2018年秋季年末闘争の決着にあたって
2018年11月15日
東京都労働組合連合会
都労連は、10月4日に開催した第1回中央委員会において、2018年賃金確定闘争を2017年の確定闘争で異例な交渉継続を都労連と各単組に判断させた責任を改めて都側に自覚させ、都労連要求実現の決断を迫る闘いと位置付けた「2018年秋季年末闘争方針」を決定しました。その方針に基づき、都側との労使交渉に精力的に臨むとともに、全職場一斉宣伝行動、ステッカー闘争、5回にわたる総決起集会、都庁包囲デモ、2回の新宿本庁舎早朝宣伝行動、職場代表による2度の対都要請行動、所属長・任命権者要請、都民宣伝、都議会要請を展開し、組織の総力を挙げて2018年賃金確定闘争を全力で闘ってきました。
(中略)
2018年賃金確定闘争について、以下のとおり、全力で取り組んだ闘いの経過とその到達点である都側最終回答を踏まえ、労使合意を図り妥結することとし、各単組の批准を求めます。
[T]2018年賃金確定闘争の経過
(略)
[U]都側最終回答と都労連の判断
1 都側の最終回答
(1)人事委員会勧告の取扱い、業務職給料表について
@例月給
・勧告どおり引上げ(初任給を1,000円引上げ)
・実施時期:平成31年4月1日
A特別給
・勧告どおり0.1月引上げ(4.5月→4.6月)
※第4回都議会定例会で関係条例を議決後、できる限り速やかに支給
B業務職給料表
・業務職給料表については、「作成方針」に基づき改定(初任給を1,000円引上げ)
・実施時期:平成31年4月1日
(2)都側提案について
@勤勉手当の成績率の見直し
・成績率対象外とされている職員(育児休業を事由として業績評価による評定がなされない者を除く)の取扱いについて、以下のとおり見直し
新規採用職員:成績率中位を適用
その他の職員:前年度の勤務実績等を踏まえ、成績率段階の各区分を適用
・成績率段階決定について、翌年度の新規採用職員数相当を加えた職員数を基に、上位以上の区分(40%程度)を算定
・実施時期:平成32(2020)年6月に支給する勤勉手当から適用
・見直しを行うに当たり、対象外の区分が適用されなくなる職員に係る成績率制度の運用方法について、来年度労使での意見交換を実施
A非常勤・臨時職員制度の見直し
・地方公務員法等の改正を踏まえ、非常勤・臨時職員制度を見直し
会計年度任用職員制度を導入
一般職非常勤職員制度及び臨時職員制度を廃止
・期末手当を新たに支給
基準日に在籍し、かつ、会計年度内で6月以上の任用期間がある場合に支給
(週当たりの所定勤務時間が15時間30分未満の場合も支給)
支給方法及び算定方法は、常勤職員の例による
(支給月数:定年前の常勤職員の月数を適用(現行2.6月))
・実施時期
会計年度任用職員制度の導入:平成32(2020)年4月1日
一般職非常勤職員制度及び臨時職員制度の廃止:平成32(2020)年3月31日
(3)都労連要求について
@期末手当における除算制度の見直し【都労連要求】
・期末手当における在職期間の除算事由から病気休暇を除外
2割除算→ 除算なし
・実施時期:平成31(2019)年6月に支給する期末手当から適用
A「勤務間インターバル」及び「連続勤務の禁止」の実施【都労連要求】
・「勤務間インターバル」及び「連続勤務の禁止」を各所属長の努力義務として実施
実施職場:本庁職場のうち、時差勤務を導入している職場
勤務間インターバル:8時間から11時間(原則11時間)を確保
連続勤務の禁止:7日以上の連続勤務となる超過勤務命令等を原則禁止
災害対応等公務運営に支障がある場合は、インターバルを確保しないことや7日以上の連続勤務となることも認める
実施職場以外においても、翌日の始業時刻変更を伴わない形での取組を推奨
・実施時期:平成31年4月1日
B慶弔休暇(結婚休暇)の見直し【都労連要求】
・取得始期における「結婚の日」について、婚姻の届出をした日と結婚した日の「いずれか早い日」であったところ、「いずれかの日で職員が選択した日」に見直し
