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伊ヶ谷地区海上より見る三宅島
伊ヶ谷地区海上より見る三宅島 撮影2003年4月10日三宅支庁提供
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都庁職新聞
 

こんな職場、こんな仕事(第57回)

ひとりの死から万人の生へ 死因究明を追求する

世界にひとつしかないモデル 監察医務院の拡充を

       衛生局支部 監察医務院

左から福永院長、中谷事務長、景山分会書記長
左から福永院長、中谷事務長、景山分会書記長
監察医務院
監察医務院
病理研究用に縦に長い特殊なブロック
病理研究用に縦に長い特殊なブロック
ガスクロマトグラフィー(GCMS)での薬毒物検査
ガスクロマトグラフィー(GCMS)での薬毒物検査
増える検体量のため病理検査も機械化で対応
増える検体量のため病理検査も機械化で対応
 1月下旬に、東京都監察医務院を訪ね、福永院長、中谷事務長、景山分会書記長にお話をうかがいました。福永院長は開口一番、「みんな、すごくがんばっているんです。どうかよく見学していってください」と歓迎してくれました。

戦後の惨状と行政の役割としての
「死因究明」


 監察医務院は1948年に開院され、今年61年目を迎えます。成り立ちは1945年朝日新聞に“始まっている「死の行進」、餓死はすでに全国の街に”と報道され多くの人が飢えと寒さで亡くなりました。
 GHQはこれらの人々の死について死因究明もしないことは問題があると申し入れをし、それを受けた都に監察医務院の前身ができました。
 1949年には「死体解剖保存法」が公布され、この法律を元に監察医制度が東京23区に続き横浜・名古屋・大阪・京都・神戸・福岡の7大都市に広げられましたが、60年の歩みのなかで、自治体が直接運営する監察医制度の実施地域は東京都、大阪、神戸となりました。

もの言わぬ患者に最期の医療

 警察からの検案要請を請け、監察医と監察医補佐、運転手(委託)の3名のチームがが6班体制で現場に向かいます。監察医が検案し、死因不明の場合、犯罪性があれば司法解剖に、そうでなければ監察医務院で行政解剖を行います。〔07年検案実績13、154件一日当たり36件〕
 解剖の仕事は監察医・臨床検査技師・監察医補佐3名で1班、1日3班体制です。遺体を預かり、遺族対応をするのは監察医補佐の役割です。
 もの言わぬ患者さんに対して最期の医療を行うという仕事はおのずとチームワークが必要で、危険もともなう仕事です。〔07年解剖実績2、647件一日当たり7・2件〕
 解剖室内は陰圧になっており、扉を開けても外に空気がもれない仕組みです。「現在は感染症に対応した空調機器や解剖台になりましたが、過去においては結核などに感染したこともありました」と話すのは、臨床検査技師で分会書記長の景山さんです。

検査結果は研究成果に

 病理組織検査は20日から40日かかります。検体のホルマリン固定からパラフィン浸透・包理後、検体を薄く切りスライドグラスに貼付していきます。「死因究明」の作業が続きます。
 原因不明の突然死の死因究明や病態の解析は、医学研究に大きく貢献しています。乳幼児のうつぶせ寝の危険性やエコノミー症候群研究、パロマのガス器具事件などで実績をあげています。肺動脈血栓塞栓症(エコノミー症候群)は、なぜ起こるのでしょうか。塞栓源の9割は下肢深部静脈で、なかでもヒラメ静脈でできた血栓が発生部位として重要だということが監察医務院での集団研究によってわかりました。ヒラメ筋の研究成果はすぐ医療の現場に取り入れられました。その頃、多摩老人医療センターにいた中谷さんは「手術後の血栓予防のため、緊急にフットマッサージ機器を整備し対応しました」と当時をふり返ります。

 監察医補佐の定数増を

 いま、監察医制度を全国に広げていくことが求められます。「死因の種類別割合及び主要死因」というデータは、東京都と監察医制度がない他県で数字に違いがあります。データの解析から予防医学へと向かうのですから、データそのものがとても重要です。
 また、補修教育のために年間、医師・看護師・警察官など延べ5000名の研修を受け入れている監察医務院。高齢化により死因不明の病死や急性死・事故死等の増加により、監察医制度と法医学を学んだ医師、臨床検査技師、監察医補佐の役割はますます重要です。
 景山さんは「監察医補佐の新規採用は10年ありません。39歳が一番若い。技術の継承、跡継ぎをつくることが求められています。短期間で習得できるものではなく、臨床検査も10年かかります」といいます。
 「ひとりの死から万人の生へ」を合い言葉に365日奮闘する職場です。

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