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こんな職場、こんな仕事(第36回)


患者への想いと医療の安全はPFIでは困難です

病院支部 駒込病院

前列 赤尾関さん 後列右 細井さん 左 飯島さん

 秋の気配が漂う8月末に文京区にある都立駒込病院を訪問しました。駒込病院は都の方針としてPFIで建て替え、今年度中にPFIの事業主グループが決まる予定です。駒込病院の機能の特徴は、がん、感染症治療にあります。がんの治療は手術から化学治療(薬)、放射線治療に主体がおかれ、化学療法でガン細胞を小さくする治療が入院だけでなく通院でも行われはじめています。患者の日常生活への影響や、さまざまな身体の残された機能と免疫力についての医師の判断と患者の選択により治療方針を決めています。さらにセカンドオピニオンまで拡げ、他の医師にも治療方針を聞くことができます。こうしたレベルはPFIでは維持できるとは思えません。

薬剤科の大きな役割

 抗ガン剤は人により、病気により千差万別の種類と量です。多剤の複雑な量を合わせ(ミキシング)て患者のところに届けます。ミキシング業務は薬剤師がマスク、メガネカバー、手袋、ガウンを着用し、作業します。抗ガン剤は皮膚からどんどん吸収し、ミキシング中にとびちる危険があります。本来は全患者分のミキシングが薬剤科の役割ですが、圧倒的に薬剤師不足です。それでも勤務時間を早くして一部に対応しています。癌専門病院というなら、薬剤師増員でミキシングを多く受け入れたいのです。

入院生活、美味しく食べて、眠るために、転ばぬために

寸分おしまず仕事する
内視鏡コードを洗浄する
パソコンで看護記録をつけながら病棟まわる

 看護は治療方針を理解し、患者が何で悩んでいるのかを聞き、一緒に治療を頑張れるよう話し合うことが大きな役割です。しかし業務に追われ患者とゆっくり接していられないのが現実です。
 夜勤は今の倍の人数が欲しい、そうすれば患者は気を使わず、安心できます。夜勤は月に8〜9回で、多くは3人体制です。寝巻の襟やベッドセンサー、床のセンサーコールマットを付けたりしても、患者は一瞬のうちに転んでしまいます。患者さんが転ばないためには看護師を増やすことでほとんど解決します。
 準夜が終わって深夜の1時頃タクシーで帰りますがタクシー代は1回2650円までしか出ません。タクシー代が完全に支払われるなら、辞める人も減ります。
 栄養科は調理師が当直の4人も含めて17人です。仕事は遅くても朝5時から開始です。食事の種類は40種類以上、毎日650〜700食を直営で作っています。調理は一口大にする、ミキサーにかける、フルーツの皮をむく、ご飯はやわらかく、ソーメンや温・冷うどんなどなど、できる限り患者の希望食を作っています。
 中央器材室は医療機器のメンテナンスを行うところで、臨床工学技士が4人います。透析業務はもちろん、院内の機器をメンテナンスしています。安全な医療のためには欠かせません。
 医師は30才前後から40才ぐらいまで休まず働いています。夏休みはどうにか取っていますが年休は取っていないのが現状で、無権利状態に近いです。常勤医が定数ですが、定数では間に合わず非常勤医と研修医に支えられています。非常勤医が1/3にのぼります。

高いレベルの放射線治療

医療機器のメンテナンス行なう中央器材室
放射線治療のリニアック治療装置

 放射線治療部門には、リニアック治療装置3台、小線源治療装置1台があり、定位放射線照射、全身照射、術中照射なども行っています。ガン研究所、国立ガンセンターなどと同等の放射線治療をしており、医学物理士の定数と常勤を要求しています。年末に3台目の機械が導入され順調に乗り出してきたところです。駒込病院には放射線治療医が配置されており、専門病床も持っています。全国的には専門医も専門病床もわずかしかありません。
 身体に負担の少ない内視鏡治療は外科的な分野にも拡大されており、これからの治療としては重要です。ほかには外来や医療相談室などがあります。どこも人手不足を訴え、良い治こものために働きたいという思いが伝わってきました。
 これらの医療内容を考えればPFIでは病院の仕事は成り立たないと強く思いました。

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