・申請期間について、「結婚の日から1週間以内」の要件を撤廃し、休暇を利用する日の前日まで申請可能に
・実施時期:平成31年1月1日
※一般職非常勤職員についても、常勤職員に準じて見直し
Cオリンピック・パラリンピック等職免の見直し【都労連要求】
・選手の指導者や競技時の行動補助者(ガイドランナーなど)のパラリンピック等への参加を職免の対象に追加
・実施時期:平成31年4月1日から東京2020大会が閉会するまでの期間
D「勤務間インターバル」及び「連続勤務の禁止」関連【都労連要求】
・「勤務間インターバル」及び「連続勤務の禁止」の実施状況について、来年度労使での検証を実施
Eフレックスタイム制及び時差勤務関連【都労連要求】
・フレックスタイム制や時差勤務の実施状況について、来年度労使での検証を実施
F「東京都職員ライフ・ワーク・バランス推進プラン」関連【都労連要求】
・「東京都職員ライフ・ワーク・バランス推進プラン」の進捗状況や今後の方向性について、今年度労使での意見交換を実施
Gマネジメント・レビュー関連【都労連要求】
・マネジメント・レビューの実施状況について、来年度労使での意見交換を実施
Hパワー・ハラスメント関連【都労連要求】
・パワー・ハラスメントの発生しない職場づくりに向けて、来年度労使での意見交換を実施
(4)その他事項について
〇在宅勤務型テレワークの本格実施
・現行制度の範囲内で知事部局等において本格実施
対象:在宅勤務可能な端末が配備された職場の全職員
(育児・介護等のほか、負傷・疾病・障害により通勤の負担が大きい職員を中心)
手続:各様式は、押印不要、メールによる提出
・承認も可能に
上限日数:週2日分
・平成31年1月以降、在宅勤務可能な新TAIMS端末(約2,700台)を本庁の全管理職・希望部署職員に先行配備
・実施時期:平成31年4月1日
2 闘いの到達点と都労連の判断
(1)闘いの到達点
@勧告の取扱い、業務職給料表について
〇勧告の取扱い
全職員一律の大幅賃上げを要求しましたが、事実上の3年連続の据置きとなった勧告の壁を打ち破ることはできなかったものの、初任給の引上げと初任層の改定は勧告どおりとし、都側が最後まで慎重に検討するとしたボーナス(勤勉手当)の引上げについては確保することができました。引上げ分の差額支給については、年内精算を図ることができました。
〇業務職給料表
業務職給料表については、現行の作成方針を見直して賃金水準を改善することはできませんでしたが、初任給引上げについては、対応する行(一)号給と同様に設定し、同額の改定額で改善することになりました。
A都側提案について
〇勤勉手当の成績率の見直し
労使の最大の対立点となった成績率の見直しについては、撤回や引き続き協議とすることができず、育児休業からの復職者を現行と同様の対象外とさせ、実施時期を当初提案より1年先送りとさせるにとどまる厳しい結果となりました。対象外の区分が適用されなくなる職員の成績率の運用方法については、来年度労使で意見交換を実施することなりましたが、本来は労使交渉で検証すべきであり、この点についても不満の残る結果です。
〇非常勤・臨時職員制度の見直し
この確定交渉の重要な課題であった会計年度任用職員制度導入に伴う制度改正については、東京都の一般職非常勤職員・特別職非常勤職員・臨時職員の任用実態を踏まえた多様な勤務形態に対応した職を設定し、休暇・休業制度については、現在の一般職非常勤職員の制度をほぼ横引きしたものとなりました。常勤職員が有給扱いである休暇等について、同様にすることを求めましたが、実現することはできませんでした。
最大の懸案だった報酬額水準と新たに支給することが可能となる期末手当については、報酬額水準の改善を図ることはできませんでしたが、法律上「できる規定」であった期末手当の支給を決断させ、支給月数についても常勤職員との均衡を図り、同じ月数とすることができました。支給対象についても、当初案では総務省マニュアルどおり週あたり勤務時間15時間30分未満の職員を対象外としていましたが、都の任用実態も踏まえ、週あたり勤務時間での制限をなくすことができました。
