健康 メンタルヘルス講座(24)
ストレスマネジメント
Aストレスが及ぼす心身への影響(1)
「抑うつ状態=うつ病?」
前回はわれわれの身のまわりにはストレッサーがあふれ、常に刺激されている環境におかれていることをお話ししました。やっと梅雨明けし、この時期特有のストレスは軽減した感はありますが。
さて、身の回りのストレッサーを排除すれば健康が維持できるのかということですが、この答えはある実験で証明されております。これは人為的に閉鎖空間を作り外部刺激から完全に遮断した状態での心身の反応を見るというものですが、もちろん結果は自律神経系の異常をもたらすなど心身の不調をきたすといったものでした。
つまり生きていくためのうれしい、つらいストレッサーはすべて、われわれが健康を維持するための必需品なのだと思います。そうは言っても、現実悩むところは大きいですよね。そこで今回はストレスがもたらす心身への影響についてお話したいと思います。
われわれは誰でも生きていくうえで失敗をしたり、つまずいてしまうことはよくあり、そこで落ち込んでしまうことも当然あります。この落ち込んでしまう状態は精神医学的に「抑うつ状態」といいます。
つまり抑うつ状態とは広い概念であり正常の反応も含まれています。間違われやすいのですが、この状態=うつ病というわけではありません。
人間のさまざまな感情には神経伝達物質neurotransmitter(以下伝達物質)が関わっているといわれています。例えば幸せだなぁと感じる時にはセロトニンserotonin、「よし、やるぞ」とやる気になっている時にはノルアドレナリンnoradrenalinといった伝達物質が中心に放出されている状態です。
正常では、ストレスだと感じている時にも伝達物質が正常に分泌されているため、やがて自分なりの対処法を考えたり、あきらめたりすることでこの状態を脱却しようとすることが可能になります。ただ、このような状況が続くと、徐々にこれらの伝達物質の分泌は減少してきます。
いま挙げた上2つの物質は脳内だけでなく、体全体にも作用していますが、実際には脳よりも消化器や循環器といった器官が伝達物質の分泌量の変化に、より敏感だといわれています。 (以後来月号へ)
(産業医の立場から 宇佐見和哉)
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