【2018年都人勧特集】3年連続で例月給据置き
特別給は5年連続で増。0.1月分を勤勉手当に配分
初任給及び初任層の給与を2019年度から引上げ
2018年東京都人事委員会勧告に対する都庁職の見解と態度
【1】はじめに
10月12日、東京都人事委員会は、都議会議長及び都知事に対し「職員の給与に関する報告と勧告」と「人事制度及び勤務環境等に関する報告(意見)」を行いました。
勧告のポイントでは、有為な人材を確保する観点から、初任給を1、000円引上げ、特別給は年間支給月数を0・10月分引上げ、勤勉手当に配分を行うとしています。また、制度改正として、公安職給料表の1級・2級を統合するとしています。
特別給は5年連続で引上げたものの、例月給は3年連続の据置き、初任給及び給料表の初任層の引上げは2019年度から、という私たちの期待を裏切る不当な勧告であり、到底容認できません。
【2】2018年人事院勧告及び他団体の状況
8月10日、人事院は国家公務員の給与等に関して、国家公務員の例月給が民間給与を655円(0・16%)下回っていることから、行政職俸給表(一)を平均0・2%引き上げる勧告を行いました。また、一時金については0・05月の引上げを勧告しました。
政令市の人事委員会勧告は、9月3日の福岡市を皮切りに15以上の都市で既に行われています。多くの都市では例月給の増額改定を勧告しているものの、金額と率ともに国を上回る公民較差とした都市は無く、さいたま市など4市では給与改定なしが勧告されています。また、特別給については、ほとんどの都市で年間4・45月への改定を勧告もしくは報告しています。
なお、特別区人事委員会は10月10日に勧告及び報告を行いました。特別区の人勧は、月例給の公民較差を▲2・46%(▲9、671円)として、給料月額を最大4・9%引き下げる大幅なマイナス勧告をしています。一時金は0・10月分の引上げが勧告されました。この月例給の大幅引き下げは、特別区の行政系人事制度が改正された下で、ラスパイレス方式による不当な公民比較が行われたことによるものです。また、職責差の反映として下位級は平均の約2倍の引下げとなっています。
この特別区の人勧史上最悪の給料表引下げの影響を、今後の東京都の労使交渉に波及させないように警戒していく必要があります。2018秋季年末闘争にあたっては、これまでの特区連や清掃労組との連帯を遮断することなく、お互いの不当な勧告をはね返すために連帯することが、都庁職には求められています。
【3】東京都人事委員会勧告の内容と問題点
都庁職は、8月10日に出された人事院勧告を受け、8月21日、東京都人事委員会に対して、大都市東京に暮らす職員の生活実態を踏まえた勧告を行うことを重点に22項目にわたる要請を実施してきました。
都労連指令に基づく全職員を対象とした人事委員会要請署名の取組は都労連全体で2万8千筆を超えました。また、毎週木曜日の昼休みステッカー闘争などに職場・支部をあげて取り組んできました。
しかし、東京都人事委員会は、職責・能力・業績を適切に反映させる取り組みが重要と強調し、都側と同じ課題認識と主張を繰り返す不誠実な態度に終始してきました。
組合員の要求を拒否する不当な勧告を強行
高齢層職員の給与水準の改善には言及なし
1 例月給の較差と給料の改定
|
8月21日の人事委員会要請 |
人事委員会勧告では、本年4月における都職員の平均給与が400、975円であるのに対し民間給与実態調査による民間従業員の平均賃金が401、083円であったとして、例月給の公民較差を108円(0・03%)としました。
しかし、都人事委員会が算出した2017年6月現在の民間賃金の地域差は、全国を100として、東京都では123・6としている。都職員と国家公務員との給与水準比較では、2017年4月現在で国家公務員の指数が100に対し、都職員の指数が101・6となっています。
また、今春闘の民間企業の賃上げ結果は、連合加盟全組合の平均で2・07%(5、934円)、春闘共闘の平均で2・09%(6、126円)でした。また、日本経団連加盟の中小企業でも1・89%(4、804円)の賃上げとなっています。