B 都労連要求について
〇期末手当における除算制度の見直し
現行では、期末手当の勤務期間から2割除算となっている病気休暇期間を除算しないこととなり、要求の前進を図ることができました。
〇「勤務間インターバル」及び「連続勤務の禁止」の実施
勤務間11時間を原則とするインターバル規制の導入を求めた都労連要求に応えるものとして都側から提案があり、都労連から、努力義務を改めて規制とすることや実施職場を本庁職場の時差勤務導入職場に限定せず、全ての職場を対象とすることを求めていましたが、当初提案を変えることはできませんでした。実施状況について、来年度労使で検証することとしましたので、検証を通じて対象職場の拡大など都労連要求の実現を追及することが求められます。また、実施職場以外において推奨するとしている超過勤務時間の抑制によるインターバル時間の確保の取組を単組で追及する必要があります。
〇慶弔休暇(結婚休暇)の見直し
この見直しにより、結婚休暇を取得する時期について、「婚姻の届出をした日」「結婚した日」のいずれかを職員の希望で選ぶことが可能となり、仕事の都合や家庭の事情などを考慮して休暇を取得することができ、これまでは不本意ながら取得できなかった事例がありましたが、申請時期の制限を緩和し、事前であれば可能としたこととあわせ、職員にとって取得しやすい制度へと改善することができました。
〇オリンピック・パラリンピック等の職免の見直し
従来は、年休で対応せざるを得なかった選手の指導者(監督・コーチ)や競技時の行動補助者について、有給職免の対象とする改善を図ることができました。
(2)都労連の判断
今期確定闘争は、事実上3年連続の給料表据置きとボーナスの0.10月分の引上げが全て勤勉手当への配分となった不当勧告のもとでの闘いとなりました。
都側は、勤勉手当0.10月分の引上げについて、引き続き国や他団体を上回ることをことさら強調し、都民の厳しい視線が注がれている等と述べ、昨年同様に、最後まで慎重に検討するという考えを示し続け、新たに会計年度任用職員に期末手当を支給することまで持ち出して、成績率の見直しをはじめとする提案事項や、都労連要求への回答、人事委員会勧告の取扱いも含め、全て一体として解決していくことが、都民の理解を得るためには不可欠であるとして、成績率の見直しと引き換えに、会計年度任用職員への期末手当支給を含めた都労連要求やボーナスの引上げ勧告を実施するかのような考えを示しました。
都労連と各単組の組織の総力を挙げた闘いを展開し、激しい労使交渉を行いましたが、残念ながら都側の一体的解決を図るという強硬な姿勢を突き崩すことができず、一部押し返したものの成績率の見直し提案を撤回させることはできませんでした。一方で、当然とはいえ、ボーナス引上げ勧告の実施と差額の年内精算を判断させ、重要課題であった会計年度任用職員制度導入に伴う制度改正については、「できる規定」であった期末手当の支給を判断させ、常勤職員との同様の支給月数を確保したこと、週あたり勤務時間による支給対象者の制限をなくしたことは大きな成果です。
都労連要求については、病気休暇を期末手当勤務期間からの除算事由から除外したことや、努力義務や実施職場の限定という不満はあるものの勤務間インターバルの本格実施を実現するなどの貴重な成果を勝ち取ったものの、全体として不十分な結果となりました。
また、都側の今回の強引な成績率の見直しにより、業績評価制度の根幹が変えられ、新たな制度矛盾が生じる結果となりました。恣意的な評価や自己申告制度の不適切な運用実態など多くの問題点も浮き彫りとなっており、今後の闘いで、業績評価制度や自己申告制度を含む人事考課制度そのものの抜本的改善を求める取組を強化していかなくてはなりません。また、今回実現できなかった再任用職員の賃金水準の抜本改善、任期付職員の処遇改善、島しょ職員の賃金・労働条件改善、現業賃金・任用制度、実習教員・寄宿舎指導員・栄養教諭の人事給与制度改善の課題については、改めて要求を再構築し、来年度の確定闘争での前進を勝ち取るための準備を進めることが重要です。
