2018年賃金確定闘争の妥結にあたっての都庁職の見解と態度
2018年11月15日
第34回都庁職執行委員会
1 主な妥結内容
(略)
2 都庁職の見解と態度
[1]人事院勧告及び人事委員会勧告について
【人事院勧告】
8月10日、人事院は、国家公務員給与等に関する報告・勧告を行いました。
月例給については0.16%、655円、一時金を0.05月引き上げる勧告となり、月例給及び一時金ともに5年連続での引上げとなりました。その結果、給与の平均改定率を0.2%としたうえで、初任給1,500円、若年層に関しては1,000円程度引き上げ、その他は400円の改定額となりました。
また、来年度から一時金の支給を6月期2.225月と12月期2.225月で同額となるように配分して支給される。これによる影響は、新規採用者だけが影響し、0.0375月分減少することになります。
人事管理に関しては、国民の信頼回復に向けた取組として、セクシュアル・ハラスメント防止対策、公文書の不適切な取扱いに対する懲戒処分の明確化を掲げ、人材確保育成では、マネジメントの能力向上や若手・女性のキャリア形成支援を積極的に行い、成績主義の原則に基づく人事管理では、倫理感を持った職務の遂行や部下の指導を徹底するとしています。
働き方改革と勤務環境の整備では、長時間労働の是正として、超過勤務命令の上限を人事院規則において、原則1月45時間・1年360時間(他律的業務の比重の高い部署においては1月100時間・1年720時間等)と設定しています。
1月100時間以上の超過勤務を行った職員等に対する医師による面接指導の実施等職員の健康管理措置を強化することになっています。
【東京都人事委員会勧告】
10月12日、東京都人事委員会は、都議会議長及び都知事に対し「職員の給与に関する報告と勧告」を行いました。
例月給については、本年4月における都職員の平均給与が400,975円(平均年齢40.7歳)であるのに対し、民間給与実態調査による民間従業員賃金が401,083円であるとし、例月給の公民較差が0.03%、108円(本給90円、はねかえり18円)と本給分が100単位に満たないため改定を見送る。初任給は、有為な人材を確保する観点から2019年度から1,000円引上げ、初任層を較差の範囲内で引上げるとしています。
特別給は、民間支給割合が4.61月であり、都の現行4.50月を0.11月分上回っていることから、年間支給月数を0.10月分引き上げて4.60月とし、再任用職員については、0.05月分引き上げて2.40月分とし、すべて勤勉手当へ配分するとしています。また、2019年度以降においては、国と同様に6月期及び12月期の期末手当が均等になるよう配分するとしています。
定年延長については、定年引上げに係る国における法改正等の動向を注視しながら、都のこれまでの取組や実情を十分に考慮して、都における給与水準等について検討するとしています。
また、職務給の更なる進展等に言及し、引き続き行政職給料表(一)1級・2級について、上位級とのバランスを考慮した昇給幅への是正の視点から、適切な対応を検討していくとしています。
本年の東京都人事委員会勧告は、特別給こそ5年連続で引上げとなりましたが引き上げ分を勤勉手当に配分する、例月給については、3年連続で据え置き、国との均衡として初任給を引き上げるとするものの逆に格差が拡大するという極めて不当な勧告となっています。
【都労連の戦術設定】
都労連は、人事委員会勧告を受けて、10月15日に、都労連単組代表者会議を開催し、2018年賃金確定闘争の山場を11月14日とし、翌15日に1時間統一ストライキを配置する戦術を設定することを確認しました。
10月29日の団体交渉においては、年末一時金2.5月分を12月10日までに支給すること、支給にあたっては全額を期末手当とすることを求め、回答指定日を11月14日としました。当局からは、国家公務員の給与や退職手当については、現段階においても、その取扱いが明らかではなく、例年にない状況が続いていることや、国や他団体を上回り全国で最も高い特別給の支給月数が勧告されていることから、勧告の取扱いについても、諸情勢を踏まえ慎重を期して判断しなければならないとの発言がありましたが、都労連からは、大都市東京の民間実勢を踏まえれば、ことさら問題視する必要性はないと反論しました。
[2] 都労連要求実現と不当な当局提案に対する闘い
【都労連要求書の提出】
10月4日の第1回中央委員会において、都労連18秋季年末闘争方針が決定され、全職員一律の賃金大幅引き上げの実現、行(一)1・2級の賃金水準引き下げ阻止、臨時・非常勤職員の処遇改善等が闘争の主要課題とされました。
