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伊ヶ谷地区海上より見る三宅島
伊ヶ谷地区海上より見る三宅島 撮影2003年4月10日三宅支庁提供
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都庁職新聞
 

こんな職場、こんな仕事(第56回)

本は栄養のかたまりです
       教育庁支部 都立中央図書館

「製本室」の役割語る真野さん
「製本室」の役割語る真野さん
図書館はみんなの宝
図書館はみんなの宝
 有栖川宮記念公園のなかに100年の歴史を誇る都立中央図書館があります。蔵書は156万冊で、閑寂な環境の良さやスペースが広く使い安く、ファンも多いと聞きます。今回は、資料保全室(製本室)を訪ね、司書で本の修理に携わる真野さんにお話しをうかがいました。

技術の継承にむけ体制づくりを今すぐに

 国会図書館のほかには、製本作業をする図書館は中央図書館だけとなりました。鈴木都知事時代に、都の方針として「製本職」について定数ゼロが言い渡されました。当時は製本職の方が7名おりましたが、その後は製本職の方が退職されても、職員は補充されずにきています。今までその方達に依拠して、仕事を続けてきました。もう1年たつと継承できないという時に「製本をやってほしい」と真野さんに声がかかり、今にいたります。
 資料保全室(製本室)には担当係長(事務)の定数があるだけで、実際に作業を行うための定数はついていません。製本室の体制づくりは館にとっても、大きな課題です。

 


紙や本は劣化する これから業務が増えてくる

 

のりをていねいに塗り、本にはる、根気のいる作業だ(1)
のりをていねいに塗り、本にはる、根気のいる作業だ(2)
のりをていねいに塗り、本にはる、根気のいる作業だ
本を糸でかがる
本を糸でかがる
修理に使う道具
修理に使う道具

資料保全室(製本室)の仕事は
多岐にわたる


 図書館が図書館であるためには、利用者が必要とする資料を未来にわたり提供していくことが不可欠です。現在、都立図書館では、1998年度の「資料保存執行体制検討部会報告」をもとに取り組みを進めています。
 以前は製本・修理のみでしたが、現在は資料保存全体へと仕事の領域は確実に広がっています。かび対策、紫外線対策、保存のために手作りの箱をつくり本を収納する、酸性紙を使用した資料の劣化抑制処理(脱酸処理)など様々な資料保存の業務があります。
 都内の区市町立図書館や都立図書館職員を対象に研修も行っています。今年は和装本を含め6回の研修を開催しました。

困難な手作業は外注・委託ではできない

 真野さんは和装本の修理も手がけます。本をめくり、虫食いの部分に材質や色、年代など合う和紙を選ぶことが一苦労。選んだ和紙をちぎり、のりを塗り本にはる作業。小麦粉のでんぷんでのりをつくることから始めます。虫食いの状態にもよりますが、1頁に何時間もかかる根気のいる仕事です。いま現在、真野さんを含め4名(内嘱託員2名)が製本室で作業をしています。
 自治体や各団体から資料保全に関する相談も増えています。
 製本・修理は外注・委託すればよいという都の方針には無理がありました。引き受け手がなかったり、資料にとって適切な処置を施すには、培った技術を使い、自ら修理せざるをえないものもあります。

200年後も生きる本のために

 「ここにある本は、さまざまな困難のなかで生き延びてきたものです。200年生き延びたものなら、さらに200年300年がんばってほしい。そのために製本室があるんです」と真野さんは言います。
 敗戦前夜の西多摩郡に疎開させた本、民間重要図書の焼失をさけるために「買上疎開」された書物もあります。
 こわれた本や資料を読めるように蘇らせることに時間がかかろうとも、それを待っている人たちがいます。
 儲けではなく、公共サービスのために技術をつないでいくことが大切。「製本室」の灯を絶やさないでの思いは、多くの都民の願いです。

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