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伊ヶ谷地区海上より見る三宅島
伊ヶ谷地区海上より見る三宅島 撮影2003年4月10日三宅支庁提供
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都庁職新聞
 
国・特別区を下回る低額勧告

 

東京都人事委員会勧告 例月給0.12%、特別給0.10月を引き上げ

 

1級・2級の中堅・ベテランの給与は据置き
期待を裏切り、差別と分断拡大する不当勧告!!

 

2015年東京都人事委員会勧告に対する都庁職の見解と態度

 

(1)はじめに

 10月16日、東京都人事委員会は、都議会議長及び都知事に対し「職員の給与に関する報告と勧告」と「人事制度及び勤務環境等に関する報告(意見)」を行いました。
 勧告の概要は、例月給の公民較差を480円(0・12%)とし、平均改定率0・1%の引上げ、特別給は民間の支給割合が4・30月であり、0・10月の引上げを行うとしています。
 昨年に続き、2年連続の例月給・一時金の引上げであるものの、昨年をいずれも下回るものであり、私たちの期待を裏切る低額勧告となっています。
 更に、給料表の改定については、「職責に応じて改定する」とし、1級の初任給付近及び2級の若年層以外の1・2級の給料表改定を据置、3・4・5級については、全号給に対してほぼ低額の600円から900円を配分したことは、職員間に給与上の不当な差別と分断を持ち込むものであり、到底容認できません。
 また、本年の勧告、報告(意見)でも「職務給のさらなる進展」「(成績率の)査定幅のさらなる拡大」など、当局の主張を後押しし、労使交渉中の事項に言及する内容が含まれており、中立・公正な第三者機関としての役割と責任を放棄したと言わざるを得ません。

(2)公務員労働者を取り巻く状況と人事院勧告

 国は、「経済財政運営と改革の基本方針2015(骨太方針)」で示した「経済財政再建計画」の具体化を進めており、歳出改革について「公的サービスの産業化」、「インセンティブ改革」、「公共サービスのイノベーション」に取り組むとして、「社会保障」と「地方行財政改革」を重点分野とし、聖域なく徹底的に見直すとしています。
 とりわけ、地方行政改革については、国・地方共に徹底的な歳出の抑制や債務の圧縮に取り組む必要性を強調しています。具体的には、地方交付税をはじめとした地方財政制度の改革、外部委託の拡大、人件費の総額抑制、公営企業の廃止・民営化、地域間の税源偏在の是正、学校統廃合、教職員定数の見直し等を並べています。
 また、2016年4月1日からの地方公務員法改正に伴い、国は、人事評価制度の導入、標準的職務遂行能力の規定、等級別基準職務表の条例化、更には、給料表ごとの等級別役職別定員数の公表等を全ての自治体へ求めています。
 能力・業績主義人事管理の強化と、地方交付税を人質にした地方公務員定数管理への国の介入は、地方自治の根本理念を否定し、地方公務員総人件費の削減を図ろうとする極めて危険な動向にあります。
 この様な状況の中、8月6日、人事院は本年の官民格差を1、469円(0・36%)とし、一時金は0・10月の引上げを勧告しました。この官民格差の解消のため、人事院は、大半の国家公務員が昨年の勧告の実施に伴う経過措置期間中であることから、原資のほとんどを地域手当の改定に配分し、0・5%から2%の幅で本年4月から遡及改定を行うとしました。
 24年ぶりに2年連続で例月給・一時金の増勧告を出したことは評価すべきですが、その原資が例月給改定に使われず、地域間での職員給与格差が更に拡大したことは、不当であり、「給与の総合的見直し」と一体となった政治的勧告であると言わざるを得ません。
 国は勧告の翌日には給与関係閣僚会議を開催しましたが、「人事院勧告を尊重するとの基本的姿勢に立ち、適正な結論を得るように、国の財政状況、経済社会情勢など国政全般の観点から、検討する」として未だ結論を得ていないことは、労働基本権の代償措置である人事院勧告を政治的に利用するものであり断じて容認できない事態です。
 政令市の人事委員会勧告は、9月3日の名古屋市を皮切りに出されつつありますが、概ね例月給・一時金共に増改定を勧告しているものの、例月給については、人事院の官民格差0・36%を下回り、一時金については、年間4・20月に止まっています。
 また、「給与制度の総合的見直し」の実施も各人事委員会が軒並み勧告に踏み切っており、国準拠の圧力が強まっている背景をみなければなりません。

