健康 メンタルヘルス講座(48)
心の健康問題を予防する
(2)早期発見のポイント その2
うつ病の症状とは
前回は、ストレスからの心身の不調の初期のサインについてお話ししました。ストレスからの心身の不調は、程度こそあれ大多数の方が経験したことがあるのではないかと思います。一時的には不調に陥ったとしても、ストレス源が軽減したり、適切にストレス対処行動を行うことなどにより、不調は自然に解消していくことがほとんどです。しかし、ごく一部、徐々に深刻な症状に進展し、うつ病に陥ってしまう事例があります。それでは、「これは放置するとまずいな」という症状は、どのように見分ければ良いでしょうか。
うつ病では心身に様々な症状があらわれますが、特に重要な二つの症状があります。ひとつめが、「ほとんど一日中、ほとんど毎日の抑うつ気分」です。嫌なことがあったり疲れたりすると、誰でも気持ちが落ち込んだり憂うつな気分になったりするものですが、その気分が2週間以上、常に続いているということはなかなかありません。このような時には注意が必要です。ふたつめの症状が、「興味や喜びの減退」です。周りの全ての物事に興味がわかず、また楽しいと感じられなくなってしまいます。本人にとって本来は楽しいこと、やる気のわくこと(趣味や家族との団らんなど)にも関心が持てず、多趣味で活動的であった人が休日も家でごろごろするだけになったり、飲み会が好きだった人が全く付き合わなくなったりといった変化が出てきます。ここでのポイントは、「ほとんど全ての活動に対して」興味を失うということで、これまでストレス解消法だったことすら苦痛になってしまうのです。心身の不調感とともに、この二つの症状があらわれて、2週間以上続く場合には、うつ病を疑ってみる必要があります。うつ病の場合には、もちろんストレスマネージメントも重要ですが、時には積極的な休養や薬物療法など、専門家による治療が必要な場合もあります。なるべく早期の段階で発見し、治療を開始することが、病気の重篤化を防ぐことにつながります。「もしかして」と感じたときには、このふたつの症状を確認し、疑わしい時には早めに専門家に相談していくことが大切です。
(産業医の立場から 富田 絵梨子)
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