これを受け都労連は、10月17日の小委員会交渉で「人事制度改善要求書」、「現業賃金・給与制度に関する改善要求書」、「島しょ職員の賃金・労働条件改善に関する要求書」、「高齢期雇用制度改善要求書」、「福利厚生事業に関する要求書」、「業務上の事故に伴う身分保障に関する改善要求書」、「臨時・非常勤職員の処遇改善に関する要求書」、の計7本の要求書を提出し、既に7月に提出された「労働時間・休暇制度の改善」「福祉関連」「職場環境改善」の要求書も含め、その実現に向けて速やかに検討を進め、今後の労使交渉で議論することを求めました。
【不当な成績率の見直しをはじめとする当局提案】
10月31日の交渉において、当局から勤勉手当の成績率見直しと臨時・非常勤職員制度の見直し提案を行うとともに、在宅勤務型テレワークについて現行の制度の範囲内で本格実施するとしてきました。また、11月7日の交渉で勤務間インターバル確保と連続勤務の禁止の取組の追加提案がありました。
都労連は、勤勉手当の成績率見直し提案について、現行「対象外区分」となっている新規採用職員、条件付採用職員、育児休業・病気休職復職者なども成績率の対象とし、成績率原資を拠出させる勤勉手当を削減されるという提案で白紙撤回を求めました。臨時・非常勤職員制度の見直しについては、常勤職員との均等待遇を求めるとしています。在宅勤務型テレワークについては、労使による検証は不十分であり、本格実施については直ちに賛成することはできないとしています。勤務間インターバル確保と連続勤務の禁止については、都労連要求ではあるものの所属長の努力義務としていることについて再検討を求めました。
【労使自主解決を追求し精力的な交渉を実施】
11月10日から連日、断続的に窓口折衝が行われ、専門委員会交渉及び小委員会交渉の中で、成績率見直し提案の取扱いと都労連要求実現を迫りました。また、11月7日に実施した人事給与制度改善要求実現の対都要請行動での特に成績率見直し提案に対して撤回を求める厳しい追及をしたことに対し、当局は重く受け止め、交渉メンバー全員で全力をあげて検討を行っているとの発言もえました。
11日(日)の交渉では、都労連から非常勤・臨時職員制度見直し提案及びテレワークの本絡実施に関する解明要求を提出しました。都側は成績率見直し提案内容を一部見直すとして、成績率の段階決定について、翌年度の新規採用職員数相当を加えた職員数を基に40%程度としている上位以上の区分を算定するとの修正案を示しました。
これに対して都労連は、要請行動において職場代表と単組代表から厳しく成績率見直し提案の撤回を求めた声に全く応えないものであり、修正案のどこがギリギリの踏み込んだ案なのかと追及し、直ちに撤回することを求めました。
さらに、この修正案も、業績評価に基づいて成績率の段階を決定するという現行で対象外となっている新規採用者、条件付探用者、育児休業や病気休職からの復職者などから成績率原資を拠出させる賃下げ提案は断じて認めないとして、提案の不当性と、同じ説明を繰り返す都側の交渉態度を糾弾し、修正案を撤回し、白紙に戻して再考することを迫りました。
交渉では、2本の解明要求に対して回答が示されましたが、まず、非常勤・臨時職員制度見直し提案については、一定都労連要求を反映しているものの、肝腎の報酬額改善・期末手当の支給については、具体的な回答を示されませんでした。さらに、期末手当の支給対象から、勤務時間遡15時間30分未満を除くとした回答に対しでも、可能な限り拡大するよう再検討を求めました。
11月12日は、交渉で確実に要求に対する回答を示すことを求めましたが、都側は成績率見直し提案については、ギリギリの修正策に理解願いたいとしたため、都労連から、提案に固執し押し付けようとすることに抗議しました。
[3]統一行動を背景に最後まで労使交渉による解決を求めた最終局面交渉
11月13日は、早朝宣伝行動を行い、回答指定日前日の最終局面の交渉状況と都側の不当な交渉姿勢について庁内世論に訴えました。
13時30分から行った労務担当部長要請では、各単組書記長からは、明日回答指定日であるが要求への回答を示さないままなのは許されない、新規採用や病休・育休からの復職者などからも成績率原資を拠出させる理不尽な見直し提案は直ちに撤回せよ、労働安全衛生環境の改善・長時間労働の解消が喫緊の課題であり要求に応えよ、改善された業務職給料表を早急に提示せよ、現業賃金・臨時非常勤・任期付職員などの賃金差別をなくせ、会計年度任用職員への期末手当支給への高い期待を裏切るな、勤務間インターバルは努力義務では不十分・本庁だけではなく交替制勤務職場等出先事業所への導入も検討せよ等々、都側に提案の撤回と要求の実現を厳しく迫りました。
