こんな職場、こんな仕事(第59回)
東京の農林技術の拠点 チームワークのよさが第1です
経済支部 東京都農林総合研究センター
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左から西澤さん、荒木さん、大林さん、藤澤さん |
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いちごは良品・下物の区別と重さを測る |
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いちごの糖度や酸度などを調査する |
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とうもろこしの播種作業 |
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香りのする「はる香ミディ」など3種が並ぶ |
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広い場内を軽快に移動する |
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土壌の分析をしています |
西立川から徒歩8分の東京都農林総合研究センターを訪ねました。農業試験場という名で地域にも親しまれていましたが、2005年に農業試験場・畜産試験場・林業試験場の3場が統合され、東京都農林総合研究センターが設立されました。センターは財団法人東京都農林水産振興財団に置かれています。場内を案内していただいたのは、主任研究員で分会長の荒木さんです。
都内の現場と試験研究が一体
仕事は天気とにらめっこ
センターでは、都内現地からの要望に応えて、農薬に頼らない栽培技術の開発、品質、収量の高まる栽培技術、有望品種の選定・作出など様々な研究をしています。
毎日の調査や作業は、天気を予測して先を読みながら行わなくてはなりません。この辺の判断は、長い経験に裏打ちされ、畑のクセを知りぬいた現業職員の力が大きいとのことです。
訪れた3月25日、野菜研究チームではハウス栽培のいちごの収穫日でした。ハウスでは、2人1組でいちごを一粒づつ、良品・下物の区別と重さを測っていました。収穫したイチゴは、場内にある調査室に運び、糖度や酸度などの品質の調査を行うとのことです。とうもろこしの播種作業では、帯状のシート(マルチ)の穴に中腰姿勢で種を播いていました。収穫は6月下旬だそうです。
きちんと手入れされた場内の樹木や垣根の手入れは自前でするとのことです。
緑化森林チームでは、垣根や街路樹に適している樹木を探求することも課題です。
果樹チームでは、味に定評のあるブドウ「高尾」やカキ「東京紅」を育成してきました。
仕香りの良いシクラメン
ハウスには、色とりどりのシクラメンが並んでいて、入るとかすかに香りがします。これがセンターで育成された香りシクラメンの「はる香ミディ」です。そのほか2品種がすでに商品となっているそうです。
また、バイテクチームでは、花粉の少ない杉と良品の杉とをかけ合わせた杉を育成中で、シャーレで組織培養していたり、杉の実生苗が部屋いっぱいに並んでいました。研究の成果が現れて、花粉症に効果のある杉ができることも夢ではありません。
病害防除の研究も
病害防除についても多くの研究をしています。例えば、直売所で人気が高いエダマメですが、防除が困難な「ダイズシストセンチュウ」の発生地域があり、センチュウの密度低下をはかるため、現地指導を行っている農業改良普及センターと連携して、薬剤の効果比較試験を行い、効果的な方法が確認できました。このエダマメのダイズシストセンチュウを研究しているのは、書記長の大林さんです。
慢性的な人員不足解消を
都派遣・財団固有・非常勤固有・アルバイト等複雑な雇用体制で職員が従事しており、それぞれ問題をかかえています。「農業試験場が財団に移管されて4年目が経過しました。非常勤固有職員の場合、雇用条件の不安定さから、将来の不安を訴える声が聞こえています。都派遣では、財団との契約で派遣期間は3年ごとに更新されます。財団が職員の要望を尊重するよう取り組みたい」という荒木さんです。
退職したら補充を
現業職の退職不補充が大きな問題です。現場では、何年もかかって習得する技術が多く、補充がないと技術水準の維持が難しく、結果として試験研究が成り立たなくなるのです。都の退職不補充方針で、人員がつかない分を現場で支えるのは非常勤固有、アルバイトです。現業職の退職者の補充をとの強い思いが語られました。また、財団固有職員の労働組合がなく、賃金や労働条件を固有職員全体で交渉する場を確保することも、分会の課題です。
農林総合研究センターは、東京の農林技術の拠点として、都民の豊かな食とみどりのために日夜奮闘する職場です。 |