勧告の解説と問題点
■公民較差を精確に反映しない 不当なマイナス勧告
2013年春闘の民間賃金相場は、定昇分を考慮しても昨年比で微増となっています。
また、全国を100とした場合の東京の指数は122・3で、国の人事院報告でも微増(76円、0・02%)となっており、多くの政令都市でも「据え置き」になっているにも関わらず、都においてマイナス勧告が出されることは、精確に公民較差が反映されたものとはいえません。
その上、国公の職員の平均年齢(43・1歳)が、都の平均年齢(41・5歳)を上回っており、「ラスパイレス」比較をことさら強調していますが、職員構成の差異を考慮してもマイナス勧告はあり得ません(表1〜3)。
今回、比較対象として宿泊業、飲食サービス業等を追加したことの影響も大きいと考えられますが、都人事委員会は明確に答えていません。
総体的に今回の都人事委員会勧告は、意図的かつ政治的にマイナス勧告を行ったものといわざるをえません。
■再任用の給与水準に言及せず
人事院は、本年の報告において、「『平成26年職種別民間給与実態調査』において公的年金が全く支給されない再雇用者の給与の具体的な実態を把握した上で、平成26年4月における再任用職員の職務や働き方等の人事運用の実態等を踏まえつつ、必要な検討を進める」として再任用職員の給与水準などに関して来年に持ち越しました。
都人事委員会は、「国の動向を注視するとともに、民間における対応状況、都における実情等も十分考慮して、給与水準、給与制度等について検討していく」として言及をさけました。
一方で、「民間における再雇用者(公的年金が一部支給されない者)の給与水準の取扱い」を資料として掲載しています。
しかし、民間における人事制度と公務員の人事任用制度とは大きな違いがあり、単純な比較については問題があると言わざるをえません。
■またしても1、2級職で給与 カーブのフラット化を実施
都人事委員会は、「1級及び2級は、上位級の昇給額とのバランス等を考慮し、昇給カーブを是正するため、一部において強めの引下げ」の改定内容を明らかにしています。
給与カーブのフラット化による給料表引き下げは、2005年(最大1・9%)、07年(最大△1・7%)、08年(最大△1・8%)、10年(最大△1・5%)、11年(最大△0・4%)と国に先駆けたフラット化を行い、管理職を優遇し、現場を支えてきた中高齢層職員には「我慢しろ」の一点張りであり、将来にわたり退職金や年金に大きな影響をあたえています。
そして、今回11年に引き続いて1級、2級の一定層を対象に実施しています。
■分限処分の厳格化を求め 「降給」制度導入に言及
地方公務員法上、分限処分については、「免職」「降任」「休職」「降給」の種類があり、都の場合「降給」が導入されていません。報告(意見)は「人事制度、給与制度を効果的に機能させるために、降給の導入が適当」としています。
また、13年3月29日の「地方公務員の雇用と年金の接続について」(技術的助言)を踏まえ、再任用しない者の要件として、地方公務員法に規定する欠格事由及び分限免職事由への該当に固執し、能力・実績に基づく信賞必罰の人事管理の徹底の必要性を強調しています。
都当局は、この内容と全く同様な主張を繰り返してきました。勧告前日の都労連交渉でも『国は09(平成21)年度に「降給」の制度化を行っていることなどから、成績不良者に対する勤務成績に基づく給与引き下げの制度を民間同様に導入すべきだ』とし、懲戒処分の昇給見直しにも言及しました。
人事委員会はもはや使用者側機関に堕したものといえます。
■「複線型人事制度への転換」について
都庁職は、これまで、行政各区分での専門性の確保と継承を図るため、誰もが一定の級まで昇格する昇任・昇格制度の改善を求めるとともに、複線型人事制度としてスタッフ職を設置し、現場での経験により、蓄積された能力がより処遇に反映する制度を求めてきました。
一方、人事委員会の意見においては、専門性の確保・育成と、採用年齢・採用区分・経験年数に関わらず職員の一人ひとりの持つ知識、能力、経験に最もふさわしい職で活用できる制度を構築するため、「これまでの人事制度に加え、専門性を機軸に据えた複線型人事制度に向けた検討を進めていく必要がある」としています。また、専門性確保のための、計画的な職員配置・昇任を含めた制度設計についても言及しています。
都庁職は、職場の専門性や継続性を担っている職員が大事にされ、誰もが力を発揮できる、職場全体が元気になる人事制度を追求しています。今後も「複線型人事制度」の具体的なあり方について、人事委員会・当局に対して一層取り組んでいく必要があります。
【都庁職賃金部作成】
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