これに対して労務担当部長からは、交渉姿勢に対する厳しい指摘や職場実態を踏まえた切実な意見を伺った、ギリギリの案をお示ししたいと発言、また国・他団体を上回る特別給の引き上げ勧告、法改正への対応ながら2020年には会計年度任用職員制度の導入と新たに期末手当を支給することに言及しつつ、成績率見直しをはじめ提案事項、都労連要求への回答、勧告の取扱いも含め、全て一体として解決することが、都民の理解を得るには不可欠としたうえで、検討は最終段階だが、今頂いたご意見、ご指摘を真摯に受け止め、上司とも相談した上で対応を検討するとの発言がありました。
これに対して都労連は、労務担当部長発言は、これまでの交渉における都側発言の繰り返しである、特に一体的に解決するとの発言は受け入れられない、課題毎に交渉で議論し結論を得るべきものだと指摘し、単組書記長の要請を受け止め、早急に検討した内容を示すことを強く求めて要請を終えました。
労務担当部長の全て一体として解決を図るとの発言は、提案を押し付けようとする姿勢を一層強めていることから、直ちに単組委員長による総務局長要請の設定を求めることを確認しました。
回答指定日が迫っていることからも、時間を浪費することは許せないとの折衝で、11月14日11時から単組代表者会議を開催して、確定闘争の情勢についても報告、共有化を図った上で、単組委員長による総務局長要請に臨むことを確認しました。
11月14日11時30分から総務局長要請を行い、上司である副知事と相談するとの発言を引き出しました。19時50分に単組代表者会議が開催され、都側からようやく考えがまとまったということで、都労連委員長と副知事とのトップ会談の開催をしたいとの連絡があったことに対する合意が図られ、その後、20時10分から、トップ会談が始まりました。
さらに時間を経て、23時20分から単組代表者会議が再開し、最終案の提案が議論され、0時9分にスト中止の決断を合意しました。
都庁職は、0時50分から拡大闘争委員会を開催し、最終案の議論をした後、1時32分に拡大闘争委員会での確認を得ました。
都労連は、15日1時30分より小委員会交渉を行い、交渉事項について最終的な回答が示されました。
その後、2時から団体交渉が行われ、年末一時金の最終回答がありました。
[4]都庁職の取り組みについて
都庁職は、都労連2018賃金確定闘争を担う6単組の一員として、他単組と共に、対人事委員会署名、早朝宣伝行動、ステッカー闘争、対都要請行動、通算6波にわたる総決起集会、都庁包囲デモ等に積極的に取り組みました。
[5]2018確定闘争の到達点について
18確定闘争では、3年連続給与改定を見送るという不当な人事委員会勧告に加えて、当局の不当な成績率見直し提案、会計年度任用職員制度と併せた臨時・非常勤職員制度の処遇改善が大きな課題となりました。
当局が、都民の厳しい視線と言いながら、国や他団体を上回る特別給が勧告されていることや都の財源を奪おうとする国の動きを引き合いにだし、成績率の見直しをはじめとする提案事項、都労連要求への回答、勧告の取扱いを含め一体解決を図ろうとする中、厳しい闘いとなりました。
都労連6単組は、職場における取組を基本に、ステッカー闘争、局長・任命権者要請、机上宣伝、2回の早朝宣伝行動、2回の対都要請行動、確定期のみで5回の総決起集会、都庁包囲デモ、ストライキ体制の構築を整然と実施してきました。
私たちは勧告によらない大幅賃上げを求めてきましたが、残念ながら勧告の壁を超えることはできませんでした。しかし、当局が最終版まで難色を示してきた一時金0.10月の支給を決断させることができました。
最大の課題となった成績率の見直しでは、白紙撤回を求めて闘ってきましたが、育児休業復帰者を対象除外にし、実施を1年先送りする結果にとどまりました。
会計年度任用職員制度について、休暇制度等については現行の一般職非常勤職員制度と同様とするものになりました。期末手当について支給月数を常勤職員との均衡を図ることができ、当局が支給対象外として提案した週15時間30分未満の職員も支給対象とすることができましたが、報酬水準そのものの引き上げには至りませんでした。
都労連要求に関わっては、病気休職者の期末手当の除算制度の見直しにより、病気休職者の不利益の軽減を図ることができました。その他、勤務間インターバルと連続勤務の禁止に係る労使の検証の実施、結婚休暇の見直し、オリンピック・パラリンピック等の職免の見直しについて前進することができました。
今確定闘争の到達点については、職場組合員にとって大変厳しい内容を含んでいます。
しかし、国政・都政に関する情勢認識や労使交渉による自主決着を図る立場から、都庁職としても、今期闘争を収束するという都労連の判断を受け入れるものです。
確定闘争が終結しても、都庁職としては、引き続く単組交渉だけでなく、8月に提出した都庁職要求の実現や、これから終盤をむかえる特殊勤務手当に関する取組について、休むことなく進めていかなければなりません。
都庁職は、支部・組合員のみなさんとともに、要求実現に向けて闘いを進めていきます。
以上
|