健康 メンタルヘルス講座(番外編)
今年1年を乗り切る
とっておきのメンタルヘルス知識
今回は、一般的にわれわれがストレスを受けるとどうなるのか?というお話です。
まず図を見てください。私たちのこころが丸いボールで表されています。ストレス(圧力) が加わると変形するため、なんとかもとの形に戻そうとします。これがわれわれのもつストレスに対する反応です。図のように3パターンあります。
抽象的な話ですので、ひとつ例を出します。
Aさんは、本を読むのが嫌いです。それは本を読もうとすると〈はじめに〉から〈最後に〉まで順を追って読まないといけないから、途中で挫折するのだそうです。
そんなAさんは厚い本を読む必要がなければ、特にそのことでストレスは感じませんが、本を読む必要性が生じたとき、彼にはストレスが発生します。
1 跳ね返す(a欲求不満耐性)
ストレスに対して真正面から向かっていくスタイルです。Aさんの場合は「嫌だけど読むしかない」とがんばる行為です。ストレスに立ち向かうわけですから非常に大きなエネルギーを使います。元気なときは対応できますが、疲れているときやこころに余裕がないときには、十分押し戻すことができません。こころも消耗品ですから、このやり方でストレスと常にたたかっていると、いずれこわれてしまいます。
そこで以下の二つが非常に重要となってくるのです。
2 逃がす(b自我防衛機制)
物事を柔軟にとらえるというものです。例えば、「大事そうなところだけ拾い読みすればいいかな」とか、「本は読まないと教養が身につかないし、チャレンジしてみよう」など、『やるしかない』以外の考え方を持つということです。嫌なことを、嫌だと思いながら行うことはストレスをさらに増大させます。逆に考え方を変えるとストレスは軽減します。
3 抜く(cカタルシス)
ストレスでパンパンになったこころがこわれないように、ガス抜きをするものです。例えばグチをこぼしたり、飲みに行ったり、映画を見て笑ったり泣いたりすることなどです。嫌でしかたがないうちは仕事ははかどりませんから、やめて好きなことをしましょう。すると少し頭がすっきりして仕事のスピードがあがるはずです(余談ですが、都庁のノー残業デーにはそういった意図も含まれています)。
さて、話は変わりますが研究からうつ病になりやすい性格が明らかにされ、その代表に、ねばならない℃v考をすべての生活に適応している方が知られています。
ただこの思考が必ずしも悪いといっているわけではありません。Aさんは「本は最初から通して読まなければいけない」という考えにとらわれていますし、みなさんも『期限の1日前には仕事を終えていなければならない』とか、『人にまちがいを指摘されてはいけない』などといった自分のねばならない℃v考を必ず持っているはずです。これはとてもすばらしいことです。ただいつもその考え方を適応していたら気が休まる時がありませんよね。
一般的にいわれるストレスに強い人たちは2、3の扱いが上手なのです。
柔軟な考え方や外的資源の有効活用も、これからのストレス社会で生きていくための非常に重要なスキルとなります。ときどき自分に「ねばならない思考≠ノとらわれすぎてないかな?」「どう考えたらストレスを軽くできるかな?」「息抜きはできているかな?」と聞いてあげることが、健康を保つ大きな鍵になるのです。
(産業医の立場から 宇佐見和哉)
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