健康 メンタルヘルス講座(46)
心の健康問題を予防する
(1)病気の発生を防ぐ
職場での健康問題への対策を考えるときには、病気になってしまってからそれを治すことより、病気になりにくい心身を作り、病気を予防し、健康を維持することに主眼をおいた「予防医学」が重要となります。
予防医学では、予防を1次予防、2次予防、3次予防の3段階に分けて考えます。一般に想像する「予防」のイメージとは若干異なるかもしれませんが、1次予防が病気の発生の予防、2次予防は病気の早期発見、3次予防は再発予防と考えます。今回は、1次予防について考えていきたいと考えます。
心の健康問題についての1次予防は、個人面からはストレスとのうまい付き合い方を身につけ、病気に陥らないようにすること、環境面からは労働環境を整えて業務でのストレスの軽減に努めることなどが挙げられます。
先行研究などからは、職業性ストレスを強める要因として、「(仕事の)量的負荷」「(仕事の)質的負荷」「対人関係の困難」職業性ストレスを緩和する要因として「裁量度」「達成感」「同僚上司の支援」があげられています。
このうち最も分かりやすい要因は、仕事の量的負荷、特に労働時間であると思います。
2006年4月1日から施行されている労働安全衛生法では、長時間労働への医師による面接指導制度が定められています。面接指導は時間外労働時間が100時間を超過し、疲労の蓄積が認められる労働者が申し出た場合に行われます。事業主は面接指導後に医師の意見を聴取し、事後措置の実施が必要になります。この面談には、長時間労働により心身の健康を損なっている方を早期に発見するという目的もありますが、病気の発生を未然に防ぐためにも有用であると思います。
健康を害していないのに医師と話をすることに気後れや抵抗を感じる方もおられるかもしれませんが、健康な状態を維持するためにこのような制度を積極的に利用するという発想も、過酷な労働環境にあるほど必要となってくると思います。
(産業医の立場から 富田 絵梨子)
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