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こんな職場、こんな仕事(第51回)
歴史を閉じるな、存続させよ
病院支部 都立梅ヶ丘病院
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左から森松分会長、小松書記長、上部教宣部長、中村副分会長
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都立梅ヶ丘病院
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3月31日、梅ヶ丘病院を訪ねました。忙しいなか、迎えてくれたのは、森松分会長、中村副分会長、小松書記長、上部教宣部長です。「こども専門の精神病院が必要だ」という熱い想いで、1952年に松沢病院分院から独立し、梅ヶ丘病院はスタートしました。
地域に根ざした貴重な医療機関
梅ヶ丘病院は児童精神科の専門病院です。診療体制は、外来・入院部門、リハビリテーション部門、医療援助部門、こどもの精神保健相談室があります。入院中の児童には、青鳥養護学校の分教室が併設されています。対象疾病は、自閉症などの発達障害圏、強迫性障害などの神経症圏、統合失調症などの精神病圏、摂食障害、人格障害、虐待など多岐にわたります。心に病をもつこどもとその家族にとって、頼りになる治療が受けられる、全国的にも稀な子どもの心の専門病院です。
この10年間で新患数は3倍になり、発達障害をかかえるこどもさんの割合が増えています。
成長のうれしさ 分かち合うスタッフ
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ひとつひとつのカードをとりだします
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遊びも学習です
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庭の手入れもみなで行う
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こどもたちの生活や動作のカードをつくる
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手づくりで病院を支えた
院内は、木々の緑や土の香りなど、命の息づかいを感じます。2階建てで、8病棟264床の医療法定床があります。
看護師の中村さんと保育士の小松さんは梅ヶ丘病院を経て母子保健院へ、存続のたたかいと廃止で、梅ヶ丘へ戻りました。「梅ヶ丘病院の職員は白衣を着ない。仕事着に使うジャージとポロシャツが貸与被服です。子どもたちと地域に出かけることもとても大切な治療。白衣ではいちいち着替えなければ行けません。こどもたちにとって、入院前の生活の場と大きく違わない配慮が必要です。処置は少なく、身辺自立や、様々な活動をとおして自信を回復しながら社会的スキルを身につけられるように支援をしています。問題行動が改善し病状が安定すると、家庭や学校に戻っていきます。平均の在院日数は190日。退院後もデイケアや外来通院など長期的な支援が欠かせません」と語ります。
保育士の上部さんは治療教育部門で、幼児から思春期までの患者さんたちと様々な活動をしています。「一般的には年齢とともにいろいろな経験を重ねながら周囲の状況を理解できるようになりますが、梅ヶ丘病院で出会う子どもたちは様々のことに対しての理解の仕方に困難を抱えています。わかっていると思うことが実は理解していなかったりということも多々あり、私たち自身も子どもたちと同様葛藤の日々を送っています。一人ひとりにあった支援で子どもの行動に変化が見られたときは、この仕事にやりがいを感じます」と語ります。
梅ヶ丘病院では様々な職種(医師・看護師・保育士・OT・心理・ケースワーカーなど)がチームでかかわるのも大きな特徴です。
梅ヶ丘の廃止でなく小児精神の拡充を
石原都政は、都立八王子小児と清瀬小児と梅ヶ丘小児精神など3つの子どもの病院を、府中に建設中の「小児総合医療センター」に統合し、建設から運営をPFI方式とし、梅ヶ丘病院は廃止するとしています。97年の「都立病産院小児医療検討会」最終報告では、『梅ヶ丘病院の特性から単独の病院が望ましい』という結論でしたが、活かされていません。統廃合するマスタープランがでた03年より梅ヶ丘病院の存続を求め地域や家族会の皆さんと運動を進めてきました。3回の都議会請願署名数の合計は15万筆にも届きます。しかし12月都議会では不採択となってしまいました。
06年3月現在、全国で、こどもの精神専門の病床数は約千床。その4分の1を梅ヶ丘病院が担っています。厚生労働省もようやくこどもの心の診療の拡充に取り組み始めた今日、歴史ある梅ヶ丘病院を存続することが心を病む子どもと家族にとって大事なことです。
地域と連携しながら梅ヶ丘病院を創りあげてきた数多くのスタッフの気概にふれることができました。
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