都人事委員会勧告が低額の勧告になった要因は、2006年以降の比較対象の改悪(企業規模、事業所規模、対象産業)により、東京都の職員構成、年齢低下を反映できない公民比較方法となっていることであることは明らかです。現在の比較方式では、東京の民間賃金水準を都職員の給与に反映することはできません。
例月給については「本年の公民較差はかなり僅少であり、給料表や諸手当において適切な配分を行うことは困難であるが、優位な人材確保の観点から初任給を引上げ」として、「初任給引上げのため、給料の初任層を格差の範囲内で引上げ改定」としています。
国や多くの自治体では、5年連続で給与表の増額改定の勧告が行われています。
しかし、東京都職員は3年連続で増額改定が見送られ、給与の公民較差は是正されていません。特に、1級・2級の中堅・ベテラン職員は4年連続で増額改定が見送られています。
全ての職員の大幅な賃上げを求めてきた都労連・都庁職の要請を拒否し、多くの中堅・ベテラン職員の働く意欲を挫く極めて不当な勧告です。
2 初任給
初任給は、これまで均衡を図ってきた行政職給料表(一)のT類Bの初任給と国の総合職試験(大卒程度)の初任給との乖離や、U類及びV類の初任給が民間の短大卒及び高卒の初任給を下回っていることを踏まえ、有為な人材を確保する観点から1、000円引上げるとしています。 また、初任給を引き上げるために給料表の初任層を較差の範囲内で引上げるとしています。
しかし、初任給等の改定は2019年4月1日から実施としており、今年度の公民較差の改善は見送っています。そのため、今年度の国と都の初任給等の乖離は拡大されることになります。
3 特別給
勧告では、特別給は民間支給割合が4・61月であり、都の現行4・50月を0・11月分上回っていることから、年間支給月数を0・10月分引き上げて4・60月とし、すべて勤勉手当へ配分しています。また、再任用職員については、0・05月分引き上げて2・40月分としています。特別給の引上げは、民間従業員の特別給における考課査定分の割合及び国の勧告内容を考慮し、勤勉手当で行うことが適当であるとしています。
職員及び再任用職員ともに、特別給は5年連続の引上げ勧告となります。
また、2019年度以降においては、国と同様に6月期及び12月期の期末手当が均等になるよう配分するとしています。
しかし、人事委員会資料では、特別給の支給割合は、1、000人以上の企業で年間4・93月となっており、私たちの要求からすれば、特別給のこの引上げ幅では到底納得できる内容ではありません。また、私たちは、特別給を全て期末手当での支給することを要求していますが、勧告を実施すれば年間の期末手当は2・60月、勤勉手当は2・00月となり、勤勉手当の割合が42・2%から43・5%に拡大するという、不満な内容となっています。
4 諸手当
諸手当に関する改善は勧告されていません。
5 高齢層職員の給与
勧告では、再任用職員の特別給は、0・05月分の引き上げをすべて勤勉手当へ配分しています。年間の期末手当は1・45月、勤勉手当は0・95月となり、一時金に占める勤勉手当の割合は、再任用職員についても38・3%から39・6%に増大しています。
都人事委員会は、高齢層職員の給与改善についての積極的言及を避け、「定年引上げに係る国における法改正等の動向を注視しながら、都のこれまでの取組や実情を十分に考慮して、都における給与水準等について検討」としています。特に、定年引上げについては、人事制度全体にわたる検討が必要となるが、都における給与水準や体系等については、国における法改正等の動向を注視するとともに、都のこれまでの取組や実情を十分に考慮して検討していく必要があると述べるに止まっています。
また、再任用職員の給与改善については言及しておらず、都労連・都庁職が継続して求めてきた高齢層職員の給与水準の改善は全く行われていません。
6 職務級の更なる進展等
都人事委員会は、職務給の更なる進展等に言及し、引き続き行政職給料表(一)1級・2級について、上位級とのバランスを考慮した昇給幅への是正の視点から、適切な対応を検討していくとしています。
