都庁職(東京都庁職員労働組合公式サイト)

伊ヶ谷地区海上より見る三宅島
伊ヶ谷地区海上より見る三宅島 撮影2003年4月10日三宅支庁提供
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都庁職新聞
 
【2020年都人勧特集】事実上5年連続での給料表据置き

 

期末手当削減と合わせ年収引き下げとなる不当報告

 

2020年東京都人事委員会報告に対する都庁職声明
2020年12月18日 東京都庁職員労働組合

 

【1】はじめに

 12月18日、東京都人事委員会は、都議会議長及び都知事に対し「職員の給与に関する報告(意見)」と「人事制度及び勤務環境等に関する報告(意見)」を行いました。
 報告は、例月給について、公民較差は△195円(△0・05%)と小さいため、給料表の改定を見送るとしています。例月給については事実上5年連続で据置きという、新型コロナウイルス感染症の拡大の下で奮闘する職員の期待を裏切るものと言わざるをえません。
 特別給については、先行して期末手当0・1月削減を10月30日に勧告、11月12日に妥結しています。

 

【2】2020年人事院勧告及び他団体の状況

(省略)

 

【3】東京都人事委員会勧告の内容と問題点

 都庁職は、一時金妥結以降も11月19日に人事委員会要請を行い、大都市東京に暮らす職員の生活実態を踏まえた勧告を行うよう要請してきました。都労連指令に基づく人事委員会要請署名は都労連全体で27、851筆に上っています。また、ステッカー闘争などに職場・支部をあげて取り組んできました。
 しかし、都人事委員会は、給料表改定を見送るとともに、職務給の更なる進展、能力・業績を反映した給与制度の更なる進展の重要性を強調し、都側と同じ課題認識を繰り返す不誠実な対応に終始してきました。

 

1・例月給の較差と給料の改定

 報告では、本年4月における都職員の平均給与が402、038円であるのに対し、民間給与実態調査による民間従業員の平均賃金が401、843円であったとして、例月給の公民較差を△195円(△0・05%)としました。
 しかし、都人事委員会が算出した民間賃金の地域差は、全国を100として、東京都は123・5、都職員と国家公務員との給与水準比較では、国が100に対して、都職員の指数は101・0となっています。
 また、今春闘の民間企業の賃上げ結果は、連合加盟全組合の平均で1・90%(5、506円)、春闘共闘の平均で2・12%(6、235円)でした。また、日本経団連加盟の中小企業でも1・70%(4、371円)の賃上げとなっています。
 新型コロナウイルス感染症の影響が長期化、深刻化する前とはいえ、今年の民間賃金の春闘の結果がプラスであり、東京の民間賃金が全国平均より2割以上高い状況が長く続いているにもかかわらず、増額改定が5年に渡って見送られていることは、人事委員会の調査比較方法に問題があることを示しており、東京の民間賃金水準を精確に反映したものとみることはできません。
 期末手当で国、他団体の倍となる引き下げを行ない、再任用、会計年度任用職員にも賃下げを波及させた上で、例月給改定を見送ったことは、都民と接してきた職員、新型コロナウイルス感染症により、例年にない負担に耐えている職員を顧みないものであり、生活給の観点からも全く納得できるものではありません。都労連・都庁職はすべての職員の大幅な賃上げを求めています。

 

2・初任給

 給料表の改定がないため、初任給についての改善も実施されませんでした。
 東京都職員の初任給は、2018年の勧告に基づいて、次年度の2019年4月から1、000円引上げられましたが、国家公務員の初任給よりも大卒で3、000円、高卒で5、000円程度低いまま放置されています。高卒V類の初任給は、地域手当を除くと、時給換算で947円となり、都の地域最低賃金の1、013円を下回っており、極めて問題があります。

 

3・諸手当

 諸手当に関する改善は勧告されませんでした。

 

4・再任用・会計年度任用職員の給与

 都労連・都庁職は、給料月額の引上げや定年前職員同様の生活関連手当の支給を求めてきましたが、今回の報告でも処遇改善には全く触れていません。
 再任用職員は、フルタイム雇用が増え、仕事の中身も正規職員と同様になっています。年金支給開始年齢が引き上げられ、無年金期間が拡大しているにもかかわらず、その給与水準は「年金の足し」であった頃と大差ないものです。これは生活給の観点からも重大な問題です。
 会計年度任用職員についても、常勤職員との均等待遇と大幅な引き上げを求める都労連要請に対して全く応えていません。

 

5・定年引上げ

 定年引上げは労使交渉事項であり、都労連・都庁職は、勧告で具体的な内容に触れることのないよう要請してきました。年金支給年齢の引き上げにより定年延長の必要性は高まっていますが、報告では「国における法改正等の動向を注視しつつ、都のこれまでの取組や実情を十分に考慮して、都における給与水準等について検討」としています。また、都においては、再任用管理職が存在することから、一律的な役職定年制の導入により組織運営に支障を生じさせないよう留意すべきであるとしています。

 

