健康 メンタルヘルス講座(49)
心の健康問題を予防する
(3)再発を予防する
これまで、「1次予防」「2次予防」についてお話してきました。今回は、「3次予防」、再発の予防について考えてみます。
うつ病の病理や発症の原因については、徐々に知見が得られてきていますが、現時点では明確な結論が出ていないのが現状です。しかし、症例の積み重ね等からは、環境から様々なストレスを受け、そのストレスに対処しきれなくなると自律神経のバランスが崩れるなどの症状が出現し、徐々に深刻なうつ病へと進行していくという一連の過程が一般的であると言えます。
「ストレスに対処しきれなくなる限界」は個人により違いがあり、ストレス解消が上手な人苦手な人、あるいはストレスの感じやすさなど、様々な要因が考えられます。
うつ病から回復し、仕事に復帰していくとき、環境から受けるストレスが、発症した時と同等であった場合、再発する可能性は高くなることは容易に想像できます。療養と薬物療法で症状が治まったとしても、再発を予防するための対処がなされていなければ、真の意味での問題の解決につながったとは言えません。
再発予防には、二つの面からのアプローチが必要となります。一つは環境の調整です。職域においては、業務の調整や適切な人員配置などであり、病気を単に一個人の問題ではなく組織全体の問題としてとらえ、解決していこうという理解と姿勢が必要となります。
そして二つ目は、個体側の要因へのアプローチです。現在、患者さんが持っている行動パターンや物事のとらえ方、考え方の傾向を見つめなおし、自分の力で修正をしていく手助けをする認知行動療法など、薬物療法以外の治療法の有効性が注目されています。単に薬を飲んで症状を改善させるだけではなく、発病に至った過程を繰り返さない治療も、再発予防のためには有用であると言えます。
心の病気は、発症に至るプロセスには様々な要因が絡んでいます。このため、再発予防に対しても、様々な視点からの対策が必要となるのです。
(産業医の立場から 富田 絵梨子)
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