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健康 メンタルヘルス講座(14)

ストレス対処能力を身につける
B内的対処能力・SOCという概念を理解する

 先月は外的対処と呼ばれる、いわゆる“発散”についてお話ししました。確かに外的対処は有効なストレス対処方法ですが、時間が必要だったり、お金がかかったりと、その効果を十分に発揮できない場面もあります。
 そこで重要になってくるのが、皆さん自身が持つ内的なストレス対処能力なのです。内的対処能力とは、個々人に内在するストレスに対する抵抗力(ストレス耐性)や考え方の柔軟性(ストレス認知の柔軟性)などを総合的に捉えた概念です。ストレス社会と言われる近年において、内的対処を反映するSOCという概念が精神・心理の領域でにわかに注目を集めてきています。SOCとはSense Of Coherenceの略称で、日本語では“首尾一貫感覚”と略されます。SOCは、イスラエルの心理学者A・アントノフスキー博士により提唱された概念で、ユダヤ人の強制収容所より生還した人々を研究対象として確立されてきました。多くの場合、医学の分野では病気になる人はどのような特性があるのかに注目しますが、アントノフスキー博士が注目したのは、強制収容所のような精神的にも身体的にも大きな苦痛を強いられる劣悪な環境下にもかかわらず、精神的な健康度を保つことのできた人々でした。このように、どのような人が健康を保てるのかという考えを健康生成説とよび、その中核概念がSOCと呼ばれる感覚なのです。
 このSOCは主に3つの要素から構成されるとされています。1つめは『有意味感』といい、どんなに辛いことに対しても意味を見いだせる感覚(意味を見いだす力)、2つめは『把握可能感』といい、どんなことも自分の行動と結果が関連しているという感覚(先を見通す力)、3つめは『処理可能感』といい、自分がよかれと思う行動を最後まで成し遂げられるという感覚(何とかなると考える力)です。最近の様々なストレス研究で、このSOCという感覚の強さと心身のストレス反応の間に非常に強い関連があることが分かってきました。
 SOCは幼少期からの生育環境に大きく左右されると言われていますが、成人以降も日常の心理的トレーニングで成長させることができると考えられています。来月号からは、この内的ストレス対処能力を示すSOCをどのようにして育てていくかをご説明します。自らのSOCを成長させ、ストレスと上手につきあえる思考パターンを身につけていきましょう。

(産業医の立場から  筑波大学 吉野 聡)



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