2018勧告の解説と問題点
3年連続で例月給据置き
◎T類B、U類、V類の初任給を千円引上げ。初任層を百円〜千円の範囲で引上げ
民間従業員の給与が都職員の給与を108円、0・03%上回っているが、公民較差は僅少であり、公民の給与が概ね均衡の状況であるため、給与表や諸手当に適切な配分を行うことは困難とした。しかしながら、行(一)T類Bの初任給と国の総合職試験(大卒程度)の初任給との乖離や、U類とV類の初任給が民間の短大卒及び高卒の初任給を下回っていることから、有為な人材を確保する観点から初任給を引き上げる必要があるとし、初任給を引き上げるために給料表の初任層を較差の範囲内で改定している。なお、改定は2019年4月1日実施として、今年度の改定は見送る。
春闘の賃上げは連合の調査で2・07%、春闘共闘の調査で2・09%である。また、都人勧の較差は人事院勧告の655円(0・15%)の較差の6分の1である。勧告で示された公民較差は春闘での賃上げや人事院勧告と比べ不当に少額となっており、到底、理解も納得もすることはできない。
都人事委員会は、都職員と民間労働者の給与比較は単純な平均値による比較ではなく、ラスパイレス方式により行い、行(一)適用職員と同種の民間労働者の役職・学歴・年齢を同じくする者同士の今年4月分の給与を対比させ、都職員の人員数のウエイトを用いて給与水準を比較すると説明するが、そのデータは公表せず、比較結果が示されるだけで他の調査との乖離の明確な説明をしていない。現在の比較方式では、民間賃金水準を都職員の給与に精確に反映することはできない。
都人事委員会が示した民間賃金の全国と東京の差は全国を100として東京は123・6と昨年の122・8を上回る。国や他自治体では、5年連続で給与表の増額改定の勧告が行われており、このことからも、東京における公民較差を隠した政治的勧告と言わざるを得ない。
特別給引上げは勤勉手当に
◎特別給0・10月分引き上げ。引上げ分は全て勤勉手当に配分
特別給は、都内民間労働者の支給割合が年間4・61月分であり、都職員の年間支給月数4・50月分を0・11月分上回っているため、支給月数を0・10月分(再任用職員0・05月分)引上げて4・60月(再任用職員2・40月)とし、支給月数増の全てを勤勉手当に配分するとしている。
都内の千人以上の企業規模では特別給の年間支給月数は4・93月である。都の職員数を考慮すればこれを比較すべきであり、また、引き上げ分の勤勉手当のみに配分することは、引き上げの効果が全職員に反映されず、大きな問題である。
なお、国と同様に2019年度以降、6月期と12月期の期末手当が均等になるよう配分するとしている。
その他今後の課題等
◎定年制、再任用職員や臨時・非常勤職員の処遇改善は具体的な言及なし
8月に人事院が申出を行った定年引上げについては、人事制度全体にわたる検討が必要となるが、都における給与水準や体系等については、国における法改正等の動向を注視するとともに、都のこれまでの取組や実情を十分に考慮して検討していく必要があると述べるに止まった。再任用職員の賃金水準の抜本的改善には言及していない。
行政職給料表(一)1級・2級について、上位級とのバランスを考慮した昇給幅への是正の視点から、適切な対応を検討していくとして、当局のこの間の主張を後押ししている。
会計年度任用職員制度については、制度導入に向けて、現行制度の実態を踏まえた職の在り方、勤務条件及び報酬・期末手当の給付等について検討することが重要と言及するに止めている。臨時・非常勤職員の処遇改善は、勧告をしていない。
長時間労働の是正、議会対応業務見直し、継続的な学校における働き方改革推進、フレックスタイム制やテレワークの利用促進に向けた環境整備、ワーク・ライフ・バランス推進、パワ・ハラ等への対策、勤務間インターバルの試行の検証、メンタルヘルス対策などについては、考え方を示すに止まり、具体的な対応策は示されていない。
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