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伊ヶ谷地区海上より見る三宅島
伊ヶ谷地区海上より見る三宅島 撮影2003年4月10日三宅支庁提供
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都庁職新聞
 
物価高騰に見合った大幅賃上げの期待を裏切る不当な勧告

 

2022年東京都人事委員会勧告に対する都庁職の見解と態度

 

1 はじめに

 

 10月12日、東京都人事委員会は、都議会議長及び都知事に対し職員の給与に関する勧告・報告(意見)及び人事制度及び勤務環境等に関する報告(意見)を行いました。
 給与に関する報告では、例月給については、民間給与が都職員給与を828円(0・20%)上回っているとしましたが、人事院勧告と同様に、初任給と若年層の引上げにとどまり、高齢層職員をはじめ職員全体の例月給の改定は勧告されませんでした。例月給の改定は、4月に遡って行うとしました。また、特別給については、勤勉手当を0・10月引上げ、再任用職員についても、勤勉手当0・05月引上げるとしました。
 4年ぶりの例月給及び特別給の引上げ勧告となりましたが、この間の大幅な物価高騰に見合った大幅賃上げを求めている私たちの期待を裏切る不当な勧告であり、到底容認できません。

 

2 2022年人事院勧告及び他団体の状況

 

 8月8日、人事院は政府と国会に対して、国家公務員の給与に関する報告と勧告、公務員人事管理に関する報告を行いました。月例給については、民間給与が、国家公務員の月例給を921円(0・23%)上回っているとして、4月に遡って改定を行うとしました。しかし俸給表の改定は、初任給と若年層の俸給月額の引上げにとどまり、高齢層職員をはじめ職員全体の俸給表改定の勧告はされませんでした。また、再任用職員の俸給表についても改定が見送られました。
 特別給については、民間の支給月数が4・41月分となり国家公務員の支給月数4・30月を0・11月上回ったことから、民間との均衡を図るため、国家公務員の支給月数を0・10月分引上げるとしました。また、再任用職員については、0・05月分を引上げるとしました。特別給の引上げは、今年度は12月期の勤勉手当を0・10月分(再任用0・05月分)、2023年度は、6月期、12月期の勤勉手当を0・05月分(定年前再任用0・025月分)ずつ引上げるように法改正することを勧告しました。
 また、「職員の給与に関する報告」では、若年層職員の人材確保や定年年齢の段階的引上げに伴う60歳超職員の給与水準を措置するため、「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」(アップデート)を図っていくことが表明され、2023年夏に骨格案を示し、2024年に給与制度上の一体的な措置を目指すとしています。「公務員人事管理に関する報告」では、人材確保のための採用試験制度の見直し、長時間労働の是正に向けた適正な指導、フレックスタイム制度及び休憩時間制度の柔軟化について報告しています。今回の勧告では、非常勤職員制度の改善については、何も触れられませんでした。
 他団体の勧告の状況としては、10月13日現在、都道府県人事委員会の半数とすべての政令指定都市で勧告が実施されていますが、月例給については108円から7、677円の公民較差があるものの、ほとんどの団体で人事院勧告と同様に初任給と若年層を中心に改定するとしています。また、特別給については勤勉手当を0・10月増やすという内容となっています。

 

3 東京都人事委員会勧告の内容と問題点

 

1.例月給の較差と給料の改定

 

 職員給与の報告と勧告では、本年4月における都職員の平均給与が404、024円であるのに対し、民間給与実態調査による民間従業員の平均賃金が404、852円であったとして、例月給の公民較差を828円(0・20%)としました。このため、給料表の引上げ改定を4月に遡って行うとしましたが、具体的には人材確保等の観点から1級の初任層に重点を置き、若年層について引上げ改定を行うとしました。
 都人事委員会が算出した民間賃金の地域差は、全国を100として東京都は117・7としており、都職員と国家公務員との給与水準比較では国家公務員の指数が100に対し、都職員の指数は100・8となっています。人事院による本年4月の全国の民間給与は405、970円となっており、詳細なデータが公表されていないため単純な比較はできませんが、都人事委員会が算出した民間賃金は精確に東京の民間賃金水準を反映したものだとは思えません。
 また、今春闘の民間企業の賃上げ結果は、連合加盟全組合の平均で2・07%(6、004円)、春闘共闘の加重平均で2・02%(5、655円)でした。また、日本経団連加盟の中小企業でも1・92%(5、036円)の賃上げとなっています。
 都人事委員会勧告が低額になった要因は、2006年に民間給与実態調査の比較対象(企業規模、事業所規模、対象産業)が改悪され、東京都の職員構成、年齢低下を精確に反映できない公民比較方法となっているためです。現在の比較方式では、東京の民間賃金水準を都職員の給与に反映することはできません。
 物価高騰は全世代に大きな影響があるにも関わらず、引上げの対象を初任給と若年層に限定したことは到底納得できません。今回の人事委員会勧告は、新型コロナウイルス感染症対策や都民生活を支えるため奮闘している職員の大幅賃上げを求める思いを裏切るものです。
 都労連・都庁職はすべての職員の大幅な賃上げを求めています。

