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健康 メンタルヘルス講座(16)

ストレス対処能力を身につける
D心の柔軟性を磨きストレスを上手に逃がす

  人間は自分の予期せぬ状態が起きたときにストレスを感じる生き物であると言われています。例えば、同じ人事異動でも、予定通りの異動であれば容易に受け入れることが出来るのに、予想していない状態での異動には大きなストレスを覚えます。
 実はここにも人間の持つ大きな癖が影響しているのです。人間は様々な経験を元に自分の中に自分だけのルールを定める癖があるのです。よく人は年をとると頑固になるとか頭が固くなると言われますが、まさにこの人間の癖を象徴していると言えるでしょう。
 もちろんこの癖は、経験則という貴重な能力ですが、時にストレスに対する弱さを生むことになるのです。つまりこの経験則が、『〜であるべきだ』とか『〜に違いない』と予測される状況を決めつけてしまうのです。例えば職場でも『上司の誘いは断るべきではない』というルールを持っていらっしゃる方は多いのではないでしょうか?そのようなルールを持っている人が、部下を誘ったところ『今日は用事がありますから。ごめんなさい』と断られると、何で上司である自分の誘いを断るのだろうと憤慨、困惑しストレスの原因となるのです。しかし、上司の誘いは断るべきではないというのは自分の中の勝手なルールであり、個人主義の人から見れば何ら問題のない行為なのです。
 このように人は年を重ねる毎に、経験という財産と引き替えに頭の柔軟性を失っていくのです。そこで私は普段から頭の柔軟性を鍛える簡単な訓練を推奨しています。ノートに思いつく限りの自分のルールを書いてみてください。『新聞は社説から』、『ニュースはNHK』など何でも結構です。その中で、法律や職場のルールで決まっているものには○をつけてください。つまり○が付かなかったものは、別に破っても何の罰則も受けることのない自分だけのルールなのです。その自分だけのルールを破ってみることが訓練なのです。今まで新聞を社説から読んでいた人がスポーツ面から読み始めても、何も問題が無いことに気付くはずです。
 このように頭の柔軟性を磨き、予期せぬ事態が発生したときにも、ストレスを感じにくい自分を作り上げていくことがストレス社会では重要なのです。

(産業医の立場から  筑波大学 吉野 聡)



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