6・職務級の更なる進展等

 都人事委員会は、今年も職務給の更なる進展等に言及し、行政職給料表(一)1級・2級について「上位級とのバランスを考慮した昇給幅への是正の視点から、適宜、適切な対応を検討していく」としています。
 これは、都側の主張を後押しする意見であり、中立・公正な第三者機関としての役割と責任を放棄したものと言わざるをえません
 都庁職は、給料表は都職員の生計費保障を基本に改善を図り、この間行われてきた昇給カーブのフラット化を是正すること、行政職給料表(一)1級・2級の引き下げを行わず、3級の改善を行うことを要請してきましたが、これに背を向けるものであり、絶対に容認することはできません。

 

7・人事制度及び勤務環境等に関する報告

 新型コロナウイルス感染症の世界的拡大により、都政は感染拡大防止と社会経済活動の両立という「新しい日常」において、多様化・複雑化する行政課題に直面しているとしたうえで、都が進める「都政の構造改革」を評価し、「ポスト・コロナ」の社会を見据え、改革を一層進める時が来ているとしています。
 人材確保・活用については、人事委員会自身の成果として、採用昇任選考におけるオンラインの活用、ICT職の採用試験を今年から実施したことを掲げ、ICT職の育成・昇任・配置管理等のキャリアパスの必要性など、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進のための人事制度構築が必要としています。
 しかし、自らが「長年の課題」と認める昇任選考の受験率については、依然として「検討」段階を越えていません。
 障害者雇用については、法定雇用率を上回る障害者雇用率を設定し、常勤職の採用に向け準備を進めるとしています。また、障害を有する職員が職場で生き生きと活躍するために障害に応じた配慮が必要としていることについては、都庁職の要求を一定反映したものであり、具体化を追及していく必要があります。
 多様な個性や価値観を尊重する都庁の実現として、性別、年齢、障害の有無、育児や介護の状況をはじめとした個々の持つ個性や事情にかかわらず、全ての職員が、その能力や経験を発揮することができる環境の整備が必要としています。また、性自認及び性的指向について、不当な差別の解消並びに啓発等の推進を図り、ハード・ソフト両面から職場環境の整備に努めるとありますが、具体的な提言は何もありません。

 

8・「新しい日常」における働き方改革と職員の勤務環境の整備

 「ライフ・ワーク・バランスの推進」では、テレワークが在勤庁での勤務時と同等以上の効率であり、生産性の向上や労働者の通勤負担の軽減、「ライフ・ワーク・バランス」の推進につながるとしています。
 長時間労働の是正について、本庁における一人当たりの平均超過勤務時間が2年連続で増加していることを認め、「原因をまず分析し、対応していくことが必要である」が、「2020改革プラン」、「新たな都政改革ビジョン」、「5つのレス(ペーパーレス、ファックスレス、はんこレス、キャッシュレス、タッチレス)」、デジタルしごと改革やDX等一連の改革の推進により、業務の抜本的な合理化・効率化を図るとしています。
 しかし、都民と接する現場ではテレワークが根本的に不可能な業務が多くあります。オリンピック関連の業務がさらに1年延長継続され、新型コロナウイルス感染症対策の業務が加わって、応援元も支援先も人員不足に苦しんでいます。マスコミに次々と発表される各種の改革プランは、現場の混乱と業務量の増大を招き、少なくとも短期的には解決策ではなく、超過勤務増加の原因となっています。
 報告は、超過勤務の根本的な原因や対応策から恣意的に目を背けていると言わざるを得ません。

 

【4】都庁職の態度

 本年の東京都人事委員会勧告は、新型コロナウイルス感染症の流行による厳しい経済的、社会的情勢の下で、特別給と例月給を分けての勧告・報告となりました。東京都は、国、他団体よりも大きく特別給を下げ、再任用、会計年度任用職員も減収にさせた点で都の姿勢は突出しています。
 実質5年連続で例月給の改定を見送ったことは、例年にない混乱と業務量増に直面している職員を顧みず、大都市東京の民間賃金実態も精確に反映しない、極めて不当な報告です。
 ICTによる効率化が前面に出た本年の報告となっていますが、都当局と人事委員会の「職責・能力・業績主義」の徹底と職務給格差を肯定、推進する姿勢は変わっていません。「能力・業績」と言えば聞こえは良いものの、その実態は「職責」を前提にした制度であり、多くの職員を国、他団体、民間企業のそれより低い待遇に留めたまま、報われることのない競争と負担を強いるものです。効率一辺倒で本来の地道な仕事が評価されず、昇進のみが評価されるとなれば、都民本位の都政の実現、都民サービスの充実を図ることはできません。
 初任給についても国家公務員との格差は解消されていません。都内民間労働者の初任給とも格差があり、優秀な若手人材の確保には不十分な給与となっています。
 本年の報告は、全体的に都側の主張に沿ったものであり、都労連・都庁職の要請には応えない不当なものであって、人事委員会は中立・公正な第三者機関の役割と責任を放棄していると言わざるを得ません。
 都労連は、不当報告の押し付けを許さず、労使交渉による例月給の改善と、都労連諸要求の実現に向け、全力で闘うとしています。
 都庁職は、365日、24時間、都政の現場で働く全ての組合員が生活を維持し、誇りをもって働ける処遇改善を実現するために、職場・支部・分会からの運動を基軸にして取組を進めていきます。
 都庁職は、2020賃金確定闘争において、都労連六単組の統一と団結を固め、要求実現まで組織の総力を上げて闘う決意です。


以上

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