2.初任給

 初任給の改善については、T類B(大卒)4、200円、U類(短大卒)5、400円、V類(高卒)6、600円引上げるとしました。国家公務員の初任給と比較するとこの改善により、大卒では1、800円、高卒は2、400円と較差は縮小したものの、依然として国を下回ったままとなっています。私たちは、民間や国家公務員と比較して低い水準となっている初任給について、速やかに引上げて格差を解消するよう求めてきましたが、今回の改善では人材確保の観点からも、まだ不十分であると言わざるを得ません。

3.特別給

 勧告では、特別給の民間支給月数が4・55月であり、都の現行4・45月を0・10月上回っていることから、都職員の年間支給月数を0・10月引上げ、4・55月とするとしています。特別給0・10月の引上げは約4万円の年収増となります。特別給の引上げは、民間従業員の特別給における考課査定分の割合及び国の勧告内容を考慮し、勤勉手当で行うことが適当であるとしています。特別給の引上げは、今年度は12月期の勤勉手当を0・10月分(再任用0・05月分)、2023年度は、6月期、12月期の勤勉手当を0・05月分(定年前再任用0・025月分)ずつ引上げるよう勧告しました。
 特別給の引上げは、3年ぶりの勧告となります。しかし、定年前の常勤職員と同じ月数の期末手当のみ支給され、勤勉手当が支給されていない会計年度任用職員にとって、引上げは勤勉手当、引き下げは期末手当という勧告では、引下げのみ強いられるという大きな問題となります。
 また、勧告が実施されれば年間の期末手当は2・40月、勤勉手当は2・15月となり、勤勉手当の割合が46・1%から47・3%に拡大し、能力・業績主義が強化されることになります。都人事委員会の資料では、特別給の支給状況は1、000人以上の企業で年間4・96月であり、私たちの要求からすれば、0・10月の引上げでは到底納得できる内容ではありません。

4.諸手当

 諸手当に関する改善は勧告されませんでした。

5.再任用・会計年度任用職員の給与

 都労連・都庁職は、給料月額の引上げや定年前職員と同様の生活関連手当の支給を求めてきましたが、今回の報告でも処遇改善には全く触れていません。
 勧告では、給料表の改定が若年層のみとなり、中・高齢層の給料表の改定が見送られたことから、再任用職員の給料月額の改定は行われませんでした。特別給は、0・05月分の引上げをすべて勤勉手当へ配分しています。これにより、年間の期末手当は1・35月、勤勉手当は1・05月となり、特別給に占める勤勉手当の割合は、42・6%から43・8%に増大します。再任用職員の勤務形態は、フルタイムが増え、仕事も正規職員と同様になっています。無年金期間が拡大しているにも関わらず、その賃金水準は「年金の足し」であった頃と大差ない状況が続いており、生活できる大幅引上げが求められます。再任用職員の賃金水準は、若年層職員と同程度であり、賃金水準からすれば、若年層職員と同様に給料の改善がなされるべきです。2023年度より定年前再任用短時間勤務制度が導入されますが、現在の再任用短時間勤務職員の給与が引き継がれることになっています。
 会計年度任用職員についても、常勤職員との均等待遇と報酬額の大幅な引上げを求める都労連要求に全く応えていません。

