都庁職(東京都庁職員労働組合公式サイト)

伊ヶ谷地区海上より見る三宅島
伊ヶ谷地区海上より見る三宅島 撮影2003年4月10日三宅支庁提供
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都庁職新聞
 
東京の未来を育む都庁職組合員の仕事

 

 現在、都庁職は特殊勤務手当改善闘争に取り組んでいます。
 新年号では、特殊勤務手当改善を求める2つの職場を訪問して取材しました。

 

現場の組合員が報われる手当に

 毎日の生活に欠くことのできない水産物・青果物・食肉・花きなどの生鮮食料品等を販売するために、卸売市場法に基づき東京都が開設しているのが、中央卸売市場です。東京都に11か所ある中央卸売市場の中で、唯一、お肉を取り扱うのが食肉市場です。取扱高は全国一の規模で、主に牛と豚の枝肉や内臓等を生産する「と場」と、これらの製品を取引する「市場」の二つの部門から成り立っています。多くの消費者に、安全で安心な食肉を安定的に供給している食肉市場。品川駅に近接する食肉市場を訪ねて、食肉分会の島田分会長、飯野副分会長、塚原分会書記長と、都庁職の楠執行委員に話しを伺いました。

編集部(以下「編」) 「食肉市場の役割は何ですか」
島田分会長
「私たちが働く食肉市場は、安全・安心・高品質という信頼を得られる食肉等を、公正で透明性の高い活動により提供していく役割があります。東京は日本一の消費地なので食肉市場には、全国から国産の銘柄牛や銘柄豚が集まります。1日の取扱量は約330t。東京の食肉市場の取引価格は全国の食肉取引の目安である「建値」と言われていて、全国の生産者から信頼が寄せられています」
飯野副分会長
「食肉市場の1日の取扱量は平均約330tという膨大な量です。こうした多くの食肉を取扱いながらも、食肉の衛生管理を最も重視していてHACCP(ハサップ)に基づく衛生管理を2018年度から開始しています。組織としては、管理課、設備課、業務衛生課、作業一課、作業二課があり、役割を分担して、市場を円滑に運営しています」
 「皆さんのそれぞれの仕事を教えて下さい」
島田分会長
「作業一課に所属しています。作業一課が取り扱うのは大型動物(牛)で、この大型動物のと畜解体業務を行っています」
飯野副分会長
「私も作業一課に所属しています。と畜衛生業務を担当しています」
塚原書記長
「作業二課に所属しています。作業二課が取り扱っているのは小型動物(豚)で、小型動物のと畜解体業務を行っています」

 

衛生基準クリアの厳しさ
マニュアルの複雑さが増大

 「食品の安全衛生はこの数年で大きく変化していますが、職場にはどんな影響がありますか」
島田分会長
「大きな課題としては、HACCPへの対応がありますね。全と場でHACCPに則って作業しないと法令違反になってしまいます。そうした衛生基準をクリアすることの厳しさやマニュアルの複雑さは、大変さが増しています。
 HACCPは一度取り入れたら終わりというものではなくて、毎月、毎年、基準をクリアし続けるもので、ゴールの無い衛生基準とも言えます。加えて、作業一課の3つあるラインのうちのCラインは2026年度に海外輸出を目指しているため、その相手国の衛生基準を満たす必要が出てきます。私たちの作業はライン作業なので、決められた時間内で作業を終わらせなければならない。新たな基準を満たす動作もプラスした上で、同じ時間で作業を終わらせることになります。そのためには、技術を磨いて向上させ、作業時間に余裕が必要になります。かなり大変なことです」
 「海外輸出を始めるということですが、どんな目的があるのでしょうか」
島田分会長
「食肉市場は東京都の施設なので、安全で安心な食肉を安定的に供給するという役割がありますが、将来的な人口減少予測も踏まえれば、食肉市場の販路開拓も必要です」
飯野副分会長
「円安もありますので、競争力が高まっている現在、海外市場への販路拡大は非常に重要です」
塚原書記長
「そのために、大型動物のCラインでは今年の年頭からずっと工事を行っていました。衛生対策と空調改善の工事です。空調改善は組合が要求していたものが実現しました」
島田分会長
「こうした新しい方向性については、将来的には全体的な対応が求められてくると思っていますが、施設そのものの老朽化が進んでいるので、施設全体の建て替え等の課題が出てくるのではないでしょうか」

