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伊ヶ谷地区海上より見る三宅島
伊ヶ谷地区海上より見る三宅島 撮影2003年4月10日三宅支庁提供
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都庁職新聞
 

2008年 宇宙への旅
マウナケアは天文学の社交場
宇宙・地球そして東京

 ハワイのマウナケアには日本初の海外設置の大型天文台がある。星空の天国だそうだ。そして10数カ国の天文台が並び、科学は国境を越える。新年号に続き、天文学者の海部宣男さんに、9年目に入るすばる望遠鏡の活躍や、科学のグローバリゼーションと文化の相互理解、そして宇宙から東京について語っていただいた。

海部 宣男(かいふ のりお)

プロフィール 1943年生まれ。1966年、東大教養学部基礎科学科卒業。1988年、国立天文台教授。1997年、国立天文台ハワイ観測所長。2000年、国立天文台台長。2007年、放送大学教授。主な研究分野 観測天文学、電波天文学、著書に『宇宙史の中の人間』(岩波市民大学シリーズ)岩波書店 /『宇宙をうたう』(中公新書)/ 『すばる望遠鏡の宇宙』 岩波新書カラー版など多数
すばる望遠鏡の主鏡を山頂へ運ぶ
すばる望遠鏡のお茶筒型ドーム
マウナケア山頂の天文台群
※マウナケアなどの写真は国立天文台提供
すばるの成果は8つの観測装置
自分の手と頭でつくる


 すばる望遠鏡は口径8.2メートルの凹面鏡で天体の光を集めて、できるだけ小さいところに落とし込み、その光をさまざまな「観測装置」で精密に分析しています。みなさんが親しんでいる望遠鏡と違い、目でのぞくことはできません。光を電子に変えてコンピューターにデータを入れ分析するために焦点には大きな観測装置がついていて、すばるは目的に応じて7つの観測装置を持っています。
 観測装置は、10年ほどで古くなります。大きな装置の開発には何年もかかり、お金も労力も必要です。すばる望遠鏡はいま、遠いところを見る能力を持つ視野の広いカメラと、太陽系外の惑星を観測する特殊な装置(チャオ)を新しく造りかえようとしています。常に考えて日々の研究・努力を積み重ねることが、とても大切なのです。
 天文学者は観測だけではなく、装置を設計し、実験も行う。エンジニアリングの仕事もたくさんあります。新しい世界を見るために、自分の手で、自分の頭でつくるのが天文学者の大きな仕事です。すばるの活躍を、今後も大いに期待してほしいと思っています。いまの僕には、若い人が活躍する場をつくることも大事な役目です。

真のグローバリゼーションを求めて

 すばる望遠鏡をつくるのに9年かかりましたが、最後の3年間は、ハワイに住みました。日本がハワイの山頂に望遠鏡をなぜつくるのか。地球上で観測するのに最善の場所で最善のものをつくることを、今の天文学は必要としているのです。ハワイのマウナケア山頂には10数カ国の天文台があり、必然的に、私たちは国境を越えグローバル化していくのです。実は外国に大きな天文台をつくることは、これが日本にとって初めての試みでした。

新しい世界を理解する
天文台への反対運動


 ハワイではおもしろい体験をいくつもしましたが、特に科学という行為、新しい宇宙を理解するということが、必ずしも行った先ですんなり受け入れられるものではないということも経験しました。地元ハワイのネイティブ・ハワイアンの人々からは、マウナケアに天文台ができることへの抵抗というか、反対運動が続いています。山岳信仰を持つネイテイブの人たちにしてみれば、マウナケアは神聖な山であり、そこを踏み荒らしてくる者や国に対して、反対を唱えるのは当然です。科学者もそういったことをよく理解して、きっちり問題解決をしていかなければいけませんね。
 6〜8世紀にポリネシアから移住してきた人々の子孫が、いわゆるネイティブ・ハワイアンです。彼らと日本の私たちのルーツは重なっていて、山岳信仰なども理解できるし、すばる望遠鏡としては良い関係を作れたと思っています。
 植民地主義的な振る舞いでは、相互理解は進みません。そういった意味では、どこへでもでかけていってデータを持ってかえるだけといったサイエンス・アニマル的なやり方ではいけないと、強く感じました。明治以来の日系2世3世の方々との出会いもあり、建設の時はずいぶん応援していただきました。これも楽しい経験でしたね。
 すでにマウナケアには10数カ国の国が天文台を造っていますし、アジアでは最近、台湾が加わってきました。すばる望遠鏡は日本独自で行っていますが、マウナケアは地球上で一番大きな天文の国際社交場です。

光害から星空とりもどそう

 「宇宙から見た夜の地球」という人工衛星写真の世界図がありますが、日本は全国、本当に明るいですね。宇宙から見て明るいということは、宇宙に余計な光を出して、夜空も明るくしているわけです。
 私は八王子の多摩地域に、20年住んでいます。細い丘陵が東西に幾重にも並んで、まさに万葉集にある「多摩の横山」ですね。鳥の訪れも多いしけっこう楽しんでいるんですが、やっぱり夜空は明るい。天の川どころか星座もろくに見えないのは、子供から星空を奪っているわけですよね。
 私は旧暦の七夕を「伝統的七夕」と名づけて、年に一度、ライトダウンで星空を楽しもうと提案しています。ライトダウンには行政の協力が欠かせませんが、沖縄の石垣島では大人気です。光害の親玉の東京都も、ぜひはじめてはどうでしょうね。全国に星空がひろがるきっかけになるのでは。
 これからも、宇宙についてはおもしろい世界が開けてきます。皆さんも注目してください。

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