6.今後の課題

 都人事委員会は、職員の給与に関する報告の今後の課題として、「職務給の更なる進展等」「能力・業績を反映した給与制度の更なる進展」「新たな給与制度の在り方についての検討」を上げています。
 「職務給の更なる進展等」では、8年連続で行政職給料表(一)1級・2級の課題(上位級よりも昇給幅が大きい号給があることなどから、職責・能力・業績の給与への反映を徹底するため、その給与水準の見直し)の解決に向けた適切な対応について述べ、定年年齢の引上げによる影響等を考慮しつつ、検討していくとしています。これは、当局の主張を後押しする意見であり、中立・公正な第三者機関としての役割と責任を放棄したものと言わざるを得ません。都庁職はこの間、給料表の構造については、都職員の生計費保障を基本に改善を図り、この間の昇給カーブのフラット化を是正することや、行政職給料表(一)1級・2級の引下げを行わないことを都人事委員会に要請してきました。この要請に完全に背を向けるものであり、絶対に容認することはできません。
 「能力・業績を反映した給与制度の更なる進展」では、能力・業績の賃金への反映として、特別給の勤勉手当の割合の拡大や成績率の査定幅の拡大等について言及した上で、今後も業績を給与に反映させるため期末・勤勉手当への適正な配分等について検証していくと述べています。
 「新たな給与制度の在り方についての検討」では、定年引上げが完成した後は、60歳前後で給与水準が連続的になるように給与制度を設計する必要があるとして、新たな給与制度の在り方に関する研究・検討を進めていくとしています。

7.人事制度及び勤務環境等に関する報告(意見)

 都人事委員会は、多様な人材の確保・育成・活躍の推進の「人材確保・育成に向けた取組」の中で、若年労働力人口の減少に伴い人材獲得競争が激化している状況で、東京都でも採用申込者数が減少している。これを改善するため、都政の仕事に興味を持ってもらうために、SNSなどにより情報発信を強化して人材を確保するとしています。また、「昇任制度見直し」として、主任級職選考の見直しや受験者が低迷している管理職選考への受験率向上の必要性などが述べられています。
 しかし、新規採用者の応募が減少しているのは、単に都政の仕事について理解されていなというだけではなく、現在の都政の職場が、長時間労働や民間賃金を精確に反映しない低賃金など、働きがいのある魅力ある職場となっていないことが原因です。魅力ある働きがいのある職場を実現するために、都労連要求に応えるべきです。
 主任職選考の見直しについては、主任級職選考のT類採用者の約7割が合格するまでに5年間を要しており、負担感が増していると指摘し、主任級職選考の在り方について検討を行っていくとしています。しかし組織としての人材育成が重要であるなら、主任ポスト管理により合格予定者数を設定するのではなく、資格選考として位置付け、職務経験や研修受講等を合格基準とする見直しが必要です。
 「誰もが活躍できる都庁の実現」では、多様な人材がその能力を十分に発揮し、互いを尊重し合い、生き生きと働き続けられる環境が重要であるとしています。また障害を有する職員が働きやすい職場づくりに努めていくとともに、受け入れる組織を支える取組の強化が重要だとしています。都庁職は障害をもつ職員の労働条件改善にむけて「障害者の雇用及び労働条件の改善に関する要求書」を当局に提出し、改善を求めています。

