2017年東京都人事委員会勧告に対する都庁職の見解と態度
1 はじめに
都庁職は、8月8日に出された人事院勧告を受け、8月18日、東京都人事委員会に対して、大都市東京に暮らす職員の生活実態を踏まえた勧告を行うことを重点に10
項目にわたる要請を実施した。
また、都労連指令に基づく全職員を対象とした人事委員会要請署名の取組は約2万9千筆を数え、毎週木曜の昼休みステッカー闘争などに職場・支部をあげて取り組んできた。
しかし、東京都人事委員会は、職責・能力・業績を適切に反映させる取り組みが重要と強調し、都側と同じ課題認識と主張を繰り返す不誠実な態度に終始してきた。
2 東京都人事委員会勧告
10月6日、東京都人事委員会は、都議会議長及び都知事に対し「職員の給与に関する報告と勧告」を行った。
1 例月給改定見送り
勧告では、本年4月における都職員の平均給与が401、607円(平均年齢40・7歳)であるのに対し、民間給与実態調査による民間従業員賃金が401、681円であるとし、例月給の公民較差が0・02%、74円と極めて小さいため改定を見送った。国・人事院の官民較差0・15%、631円と比較しても、都の公民較差の低さが際立っている。
今春闘の民間企業の賃上げ結果は、連合加盟全組合平均で1・98%、5、712円、日本経団連加盟の中小企業が1・81%、4、586円と、1%台後半である。国も0・1%を超える較差を認めている。
都人事委員会が算出した昨年6月現在の民間賃金の地域差は、全国を100・0として、東京都では122・8としている。国家公務員との給与水準比較では、昨年4月現在で国家公務員100・0に対し、都が101・6となっている。
勧告資料には、公民較差は、役職・学歴・年齢が同じ条件の給料を対比させ、職員の人数構成により調整とあるが、ラスパイレス方式により恣意的に国とかけ離れた数値を算出したと考えざるを得ない。
さらに、今回の不当勧告となった要因としては、2006年以降の比較対象の見直し(企業規模、事業所規模、対象産業)があることは自明の理である。
2 特別給の改定
特別給は、民間支給割合が4・51月であり、都の現行4・40月を0・1月分上回っていることから、年間支給月数を0・10月分引き上げて4・50月とし、すべて勤勉手当へ配分した。また、再任用職員については、0・05月分引き上げて2・35月分となる。
特別給は4年連続の引上げ勧告となるが、人事委員会資料では、特別給(賞与)の支給割合は、1、000人以上の企業で年間4・89月となっている。
都労連は、特別給について勤勉手当に配分しないことを要求しているが、勧告では、民間従業員の特別給における考課査定分の割合及び国の勧告内容を考慮し、勤勉手当で行うことが適当としている。
その結果、年間の期末手当は2・60月、勤勉手当は1・90月と、勤勉手当への偏りが40・9%から42・2%へとさらに拡大した内容となっている。
3 高齢期雇用制度
勧告では一切言及がなく、人事制度及び勤務環境等に関する報告(意見)に、高齢職員の活用として、少子高齢化の進展により労働力人口が減少局面を迎え、働き手の確保がより一層困難になっていく中、全ての職層にわたり定年前に培った専門的知識や経験を再任用により積極的に活用していくことが重要、と述べている。
定年の延長や、年金支給開始年齢が引き上がったことに伴う無年金期間の賃金保障についても何ら記載がなく、「国においては、定年退職者が希望する場合には原則として再任用するものとされており、今後、年金支給開始年齢の引上げの時期ごとに雇用と年金の接続のあり方について改めて検討を行う予定である。また、現在、公務員の定年引上げについて具体的な検討が始められており、引き続きその動向を注視」と消極的対応に終始し、再任用職員の処遇改善の観点から中立・公正な第三者機関としての本来果たすべき役割を放棄した。
なお、再任用職員の特別給については、0・05月分引き上げて2・35月分とし、年間の期末手当は1・45月、勤勉手当は0・90月となり、特別給に占める勤勉手当の割合は、再任用職員についても37・0%から38・3%に増大した。
4 制度改正等
(1)指定職給料表が適用される再任用職員に係る給与制度
都において整備されていない指定職給料表が適用される再任用職員の給与制度に関して、国との制度的均衡を考慮し、平成30年6月期以降の期末手当の年間支給月数を0・75月分、勤勉手当の年間支給月数を1・05月分、年間合計1・80月分とする。
(2)退職手当制度
退職手当制度について、都は、これまでも国や民間の動向を踏まえつつ、在職期間中の職責を反映する割合の拡大を行うなど、都の実情に即した見直しを行ってきた。
本年4月、人事院は政府に対し「民間の退職金及び企業年金の実態調査の結果並びに国家公務員の退職給付に係る本院の見解について」により官民均衡の観点から、国家公務員の退職給付水準について見直しを行うことが適切との見解を示した。
都においては、国の退職手当の見直しの動向を注視し、適切に対処していく必要がある。
5 今後の課題等
「職務給の更なる進展等」として、行政職給料表(一)の1級・2級について、上位級とのバランスを考慮した昇給幅への是正の視点から、適切な対応を検討するとしており、職員間に給与上の不当な差別と分断を持ち込む都人事委員会の姿勢は、容認できない。
臨時・非常勤職員制度のあり方については、平成32年4月の改正地方公務員法及び改正地方自治法の施行に向けて、法改正への対応を図ることが必要、と言及するにとどまった。
全体として、都労連・都庁職の要求に何ら応えておらず、当局の主張を後押しするなど、「中立・公正な」第三者機関としての役割と責任を放棄したものと言わざるを得ない。
3 都庁職の態度
本年の東京都人事委員会勧告は、特別給はプラス改定となったものの、例月給は春闘結果を反映せず、公民較差は国と大きくかけ離れた数字が示され、改定は見送りと、私たちの期待を大きく裏切り、大都市東京の民間賃金実態を精確に反映しない、不当な勧告である。
また、特別給の増改定分は、「考課査定分の割合及び国の勧告内容を考慮し、勤勉手当で行うことが適当である」と言及したことは、独自の判断を避け、職責・能力・業績主義の徹底を図る都当局に加担する不当な内容である。
労使交渉事項である退職手当制度について、国の退職手当の見直しの動向を注視し、適切に対処していく必要があると言及したことは、人事委員会の役割を逸脱するものである。
高齢期雇用制度について、勧告では何ら触れず、意見として国の状況待ちとの消極姿勢である。
臨時・非常勤職員制度のあり方については、平成32年4月の法改正への対応を図ることが必要と言及するだけにとどまった。
本年の勧告も、2年連続となる例月給改定見送りなど、職員の期待を裏切る不当な勧告である。東京都人事委員会は、公務員労働者の労働基本権制約の代償機関としての役割を果たしているとは言い難い。
都労連は、不当勧告の押し付けを許さず、労使交渉による例月給・特別給の改善と、都労連諸要求の実現をめざし全力で闘うことを表明した。
都庁職は、職場・支部からの運動を基軸に、都労連6単組の団結を固め、要求実現まで闘うものである。
2017年10月6日
東京都庁職員労働組合
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