2014都人勧特集号
10月9日、東京都人事委員会勧告 例月給は15年ぶり、特別給は7年ぶりに引き上げ
国に追随、労使交渉介入の不当勧告
「総合見直し」により地域手当引き上げ・給料月額引き下げ
監督職見直し「課長代理級職」設置、昇給区分の見直しに言及
10月9日、東京都人事委員会は、都議会議長と都知事に対して、東京都職員の給与に関する勧告等を行いました。給与については、15年ぶりに例月給を、7年ぶりに特別給をそれぞれ引上げとしましたが、一方で、給与と地域手当の配分変更、労使交渉中の監督職制度について「課長代理級職」設置などを勧告しました。また、再任用職員の給与水準の抜本的改善は、見送られました。国に追随し、労使交渉に介入する都人事委員会の姿勢は、断じて容認できません。不当な勧告の押し付けを許さず、賃金・労働条件改善を目指して、闘い抜きましょう。
2014年東京都人事委員会勧告に対する都庁職の見解と態度
1 全国的状況と取り巻く環境について
8月7日、人事院は、「平成26年国家公務員の給与等に関する勧告」等を行った。
その内容は、例月給については1、090円(0・27%)、特別給については0・17月民間の支給実績が上回るとして、例月給平均0・3%、特別給0・15月の増額改定となっている。例月給・特別給共に2007年以来の引上げ改定となった。また、「給与制度の総合的見直し」に関わっては、民間賃金水準の低い12県を基準とし、俸給表水準を平均2%引き下げるとともに、地域手当の給地区分及び支給割合を見直すこととしている。
今年の人事院勧告をめぐる情勢は、震災復興予算の確保を目的とした「国家公務員給与の臨時特例減額」が3月31日をもって終了し、2013年度に講じられた「地方公務員給与に係る地方交付税の減額算定」が行われなかったことが挙げられる。
加えて、2013年参議院選挙における自由民主党の勝利により与党に圧倒的有利な国会情勢となり、その結果として「自律的労使関係制度」に一切踏込まない国家公務員法の改正が強行された。これにより、新たな人事行政機関として内閣官房内閣人事局が設置され、労働基本権の制約とその代償措置としての人事院勧告制度は継続されることとなった。
しかし、この「給与制度の総合的見直し」勧告は、地方交付税及び義務教育費国庫負担金の削減を通じて、地方の公務員及び教員の給与削減を狙う、きわめて政治的かつ不当なものであり、人事院はその役割を完全に放棄していると言える。
この様な状況において、14確定闘争での第一の課題は「給与制度の総合的見直し」との対決であり、第二の課題が例月給・特別給の引上げとなった。また、定年延長を基本とした雇用と年金の確実な接続、慢性的超過勤務の縮減、職場環境改善等多くの課題が残っている。
10月7日、国は公務員給与の取扱いに関する閣議決定にあわせて示された総務副大臣通知に於いて、地方公共団体に対し国との制度的均衡を図る、地方公務員給与の総合的見直しによる総人件費の抑制を強く迫っている。
今次確定闘争は、このこととの正面からの対決となっている。
2 東京都人事委員会勧告の概要について
10月9日、東京都人事委員会は、都議会議長及び都知事に対して、「職員の給与に関する報告と勧告」と「人事制度及び勤務環境等に関する報告(意見)」を行った。
勧告の概要は、例月給の公民較差を521円(0・13%)とし、平均改定率0・1%の引き上げ、特別給は、民間の支給割合が4・21月であり、0・25月の引上げを行うとしている。給料月額は15年ぶり、特別給は7年ぶりの引上げとなった。
その結果、年収で約11万円の増とされている。
給与月額と地域手当の配分変更に関しては、地域手当の引き上げ(18%→20%)と給与月額の引下げを併せて行うとしており、引下げは都の問題意識に基づきメリハリをつけて実施するとしている。この実施時期については、国と異なり2015年4月1日から単年度で対応することとしている。
新たな監督職の職務の級(課長代理級職)の設置については、現在の係長級職と課長補佐級職を廃止し、新たな職務の級を設置するとした。同時に、専門性を基軸に据えた「複線型人事制度」の具体化の検討に言及している。
一方、再任用職員の給与水準の改善については具体的には一切示されていない。任期付採用制度の活用範囲の拡大について、多様化する行政需要や時限的な事務量の変化等にも柔軟に対応できる採用形態として、活用範囲の拡大を具体的に意見として述べている。