以上のように、都側の強固な姿勢を突き崩すことができず大変厳しく不満の残る結果となりましたが、職場宣伝行動や総決起集会などの大衆行動を背景に、あくまでも労使交渉による自主決着を図るため、粘り強く闘い抜いた都労連と各単組の闘いの到達点として、妥結する判断を行い、単組に批准を求め、2018年秋季年末闘争の決着を図ることとします。
団体交渉発言骨子
都側
それでは、私から申し上げます。
はじめに、人事委員会勧告の取扱いについて申し上げます。
まず、勧告に示された例月給の改定については、平成31年4月1日から実施することといたします。
特別給については、勧告の内容どおり、勤勉手当の年間支給月数を0.1月分引き上げて2.0月分とし、再任用職員についても0.05月分引き上げて、0.95月分といたします。そのため、各期に支給する勤勉手当の月数は、6月期、12月期ともに1.0月分、再任用職員についても、0.475月分とします。
また、期末手当の月数は、勧告の内容どおり、平成31年度から各期に支給する月数を均等にすることといたします。
したがって、皆さんから要求のありました本年の年末一時金については、期末手当を1.375月、勤勉手当を1.05月、合計2.425月分を、再任用職員については、期末手当を0.8月、勤勉手当を0.5月、合計1.3月分を支給することとします。
その他、会計年度任用職員制度などの取扱いについては、小委員会においてお示ししたとおりです。
以上の内容で、必要な議案を第4回都議会定例会に提案する準備をいたします。
なお、年末一時金の支給日は、12月10日といたしますが、今回の引上げに伴う増額分については、議決後、できる限り速やかに支給できるよう、手続を進めてまいります。
公営企業の職員につきましては、以上の内容をもって各管理者とよく協議していただきたいと思います。
今期の交渉は、都を巡る厳しい情勢の中、勧告の取扱いや、勤勉手当の成績率制度の見直しなどを中心に、労使の考え方が鋭く対立し、大変厳しい交渉となりました。
また、職責・能力・業績主義の徹底をはじめ、不断の改革を進めていくことが不可欠とする私どもの姿勢に対し、現場の声を踏まえ見解を改めるよう、皆さんから再三強いご指摘もいただきました。
しかし、皆さんには、解決困難な課題に対しても真摯に協議に応じて頂き、大変重い決断をしていただいたことで、こうした難局を乗り切ることができたものと考えています。
現在、国において、都に大きな影響を及ぼしかねない税制改正の動きがあるなど、都を取り巻く情勢は依然として予断を許さない状況です。
こうした中にあっても、日々都政を支えている職員の勤務条件については、都民の理解が得られるよう、今後も引き続き、皆さんと協議を尽くし、課題を解決してまいりたいと考えておりますので、引き続きよろしくお願いします。
私からは以上です。
都労連
ただいま、勧告の取り扱いをはじめ、最終回答が示されました。
都政を根底から支えている職員の心情を察すれば、極めて遺憾であります。
労使交渉が難航を極めた原因は、諸情勢を理由に一体解決に拘る、都側の頑なな姿勢にあります。最終回答は、組合員にとって、厳しい不満な内容でありますが、都民生活に責任を持つ立場から、これ以上対立を深めることは避けなければなりません。
都労連も、現下の厳しい情勢は認識しています。しかし、職員は、厳しいなかにあっても、日夜、公共サービス・公教育を支えています。
そうした職員が、意欲を持って、職務に従事できる環境を整えることが、都側の責務です。職員の人事給与制度の改善について、引き続き、労使交渉を尽くして解決することを求めておきます。
そのうえで、回答は持ち帰り、各単組で審議した後に返答いたします。
私からは以上です。
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