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健康 メンタルヘルス講座(9) うつを知ってうつを防ぐ

メンタルヘルス向上への取り組み
―労働安全衛生法の改正による変化―

 職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とした労働安全衛生法が来る2006年4月1日に改正されます。その主な改正点は、時間外労働(法定労働時間・週40時間を越える労働)が月100時間を越える労働者の中で、本人が希望した者には雇い主として医師の面接を受けさせなければならないという義務が明文化されます。また、時間外労働が月45時間を越える労働者や健康に不安を感じた労働者で、希望した者には医師の面接を受けさせるように雇い主は努力しなければならないという努力義務も同時に明文化されます。
 私自身はこの法律改正がメンタルヘルス向上への第1歩となることを大きく期待しています。確かに、長時間労働者に対する面接は今まで「面接を受けに行っても仕事が減るわけではない」「面接を受けに行く時間があったら少しでも仕事をして早く帰りたい」という労働者側の不満があったことも事実です。それは面接をしている我々医師側にも大きな問題があったのかもしれません。
 最近、私は「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で、石川県七尾市和倉温泉の加賀屋という旅館が26年連続で総合1位に選ばれたという記事を目にしました。この加賀屋という旅館の、まずは従業員教育に力を入れ、従業員が仕事に専念できる環境を整えることから始めるという経営手法は何度も新聞紙面で高い評価を受けています。つまり安心して仕事に専念できる環境作りが従業員の心のゆとりを生み、結果として利用客の満足度を押し上げているのです。
 もちろん仕事の量を減らし、時間外労働を減らすことができるのであれば、それが過重労働の解決策となることは間違いありません。しかし現実的にどうしても時間外労働をしなくてはならないのであれば、企業としてきちんと労働者の健康に配慮し、安心して仕事に取り組める環境作りをすることが最終的には顧客である都民の満足度を押し上げる結果につながるのだと思います。
 つまり過重労働者に対する医師との面接を有効に活用し、上司としてきちんと部下の健康に配慮しているということを行動で示す必要があるのです。そのことが職場全体の求心力を上げ、活力を生み出す結果となると予測されます。このようにメンタルヘルス問題は労使双方が手を取り合いながら考えていかなくてはならない問題なのです。
(産業医の立場から  筑波大学 吉野 聡)



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