これまでの労使交渉で争点となっていた昇給制度については、国や多くの他団体で業績等に基づく昇給判定における最下位区分は「昇給なし」であり、都の「標準4号昇給」の見直しの必要性に言及し、今後の昇給のあり方を検討するとしている。
諸手当については、国と歩調を合わせ、単身赴任手当の増額(23、000円→30、000円)、管理職員特別勤務手当の新設のみに止まっている。
また、「今後の課題」として、職務給のさらなる進展、能力・業績を反映した給与制度のさらなる進展、高齢期雇用の動向等を見据えた世代間の給与配分のあり方、生活給的・年功的要素の抑制、行政職給料表(一)以外の給料表における給与水準の検討をあげている。
「人事制度及び勤務環境等に関する報告(意見)」では、新たな時代にふさわしい人事制度の構築として、有為な人材確保に向けた採用PRの戦略的展開、「課長代理職の設置」、一般職としての非常勤職員の活用の検討、専門性を基軸に据えた複線型人事制度の具体化の検討などを列挙し、知識・経験を有するベテラン職員の活用にも言及している。
3 東京都人事委員会勧告の内容と問題点について
1.給料月額と特別給
給料月額の公民較差は521円(0・13%)であり、国(1、090円、0・27%)及び特別区(809円、0・20%)を額・率ともに下回る内容となっている。
一方、特別給は0・26月の公民較差を認め、国(0・17月)を上回り特別区(0・27月)と同等であった。これは、直近一年間の民間の支給実態を調査し、比較したものである。
改定の内容としては、行政職給料表(一)について平均改定率0・1%としてすべての号給で引上げ、2類、3類の初任給は給料表の引上げ改定に応じ見直し、1類Bは据置(国の総合職と同様の扱い)、その他の給料表については、行政職給料表(一)の改定内容を基本に改定するとしている。また、特別給については、年間支給月数を0・25月引き上げ(再任用職員は0・10月)となるが、全て勤勉手当として引上げるとしている。
例月給については、消費税増税による物価上昇分はおろか特別区・国を下回る引き上げ幅となった。このような民間水準や職員の生活実態を精確に反映できない調査結果により行われる勧告は、長年にわたって我慢を重ねてきた職員の期待に応えたものとは言えず、不当な政治的勧告である。
特別給についても、東京に本社のある大企業が地方より早く「アベノミクス効果」の「恩恵」を受けたものであり、その名のごとく一時的な造られた好景気の産物である。企業の業績・景気変動により増減する不安定な収入に一喜一憂するわけにはいかない。我々が第一に求めているのは、首都東京の生活実態を反映し、組合員の頑張りに応える例月給・特別給の改善である。
2.給料月額と地域手当との配分変更等
勧告は、都の職員給与が給料月額と諸手当の給与総体で民間の給与水準との均衡を図っていることから、地域手当の引上げと給料月額の引下げは一体のものであるとしている。
これは、はじめに地域手当の引上げありきの論法であり、そもそも地方自治体である東京都にとって、国の地域手当は全く関係もないしその必要もない。国や他団体との制度的均衡をおもんばかる前に、国に追随することによる23区部・多摩地域勤務職員と島しょ・都外公署勤務職員との賃金格差という矛盾の拡大に目を向け、都労連要求に沿って直ちに本給への繰り入れを行うべきである。
同じ自治体で2割の差が生じる制度は異常であり、退職金・年金の減額にも直接影響する本給引下げは許せない。
また、地域手当引上げに伴う本給引下げについては、「都の問題意識に基づきメリハリをつけて実施」すると言いながら、1級・2級の高位号給に的を絞り引下げ幅を大きくしたことは、これまで長年にわたり都政の第一線で都民サービスの維持・向上に奮闘してきた組合員に対し無礼極まりない仕打ちである。これは国の「世代間給与配分の見直し」への追従であり、国に先駆けて給与カーブのフラット化を進めてきた東京都には不必要なものであり到底認められない。
3.新たな監督職の設置と給与
都当局は、昨年度末の3月27日の都労連との専門委員会・小委員会交渉の席上、「監督職制度は、組織と任用の乖離などに課題認識を持っており、監督職の役割や任用実態などの協議を進めたい」と表明し、以降、各課題での交渉場面において監督職制度の見直しの必要性を強調してきた。
そもそも組織と任用の乖離は、職務遂行上の必要性や人事管理上の結果として存在しており、監督職制度を見直すのであれば、複雑で困難な行政需要に日々対応している係長級の処遇改善こそ行うべきである。
また、極めて重大なことは、現在都と都労連との間で交渉中の事項に対し、労働基本権を制約した代償措置として中立的立場が求められている第三者機関としての人事委員会が、当局の論調そのままに介入したことに断固とした抗議をしなければならない。