8.働き方改革と勤務環境の整備

 働き方改革と職員の勤務環境の整備では、ライフ・ワーク・バランスの推進、職員の勤務環境の整備、公務員倫理の徹底などについて報告しています。
 ライフ・ワーク・バランスの推進では、テレワークの推進として、テレワークを柔軟で多様な働き方の選択肢の一つとして、職場の状況や業務内容、職員の選択により職場勤務とテレワークを組み合わせて、職場ごとの最適な働き方を実現しなければならないとしています。しかし、都庁の職場では、都民と接する現場等も多くあり、テレワークが根本的に不可能な業務も少なくありません。
 性自認及び性的指向にかかわらず活躍できる勤務環境の整備では、多様な性に職員が正しい知識を持ち、理解を更に深めることが重要であるとしています。また、「東京都パートナーシップ宣誓制度」について、職員が安心して制度を利用できるよう、制度の趣旨を踏まえ着実な運用を図ることが重要であるとしています。8月の労使交渉で、休暇・手当等のについて一定の改善を実現しましたが、職員が性自認及び性的指向に関わらず活躍できるよう職員の勤務環境の整備について、ハード・ソフト両面から前進させる必要があります。
 長時間労働の是正として、職員の心身の健康保持、ライフ・ワーク・バランスの推進等につながる極めて重要な課題としています。令和3年度の本庁における一人当たりの平均超過勤務時間数が4年連続で増加していることや、規則の上限である年間360時間を大幅に超える超過勤務を行っている職員が依然として存在していることを指摘した上で、業務の抜本的な合理化・効率化や、管理職のマネジメント意識・能力の向上、職場での業務改善や働き方の見直しに取り組む必要があるとしています。そしてこれらの取組を進めてもなお恒常的な長時間労働が解消されない場合には、人員を更に精査して適切に確保していくべきであるとしています。昨年までこの部分は、「業務量に応じた人員が適切に確保されているか検証すべきである」と記載されており、今年度は業務量にふれず、単に人員の精査の記載となっています。都庁では、長時間労働が慢性化し、一向に改善されない状況が続いています。都庁職として「超過勤務縮減及び36協定に関する要求書」を提出し、当局に改善を求めています。直ちに業務量に見合った人員配置を行うよう、具体的な意見を述べるべきです。
 女性の活躍推進・男性の育児休業等の取得促進については、女性が働きやすい環境づくりを推進することは、女性だけでなく男性にとっても生き生きと働くことができる環境の実現につながり、ひいては都が充実した行政サービスを持続的に提供していくことを可能とするものであり極めて重要であるとしています。しかし、制度の利用促進や休暇等を利用しやすい職場環境の整備などについての具体的な意見はありませんでした。
 職員の勤務環境の整備として、ハラスメント防止対策では、ハラスメントが人権に関わる重大な問題であり、確実になくしていかなければならないとしていますが、ハラスメントが行われることのない勤務環境づくりや発生防止に向けた取組の推進を言及するに留まっています。

 

4 都庁職の態度

 

 都庁職は、東京都人事委員会勧告に向けて、大都市東京に暮らす職員の生活実態を踏まえて、全ての職員の生活改善につながる、物価の高騰を上回る大幅賃上げを求めて、都労連指令に基づく全組合員を対象とした人事委員会要請署名、職場一斉宣伝行動、ステッカー闘争などに職場・支部をあげて取組んできました。
 しかし、東京都人事委員会は、例月給については公民較差を828円、0・20%とし、1級の初任層に重点を置き、若年層について引上げ改定を行うとしました。これにより、全ての職員の例月給の改定は勧告されませんでした。特別給は勤勉手当を0・10月引上げるという勧告を行いました。通常業務に加え、新型コロナウイルス対策業務に取り組むとともに、この間の急激な物価高騰に対応するため大幅な賃金引上げを望む私たちの期待を裏切り、国家公務員の較差921円を下回る大都市東京の民間賃金実態を精確に反映しない、極めて不当な勧告です。初任給等の引上げは私たちの要求事項ではありますが、少なくとも全ての職員の公民較差を解消した上で改善すべきものです。このことを理由にして中・高齢層の給料表改定を見送ったことは、到底容認できません。
 特別給について勤勉手当を引上げるとしたことは、職員の能力・業績を給与へ反映させることを狙いとしており、都人事委員会が「職責・能力・業績主義」の徹底を図る都側に加担する不当な内容です。期末手当しか支給されていない会計年度任用職員にとっては、特別給が改善されないという大きな影響を及ぼす課題となります。引下げは期末手当、引上げは勤勉手当という特別給の改定では、会計年度任用職員にとっては引下げしか行われないこととなり、到底認められるものではありません。
 本年の報告では、私たちが求めていた、長時間労働の是正や職場環境の改善などについては、具体的な意見の申し出はありませんでした。報告の内容も、全体的に当局の主張に沿ったもので、都労連・都庁職の要請に応えない不当なものであり、中立・公正な第三者機関の役割と責任を放棄していると言わざるを得ません。
 都労連は、不当な勧告と意見の押し付けを許さず、労使交渉による大幅賃上げと都労連要求の実現に向け全力で闘うとしています。
 都庁職は、都政の現場で働く全ての組合員が生活を維持し、誇りをもって働ける処遇改善を実現するために、職場・支部・分会からの運動を基軸にして取組を進めていきます。
 2022年秋季闘争において、都労連各単組の統一と団結を固め、要求実現に向けて都庁職の総力を上げて闘う決意です。

以上

2022年10月13日
東京都庁職員労働組合

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