都民生活を護る
2019年の19号は、東京都全域に甚大な被害をもたらしました。都庁職の組合員は、都民の生活と生命を護るため、昼夜を問わない緊急業務を行い、現在も被災対応や復旧事業に取組んでいます。多摩地域の災害復旧、島しょ地域の防災業務での組合員の活躍を紹介します。
東京の農業を支える災害復旧事業
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秋川の堤防決壊現場の空撮(東秋川橋付近) |
東京都では、奥多摩などの山村地域、区部や多摩の都市地域、島しょ地域で、地域特性を活かした農畜産物が生産されています。
その東京の農業生産を支えるため、農業基盤整備事業では、農業用道路、農業用水施設、農地の整備を行うことで農村の生活環境改善や自然環境の保全を推進し、併せて農地・農業用施設の防災対策や災害復旧も行っています。
土砂崩れでの農地の埋没や河川の氾濫・決壊が多発
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斉藤支部執行委員(左)と兼子分会書記長 |
台風19号では、多摩地域の多摩川流域・秋川流域、浅川流域等で河川が氾濫・決壊し、農業・漁業施設に被害が出ています。
台風による農地・農業施設の災害復旧事業に取組んでいるのが、産業労働局農業振興事務所振興課の農業基盤整備担当です。現在の災害復旧事業の状況について、経済支部農業振興事務所分会の兼子書記長と経済支部の斉藤執行委員にお話しを聞きました。
兼子分会書記長
「台風19号では、土砂崩れによる農地の埋没、河川の氾濫・決壊による農地の埋没、用水路などや農道・農道橋の被災など、多くの被害が出ています。災害時、台風来襲時の初動対応では、農地・農業施設の管理者である市町村の職員が、救助や応急工事等で被害拡大を防ぎます。
私達の仕事は、その後の災害復旧事業です。現在は、現場の被害状況調査や復旧事業計画の策定、国の査定(工法や事業費の決定)を終えたところです。実際の復旧工事は、被災状況にもよりますが、来年早々から着工し始めて、できる限り早い時期の完了を目指しています。
秋川の堤防決壊の状況をドローンで空撮した写真を見て下さい。写真中央にあった堤防は跡形もなく、右側の川岸は大きくえぐられています。農地の全体に流木が散乱しています。2軒の民家は、1階が全て水没していました。
この様に今回の被害は甚大でしたが、農家の皆さんが自宅から避難していたこともあって被害の全容が中々つかめず、現場調査に2週間かかった場所もありました。特に河川の氾濫や決壊の被害は、水が引くまで調査が進まないなどの苦労がありました。
災害復旧事業では、農家負担軽減の観点から激甚災害に指定された場合は国庫補助の嵩上げがされますが、今回、ほとんどの罹災場所がその対象になると思います。
農地や農業施設をできるだけ早期に元の状態に戻し、農家の皆さんの生活と農業経営が安定するように、職場が一体となって業務に取組んでいます」
災害復旧業務は時間との闘い
迅速に対応できる人員配置を
斉藤支部執行委員
「平常時の災害復旧事業の担当は一人ですが、現在は、基盤整備担当が総出で、事業に取組んでいます。復旧工事の早期着工のために業務量が増加し、超過勤務も一人当たり月40〜50時間程度も増えている状況です。
災害復旧事業の進行には、国との連絡や報告、都庁内での被害状況の報告や調整なども必要で、本庁の農業振興部門が事務所と協力しながら取組んでいます。特に、国庫補助の適用では、本庁における業務が重要です。
災害が起きた時の復旧業務は時間との闘いです。本庁も事務所も、人員削減の影響で職員の負担が過大になっている状況です。増加している災害に迅速に対応できる人員配置を、経済支部も求めています」
インタビューの最後に、農家のみなさんの復旧への期待は、仕事のプレッシャーになりませんか、と質問してみました。
それに対して「現場調査で、被災された農家のみなさんから『お疲れ様』『よろしくお願いします』と優しい声で激励を頂くことが多くあります。迅速な対応で苦労はありますが、当事者から温かい言葉で励まされるとやる気が増しますよ」と答えて下さった兼子さんの穏やかな笑顔が印象的でした。
毎年の台風災害と闘っている島しょの職場
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藍ヶ江港に襲い掛かる巨大な波
(高さ40〜50m) |
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都道の土砂崩れ現場 |
八丈支部の奥山支部長から寄稿して頂きました。
八丈島を含めた島しょ地区も、2019年は自然との闘いに翻弄させられました。毎年訪れる低気圧や大型台風、集中豪雨。近年は異常気象のせいか予想困難な天候が多く、上京予定、帰島予定は台無しで、予定外の年休利用も多くなっている状況です。
台風となれば、職種に関係のない対応、事前の現状把握や待機、暴風・豪雨の中での対応も必要です。
通過後にも、林道の安全確保や農業被害、漁業施設の確認、都道や関連施設の確認による住民の生活の確保、港湾・漁港施設の安全確保等を行い、島民の安心・安全のために、幅広く主体的に行動しなければなりません。同時に、支庁職員は、地元町村とのパイプ役にもなっています。
小池知事は「東京宝島」と称して、「我国の排他的経済水域の約4割を東京の島々が確保しており、島しょ地区が国益上大変重要な役割を担っている」また「極めて高い潜在的価値を有している」と認め、行政の係りも示されています。
こうして島しょ地域の重要性が強調される一方で、島のために奮闘している職員が受けている不当な差別はとても容認できません。
職員は、厳しい条件の中、そして小さな地域の中で、イベントにも積極的に参加するなど、公私共に頑張っております。
しかし、島しょの赴任先で定年を迎えた職員が、様々な理由で内地に帰任できず、そのまま島しょで再任用として働かざるを得ないなど、近年、人事面での影響も表れています。
昨年度は、都労連闘争の成果として、赴任職員の住居に関し、一定の改善が見られましたが、地元職員や長期の赴任職員には、その恩恵が及びません。
職員交流が多い現状の中、長期間にわたり島しょのために貢献している職員にも、処遇改善の目が向けられなければなりません。
地域手当の本俸繰入れを
島しょ職員の処遇改善を
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要請で訴える奥山支部長 |
島しょの職場から様々な要求を提出しています。
昨年11月2日、私は都労連の対都要請で「島しょでは毎年台風と闘っており、甚大な被害が出ないように待機、緊急出動等備えている。その私たちの処遇になぜ格差があるのか。こうした処遇の低さ・格差が続けば後に続く人たちの赴任希望も少なくなる。今年、赴任旅費が支払われたのは赴任6月後だった。早期支給制度を緩和するなどして、職員の負担にならないようにして欲しい。島しょの生活を守るために努力している全ての職員に報いるために、地域手当の本給繰入れと島しょの現状に配慮した処遇とすることを要請する」と強く訴えました。
島しょの産業発展や、島民の生活向上のために関与し、全力で努力している職員に報いるためにも、地域手当の本俸繰り入れ実現を大前提に、赴任者及び地元職員の処遇改善の実施、特に速やかな赴任旅費支給を強く求めていきます。
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