2020報告の解説と問題点
例月給
東京における公民較差を反映しない不当報告
都人事委員会は、公民較差を△195円、△0・05%とし、較差は小さく、公民の給与はおおむね均衡していることから、改定を見送りとした。給料表の実質的な据置・改定見送りは、これで5年連続となった。
先行した期末手当が引き下げられ、既に全職員の賃下げが実施されている。コロナ禍で奮闘してきた都職員の生活を顧みず、賃上げを求める職員の期待を更に裏切る不当な報告である。
また、初任給が国家公務員や民間労働者の初任給を大幅に下回っている格差を解消することもなく、V類の初任給は、地域最低賃金を下回る重大な問題さえ放置し続けている。
さらに再任用職員の処遇改善には一切言及せず、無年金期間が拡大しているもとでの厳しい生活実態を踏まえての処遇改善に踏み出そうとしていない。
都人事委員会は、都職員と都内民間労働者の給与比較は単純な平均値による比較ではなく、職員と民間従業員の4月分支給額を調査し、ラスパイレス方式により、主な給与決定要素である役職、学歴、年齢を同じくする者同士の給与を対比させ、職員の人員数のウエイトを用いて両者の給与水準を比較したと説明するが、そのデータは公表しておらず比較結果が示されるだけで、他の調査との乖離の明確な説明をしていない。現在の比較方式では、民間賃金水準を都職員の給与に精確に反映できない。
都人事委員会の資料では、民間賃金の全国と東京の差は全国を100として東京は123・5となっている。一方で、国家公務員と都職員の差は全国を100として東京は101・0である。
今年の報告も、東京における公民較差を隠した政治的なものと言える。
人事制度及び勤務環境の整備など
行政職給料表(一)1級・2級の昇給幅の改悪に固執する姿勢
定年引上げについては、「国における法改正の状況や都における検討状況の動向を注視しつつ、都のこれまでの取組や実情を十分に考慮して、給与水準や体系等について検討していく必要がある」と述べている。また、定年引上げ後を見据えた60歳前の給与カーブも含めた給与カーブの在り方に関して「人事院が進める検討に注目していく必要がある」としている。この点は、労使交渉事項であり、労使への介入とならないよう対応することを求めた労働組合側の要請を一定受け止めたものとなっている。
行政職給料表(一)1級・2級については、これまで、上位級とのバランスを考慮した昇給幅への是正の視点から、適切な対応を検討していくとしてきたが、本年も「引き続き1級・2級の課題の解決に向け、適切な対応を検討していく」としており、これまで同様、都人事委員会の不当な姿勢が示された。
能力・業績を反映した給与制度の更なる進展については、今後も、業績を給与に適切に反映させる観点から、期末・勤勉手当への適正な配分等を検証していくとしている。また、昇給制度についても、国の取組を注視しつつ、業績のきめ細かな昇給への反映の観点から、適宜、適切な対応を検討していくとしている。これにより、能力・業績主義を更に拡大していく都人事委員会の不当な姿勢が明らかにされた。
人事制度については「ポスト・コロナ」の社会を見据え、改革を一層進める時が来ていると言及した。これは、都側の「都政の構造改革」を後押しする不当な立場を表明したものである。
働き方改革については、テレワークの推進、長時間労働の是正、教員の働き方改革の推進、時差通勤やフレックスタイム制の拡大、女性活躍推進、男性職員の育休取得促進などに言及しているが、コロナ禍で負担が増した職員の切実な要求に相応しい内容ではない。
勤務環境整備については、パワー・ハラスメント防止策、セク・ハラやマタ・ハラの防止策、メンタルヘルス対策などに言及しているが、労働組合側の要請に応える具体的な対応策は示していない。また、性自認及び性的指向にかかわらず活躍できる勤務環境の整備などについて言及しており、労働組合側の要請を一定反映したものの、具体的な内容は示していない。
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