ましてや、一方的に3級と4級を廃止し、その中間に新3級の給料表まで勧告の中に持ち込んだことは言語道断である。
職場実態を全く理解していない「課長代理級職」新設勧告は、職場の混乱と業務の停滞を招き、引いては都民サービスの劣化を招くものであると指摘する。
監督職の任用数増、任用資格基準の改善、処遇の改善、一般職への専門職導入による複線型人事制度の充実こそが必要であり、「課長代理」制度でないことを断言する。
4.高齢期雇用制度と再任用職員の給与
雇用と年金の接続は、既に無年金期間の拡大が進んでいる状況の中で、労使にとっても避けて通れない課題である。
しかし、今回の勧告の中では、定年前職員と同様の給与改定のみが示される結果となっている。
勧告は、高齢期雇用のあり方については、継続して検討していくことが必要とし、「高齢期雇用の動向等を見据えた世代間の給与配分のあり方」を「今後の課題」とするなど、切実な要求に背を向け先送りとした。
都当局とのこれまでの交渉の中で、50歳台前半からの給与構造を含めて検討の素材としていることを見れば、65歳までの生涯賃金の抑制を狙っていることは明らかである。
今後、監督職も含めたフルタイム再任用職員の増加が見込まれ、現役世代同様の本格的業務を担っている以上、適切な処遇の改善は当然の要求である。
また、昨年の調査による民間での無年金再雇用者への配慮を75%の事業所が行っていない実態や、民間における比較対象サンプルの少なさが事実であるならば、そもそもの考え方を整理し、現実的対応を検討すべきである。
高齢期雇用制度は、働く側からだけの要請ではない。都庁における職員年齢構成のもとで、その知識と技術は大切な財産として今後も活用していかなければならない。
5.その他の制度改正等
人事院勧告では、通勤用具利用者のうち自家用自動車での通勤に対する通勤手当を民間支給実態に合わせ増額するとした。消費税増税・円安によるガソリン小売価格の高騰に対して、その額は不十分であるが当然のものである。
しかし、東京都人事委員会の勧告では一切の言及がない。
島しょの地域手当支給対象外による賃金格差や物価高、障害者の通勤用具利用への合理的配慮として、当然の改善(増額)要求である。今後都労連交渉の中で、都庁職として強く求めていく。
超過勤務の縮減については、管理監督者が中心となり、業務効率化や業務配分の改善に取り組むとしている。ことの本質はそのようなことではなく、そもそも業務量に見合った人員が配置されていないことに最大の要因がある。都庁職は、36協定・超勤縮減の交渉の中でもこのことを強く主張し、当局に改善を迫ってきた。
超勤縮減に関連し、「女性の活躍促進の観点からも、働き方そのものの検討が必要」と記述しているが、超勤縮減と女性の活躍促進を関連付ける発想こそが問題である。家事、育児、介護などの家庭責任を男女が共に担う社会の実現のために超勤縮減があり、そのことの実現がワーク・ライフ・バランスの確立につながるのである。
超勤縮減と女性の活躍促進を短絡的に結び付けても問題の本質を解決できないことを指摘する。
メンタルヘルス、パワー・ハラスメント、セクシュアル・ハラスメントに関しては、引き続き意識啓発や予防に向けた検討が必要としているが、もはや検討の段階ではなく、具体的対処の問題である。責任を持った実効性ある対策の確立を強く求めていく。
4 都庁職の態度
今次賃金確定闘争は、国による「給与制度の総合的見直し」の地方への強要や安倍政権の公務員賃金削減攻撃の中で、厳しい環境での労使交渉による自主決着を目指す闘いとなっている。
また、現在、労使協議の事項について人事委員会の介入的勧告のもとで、より厳しさを増している。
勧告内容は多岐に渡り、勧告事項以外の懸案事項また付随する要求事項等解決すべき課題は山積している。 とりわけ、都庁職課題としての人事制度の見直しに関しては、各職場実態に応じて継続的に専門性を活かし都政に貢献できる仕組みを確立し、その知識と技術を次世代に引き継ぐための専門職層の確立こそ急がなければならない。
団塊世代の退職以降、真に求められることは、職場を支えてきた多くのベテラン層のモチベーションを高め、都政の第一線での活躍の場を整えるため、都庁職が以前から求めてきた複線型人事制度の検討を早急におこなうことである。
都庁職は、職場からの運動を基軸に、都労連6単組の団結を固め要求実現まで闘うものである。
2014年10月10日
東京都庁職員労働組合 |