 

実員の予備率が低く余裕のない状態が恒常化

 「繁忙期の対応は?」
島田分会長
「36協定で残業は制限していますが、11月から1月の3か月間は、土曜出勤を月2回ずつ行って対応しています。私たちは、日々、決められた時間内に決められた頭数を作業しなければなりません。次の日に仕事を廻すことができないです。傷病者が発生して、実員が足りない日も、少ない人数で作業を終わらせなければならない大変さがある。新しい仕事は増えていくのに、作業一課も作業二課も、定数に対する人員の実質的な予備率は非常に低い状態になってしまっているために、余裕のない状態が恒常化しています」
塚原書記長
「十数年前から働き始めましたが、HACCPの導入もあって、限られた時間の中で対応しなければならず、労働密度は確実に上がっています。作業を効率化しながら新しい作業を組み込む必要があります」
飯野副分会長
「と畜衛生の業務は、その時代によって大きく仕事が変わります。以前で言えば、溶連菌の対応やO157の対応もありました。最近では、BSE。こうしたことで、業務内容が変化します。今はHACCPの対応や輸出対応をしていますが、人が増えない中で作業は増えていく状況です。新たな問題が出ると新たな対応が求められます」
島田分会長
「私が働き始めた頃と比べると、労働密度は1・5倍くらいになっている感覚ですね。また、動物の大型化で作業量が増しているという側面もありますね」
 「なぜ動物は大型化の傾向にあるのでしょうか」
島田分会長
「生産者側のトレンドではあるけれど、この食肉市場がせりの「建値市場」という面も大きいと思います。牛の繁殖技術の向上もあって、最近は大きい個体でも肉質は悪くなくてA5ランクが付く。そうであれば、大きい個体を作る方が儲かるという流れがあるのではないでしょうか」
塚原書記長
「豚も非常に大型化していますね。大貫(タイカン)が多くなっていますね。搬入のために大貫用の通路もあるのですが、それにも通せなくて外で作業をしなければならないことも増えてきました。コンベアから頭もおしりも出てしまうような個体も多いです。豚の肉の値段が上がっていることも影響しているようです」
楠都庁職執行委員
「生き物相手の作業ですから立ち上がって暴れ出す場合もあります。豚も同じで牙があるので非常に危険です。刺されて大怪我ということもあります」

 

明日に持ち越せない仕事
特勤手当の増額を絶対に

 「分会役員の視点からの課題を教えて下さい」
島田分会長
「衛生基準を満たすことと、作業の安全第一というのは、両立しにくいですが、安全第一を求めていきたい。現場の改修も必要であるし、大型化に伴う危険も増えている。作業は非常に過酷であるのに、平均年齢が上がってしまっている。若い職員を採用しないと将来的に厳しくなります」
塚原書記長
「採用への応募が減っている傾向です。以前は10倍超の採用倍率だったが、昨年は6倍程度。応募してくる人も公務員志向の人が増えているようです」
楠都庁職執行委員
「業務をマンパワーに頼りすぎている傾向があって、建物の老朽化もありハード面の進行が遅れています。人間がなんとかカバーして運営している面が大きいと思っています」
塚原書記長
「今はベテランのマンパワーで補えても、これから若い人がそれを担うのは難しい。HACCPなど覚えることが膨大で、技術面での育成が難しくなっていると思います。経験が重要で、代わりになる人を集めることができない職場で、全て経験するまで10年かかります。ベテラン職員が一気に抜ける時期が来るので、そこをどうやって乗り越えるかは大きな課題です」
 「特勤手当改善や要求への思いをお願いします」
島田分会長
「増額を勝ち取りたいと思っています。作業量が増えて危険度も増して苦労している。設備の老朽化で機械の故障なども増え、作業にしわ寄せがきている。レールリフト落下という大事故が起こるなど、危険と背中合わせの仕事です。東京都の食のために、明日に持ち越せない仕事を担っている職員のために手当を絶対に増額して欲しい」
飯野副分会長
「日額の特殊勤務手当は現場の作業に出て働いているからこその手当。現場で働いた人が報われるために、モチベーションの維持としても増額が必要です」
塚原書記長
「レールリフトの事故後も、落下事故は絶え間なく起きているし、HACCPの対応で熱中症も増えている。危険な状況で頑張る職員の要求にぜひ応えて欲しいと強く思っています」
飯野副分会長
「と畜衛生の職場は人数が少なく技能長に昇格するチャンスが無い。他にもそういう職場はあると思う。個人の努力ではどうにもできない状況。そういう理不尽な状況を変えて欲しい」
 「今日はどうもありがとうございました」

 

HACCP(ハサップ)とは?

