健康 メンタルヘルス講座(43)
ストレスと付き合う
ストレス源のとらえ方
これまで2回にわたって、ストレスと付き合っていく上での考え方をお話ししてきました。これらの観点から、避けられないストレスに効果的に対処する方法を探ってみましょう。
まず、ストレス源のとらえ方が重要です。例えば、急に割り振られた大きな仕事に対して、「自分だけに降りかかってきた不幸」と否定的に捉えてしまうと、仕事は非常に辛いものになるだけでなく、課題を過大評価してしまい、受け入れ可能かの冷静な判断ができなくなる可能性もあります。「今これをやっておくことで、自分のスキルアップにつながる。将来必ず役に立つだろう」などと自分なりに意味づけをし、プラスに捉える考え方ができるようになると、同じ仕事をするにもストレスを軽減できます。その上で、その仕事が受け入れ不可能である、あるいは一人ではやり遂げるのが難しそうだと判断すれば、業務の軽減を求める、仕事の補助となる人員の支援を申し出るなどの働きかけを行う必要もあるでしょう。
仕事にとりかかるときには、仕事を終えるまでの段取りを組み立て、最後までの過程で起こりえる状況を予測します。仕事の過程で実際に問題が起きたとき、それが困難なものであっても、すでに予想されていたことだと思えるかは重要です。人間は、自分が予期せぬ事態が起こったときに大きなストレスを感じるからです。そして、自らの力で問題を解決できた、仕事を達成できたという経験を積み上げていくことが、ストレスの対処能力を上げていく、つまり困難に立ち向かう力を上げていくことにつながるといわれています。
仕事に関しては、うまくいって当たり前、失敗は許されないという発想になりがちですが、うまくいった経験、いわゆる「成功体験」を積み重ねることがより大きな課題をクリアできることにつながります。自分自身、あるいは部下など周囲の人に対しても、プラスの評価を還元することは、ストレス対処の観点からも大きな意味のあることだと言えるでしょう。
(産業医の立場から 富田 絵里子)
|