これは、当局の主張を後押しする意見であり、中立・公正な第三者機関としての役割と責任を放棄したものと言わざるを得ません。また、都庁職はこの間、給料表の構造については、都職員の生計費保障を基本に改善を図り、この間の昇給カーブのフラット化を是正することや、行政職給料表(一)1・2級の引き下げを行わないことを人事委員会に要請してきました。この要請に完全に背を向けるものであり、絶対に容認することはできません。
7 人事制度及び勤務環境等に関する報告
都人事委員会は、「人材の確保と活用」における「多様な人材の活躍推進」の中で、「会計年度任用職員制度の導入に向けて、現行制度の実態を踏まえた職の在り方、勤務条件及び報酬・期末手当の給付等について検討することが重要」と言及するに止めています。
都労連・都庁職が、この間に継続的に求めてきた臨時・非常勤職員の処遇改善については、全く勧告をしていません。
8 働き方改革と職員の勤務環境の整備
働き方改革と職員の勤務環境の整備では、ライフ・ワーク・バランスの推進、職員の勤務環境の整備、公務員倫理の徹底などについて報告しています。
報告では、長時間労働の是正、議会対応業務の見直し、継続的な学校における働き方改革の推進、フレックスタイム制やテレワークの利用促進に向けた環境整備、ワーク・ライフ・バランスの推進、パワ・ハラ等への対策、勤務間インターバルの試行の検証、メンタルヘルス対策などについて言及していますが、それぞれ考え方を示すに止まっており、具体的な対応策は示されていません。
【4】都庁職の態度
|
本年の東京都人事委員会勧告は、特別給こそ5年連続で引上げとなりましたが、全体として私たちの期待を裏切り、大都市東京の民間賃金実態を精確に反映しない、極めて不当な勧告です。
特に重大なことは、例月給の公民較差108円(0・03%)を是正するための給料表改定を行わず、3年連続で給与が据え置かれたことです。特に1・2級のベテラン職員は4年連続の給与の据置きになります。
勧告では、国や民間企業に比べて低水準となっている初任給等の給与を2019年度から引上げるとしています。初任給等の引上げは、私たちの要求事項ではありますが、少なくとも全ての職員の公民較差を解消した上で改善すべきものです。このことを理由にして給料表改定を見送ったことは、到底容認できません。
また、特別給の引上げ分を全て勤勉手当に配分したことは、職員の能力・業績を給与へ反映させることを狙いとしており、都人事委員会が「職責・能力・業績主義」の徹底を図る都当局に加担する不当な内容です。
東京都では退職後も以前と同種の職場で、退職前と同等の職責を持って勤務する例も多く、高齢層職員は、各職場の業務執行の継続になくてはならない存在です。今年も、再任用職員の給与水準の改善を全く行わないことは、許すことはできません。働く意欲と能力があり、働く必要性のある高齢層職員が、働きがいを持って人間らしく働ける給与水準を早急に確立することが求められています。
臨時・非常勤職員の処遇改善については、今年も完全に背を向け、具体的な処遇改善に全く足を踏み出そうとしていません。
2018年の都人事委員会勧告は、全体として、都労連・都庁職の要求に何ら応えておらず、都当局の主張を後押しするなど、中立・公正な第三者機関としての役割と責任を放棄した不当なものです。
都労連は、不当勧告の押し付けを許さず、労使交渉による例月給・特別給の改善と、都労連諸要求の実現に向け全力で闘うとしています。また、勧告制度の限界を踏まえ、労使交渉で自主決着を図り、賃金・労働条件の改善を目指すことを表明しています。
都庁職は、365日、24時間、都政の現場で働く全ての組合員が生活を維持し、誇りをもって働ける処遇改善を実現するために、職場・支部・分会からの運動を基軸にして取り組みを進めていきます。2018秋季年末闘争において、都労連六単組の統一と団結を固め、要求実現まで都庁職の組織の総力を上げて闘う決意です。
2018年10月12日
東京都庁職員労働組合
|