 HACCPとは、食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去又は低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようとする衛生管理の手法です。この手法は国連の国連食糧農業機関と世界保健機関の合同機関である食品規格委員会から発表され、各国にその採用を推奨している国際的に認められたものです。
 HACCP方式では、従来の抜取検査による衛生管理に比べ、より効果的に問題のある製品の出荷を未然に防ぐことが可能となるとともに、原因の追及を容易にすることが可能となるものとされています。HACCPを導入した施設においては、必要な教育・訓練を受けた従業員によって、定められた手順や方法が日常の製造過程において遵守されることが不可欠です。(以上、厚生労働省のHPからの抜粋)
 HACCPは、アメリカのアポロ計画で宇宙食の安全性を確保するために発案された衛生管理手法で、それが食品業界に評価されたことをきっかけに、次第に世界に広がり、今では衛生管理の国際的な手法となりました。Hazard(危害)、Analysis(分析)、Critical(重要)、Control(管理)、Point(点)の頭文字をとってできた造語です。

 

子どもや家庭を援助する児童相談所の仕事

 児童相談所は、児童福祉法に基づいて設置され、原則18歳未満の子どもに関する相談や通告を受け付けています。東京都は、23区に7か所、多摩に4か所の都立児童相談所・児童相談センターを設置しています(港・品川・世田谷・中野・荒川・江戸川・板橋・豊島・葛飾は区立)。福祉保健局支部の蓑輪副支部長と八王子児童相談所を訪ねて、組合員の佐野さんに話しを伺いました。

 

東京都の児童相談所と児童相談センター

編集部(以下「編」) 「児童相談所は、どんな役割の事業所なのでしょうか」
蓑輪副支部長
「最近は児童虐待防止などが注目を集めていますが、子ども本人や親を含めた家庭から養護、保健、心身障害、非行、育成など様々な相談を受け、区市町村と役割分担や連携をしながら、子どもや家庭に援助を行う仕事をしています」
 「佐野さんのお仕事や職員構成を教えて下さい」
佐野さん
「八王子児童相談所の管轄は、八王子市、町田市、日野市です。一時保護所を含めて多くの職員が働いている職場です。私の職種は児童福祉司で、町田地域を所管する班の職員の一人として、人口約43万人の町田市を担当しています。
 相談所全体で児童福祉司が4割、児童心理司が3割、事務職など他の職種が3割程度の職員構成です。一時保護所を含め保育士や看護師など様々な職種の人が働いています」
蓑輪副支部長
「児相談所職員の任用について言えば、一般の常勤職員だけではなく、任期付常勤職員や会計年度任用職員、特別職非常勤職員なども多い多様な職場ですね」
 「日常的には、どの様に業務をされていますか」
佐野さん
「相談所の外に行く仕事の比率が非常に多くて、担当している町田地域には2日に一度は行く感じです。日常的には、市役所や地域センターで相談を受けたり面接をしたり、学校に相談や面接に行ったり打ち合わせをしたり、家庭訪問をしたり。児童保護の判断などを担当地域で行うこともあります。児童福祉司だけではなく、児童心理司も相談や面接などを含めて担当地域に行くことが多いです」

 

チームや組織を信頼して
仕事をすることが大切

 「どの様なお仕事ですか」
佐野さん
「児童相談所での仕事は人の人生に関わる仕事ですから、責任は重大だけれど、やりがいもあると思っています。例えば児童の保護の判断、逆に保護の解除の判断もしますがそれは組織で責任を持って決定するもので、担当の意見もあるけれど、みんなで分担して責任もシェアする。だからこの仕事はできています。判断を自分だけの責任と考えることは、おこがましい事だとも言えます。担当としての意見、上司の意見、係長の意見、ちゃんと出し合うことがお子さんのためにもなる。チームでシェアできていることが嬉しいし、チームや組織を信じられるか、ということが児童相談所で働く職員としてのメンタルに影響すると思っています。同時に、子どもの支援の面でも、その事はとても大切な事ですね」
 「児童虐待の防止が注目を集めています」
佐野さん
「児童相談所は、支援と介入を分けるという基本方針があります。八王子児童相談所も、虐待班と地区担当で分かれていて、虐待班は、児童虐待の初期対応をします。保護にも携わりますが、助言や指導で済むケースも多いです。地区担当も最初から一時保護になるような虐待の担当をします。施設に入所している子どもの担当もします」
 「他にはどのようなお仕事がありますか」
佐野さん
「業務量的は虐待対応の比率が高いですが、一般の通所の非行、養育困難、育成相談なども担当します」

