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健康 メンタルヘルス講座(11)

ネット時代のコミュニケーションスキル
−営業マンに学べ−

 先月号では、メールによるコミュニケーションの危険性や相手と顔を合わせることの重要性についてお話させていただきました。しかしながら実際には相手と顔を合わせても何を話したらよいのか分からない、最近の若者は何を考えているのか分からないと頭と抱えてしまうことも多いのではないでしょうか。
 以前は「飲みニケーション」という名で、職場を離れて上司と部下でじっくり話し合う時間を持てたのに、最近では「上司と飲みに行くことがストレス」と話す若者も多く、どのように部下とコミュニケーションをとったらいいのか分からないと、私のところに相談にいらっしゃる方も多くいます。
 そんな時、私は一流企業の営業マンが常に心がけている技術をお教えしています。なぜ営業マンの技術なのかといえば、それが高いコミュニケーションスキルを必要とする職種だからです。見知らぬ相手に自社の製品を売り込むときには、最初に会った際に相手に好印象を持ってもらうことが何より重要なのです。
 ある製造業の営業マンは新人教育の際に、「必ずお客さんと同じものと注文するように」と教えられるそうです。つまりお客さんがコーヒーを注文すれば、営業マンも「私も同じものを」といいコーヒーを注文するように教育されるのです。この技術は自分と同じところを見付けると人間は親近感を感じるという心理作用を利用しているのです。つまり、見ず知らずの他人でも同じコーヒーを注文する行為で、親近感を与えることが出来るのです。
 これを上司と部下の関係に当てはめてみましょう。たまたま部下が食堂でハンバーグを食べていたとします。そこで「そのハンバーグ、おいしそうだね。今日は私も同じものにしよう。」と声をかけてみてください。すると部下の中でも、「普段はあんなに怖くて厳しいことを言う上司でも、自分と同じところがあるのだな」という情緒的共感が沸いてくるのです。しかもこれをきっかけに、お互い「ハンバーグ好き」という共通の話題が生まれるので、「○○課長、この前ハンバーグのおいしいお店を見つけましたよ」とさらにコミュニケーションが円滑に進むこともあるのです。
 相手と同じ注文をすることで、相手との距離を縮めるこの心理的技法、皆さんもぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。

(産業医の立場から  筑波大学 吉野 聡)



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