」と、具体的に日本での経験を語る人さえいる。

中東の人々がもつ親日観

 中東で日本に対する憧れが強いのは、なんと言っても日本が第二次世界大戦の廃墟から不死鳥のようによみがえったという点に対してだ。特に相手が英米だったということが、中東の人々の親日観をくすぐる。彼らが反米だから、というのではなく、米国あるいは米国の支援を受けたイスラエルの圧倒的な力の支配に対して、なすすべのないアラブ、イスラーム諸国の住民として、日本の戦後復興は偉大な成果、見習うべき目標なのだ。
 日本がアジアの一国だ、という意識も、彼らの親近感を増す。中東では「自分たちもアジアの一員だ」という意識が強い。古くは日露戦争にさかのぼって、日本というアジアの一国が欧米に匹敵、凌駕する経済的発展を遂げたことは、同じアジアの「中東」もまた同じように発展できないはずがない、という励みになっている。日露戦争の後、同じくロシアに脅威を抱くトルコで「トーゴー」という名前が急増した、というエピソードは有名だ。

日本の対米関係は理解できない

 だから、中東から日本を訪れた人たちの多くが、まず「ヒロシマ・ナガサキ」に行きたがる。日々イスラエルの抑圧と人権蹂躙に苛まされているパレスチナ人や、米軍の攻撃と横暴をこらえなければならないイラク人にとって、ヒロシマ・ナガサキは「同じように米軍の理不尽な攻撃に怒る日本人」の象徴である。彼らは日本に対して、「おなじ米軍による被害者」という対等意識を持っているのだ。だが、彼らには今の日本のあいまいな対米関係が理解できない。あるいは、今の日本人の戦前の日本に対する反省をうまく理解できない。「ヒロシマ・ナガサキ」を経験しながら、対米追随を続けること、米軍に国土を守ってもらっていること、米軍の基地が国内に存続し続けることを、うまく理解できない。

日本の軍事的野心 今昔

 「欧米に挑戦し肩を並べた日本」というイメージが強い分だけ、日本の実際の外交政策、姿勢を見たときには、その失望感は大きい。イラクに自衛隊を出したときもそうだ。欧米諸国の植民地的、軍事的支配にうんざりし続けてきた中東諸国は、日本が軍事的野心を中東に持たないから、という一点で、日本を信頼してきた。中東の人々の歴史認識のなかには、日本が戦前に他のアジア諸国に何をしたか、という知識はすっぽり抜け落ちているのだが、とにかく中東での日本のイメージは、「経済大国として中東諸国の経済発展を支えてきた高い技術の日本企業」である。
 それが、企業ではなく自衛隊、ということになると、軍を伴って中東にやってくる欧米諸国とどこが違うのか、と考えるようになっていく。

戦後の発展の鍵 和魂洋才

 そうした日本の「微妙な対米関係」「欧米文明との距離のとり方」といったものが、実は中東の国々の人たちが一番参考にしたいことなのではないだろうか。日本を訪れる多くの中東出身者が、日本、特に東京の、圧倒的な近代化、西欧化に驚く。だがその一方で、「街中の自動販売機にコカコーラ(欧米化の象徴だ)がない」といって、驚く。西欧の技術、経済力、機能性はどんどんとりいれて、都市の外観はすっかり欧米化していながら、その嗜好や考え方、人と人との情や義理といった関係性は、「日本的」なものがしっかりと生きている。中東の人たちは、そうした日本の「バランスのとり方」に驚き、不可解に感じながらも、その「和魂洋才」を学びたいと感じているのだ。
 ところが、その日本的和魂洋才を「教えてくれ」と聞かれても、なかなか説明するすべがない。日本の戦後の発展のなかで、日本的なものを残してきた知恵は何だったのか…。あちこちで聞かれるが、それを書いた書物もない。外国で披露される「日本文化の紹介」はもっぱらいけ花や歌舞伎など古典文化だが、むしろ「欧米とのつきあいのなかで日本がどうやって日本であり続けてきたか」を発信していったほうが彼らの役に立つのではないか。そして日本人は、それを改めて自分自身に問い直してみる必要があるのではないか。


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