(3)東京都人事委員会勧告の内容と問題点

1.給料月額の改定と給料表の改定
 人事委員会勧告では、本年4月における都職員の平均給与が404、735円であるのに対し民間給与実態調査による民間賃金が405、215円であったとして、例月給の公民格差を480円(0・12%)としました。
 このように低額の勧告になった要因は、(1)2006年以降の比較対象の見直し(企業規模、事業所規模、対象産業)、(2)都の職員構成、年齢低下を反映できない公民比較方法にあることは明らかです。
 更に重要な問題は、給与表の改定において「公民格差の解消を図りつつ、各級における職責の差に応じて改定する」として、「3級から5級までは、職責等をより適切に反映した昇給カーブへの見直し等を行っているため、定額による引き上げを基本」とする一方で、「1級・2級は、上位級との職責差に応じた給料月額への見直しを図る観点から、1級の初任給付近及び2級の若年層以外は引き上げを行わない」としています。
 これは、1・2級に在職している中堅・ベテラン職員にも確実に生じているはずの公民較差について、解消するどころか、据え置き放置し、結果として昇給カーブのフラット化を推し進める不当な内容であり、多くの中堅・ベテラン職員の働く意欲を挫くきわめて不当な不利益取扱です。

2.初任給改定
 初任給は、売り手市場と言われる状況の中で、人材確保や育成の観点から改善が行われています。
 今年度の勧告の中でも、2類初任給1級17号給を156、100円(+1000円)に改定、3類初任給1級5号給を144、600円(+1600円)に改定しました。
 しかし、採用数の多い1類B初任給(1級29号給)については、「国との均衡」を理由に181、200円に据え置いています。

3.特別給(一時金)の改定
 勧告は、「期末・勤勉手当の支給月数を0・10月分引き上げて4・30月分とすることが適当」としました。
 しかし、人事委員会自らの調査においても、企業規模1000人以上では4・83月分、1000人未満では3・93月分であり、どちらも昨年調査と比べれば0・20月以上の増加となっています。昨年の勧告では4・21月であったことからすれば、実質的な公民較差は0・09月ということになり、到底納得できる内容ではありません。
 更に、私たちは、特別給については全て期末手当での支給を要求していますが、勧告は、「民間従業員の特別給における考課査定分の割合及び国の勧告内容を考慮し、勤勉手当で行うことが適当である」としました。その結果、年間の期末手当は2・60月、勤勉手当は1・70月となり、勤勉手当の割合が38・1%から39・5%に拡大するという、不満な内容となっています。

4.高齢期雇用制度
 勧告では、積極的言及を避け、「公的年金が全く支給されていないフルタイム勤務の再雇用者の給与水準については、公的年金が支給されている再雇用者と『同じ』との回答が8割を超え」、民間では「現状では、公的年金の支給の有無によるフルタイム勤務の再雇用者の給与水準に明確な差が設けられている状況にない」と結論付けました。
 そして、「定年退職後の継続雇用制度に係る国や民間事業所の動向を注視しつつ、適切に対応していく」と述べるに止まり、中立・公正な第三者機関としての本来果たすべき役割を放棄しました。
 一方、再任用職員の給与改定については、行政職給料表(一)では1級が+200円、2級が+300円、3・4級は+400円、5級は+600円で、いずれも0・1%前後での増改定となっています。また、一時金については、「0・05月分引き上げて2・25月分とすることが適当である」として、年間の期末手当は1・45月、勤勉手当は0・80月となり、一時金に占める勤勉手当の割合は、再任用職員についても34・1%から35・6%に増大しています。

