2022年勧告の解説と問題点
初任層と若年層以外の
職員の例月給の改定を見送り
今年の勧告は、全国で最も高い東京都の民間賃金事情を反映せず、この間の物価高騰に見合った賃金の水準の改善にはなっていない。
◎例月給
東京都人事委員会は、民間給与が都職員給与を828円(0・20%)上回っているとし、4年ぶりに給料表が引上げられた。改定内容は、初任層の引上げに重点を置き、引上げの対象は初任給と若年層に限定されている。
初任給の引上げの必要性は理解をするが、物価高騰が続く中、全職員の大幅賃上げが必要であり、中高齢層の生活改善に目を向けない到底納得のできない勧告となっている。また、再任用職員の給料月額について、引上げや定年前職員と同様の生活関連手当の支給を求めてきたが、改定が見送られ、無年金期間が拡大するなど再任用職員の厳しい生活実態を顧みない不当な勧告となっている。
東京都人事委員会は、都職員と都内民間労働者の給与比較は単純な平均値による比較でなく、職員と民間従業員の4月分支給額を調査し、ラスパイレス方式により、主な給与決定要素である役職、学歴、年齢を同じくする者同士の給与を対比させ、職員の人員数のウエイトを用いて両者の給与水準を比較したと説明する。しかし、そのデータは公表しておらず比較結果が示されるだけで、他の調査との乖離の明確な説明をしていない。現在の比較方式では、民間賃金水準を都職員の給与に精確に反映できていない。
特別給引上げは勤勉手当に
◎初任給
初任給は民間や国の状況を踏まえ、T類B4、200円、U類5、400円、V類6、600円引上げるとしている。しかしこの引上げを行っても国家公務員と比較してT類Bで1、800円、V類で2、400円下回っており、格差の解消には至っていない。
◎特別給
特別給は、都内民間企業の支給割合が都職員の支給月数を0・10月分上回っているとして、都職員の年間支給月数4・45月から0・10月分(再任用職員0・05月分)引上げて4・55月(再任用職員2・40月)とし、引上げを全て勤勉手当で実施すると勧告した。比較の方法については、民間従業員に対する直近1年間(昨年8月から本年7月まで)の賞与の支給実績を調査し、都職員と比較したと説明している。
特別給の引上げが全て勤勉手当に配分され、引下げは期末手当から削減されるという勧告が続けば、定年前の常勤職員と同じ月数の期末手当のみを支給されている会計年度任用職員は、特別給の引下げだけを強いられることになるため、到底認められない。
行(一)1・2級の見直しに固執
◎今後の課題
職務給の更なる進展等、行政職給料表(一)1級・2級について、上位級とのバランスを考慮した昇給幅への是正の視点から、課題の解決に向けた適切な対応を引き続き検討を進めるとし、現場を支えるベテラン層の給料抑制、昇給幅のフラット化に執着している。
能力・業績を反映した給与制度についても、これまで同様、更なる進展を標榜している。民間企業では20年近く前から成果主義に対する反省、見直しの動きが見られたが、都におけるこれまでの成果の検証や反省は見られない。
新たな給与制度の在り方についての検討として、定年引上げ完成後、60歳前後での給与水準が連続的になるよう、新たな給与制度の在り方について研究・検討を進めるとしている。また、人事院における社会と公務の変化に応じた給与制度の整備の動向を注視し、必要に応じて対応を検討するとしている。この給与水準の連続化は、全ての職員に大きな影響を及ぼす課題となるが、行(一)1級・2級のベテラン層にとっては特に重要な課題であり、賃金水準引き下げを狙う動きにも繋がっている。
◎人事制度及び勤務環境の整備など
人事制度については、「複雑化・高度化した課題に対応し、質の高い行政サービスを提供し続けるためには、都庁が持ち得る多様な人材の能力を最大限発揮することが不可欠」などとしているが、給与や福利厚生、勤務環境などを改善し、都庁が魅力ある職場とならなければ、優秀な人材が確保できないのは当然である。また、多様な人材の確保・育成・活躍の推進として、「人材確保・育成に向けた取組」や「誰もが活躍できる都庁の実現」についても言及しているが、何より職員の処遇改善が先決である。
働き方改革、勤務環境の整備については、ライフ・ワーク・バランスの推進、テレワークの推進、デジタル化の推進などに言及しているが、長時間労働の根本的な原因と対策に答えられていない。また、東京都パートナーシップ宣誓制度や育業の運用については、職員の意識改革が中心であり具体性を伴う内容はない。
職員の勤務環境の整備として、ハラスメント防止、メンタルヘルス対策などにも一通り触れているが、労働組合の要求に応える具体的な対応策は示されていない。
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