健康 メンタルヘルス講座(45)
コミュニケーション再考
こころとからだの健康
仕事上でのストレスには、さまざまな要因が絡んでいることがほとんどです。産業医として色々な立場の方と関わっていくと、仕事の量や内容の難しさなど、比較的分かりやすい原因でストレスを受けている方たちがいる一方で、外から見ていたのでは分かりにくい要因で、ストレスが強まってしまっている印象を受けることがあります。
特に気になることが多いのが、職場のコミュニケーションの不足です。
そこで今回は、コミュニケーションについて改めて考えてみたいと思います。
「話を聞く」スキルとして、カウンセリングマインドがよく紹介されますが、相手に関心をもち注意深く接することで、話の内容だけではなく、相手が訴えたいこと、感じていることを察知することが、その根本にはあると思います。
私の知人は、自分の赤ちゃんの泣き声から、子供がおなかが空いているのか、オムツがぬれているのかといった大体の予想がつくといいます。
赤ちゃんは自分の不快な状況を、言葉にして伝えることはできません。しかし、「泣く」という一見同じに見える行動からでも、常に注意深く見守っているお母さんは、違ったメッセージを受け取ることができるのです。
また、「伝える」技術としては、アサーションが最近注目されています。これは、自分の感情や考えを押さえつけるのではなく、あるいは相手に自分を押し付けるのでもなく、自分も相手も尊重したやり方で、率直に自分の感情や考えを表現するという考え方です。
コミュニケーションの基本は「相手に関心をもつこと」であると思います。かつては、「ノミニケーション」に代表されるように、仕事外でコミュニケーションの円滑化が図られていた側面もあり、余裕がなくなったこともコミュニケーションの低下の一因にあることは否定できません。
しかし、多忙な現在の職場でも、より有効なコミュニケーションをとるために工夫していくことは可能なのではないでしょうか。
そしてそれは、職場全体の健康度を上げることにつながっていくのではないかと思います。
(産業医の立場から 富田 絵梨子)
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