5.制度改正について
 2016年4月からの「地方公務員法の改正に伴う対応」として、「現行の級別の職務のあり方や各級における職責等の検証に基づく適切な規程整備を行うとともに、職務給の原則のより一層の徹底を図るための適正な措置を講じる必要がある」と言及しました。
 これは、「都庁 組織・人事改革ポリシー」で当局が主張している、職責・能力・業績主義の徹底そのものであり、現在、都労連交渉事項となっている級格付者の取扱いを巡る厳しい労使交渉の中での言及であり、断じて許せません。

6.諸手当
 勧告では、諸手当の改善は行われていません。
 しかし、「配偶者に対する手当の見直しに係る国や民間事業所の動向を注視するなど、手当制度を取り巻く状況変化に即して、必要な対応を検討」として今後の検討課題としました。来年以降の課題として注視しなければなりません。

(4)都庁職の態度

 本年の東京都人事委員会勧告は、例月給・一時金ともにプラス改定ではありますが、私たちの期待を裏切り、大都市東京の民間賃金実態を精確に反映しない、極めて低額の改定となっています。
 更に重大なのは、月例給の公民較差480円(0・12%)について「各級の職責の差に応じてメリハリをつけて改定する」として、1・2級の1級初任給付近及び2級若年層以外は改定しないとしたことです。
 人事委員会の説明では、1級の47%、2級の39%にあたる職員が例月給の給与改定を見送られることになります。号給では、1級57号以降、2級85号以降が据え置きとなります。
 昨年の勧告に沿って、本年4月より本給と地域手当の配分変更が行われ、最大3・4%の本給引き下げの影響をまともに受けた1・2級に対する「メリハリをつけた改定」は、職員に対する差別と分断の攻撃であり、到底容認できません。
 また、特別給の増改定分について、全てを勤勉手当に配分し、「成績率の査定幅の更なる拡大」に言及したことは、「職責・能力・業績主義」の徹底を図る都当局に加担する不当な内容です。
 高齢期雇用制度について、勧告では抜本的な改善が見送られましたが、都庁職としては、2013年度からの年金支給開始年齢の段階的引上げが決定して以来の課題として、定年年齢の引上げ(定年延長)を基本要求とし、それまでの間の措置として、希望者全員の任用、短時間を含めた選択肢の拡大はもとより、その給与水準の改善など、再任用制度の充実を強く求めてきたところです。とりわけ、2016年度から年金支給開始年齢が62歳となることから、今年度中の解決が是非必要な課題です。
 都の場合、退職後も同じ職場で退職前と同等の職責を持って勤務する例が多く、職場ではなくてはならないベテラン職員です。働く意欲と能力があり、働く必要性のある高齢期職員が、元気が出るような雇用制度の確立が求められます。
 都庁職が要求してきた、障害者採用における合理的配慮について言及した点は評価します。
 その他、地方公務員法改正に関しては「職務給の原則のより一層の徹底」に言及するなど、勧告は労使交渉事項への介入とも取れる不当な内容となっています。今後の確定闘争にむけて、一層の取組強化が必要です。
 本年の勧告は、給与改善額の低さはもとより、その配分方法や労使交渉事項への介入等、従来に増して不当な勧告となりました。もはや、人事委員会は、公務員労働者の労働基本権制約の代償措置としての中立性や第三者性を持ち合わせていません。
 都労連は、不当勧告の押し付けを許さず、労使交渉による例月給・一時金の改善をめざし全力で闘うことを表明しています。
 都庁職は、職場からの運動を基軸に、都労連6単組の団結を固め、要求実現まで闘います。

以上

 2015年10月16日
 東京都庁職員労働組合

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