 

多摩地域に3か所の児童相談所を新設

 「多摩地域の児童相談所新設の話しがありますね」
蓑輪副支部長
「2021年に公布された児童相談所の設置基準の政令等を踏まえ、多摩地域の管轄区域を見直す【多摩地域児童相談所配置計画】が策定されました。多摩地域に3か所の児童相談所を新設する計画です。都児童相談所の増設は丁寧に議論する必要があるものの、そのこと自体を頭ごなしに否定するつもりはありません。しかし、必要な人員が現実に確保されることが大前提です。当局の責任として、人員確保に向け、抜本的な待遇改善など、一歩踏み込んだ具体策を早急に示すべきです」
佐野さん
「八王子児童相談所の管轄では、町田市を管轄する町田児童相談所(仮称)を来年度に仮設で開設予定だと聞いています。市役所との新たな連携も検討していくことになるでしょうね」
 「改正児童福祉法の施行で、児童相談所が関わる子どもの意見表明の権利保障などの新たな対応もありますが」
佐野さん
「子どもの意見表明や一時保護所の第三者委員などは、私は良く機能しているのではないかと考えています。子どもは、職員に言えることもあれば言えないこともあって掴みにくい。意見を言える子どもが第三者に伝えてもらって、それを私たちにフィードバックしてもらうことで改善していく。組織として受け止めることができる面がある仕組みだと思います。しかし、一時保護所や相談部門についての外部評価の課題は、支援の質全体をわかりやすく評価出来ているのかということです。物理的な環境の不備であるとか、職員の配置基準を満たしていないとか、そういう面も評価基準に組み込むべきではないでしょうか。現場の私たちから考えれば、客室の足りないホテルやワンオペでオーダーの捌けない飲食店のような状況があるわけです。職員の意識の問題とか、子どものニーズに応えているかとか、働く人にばかり注文を増やし、しわ寄せを強いていないだろうか。現場だけに対しての第三者評価ではなく、もっと客観的に全体状況を晒すべきなのではないかと思います」

 

職員が少ないことでの
余裕ない状況を変えたい

 「今の児童相談所の課題はなんだと考えますか」
佐野さん
「職員が足りない、特に福祉司の数が足りないです。採用するだけでは駄目で職員の育成も重要です。特に、中堅層の40代の職員が少なくて、児童相談所の職員構成が、超ベテランと若手に偏重しています。若手職員は、自分の成長の段階が見えないことで戸惑っているのではないでしょうか」
蓑輪副支部長
「区への児童相談所移管が進んでいます。区の方が担当するケース数が少ない傾向があるし、給料が良かったりする。転職してしまう人も少なくありません。東京都としての児童相談所の在り方は変わっていきます。子どもの数も変わっていく、担当するケースの数もこのままでいいのか。一時保護所では、小人数対応、個室化。子どもも、子どもを取り巻く大人も、変化していくことに対応が必要です。子ども達には、失敗はチャンスだよ、と言っています。児童相談所がそういう役割を今後も果たして行きたいですね」
 「今後についての思いを聞かせて下さい」
佐野さん
「児童相談所の仕事の対象者は、大変な人生を生き抜いてきています。貧困、女性福祉など社会の縮図が現れている。子どもが、その影響を受けていることは避けなければいけないし、保護者も、今の社会の矛盾で苦しんでいる。皆さんを生活者として理解した上で、児童相談所が支援できるようになっていかなければいけない。そうではないと、利用されない行政機関、使ってもらえない相談所になってしまうので、関係機関、自治体と連携してそのようにしていきたいです」
 「組合に意見は?」
佐野さん
「組合員としては、職員が少ないことで、仕事に余裕がない状況を変えたいです。仲間の存在が仕事をしていく支えにもなるし、仕事をしていくモチベーションになります。人員配置でも、手当の増額についても、組合がみんなで頑張っていけたらいいですね」
 「今日はありがとうございました」

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